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番外編【浮気系漫画の展開は許せません!】5七夕の願い事(大鷹視点)
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「大鷹君、ちょっといいかな」
今朝の紗々さんとのやり取りを思い出してほっこりしていたら、上司に声をかけられた。もしかしたら、顔がにやけていたかもしれない。手で頬を抑えるが鏡を見ないと自分の表情はわからない。上司に連れられてやってきたのは少人数で会議を行う部屋だった。
「新しく派遣できた彼女の件なんだけど」
部屋に入るなり、深刻そうな顔で用件を話し出した上司に、せっかく薄れかけていた悪夢が頭に浮かび上がってくる。そうだ、彼女のせいでひどい夢を見たのだ。
「そういえば、今日は彼女を見かけませんね。お休みですか?」
休みなら休みで顔を合わせずに済むのでありがたい。夢に出てきたことに文句を言ってしまいそうだった。
「いや、休みというか昨日付で辞めてもらった」
「辞めた?」
上司の唐突な言葉に驚きを隠せない。まさか、7月からオレの会社で働き始めたのに、1週間で辞めてしまったとは。いや、辞めさせたという方が正しいだろうか。いったい、どんな理由で契約を切ったのか。
「大鷹君にも迷惑をかけていたと思うが、他にもうちの既婚の男性社員にも手を出そうとしていたみたいでね。苦情が多かったんだよ。幸いにして、実害には及ばなかったけど、今後のことを考えると、早いうちの方が良いと思ってね」
なるほど、オレ以外にも目を付けていたのか。うちの会社の既婚男性すべてを知るわけではないが、愛妻家が多かったのだろう。それにしても、そんなことを言うためにわざわざ会議室まで呼び出すのはなぜなのか。
「大鷹君が一番迷惑そうにしていたからね。とりあえず個別に話しておこうと思ったんだ」
「はあ」
上司はなんだか疲れた顔をしていた。派遣社員を雇うのも結構なリスクを伴うらしい。正社員として雇わない分、コストが安いのかもしれないが、その反面でどんな人間が来るのかわからない。オレは人事課ではないから採用時に立ち会うことは無いが、大変なのだろう。
「次はまともな倫理観をもった人が来てくれるといいですね」
「まったくだ。こんなことは頼みたくないが、今日は七夕だし、短冊にでも書いてみようかな」
上司の言葉に苦笑する。今日は七夕であり、今朝、紗々さんも口にしていたことを思い出す。
「今日は七夕でしたね。オレも短冊に書く願い事を考えようと思います」
当日に書くのは遅い気がするが、とりあえず帰宅したら、紗々さんと一緒に短冊を書くとしよう。
仕事は順調に終わり、オレは定時に帰宅することが出来た。
「ただいま」
「お、おかえりなさい」
帰宅すると、すでに紗々さんが家に居た。玄関を抜けてリビングに入ると、腕に大きめの段ボールを抱えている姿が見えた。ネットで何か注文していたようだ。紗々さんは何やら慌てた様子で自分の部屋に入ってしまう。ガチャリとドアを閉める音がして、オレはリビングに一人残される。
「漫画でも買ったのかな」
すでに紗々さんの性癖は知っているが、それでもオレに見られるのは恥ずかしいのだろう。特に気にすることなく、オレは部屋着に着替えるために自分の部屋に向かった。
「トントン」
着替えを終えてスマホをいじっていると、部屋をノックする音がした。
「どうぞ」
「お、大鷹さん、こんなのはどう、でしょう」
紗々さんがノックしてオレの部屋に入ってくるのは珍しい。いったい何事かと思っていたら、予想外のことが起きていた。紗々さんは部屋で着替えて来たのか、オレが見たことのない服を着ていた。
「どう、とはいったい」
「この前、大鷹さん、スカートについて話していたでしょう?その時は否定していましたけど、本当はスカートフェチなのかと思いまして」
せっかくだし、これを機にスカートでも買おうかと。
ぼそりとつぶやかれた言葉は、オレにとってかなりの破壊力があった。
(オレのために普段履かないスカートを買って着てくれた)
スカートは紺色の花柄の入ったひざ下まであるもので、上はそれに合わせて白いブラウスを着ていた。普段のTシャツにジーパンという格好が多い紗々さんを見慣れているオレには、とても眩しく見えた。
「お、大鷹さんが喜ぶのなら、た、たまには着てもいいかなって、それに」
「それに?」
急に紗々さんの瞳が輝きだした。こういう時、オレは紗々さんの考えを読めた試しがない。
「今って、スカートでも快適に過ごせるんですね。ペチコートの存在を始めて知りました。これを履けば、夏でも太ももとかがべたべたせずに快適に過ごせそうです!」
紗々さんは常識はずれな行動をすることがある。今回も大いにオレを驚かせた。
「ほら、見てください!」
普通、夫だとしても異性の前でスカートをまくり上げるだろうか。いや、ほとんどの女性はしないだろう。まあ、例外は目の前に存在した。
紗々さんはスカート下に履いているペチコートの存在をオレに自慢したいらしい。自慢気に見せてくれたが、オレはスカートを履いたことがないので、いまいちペチコートの良さがわからない。この状況はラッキースケベに入るだろうか。
「全然、色気がないのは紗々さんらしいですね」
まったく、いつ何時も紗々さんはオレを楽しませてくれる。オレの言葉に紗々さんは頬を膨らませていたが、それすら魅力的に見えた。
「そういえば、七夕の願いことは決めました?」
スカートを下ろした紗々さんがじいとこちらを見て尋ねてくる。願いことなどとうに決まっている。
「紗々さんとずっと一緒に居られますように」
「スカート姿が見られますように、ではないんですね」
せっかく大鷹さんの願いを叶えようと思ったのに。
そう言いながらも、紗々さんはとてもうれしそうに笑っていた。オレの妻もオレと同じことを願ってくれていたら。
「私は大鷹さんが幸せになりますようにって願いました。夕食前に一緒に短冊に願いごとを書きましょう!」
紗々さんの手にはピンクと黄色の短冊があった。
(オレの願いことが否定されなかった)
とりあえず、それだけでも紗々さんがオレの愛を受け入れ始めた証拠だ。最近では紗々さんが離婚という言葉を口にすることはほとんどない。いずれはオレと同じことを願うようになって欲しい。
そのためにも、オレはオレより良い男に紗々さんを取られないように頑張らなくてはいけない。今朝の悪夢みたいな状況になるのだけは許せない。
外はあいにくの雨だったが、今年の七夕はとても思い出に残るものとなった。
今朝の紗々さんとのやり取りを思い出してほっこりしていたら、上司に声をかけられた。もしかしたら、顔がにやけていたかもしれない。手で頬を抑えるが鏡を見ないと自分の表情はわからない。上司に連れられてやってきたのは少人数で会議を行う部屋だった。
「新しく派遣できた彼女の件なんだけど」
部屋に入るなり、深刻そうな顔で用件を話し出した上司に、せっかく薄れかけていた悪夢が頭に浮かび上がってくる。そうだ、彼女のせいでひどい夢を見たのだ。
「そういえば、今日は彼女を見かけませんね。お休みですか?」
休みなら休みで顔を合わせずに済むのでありがたい。夢に出てきたことに文句を言ってしまいそうだった。
「いや、休みというか昨日付で辞めてもらった」
「辞めた?」
上司の唐突な言葉に驚きを隠せない。まさか、7月からオレの会社で働き始めたのに、1週間で辞めてしまったとは。いや、辞めさせたという方が正しいだろうか。いったい、どんな理由で契約を切ったのか。
「大鷹君にも迷惑をかけていたと思うが、他にもうちの既婚の男性社員にも手を出そうとしていたみたいでね。苦情が多かったんだよ。幸いにして、実害には及ばなかったけど、今後のことを考えると、早いうちの方が良いと思ってね」
なるほど、オレ以外にも目を付けていたのか。うちの会社の既婚男性すべてを知るわけではないが、愛妻家が多かったのだろう。それにしても、そんなことを言うためにわざわざ会議室まで呼び出すのはなぜなのか。
「大鷹君が一番迷惑そうにしていたからね。とりあえず個別に話しておこうと思ったんだ」
「はあ」
上司はなんだか疲れた顔をしていた。派遣社員を雇うのも結構なリスクを伴うらしい。正社員として雇わない分、コストが安いのかもしれないが、その反面でどんな人間が来るのかわからない。オレは人事課ではないから採用時に立ち会うことは無いが、大変なのだろう。
「次はまともな倫理観をもった人が来てくれるといいですね」
「まったくだ。こんなことは頼みたくないが、今日は七夕だし、短冊にでも書いてみようかな」
上司の言葉に苦笑する。今日は七夕であり、今朝、紗々さんも口にしていたことを思い出す。
「今日は七夕でしたね。オレも短冊に書く願い事を考えようと思います」
当日に書くのは遅い気がするが、とりあえず帰宅したら、紗々さんと一緒に短冊を書くとしよう。
仕事は順調に終わり、オレは定時に帰宅することが出来た。
「ただいま」
「お、おかえりなさい」
帰宅すると、すでに紗々さんが家に居た。玄関を抜けてリビングに入ると、腕に大きめの段ボールを抱えている姿が見えた。ネットで何か注文していたようだ。紗々さんは何やら慌てた様子で自分の部屋に入ってしまう。ガチャリとドアを閉める音がして、オレはリビングに一人残される。
「漫画でも買ったのかな」
すでに紗々さんの性癖は知っているが、それでもオレに見られるのは恥ずかしいのだろう。特に気にすることなく、オレは部屋着に着替えるために自分の部屋に向かった。
「トントン」
着替えを終えてスマホをいじっていると、部屋をノックする音がした。
「どうぞ」
「お、大鷹さん、こんなのはどう、でしょう」
紗々さんがノックしてオレの部屋に入ってくるのは珍しい。いったい何事かと思っていたら、予想外のことが起きていた。紗々さんは部屋で着替えて来たのか、オレが見たことのない服を着ていた。
「どう、とはいったい」
「この前、大鷹さん、スカートについて話していたでしょう?その時は否定していましたけど、本当はスカートフェチなのかと思いまして」
せっかくだし、これを機にスカートでも買おうかと。
ぼそりとつぶやかれた言葉は、オレにとってかなりの破壊力があった。
(オレのために普段履かないスカートを買って着てくれた)
スカートは紺色の花柄の入ったひざ下まであるもので、上はそれに合わせて白いブラウスを着ていた。普段のTシャツにジーパンという格好が多い紗々さんを見慣れているオレには、とても眩しく見えた。
「お、大鷹さんが喜ぶのなら、た、たまには着てもいいかなって、それに」
「それに?」
急に紗々さんの瞳が輝きだした。こういう時、オレは紗々さんの考えを読めた試しがない。
「今って、スカートでも快適に過ごせるんですね。ペチコートの存在を始めて知りました。これを履けば、夏でも太ももとかがべたべたせずに快適に過ごせそうです!」
紗々さんは常識はずれな行動をすることがある。今回も大いにオレを驚かせた。
「ほら、見てください!」
普通、夫だとしても異性の前でスカートをまくり上げるだろうか。いや、ほとんどの女性はしないだろう。まあ、例外は目の前に存在した。
紗々さんはスカート下に履いているペチコートの存在をオレに自慢したいらしい。自慢気に見せてくれたが、オレはスカートを履いたことがないので、いまいちペチコートの良さがわからない。この状況はラッキースケベに入るだろうか。
「全然、色気がないのは紗々さんらしいですね」
まったく、いつ何時も紗々さんはオレを楽しませてくれる。オレの言葉に紗々さんは頬を膨らませていたが、それすら魅力的に見えた。
「そういえば、七夕の願いことは決めました?」
スカートを下ろした紗々さんがじいとこちらを見て尋ねてくる。願いことなどとうに決まっている。
「紗々さんとずっと一緒に居られますように」
「スカート姿が見られますように、ではないんですね」
せっかく大鷹さんの願いを叶えようと思ったのに。
そう言いながらも、紗々さんはとてもうれしそうに笑っていた。オレの妻もオレと同じことを願ってくれていたら。
「私は大鷹さんが幸せになりますようにって願いました。夕食前に一緒に短冊に願いごとを書きましょう!」
紗々さんの手にはピンクと黄色の短冊があった。
(オレの願いことが否定されなかった)
とりあえず、それだけでも紗々さんがオレの愛を受け入れ始めた証拠だ。最近では紗々さんが離婚という言葉を口にすることはほとんどない。いずれはオレと同じことを願うようになって欲しい。
そのためにも、オレはオレより良い男に紗々さんを取られないように頑張らなくてはいけない。今朝の悪夢みたいな状況になるのだけは許せない。
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