異世界陸軍活動記

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あの時の超巨乳の恨み

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「よくぞご無事で」

「オーバも無事に戻って来れて良かったよ」

 オーバから差し出された右手に俺も右手を返す。
 ライカ案内の元、竜騎士隊はリクレク大隊へと合流をはたす。
 都市ロメとトンプソンの町の中間地点から、ややトンプソン寄りの位置にリクレク大隊はおり、そこでマシェルモビア軍を抑えていた。
 その場所に屋根の無い仕切りで周りを囲んだだけの簡単な陣を置き、リクレク大隊の隊長であるオーバ・パイルプスと対面し座る。
 俺の隣にはケンタ君が緊張した面持ちで座っている

 なんでもケンタ君はリクレク中隊、今は大隊だがそのリクレク中隊の活躍を知っており、憧れを持っていたそうな。 
 それでいつかはリクレク中隊に所属出来れば‥‥と夢に見ていたという。
 リクレクの成り立ちから大陸深部の撤退まで、知れば知る程憧れが募るらしい

 じゃあ何かい? 
 うち(竜騎士隊)は嫌だってのかい? 他所に行きたいのかい? 今や誰もが入りたがる竜騎士隊だよ?。
 口早に捲し立てて聞いたが

「い、いえ、そういう事では無くてですね、ハヤト隊だった頃の活躍は聞いています、聞いてますが調べてみてもその記録が殆ど無いんですよ」

 ハヤト隊だった頃の日報やその他事務作業などは大体タクティアに任せっきりだった。任せたままだったから、実際にタクティアが何と日報に記入していたのか、それと作戦に対しての報告をどうしていたのかは俺も分からない。
 奴は何かと隠し事が多い、例えば任務を前日まで黙って置くとか、休暇があっても数秒前まで黙っているとか、とにかく俺に対しての報連相(報告・連絡・相談)が全く無かったと言ってもいい、俺だけに報連相がないのだ。
「来週から休暇が貰えるんですよね?」
 そう隊員に聞かれ。
「えっ!? マジで?」
 と隊長である俺が逆に聞き返す事が多々あった
 
 そうなると上に対する日報も報告も虚偽の物を提出していたり隠していたのかもしれない、他部隊と行動を取っていた時は。
 『私が報告を出しておきますから』
 そうタクティアが言い他部隊の報告を一緒に上げていた。もしかしたらその時に色々と中身を弄っていたのかもしれない。
 あいつは何かと裏でこそこそする性格なので、もしかしたらと思う。
 ケンタ君もハヤト隊の事も噂では聞いているが、実際に資料が無いという事なのだろう

 嘘つきラティウス君とも離別したし、今後は世の為にこの竜騎士隊の活躍をしっかりと日報にのせ、報告も何一つ漏らさないように提出しようと思った


 そんな訳で、ハヤト隊がそこまで活躍していないと勘違いしているケンタ君と一緒にオーバと話をする機会を持っているのだが、元ハヤト隊であるコトンも一緒に来るのかな? と思っていたが、出迎えてくれたオーバに軽く会釈をし、召喚隊に所属していた際のコトン以外の唯一、あの5年前の帰還者がいたようで、その人に会いに行ってしまった。
 レンダルは兄のライカと話があるみたいで、この場にいるのは俺とケンタ君、そしてオーバとリクレク隊の第2・第3の中隊長の人が2人だけだった


「それにしてもオーバはまだ軍を辞めて無かったんだね、よっぽどお国の為に働く事を生きがいを感じてるんだね」

「いやいや、国の為になど考えた事は一度も無いですよ、今すぐにでも帰りたい気分です」

 そんなオーバの発言に後ろに居る第2中隊と第3中隊の隊長は、オーバの心境を知っているのか苦笑いを浮かべ、俺の隣にいるケンタ君は「えっ?」と小さく声を漏らす

「何を言っているのかオーバは、偉くなりたくないとか言っときながらちゃっかり昇進した挙句、立派な隊長バッチまで付けちゃって。そんなに隊長になりたかったならなりたいって言ってくれれば良かったのに、俺何度も言ってたよね? ハヤト隊の時に良かったら隊長やらない? って」

「何度も言われた事は無いですね、最後に一度だけ言われただけですよ。そもそもこの隊長バッチなんぞは今すぐにでも捨てたい気分ですし。
 それと昇進はあの撤退から帰還した全てが昇進してますからね、自分の意思ではありませんよ」

 にこやかに笑うオーバの一方、ケンタ君は憧れのリクレク隊の隊長の発言に物凄くショックを受けていた。
 オーバはうちの若い子の夢を壊すような発言は止めて欲しい。
 でもねケンタ君、これで分かっただろう? しょっちゅう『家に帰りたい』って言って一見不真面目に見える俺だけど、どう見ても俺の方がまともでしょう?

 軍人として非常に不真面目なオーバ。
 でも軍人として働かなくてもいいように、俺が最後に渡したレールガン用の天然魔石、アレを換金出来れば家の借金もどうにか出来たはず、と思っていたがそうではなかったようで。
 渡した3つとも全て大陸深部で使い切ってしまったとの事、‥‥残念、残っていたら返してもらおうと思っていたのだが。
 そしてハルツールに帰還後は妻と離婚し今は一人で暮らしているそうだ。
 借金は離婚後妻と折半し、今オーバは借金の為にせっせと働いている。今のオーバは90歳を過ぎており、成長が50年ストップする『生命の契約』期間を引くと、地球の年齢だと40過ぎのおじさんになる。
 まだまだ油の乗っている年齢なのでオーバには頑張ってもらいたい、借金もあと10年くらいで返せるそうだし、頑張れ!。
 一方元妻の方はというと、オーバの長男が引き取ったらしいが元妻は働きもせず長男の財産を食い尽くす勢いで散財しているとか、『とか』と言うのは夫婦の縁を切り、元妻の肩を持つ子供達ともほとんど縁を切った状態であるがために状況が分かって無いらしい。
 自分達の母親のせいで子供たちは何やら揉め事が発生している『とか』、多分長男が引き取って失敗だとか他の兄弟に母の面倒を見てくれ的な感じだとオーバは言っていた

 まだまだ話したい事はあるのだが、今は戦争中。
 リクレク大隊でも今現在戦っている者もいるし、いつまでも昔話に花を咲かせることは出来ないので任務の話に移る

「総指揮のタクティアからどこまで聞いていますか?」

 俺は隣にいるケンタ君をチラリと見る、今作戦は一般兵には知らされていない。
 今までハルツールの作戦はマシェルモビアに筒抜けだった事が多かったため、この作戦もごく一部の上官しか知らされていない。
 ケンタ君に限ってそんな事は有りえないが、具体的な事は避けて話す。オーバの後ろに居る中隊長二人にも作戦の事は知らされてないような感じを受ける

「俺は全部聞いてるよ」

 俺がケンタ君を見たのと、『俺は』の部分でオーバはケンタ君が作戦の内容を知らされていないと理解したらしい

「なるほど」
 短くオーバは答える

「竜騎士隊はリクレク大隊の下に着くから、何から何までオーバの判断に任せるよ」

「了解しました」

「あの‥‥」
 二人の会話に先ほどから憧れのリクレク隊のお三方を目の前にして、緊張気味だったケンタ君がおずおずと声を上げる

「どうした?」

「自分達は今回リクレク隊の一員になる訳ですが━━」

 一員では無いよケンタ君、あくまで君は竜騎士隊所属で一時的に行動を共にするだけだから‥‥もしかしてウチの部隊が嫌だって言うの?。
 嫌だよ、ケンタ君がいなくなったら誰が軍用車を運転するの? 色々と雑用をしてもらっているレンダルの仕事が更に増えちゃうじゃない

「━━具体的にどの部隊に付けばいいのでしょうか?」
 

 そういうのは後で俺に聞けばいいじゃないと思った。
 何ですか? 僕は隊長として信用できませんか? なんでオーバに聞くんです?。
 まあでも、ライカが迎えに来たんだから、当然リクレク隊の先頭である第2中隊所属の第2小隊辺りに━━

「竜騎士隊はここに居るヘイゲル中隊長率いる、第3中隊の後方に入ってもらう」

 あっ‥第3なんだ、知らなかった。
 全部知っているとか言っときながら知って無かった。
 それにしてもケンタ君‥‥俺が恥をかかないように聞いてくれたんだね? このまま話が終わったら危うく第2中隊の隊長に「宜しくお願いしまーす」とか言いながらついて行くところだったよ。
 ありがとう、ケンタ君

 憧れのリクレク隊の隊長オーバから直接聞いたからか
「はいっ! 了解しました!」
 いつもの2倍元気よく答えるケンタ君だった

「さて━━」
 と一旦話を切るオーバは
「少しばかりハヤト中尉と二人だけで話をさせてくれ」

 ケンタ君と二人の中隊長は「?」という表情を浮かべたが、俺も一緒に「?」になった

「なーに、中尉がタクティアの姪とどこまでやったか下品な話を聞きたいだけだ」

「おっさんかよ!」

「おっさんというか既に初老ですがね」
 「ふっふっふ」とおっさんぽく笑うオーバ、地球年齢で40なら初老じゃ無いだろうに‥‥あっ、初老か

 後ろで少し呆れた感じに笑う二人の中隊長達と

「あ~」
 と、ちょっと納得したような感じのケンタ君
「コトンは顔はそこそこ可愛いし、それに胸が凄いですからね。もう既に同棲しているそうですからとっくに‥‥あの巨乳ですからね」

 ニヤニヤとした顔で、何故か急に饒舌に話し出してくるケンタ君

「ハヤト中尉はタクティアの姪に抱きつかれると動きが止まってたからな、巨乳好きにはあの胸はたまらないだろうな、既に手を出していると思ってるんですが?」

 オーバはおっさんらしく下品な顔で俺に聞いてくる。
 すると後ろに居た中隊長二人もきょうみがあるのかその顔にいやらしい笑みを浮かべていた

 全くこの下品な人達は‥‥
「あのねぇ君達ちょっと品が無いよ、先に言っとくけど全く何も無いからね? 全然手は出してないし、その気も無いからね? そりゃあの胸は‥‥まあ、ね」

 言ってから気づいたけど今『同棲』ってケンタ君が言って無かったかな? 気のせいかな? 気のせいだな

「コトンに抱きつかれると動きが止まるのって、接触してる部分に集中しているからですよね?」

 今日はなにやらぐいぐい食い込んでくるケンタ君、リクレク隊の隊長と少し話が出来たせいでテンションが上がっているのだろうか?。 
 接触している部分に集中しているのは確かだけど、でもねケンタ君、ひとこと言わせてほしい

「ちょっとまってよ、俺の事巨乳好きとは言うけれど、実際巨乳好きなのはケンタ君でしょ?」

「は、はい? どうして自分が?」

「君はまだ幼かったから覚えていないかもしれないけど、初等部にいた巨乳どころか超巨乳の先生の胸をいつも揉んでたじゃない」

「ほぅ」
 下卑た笑みをケンタ君に向けるオーバ

「は? えっ!?」
 急に自分に矛先が向き動揺するケンタ君

「俺は忘れて無いよ、あの時俺も触りたかったのに、あの胸を独占してたよね?」

「はっ? へっ!?」

「逃げまどう先生を追いかけて執拗にその胸をまさぐって、将来この子はどういう大人に育つんだろうって、そのうち犯罪行為を犯すんじゃないかって思ってたよ」

「ちょっ! ちょっと待ってください隊長!」

「その時の恨みだろうね、追いかけっこの時は必ずケンタ君を集中して追いかけていたよ。あんな羨ましいものを見せつけやがって、このガキは絶対に許さないってね」

「だからあの時自分だけ追って来てたんですか! というかあの時そんな事考えてたんですか!」

 20年ぶりの真実に驚きを隠せないケンタ君、そして何とか俺への巨乳ヘイトを退ける事に成功した


 ・・・・

 ・・・

 「違うんですあの時は自分も子供で━━」と未練がましく言い訳をするケンタ君、でも事実は変わらない。
 お前は巨乳好きだ! そのしょんぼりしたケンタ君を中隊長の二人が「まあまあ」となだめながら陣を出て行った

 3人が去った後

「で? 実際はどうなっているの」

 ここから先は作戦の話になる。
 そもそも元嫁のせいで借金地獄に陥ったオーバは、女性対して強い不信感を持ってしまっており、『性』に対する話も全くしない男だった。
 『性欲に騙されるな』『結婚はするものではない』が口癖だったオーバが巨乳云々と話す訳がない

 先ほどまで下品な顔だったオーバだが、既に穢れが落ちた聖職者ような凛々しい顔になっていた

「作戦の事なのですが、実は上手くいっておりません」

 今作戦は撤退に見せかけトンプソンに敵を誘導する。トンプソンは海に非常に近い町の為、敵をおびき寄せてから海軍の艦隊による艦砲射撃による砲撃で町ごとマシェルモビア軍を一掃するという作戦である

「その理由は?」

「海軍は5年前の戦いで相当の被害を受け、海の支配図を大きく後退したものの、何とかトンプソン付近の海域まで押し戻すことに成功しています。
 ですが押し戻せたのはトンプソン付近の海域までであり、そこが押し戻せたギリギリのラインでした」

 ギリギリか‥‥
「なるほど、つまりトンプソンに砲撃するにしても、それは最前線で別方向に砲を向ける事になる‥‥って事か」

「そういう事になります」

「タクティアはそんな事一言も言って無かったけど」

「それでも『やれ』という事なのでしょう」

「いい加減な奴だ」

「まったく‥‥」
 オーバは大きくため息をつく
「なので海軍が艦砲射撃を行えるのは限られたタイミングで、その艦砲射撃に合わせるように敵兵をトンプソンに引き込み、砲撃が始まる前に我々はトンプソンから離脱しなければなりません」

「という事は直ぐにでも作戦実行とはいかない訳だ」

「海軍次第になります」

 トンプソンに引き込んで逃げるだけの簡単な仕事かと思いきや、実際はそう簡単にはいかないようだ。
 トンプソンに砲撃を加える海軍と、呼びよせ砲撃後にトンプソンの生き残りを叩く自分達、そしてロメとトンプソンを分断する部隊と直接ロメを狙うハルツール軍本体。
 この4つが揃うタイミングで仕掛けなくてはならない、しかもそれは海軍次第という、そうでもしないとロメは奪還できない

「中尉は第3中隊の後方にてもらいます、第3は前方の部隊ですが左翼側にあるのでもしもの事があったら、そのまま南下して逃げる事も出来ますから」

 オーバはもしもの事を考え自分達竜騎士隊を逃げやすい左翼に配置してくれた


 



 だが竜騎士隊は、艦砲射撃の砲撃目的であるトンプソンで砲撃の弾丸が降り注ぐ中、戦う事となる
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