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そして、現状に至る。その2
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鉱山で働く人達が滞在する村。
大量の資材搬入出等の為に設置されたゲートは拠点を作り終えてからは滅多に使われる事はない。
それを使って移動して来た面々は、
これから行われる竜討伐と、
少しの希望を持っての生存者の救出の為に主戦力の到着を待っている。
暫くすると、その戦士は震え泣く小さな子供を抱き抱えて現れた。
「ゴメンよ皆、待たせちゃったかな?」
作戦に参加する為に送り込まれた兵達は、
騒ぐ事なく静かな微笑みで英雄を温かい朝食で迎えいれる。
その腕の中で泣き疲れたエイナは緊張が解れたのか寝息を立て始めていた。
「とにかく居ても立っても居られなかったんだろうね…。
『助けに行かなきゃ』とは叫んでいたけど…
多分、最悪の状況も分かってはいるんだろう。
でも彼等は強いし有能だ。
きっとまだ生きている!
早くみんなで彼等を救い出そう!」
ギリアは大声ではないが力強く言う。
腕の中で悪夢を見ているのかも知れない小さな存在の深層心理に届く様に。
この子がその悪夢に飲み込まれたりしないようにと。
その後エイナはスチラルに抱かれて別室へ。
暫くして、
魔法による治療と休息も兼ねた最終ミーティングが行われる。
「元は整備された坑道だし内部構造はそれほど複雑ではないと思う。
竜種と人間種が遭遇して、しかもどちらも生きる為の対立。
その状況でダンジョン化するとなれば『愉悦種の精霊さん』は絡んでいるね…。」
『精霊さん』は様々で、どの種族や勢力を好むのかは人と同様である。
この場合の『愉悦種の精霊さん』とは、
カブトムシとクワガタを戦わせて楽しむ傷みを知らぬ子供程度の思考なので、
どちらかに肩入れするというわけではない。
「となれば、必ずボス部屋があるはずだ。
そうなると結界が邪魔をして地竜は地中に潜れないから、
純粋な肉弾戦になるね。
それはこちらにとっては好都合だ。」
数多の戦場を渡り歩いて来た高ランク冒険者であるギリアの考察に聞き入る一同。
「予定通り本体と直接渡り合うのは私とエイナ君の二人。
他の皆さんは戦闘の援護と、
とにかく卵と幼生体の殲滅をお願いするよ。」
とんでもない事を口走るギリアに対して誰も疑問の顔すら浮かべずにいる事に、
周囲を見回すアサヒを見てギリアは笑って言う。
「そうか、アサヒ君は昨日の会議には居なかったから知らないか。」
その会議の片隅に居た筈の仲間二人に目をやると…
「さあ?
アタシはシュミカにアンタを呼びに行かされるまで飲んでて見ても聞いてもないわぁ♪」
(大丈夫、お前には元より何も求めてはいない。)
「ん~…、
エイナの取り巻きの精霊達は力も数も異常…。
とおちゃが止めに入らないとメイド長は八つ裂きにされてた…かも?」
(情報共有の大切さよ!)
「まぁつまり、見た目によらないと言うことだよ。
あの子は私とタイマン貼れる程度には強いのさ!ははは!」
部屋のドアが蹴破られる寸前に『カチンっ!』という音が聞こえた気がした。
埃を巻き上げて吹き飛んだドアは…なるほど、
物理的な衝撃ではあり得ない砕け方をしている。
「調子に乗るなよ!
この無駄肉マッチョマン!
そのボクに二回も負けた癖に!
お兄ちゃんはもっともぉ~っと強いんだからね!」
お怒りのお子様の登場であった。
「…無駄肉マ…って。
早いお目覚めだね、
覚悟は…出来たのかい?」
スチラル含む数人のメイドさん達が後から駆けつけて、
大粒の涙を流す王子を毛布で包んで抱き締める。
「なんで止めたのさぁ…
こんなにいっぱい考えちゃったら…
怖くて行けなくなっちゃたじゃないかぁ…。」
そんな姿を見て居た堪れなくなったアサヒはポンっと頭に手を乗せて言う。
「そのお兄ちゃん達もきっと怖いから…
みんなで迎えに行ってあげよう。」
合わせた目は宝石の様に美しく輝き、
力んだ口角は確かに笑顔を作ろうと頑張っていた。
だがその頑張りは報われない。
その悲しい顔は誰の目につく事もなくアサヒの肩を湿らせる。
「アサヒお兄ちゃんは居なくならないでくれる?」
その質問にアサヒはその小さな体を無言でギュッとするしか出来なかった。
…その様な経緯で『ちんちん姫王子』のメンタルケア要員として動員されたアサヒ。
時間は冒頭に戻り、
彼は今まさに前線で地竜と向き合う羽目になっているのであった。
「夢なら覚めてくれよ…早く…。」
もはや逃げ場も無く、覚悟などある訳も無い!
「なら、お父さんが起こしてあげよう!」
それまで正面で向き合い膠着していた戦闘の途中で、
突然向きを変えて隙を見せた地竜にギリアが大剣で特大の一撃を叩き込む!
食糧である鉱石で出来た鱗に守られた身体にはヒビひとつ入りはしないが、
吹き飛ばされた巨体の内部には多少のダメージは通って暫く動きは止まった。
流石に息を切らせながらギリアは三人を背に身構え直して言う。
「目は覚めたかい?」
「…正に死の淵から…。
ありがとうございます、助かったぁ~~…。」
地竜は一時的に動かなくなっているが、
大した手応えは無かった様だ。
「さてさて、どうしようかねぇ…。
アレは私程度の物理攻撃じゃどうにもならないよ…。」
地竜が居たせいで見えなかった向かいに魔道士に守られたエイナを確認し、
アサヒは二重に安堵する。
このボス部屋に到達する道中に、
取り残された筈の人達は居なかった。
勿論『お兄ちゃん』もである。
その事実を納得しきれないエイナは混乱して戦闘になど参加出来ずに、
ただただ守られる小さな子供としてそこに居た。
「あっちに纏まっていた方が安全だ。
今の内に行きなさい!」
広い空間の至る所では他の兵士達が竜の幼生体や卵の処理をしている。
それらを見ながらアサヒ達三人は移動するのだが…。
(レイヤのやつ…アレからどうしたんだ?)
キョロキョロと見回しながら走るアサヒに、
リアに浮かされながら同行するシュミカが告げる。
「ん、あの子も多分想像はしてる。
あの男の居場所はさっき本人から聞いた…。
エイナに伝えると良い…
『お兄ちゃん』のいる所を精霊に教えてもらえって…。」
「はぁ?
…はあっ⁉︎」
シュミカに聞き返そうとしたアサヒは、
体勢を整えた地竜が起こした衝撃に飛ばされるが…運良くその先は目的地であり、
岩肌に衝突する前にエイナを護衛する魔道士の魔法で保護された。
「アサヒ様!
大丈夫ですか⁉︎」
「あ、ありがとうございます…。」
傍には蹲って呆然としているエイナがいる。
「…精霊に聞いてみろってさ。
ウチのお姉ちゃんが言ってたよ…。」
そっと寄り添い、
頭を撫でるアサヒを見上げてエイナは力無く頷き、
ゆっくりと震える小さな両掌を口元に運んで震える声で尋ねた。
「…精霊さん…ちゃんと教えて、
お兄ちゃんは…、
『レイヤお兄ちゃん』は何処にいるの?」
流石に、してやられていた事を確信したアサヒがシュミカに目をやると…
そいつは何がなんだか分からないリアの胸に顔を埋めて、
明らかに違う意味で体を震わせていた。
(…畜生!!
やっぱりそういう事か!何処から何処までだ⁉︎)
悔しそうな顔を見せない様にアサヒはエイナの背後に周って肩を支え、
地竜の方へ目を向けさせる。
(後で覚えてろよ…てるてるローブめ!)
とはいえ、今は本題である。
エイナの震えが両手に伝わりその視線の先に、
普通の人間であるアサヒには見える筈の無い光が見えた気がした。
精霊が指し示す、
エイナが投げかけた質問の答えは『地竜の腹』だ。
「お前が…」
アサヒが支えていた肩はもうそこには無く、
その両手はいつの間にか宙を抱いている。
かつて可愛らしくクルクル回っていたエイナは、
恐ろしくギュルギュルと回りながら敵に突進して行った。
「お前が喰ったのかああああ!!」
そして…絶叫しながら跳ね上がった小さな体で、
『ふっ!』と全身の空気を吐き出して振り翳した拳は…
一撃で地竜の上半身を吹き飛ばした。
大量の資材搬入出等の為に設置されたゲートは拠点を作り終えてからは滅多に使われる事はない。
それを使って移動して来た面々は、
これから行われる竜討伐と、
少しの希望を持っての生存者の救出の為に主戦力の到着を待っている。
暫くすると、その戦士は震え泣く小さな子供を抱き抱えて現れた。
「ゴメンよ皆、待たせちゃったかな?」
作戦に参加する為に送り込まれた兵達は、
騒ぐ事なく静かな微笑みで英雄を温かい朝食で迎えいれる。
その腕の中で泣き疲れたエイナは緊張が解れたのか寝息を立て始めていた。
「とにかく居ても立っても居られなかったんだろうね…。
『助けに行かなきゃ』とは叫んでいたけど…
多分、最悪の状況も分かってはいるんだろう。
でも彼等は強いし有能だ。
きっとまだ生きている!
早くみんなで彼等を救い出そう!」
ギリアは大声ではないが力強く言う。
腕の中で悪夢を見ているのかも知れない小さな存在の深層心理に届く様に。
この子がその悪夢に飲み込まれたりしないようにと。
その後エイナはスチラルに抱かれて別室へ。
暫くして、
魔法による治療と休息も兼ねた最終ミーティングが行われる。
「元は整備された坑道だし内部構造はそれほど複雑ではないと思う。
竜種と人間種が遭遇して、しかもどちらも生きる為の対立。
その状況でダンジョン化するとなれば『愉悦種の精霊さん』は絡んでいるね…。」
『精霊さん』は様々で、どの種族や勢力を好むのかは人と同様である。
この場合の『愉悦種の精霊さん』とは、
カブトムシとクワガタを戦わせて楽しむ傷みを知らぬ子供程度の思考なので、
どちらかに肩入れするというわけではない。
「となれば、必ずボス部屋があるはずだ。
そうなると結界が邪魔をして地竜は地中に潜れないから、
純粋な肉弾戦になるね。
それはこちらにとっては好都合だ。」
数多の戦場を渡り歩いて来た高ランク冒険者であるギリアの考察に聞き入る一同。
「予定通り本体と直接渡り合うのは私とエイナ君の二人。
他の皆さんは戦闘の援護と、
とにかく卵と幼生体の殲滅をお願いするよ。」
とんでもない事を口走るギリアに対して誰も疑問の顔すら浮かべずにいる事に、
周囲を見回すアサヒを見てギリアは笑って言う。
「そうか、アサヒ君は昨日の会議には居なかったから知らないか。」
その会議の片隅に居た筈の仲間二人に目をやると…
「さあ?
アタシはシュミカにアンタを呼びに行かされるまで飲んでて見ても聞いてもないわぁ♪」
(大丈夫、お前には元より何も求めてはいない。)
「ん~…、
エイナの取り巻きの精霊達は力も数も異常…。
とおちゃが止めに入らないとメイド長は八つ裂きにされてた…かも?」
(情報共有の大切さよ!)
「まぁつまり、見た目によらないと言うことだよ。
あの子は私とタイマン貼れる程度には強いのさ!ははは!」
部屋のドアが蹴破られる寸前に『カチンっ!』という音が聞こえた気がした。
埃を巻き上げて吹き飛んだドアは…なるほど、
物理的な衝撃ではあり得ない砕け方をしている。
「調子に乗るなよ!
この無駄肉マッチョマン!
そのボクに二回も負けた癖に!
お兄ちゃんはもっともぉ~っと強いんだからね!」
お怒りのお子様の登場であった。
「…無駄肉マ…って。
早いお目覚めだね、
覚悟は…出来たのかい?」
スチラル含む数人のメイドさん達が後から駆けつけて、
大粒の涙を流す王子を毛布で包んで抱き締める。
「なんで止めたのさぁ…
こんなにいっぱい考えちゃったら…
怖くて行けなくなっちゃたじゃないかぁ…。」
そんな姿を見て居た堪れなくなったアサヒはポンっと頭に手を乗せて言う。
「そのお兄ちゃん達もきっと怖いから…
みんなで迎えに行ってあげよう。」
合わせた目は宝石の様に美しく輝き、
力んだ口角は確かに笑顔を作ろうと頑張っていた。
だがその頑張りは報われない。
その悲しい顔は誰の目につく事もなくアサヒの肩を湿らせる。
「アサヒお兄ちゃんは居なくならないでくれる?」
その質問にアサヒはその小さな体を無言でギュッとするしか出来なかった。
…その様な経緯で『ちんちん姫王子』のメンタルケア要員として動員されたアサヒ。
時間は冒頭に戻り、
彼は今まさに前線で地竜と向き合う羽目になっているのであった。
「夢なら覚めてくれよ…早く…。」
もはや逃げ場も無く、覚悟などある訳も無い!
「なら、お父さんが起こしてあげよう!」
それまで正面で向き合い膠着していた戦闘の途中で、
突然向きを変えて隙を見せた地竜にギリアが大剣で特大の一撃を叩き込む!
食糧である鉱石で出来た鱗に守られた身体にはヒビひとつ入りはしないが、
吹き飛ばされた巨体の内部には多少のダメージは通って暫く動きは止まった。
流石に息を切らせながらギリアは三人を背に身構え直して言う。
「目は覚めたかい?」
「…正に死の淵から…。
ありがとうございます、助かったぁ~~…。」
地竜は一時的に動かなくなっているが、
大した手応えは無かった様だ。
「さてさて、どうしようかねぇ…。
アレは私程度の物理攻撃じゃどうにもならないよ…。」
地竜が居たせいで見えなかった向かいに魔道士に守られたエイナを確認し、
アサヒは二重に安堵する。
このボス部屋に到達する道中に、
取り残された筈の人達は居なかった。
勿論『お兄ちゃん』もである。
その事実を納得しきれないエイナは混乱して戦闘になど参加出来ずに、
ただただ守られる小さな子供としてそこに居た。
「あっちに纏まっていた方が安全だ。
今の内に行きなさい!」
広い空間の至る所では他の兵士達が竜の幼生体や卵の処理をしている。
それらを見ながらアサヒ達三人は移動するのだが…。
(レイヤのやつ…アレからどうしたんだ?)
キョロキョロと見回しながら走るアサヒに、
リアに浮かされながら同行するシュミカが告げる。
「ん、あの子も多分想像はしてる。
あの男の居場所はさっき本人から聞いた…。
エイナに伝えると良い…
『お兄ちゃん』のいる所を精霊に教えてもらえって…。」
「はぁ?
…はあっ⁉︎」
シュミカに聞き返そうとしたアサヒは、
体勢を整えた地竜が起こした衝撃に飛ばされるが…運良くその先は目的地であり、
岩肌に衝突する前にエイナを護衛する魔道士の魔法で保護された。
「アサヒ様!
大丈夫ですか⁉︎」
「あ、ありがとうございます…。」
傍には蹲って呆然としているエイナがいる。
「…精霊に聞いてみろってさ。
ウチのお姉ちゃんが言ってたよ…。」
そっと寄り添い、
頭を撫でるアサヒを見上げてエイナは力無く頷き、
ゆっくりと震える小さな両掌を口元に運んで震える声で尋ねた。
「…精霊さん…ちゃんと教えて、
お兄ちゃんは…、
『レイヤお兄ちゃん』は何処にいるの?」
流石に、してやられていた事を確信したアサヒがシュミカに目をやると…
そいつは何がなんだか分からないリアの胸に顔を埋めて、
明らかに違う意味で体を震わせていた。
(…畜生!!
やっぱりそういう事か!何処から何処までだ⁉︎)
悔しそうな顔を見せない様にアサヒはエイナの背後に周って肩を支え、
地竜の方へ目を向けさせる。
(後で覚えてろよ…てるてるローブめ!)
とはいえ、今は本題である。
エイナの震えが両手に伝わりその視線の先に、
普通の人間であるアサヒには見える筈の無い光が見えた気がした。
精霊が指し示す、
エイナが投げかけた質問の答えは『地竜の腹』だ。
「お前が…」
アサヒが支えていた肩はもうそこには無く、
その両手はいつの間にか宙を抱いている。
かつて可愛らしくクルクル回っていたエイナは、
恐ろしくギュルギュルと回りながら敵に突進して行った。
「お前が喰ったのかああああ!!」
そして…絶叫しながら跳ね上がった小さな体で、
『ふっ!』と全身の空気を吐き出して振り翳した拳は…
一撃で地竜の上半身を吹き飛ばした。
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