結婚したくない腐女子が結婚しました

折原さゆみ

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3デートに出かけました~イケメン歩けばなんとやら②~

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 この第三者に、私はどのように対応したらいいだろうか。まずはこの女性の正体を考えなければならない。



 大鷹さんに話しかけた女性は、私と同じくらいか、それより少し若いか年上くらいだろう。白いふわっとした長袖のブラウスに、黄色のひざ下まであるスカートをはいている。スカートの真ん中には大きなリボンがついていてかわいらしさを出している。足元はある程度の高さがある紺色のパンプス。髪色は明るい茶色だが、上品に肩までの長さを巻いている。顔も服に合った可愛らしい顔をしている。大きな瞳につやつやした唇。

 そして、手がすべすべしていてとてもきれいだった。しわがなく、爪もきれいに短く整えられている。爪の色も良好でうすいピンク色でつやつやである。身長は低めで、それが可愛らしさに拍車をかけていた。


 一言で言うと、「女子力が高い女性」であり、私と正反対の女性ということだ。





 女性が誰かという問いに、私の頭の中では、ミニサイズの私が複数人で脳内会議を始める。そして、いくつかの候補が上がった。はて、どれが正解だろうか。

①元カノ
②妹または姉、それに類似する血縁者(いとこなども含む)
③職場の同僚
④浮気相手もしくは不倫相手
⑤学生時代の友人(部活やサークルの仲間を含む)
⑥その他


 一瞬にして、これだけの候補を考えることが出来た私を自分自身でほめるべきだろうか。





「ひ、久しぶり。千沙さん。また、彼をいじめているのか。」


 名前を呼ばれた大鷹さんは、驚いた様子をしながらも、何とか返事をする。お互い名前呼びということは、それだけ親しいということか。


「失礼なことを言わないで。私はいじめてなんかいないわ。こいつは、今日はただの私の荷物持ち。」

 なかなか個性的な女性である。こいつ呼ばわりされた男を見ると、苦笑いをしながらも特に女性のいうことに反論はしていない。


「それより、この子のことを教えてよ。まさかとは思うけど、この子が攻の結婚相手とか言わないわよね。だって、どう考えても攻と釣り合っていないじゃない。」


 人差し指で思い切り私のことを指さすが、どう答えたら穏便にお帰り願えるだろうか。その前にこの女性の正体を教えてもらわなければならない。

「大鷹さん、この女性はだ」







「千沙さん、失礼だぞ。紗々さんに謝れ。」

 私をバカにしたと思ったのか、大鷹さんがその女性に対して、低い声でけん制する。別に私は釣り合っていないと言われても、傷つきはしないのだが。


 名案を思い付いた。この女性の正体は不明だが、これは我ながら良いアイデアだ。



「違いますよ。私は、そう、大鷹さんのただの知り合いです。たまたま、偶然お会いして、少し話をしていただけですよ。では、大鷹さん、私はこれで失礼します。」


 そう、この女性と大鷹さんは名前を呼ぶような仲である。ということは、大鷹さんとの間に男女の感情が生まれてもおかしくはない。そうと分かれば、邪魔者は退散するしかないだろう。

 ああ、短い結婚生活だったが、結構楽しかった。願わくば、今日のデートが晴れで、いろいろアトラクションやイベントを楽しんでから別れたかったな。


 

 颯爽と席を立ち、その場を離れようとしたが、失敗に終わった。がし、と大鷹さんに腕をつかまれてしまった。

「どうしたんですか。」

 どうにかして、腕を引き離そうとするが、どうにも力が強くて振りほどくことができない。それに指が腕に食いこんでいて、じわじわと痛みが増してくる。これは、後に腕に指の跡が残るだろう。


「すいません。僕と紗々さんはただの知り合いではありませんよね。だって、僕たち結婚しているのでしょう。今日は二人きりでデートだったはずですよね。」


 脅すような低い怒りの感情をこめられた言葉にしぶしぶ席に座りなおす。





「ふうん。」

 私たちの会話を聞いていた女性は、値踏みするように再度私の顔を凝視する。

「結婚相手ねえ。攻ほどのいい男が結婚相手と紹介しているのに、どうしてそれを否定するの。自分、何様のつもりなの。」


「いえ、何様と言われても、強いていうなら、コミュ障でボッチの腐女子でしょうか。」


 勢いのあまり自分の正体を暴露してしまった。慌てて取り繕うとしたがもう遅い。


「こんな相手が結婚相手なんて攻も女を見る目がないわね。こんな相手なら、とっとと別れた方がいいのではないかしら。」


「私もそう思います。」







「やめてください。母さん。」


 ふむ、今とんでもない言葉が大鷹さんの口から飛び出した。この女性が大鷹さんの母親ということか。

 確かによく見れば、目元の感じなどが似ているような気がしなくもない気がするが、さすがにそれはないだろう。


「人前で母さんと間違えるなと何度も言っているでしょう。」




「ええと、私はあなたをお義母さんと呼べばいいのでしょうか。」

 もし、大鷹さんが呼んだとおりの関係ならば、彼とこの目の前の女性は家族で、母と息子ということになる。しかし、どう見ても、この女性に大鷹さんのような30歳に近い息子がいるとは思えない。それに、結婚式で大鷹さんのお義母さんに会っているが、こんなに若かった記憶がない。


「なんだか、私と攻の関係を誤解しているみたいだけど、さすがに攻の本当の母なわけがないでしょう。意外と天然さんなのかしら。」


 漫画やアニメなどの二次元では、童顔で年齢より若く見られるというのはよく聞く話だが、実際にそれを見ると、驚きと困惑の両方の感情が湧いてくる。しかし、大鷹さんは確かにこの女性を「母さん」と呼んでいた。


「まあ、間違えられることはよくあることだから、いまさら気にすることもないけど、それにしても、私の顔に見覚えがないなんて、あなたってとんだ物忘れさんだこと。」


「いえ、私は人の顔を覚えるのはどちらかというと得意な方ですが……。」

 自分でいうのもなんだが、割と人の顔を覚えるのは得意なのだ。理由は簡単。私がコミュ障ボッチで、常に人の観察をしていたからだ。他人の顔色を読み、なるべく穏便に話を進めようとすると、どうしても人の顔、もっと言うと顔色をうかがうしかない。そうなると、おのずと人の顔も覚えやすくなるというものだ。

 人の顔を覚えると、その人の性格も顔とセットで入ってくるので、これは私なりの処世術の一つである。

 ということで、一度見た人の顔は早々忘れるはずがないのだが。それに大鷹さんの母親というならば、私たちの結婚式にも出席していて、会っているはずである。確かに本人の言う通り、大鷹さんの実の母親とは似ているが、どこか違っていた。






「あっ。」

 目の前の女性と、私の記憶の中の大鷹さんの母親の決定的な違いを思い出す。身長だ。大鷹さんの母親は背が高かった。170センチはあっただろう。スラリとした体つきでモデルのように姿勢がよく、美人だった。目の前の女性はそれとは反対に身長が低めで、可愛らしい印象である。

「ううん。」

 大鷹さんの母親との違いは判明したが、どうしてもこの女性が誰かがわからない。必死に思い出そうと頭を抱える。こんなに個性的な人だったら、すぐに覚えられそうであり、かつ記憶に残るはずだ。



 考えていたら、声が自然と出ていたらしい。くすっと笑われてしまった。くすっと笑っていたかと思ったら、私の悩む姿は相当面白かったようで、ツボに入ったようだ。笑い声は徐々に大きくなっていき、ついには大声で笑いだしてしまった。







「アハハハハハ。面白い子ねえ。まさか、こんな面白い子と攻が結婚していたとは思わなかったわ。私の愚息もこのくらい面白い相手が見つかるといいのだけど。」


「やっぱり僕はあなたが苦手です。背格好も性格も違うのに、なんだかすごく母に似ているから、たまに間違えてしまうから会いたくなかったんです。」


 話がややこしくなってきた。いったい、この女性は誰なのか。


「まったく、千沙さんも攻君も相変わらずだねえ。紗々さんが混乱しているようだから、しっかり僕が説明しようかな。」


 今まで会話に参加してこなかった男性が会話に参加してきた。説明してくれるというなら、聞くしかないだろう。


「ぜひお願いします。」


 この男性の存在も謎に満ちているが、まずは大鷹さんとこの女性の関係を知ることが先決だ。

 私はこの男性の話を聞くことにした。
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