異世界陸軍活動記

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課金武器

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 ハルツール国内、北東にある海に近い町『トンプソン』。
 都市ロメを支える町として小さいながらも栄えている、だが今回ハルツールの軍事作戦によって焦土になろうとしていた

「トンプソン‥‥トンプソン」
 何となく聞いたことがある名前だが

「どうしたんですか隊長」
 名前を連呼する俺を不思議に思ったのか、ケンタ君が尋ねて来る

「いやぁ‥‥どっかで聞いたことがあるなーと思ってねぇ」
 何だったっけか?

 思い出せそうで思い出せない、何とももどかしい切ない気分にさせてくれるトンプソン、そんなに重要な事でもないがどうしても気になる。
 ただ、思い出したとしてもその瞬間にどうでも良くなってしまう

「トンプソンに到着しました」
 運転手の人が到着を教えてくれた

 竜騎士隊の専用車はショショウの町に置いてきている、これから破壊される予定の町に車など持って来たら、どうなってしまうかは分かり切っているので別の車で運んでもらった。
 竜騎士隊の他にも別の小隊が一緒である

 この後、この運んできてくれた軍用車はショショウの町に戻ることになる

「ご武運を」

「ありがとう」

 「よっ!」と普通に降りてもいいのに勢いを付けて車から飛び出し、そのまま軽く伸びをする

「う~ん、トンプソンに到ちゃ━━あっ、思い出した」
 どこかで聞いた名前だなと思ったら楽器の楽譜だった。
 ピアノ何とかと言う名前の‥‥というか本当にどうでも良いことだった

 喉につっかえていた物が無くなり、スッキリとした状態でトンプソンに到着できた訳だが、この町は建物の被害がどこよりも酷かった。
 ハルツールが東側緩衝地帯に最も近い移転門を奪われた時、何故か緩衝地帯からあの周辺は一時的に通信が不可になり、そしてそのタイミングで一気に攻められた。
 特殊オーガを使用した戦いにハルツールは手も足も出ず、あっけなくブレドリアとロメを落とされる。そしてロメ側を攻略したマシェルモビアが次に向かった先がこの町トンプソンだった。
 トンプソンはロメに魔力を供給するための集魔機がある、大気中の魔力を集めそれをロメに送っている施設で地球で例えたら発電施設。 
 故にトンプソンの町自体には価値は無く、その集魔機に価値があった。その為町の被害を一切考慮せず、攻めたマシェルモビアと被害を気にする余裕も無かったハルツールの戦いにより、トンプソンの町はほぼ崩壊と言ってもいいほど瓦礫になっていた。
 一度は完全に掌握されそうだったトンプソンだったが、何とか押し戻す事に成功している

「さてと‥‥リクレク大隊と合流しなければならないんだけども、3人共準備は万端だね?」

「問題ありません」
「同じく」
「大丈夫」

 もうここまで来たら「帰りたい」とは思わないし、隊員の3人も心構えが出来ている様子。ならリクレク大隊と合流しに行きますか

「お待ちしてましたハヤト隊長」
 
 不意に声が掛かる、一瞬レンダルに言われたのかと思ったが、今の声はどこかで━━

「兄貴」
 レンダルが直ぐに反応しその声の元に駆け寄った

 レンダルの兄貴って━━
 声の元に振り向くとそこには元同じ隊だったライカ・ダーモンが立っていた。曹長に階級が上がり今やリクレク隊の第二小隊の先頭を務める程に成長したライカだった。
 久しぶりのラカイとの再会に思わず笑みを浮かべてしまう

「ライカ! 久しぶりだね」

「ハヤト隊長もよくご無事でお戻りになられました」
 少し緊張した様子で直立不動の敬礼で答えるライカ、俺につられたのかライカもその顔に笑みを浮かべる

「ライカもよく無事に帰ってこれたね、かなり大変だったって聞いてたけど」
 
 最後に救出されたライカは、戦闘不能になっていたサコナ・ソルセリーとタバル・ダイアを連れ、大陸深部を通過し見事にソルセリーを連れ帰って来た。
 3万人以上犠牲になったあの撤退からライカは生き残ったのだ

「はい、何とか命令を守る事が出来ました」

 そう、俺はあの時ソルセリーをハルツールまで無事に連れ帰れと命令をしていた。だから━━

「あの時の命令を守りよく無事に帰って来たなライカ・ダーモン、よくやったありがとう」
 言葉で労うことにする

 ライカはその瞳にうっすらと涙を浮かべ
「はい‥‥」
 静かに答えた
 
 その涙に弟のレンダルも鼻をすすり、短い間であったが同じ部隊に居たコトンも静かに頷いているようだった

「それにしてもなんでライカがいるの?」

 今まさに戦闘中のはずであり、リクレク隊の先頭を務めているというライカが何故にこの場にいるのかが不思議だった。
 交代で休んでいたのかな? と思ったが

 ライカは目に浮かべた涙が流れ落ちる前に目を手の甲でこすると、その顔に再び笑顔にし
「大隊長より自分に迎えに行けと言われまして」

 なるほどオーバが気を使いゆっくりと話す時間をくれたのだろう、合流するまで共に過ごす時間をくれたのだろう、気の使える大人である。
 そうだ! ライカは子供が出来たんだったなお祝いしてあげなきゃ

「そう言えばライカはソルセリーと結婚したんだって?」

「━━ッ!」
 笑顔だったライカの顔が一瞬にして引き締まる。同じくライカの横にいたレンダルも時間が止まったかのように停止した

 えっ!? 何?
 急に動揺する二人に対しつられて何故か俺もちょっと緊張してしまう

「は‥‥はい」
 目が泳ぎ先ほど浮かべていた涙の代わりに、今度は額が輝きうっすらと水滴が形成されていく。そんなライカの隣でまるで猛獣に睨まれ一歩も動けなくなった草食動物のように固まるレンダル

「子供も生まれたんだってね、おめでとう」

「ッ!!!!」
 
 傍から見ても激しく動揺するライカに困惑してしまう、レンダルもレンダルでもはや彫刻のようにピクリとも動かない

「あ、あ、ありがとうございます」

 こんなキャラだったかな? と思うほどライカは挙動がおかしかった

「そ、その、今はその‥‥自分も幸せな家庭を築いてまして、だからあの‥‥それを壊されたくないと言いうか失いたくないと言いますか、その‥‥」

 言い淀むライカに何かを察したのか、ケンタ君が小声で
「レンダルちょっと手伝ってほしいんだけど」
 と固まってしまったレンダルの腕を取りそして
「コトンもちょっと付いてきてくれる?」
 二人を連れてどこへと言ってしまった

 残された俺とライカに沈黙が走る、ライカは何を言おうとしているのか? と待つ俺と、中々次の言葉が出てこないライカ。
 しばしの沈黙の後━━

 バッ! とライカは急にその場に平伏し
「じ、自分の妻を取らないで下さい!」
 叫んだ





 Wow‥‥
 一体何が起きてるの?

 ただ子供が生まれておめでとうと言いたかっただけなのに、目の前にいる気が狂ったかのような元隊員の行動に、俺は困惑するしかなかった



 ・・・・

 ・・・

 

 色々あって

 俺にソルセリーを奪われるのではないか? とライカが疑心暗鬼に陥っていた事を知った

「そんな事するわけないだろ」

 人の女を奪う様な男だと思われていた様なのでライカには「こらっ!」と怒ってやった。やらないよ普通、それに俺だって籍も入れて無いけどマイナって名の世界一可愛い妻がいたし。
 それで安心したのかライカはようやく冷静さを取り戻した

「ここの所ずっとそればかり考えてしまって‥‥」

「どうしたらそういう考え方になるのか」
 
 不思議に思えてしまう、そう考えるとオーバがライカを先に寄越したのは、いきなり戦場で今みたいな事が起こらないようにする為だったのだろうか?

 誤解が解けたとはいえ、すっかり憔悴した様子のライカにこの手の話は今すべきではないと思い、別の話を振ろうと思う。
 子供の名前とかは後で聞こうか

「所で腰に二つ武器をぶら下げてるんだね」

 今のライカは左右の腰に一本ずつ計2本の武器を帯刀していた。前は右に刀で左には俺も制作を手伝った銃の『オブラ―』と言う名の魔法を飛ばせる特殊な武器を身に着けていたのだが

「ええ、あの戦いで自分の刀は壊れてしまいましたし、オブラ―も使えなくなり、それにハヤト隊長から頂いた『雷雲』も修復不可能な所まで破損してしまいました。
 それでも何とか最後まで雷雲はもってくれましたが、修復までは出来ませんでした。もしあの時雷雲が無かったら自分は今ここにはいなかったでしょう。ハヤト隊長には本当に感謝しています」

 いえいえどういたしまして、それともう君の隊長ではないからね? 後でそれは訂正しておこう。それよりもライカの話の続きを聞こうか

「それでその破損した武器の代わりに使っているのがこの2本の刀なんです」

「新武器だね? ちょっと見せてよ」
 鞘に収まっている武器だったが、それでも普通とは違う形をしていたので気になった

「はい、まずこっちなんですが」
 右の腰にあった武器を左手で抜きそれを見せてくれる

「これはハヤト隊長の雷雲を改良したような作りになってます、自分が武器を作ってもらった所で作ってもらいました」

「へぇー」
 以前ソルセリーと一緒に行ったあの鍛冶屋の事だろう、俺もそこで今はマイナの墓標になっている大剣を直してもらった事がある。あそこの鍛冶屋だったら俺が作るよりももっといい物を作ってくれるだろう。
 つまり俺の切れ味特化の雷雲を参考にしたあの鍛冶屋がより質の高い物を作ってくれたと

 いいなあ~俺も欲しい

「それとこっちですが━━」
 今度はもう一本の武器を抜いて見せてくれた

 その武器は見るからに特殊な形をしており━━
「ん? ‥‥ッ! 『ガンブレード』!!」

 それはロマン武器界最強の一角でもあるガンブレードだった。
 ぱっと見は片刃の直刀であったが、持ち手の所に引き金が付いており刀の背には短い銃口が付いていた

「『がんぶれーど』ですか? ハヤト隊長がいた世界の名でしょうか?」

「ああ! そうだよ、まさかガンブレードをこの目で見ようとは‥‥」

 ライカの説明によると刀身部分は折れにくさに重点を置いておりそこは普通だったが、この銃の部分は特殊だった。
 以前ライカが持っていた銃のオブラ―は『火』『雷』の両方を放てる特殊な物だったが、更に上を行っており、『火』『雷』はもちろんの事『水』『風』『土』『氷』の属性魔法全ての魔法を発射出来るようになっていた。
 手元でカチャカチャ弄ると出す魔法を選べるようになっているという‥‥、普通の兵士だったら必要は無いが、魔法を使えないライカだからこそ必要であり、扱える武器なのだろう。
 属性魔法を全て女神に寄って奪われた俺にとっても欲しい一品であった

 この2つの武器は作ってもらったら相当お高くなりそうだが、ライカの嫁ぎ先(婿)であるソルセリー家の財力で作ってもらった武器だろう、つまり金持ち装備である。いっぱい課金してゲット出来るSSSS武器だ。
 属性魔法全てを失った俺にとって喉から手が出るほど欲しい一品

「いいなぁ~これ」

「こんなものなくともハヤト隊長は戦えるじゃないですか」

「まあ‥‥うん」
 属性魔法が使えないとは言えないし
「でもあれだね、これだけ凄い武器が2つもあるんだったら、もし俺が渡した雷雲が無事だったら返して欲しいって言ってたかもね」

 笑いながら『もしも』の話をして見たのだが、返して・・・の部分に反応したライカがビクッと体を震わせた。
 別に嫁を取ろうとは思っても無いのだが、一度思ってしまった不安は中々払拭できないらしい

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