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番外編【浮気系漫画の展開は許せません!】4最悪のシチュエーション(大鷹視点)
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次の日の昼休み、派遣社員の女性は性懲りもなく、オレの目の前の席に座って昼食を取り始めた。
「昨日は本当にすみません。実は大鷹さんの話を聞いて、他人事じゃないなと思ってしまって、思わず大鷹さんのプライベートに干渉してしまいました」
相変わらず、彼女は小さな弁当箱を持参していた。それにしても、昨日の今日でまったく反省していないことはまるわかりだ。それにしても、「他人事ではない」とは相手の同情を誘いたいという気持ちが丸見えだ。こちらから聞かなくても勝手に話してくるだろう。
今日のランチは唐揚げ定食にした。暑い日でもしっかりと食事をとって夏バテしないようにしなくては。そう思いながら、黙々と食事に集中していたら、とんでもないことに気づいてしまった。
「実は私、彼氏に浮気されているみたいなんです。それで、その相手は私と正反対の女性で、彼氏に問い詰めたらお前はもう、用済みだと言ってきて……」
派遣社員の女性の声が聞こえるが、オレの頭はたった今思いついた仮説で頭がいっぱいだ。
どうしてその可能性に今まで気づかなかったのか。紗々さんだって女性で恋する乙女なのだ。
オレは急いで昼食の唐揚げ定食を食べ終え、派遣社員の女性を無視して席を立つ。慌てて食事を終えたオレのことを戸惑いながらも見守っていた女性だったが、オレの鬼気迫る表情に気圧されて、オレが席を離れても追いかけてくることは無かった。
※※
「大鷹さんが浮気しているなんて、知りませんでした。やっぱり、私との結婚生活は退屈でしたよね?大丈夫です、いつも言っていたでしょう。本来なら、私が大鷹さんの幸せのために大鷹さんにとって最善な相手を見つけなければいけなかった。それが大鷹さん自ら相手を選んだことに私は傷ついてなんかいません」
これは夢だとオレは直ぐに理解した。オレと紗々さんは謎の白い空間に立っていた。辺りに人の気配はなく、その場にはオレと紗々さん二人きりだ。
「オレは浮気なんてしていません。どこの誰からそんな嘘を聞いたんですか?」
「嘘だなんて。大鷹さんの後ろにいる女性に、心当たりはありませんか?」
「攻(おさむ)君。奥さんは私たちを認めてくれているんだよ。恥ずかしがらなくていいよ。私たちの関係はもう、隠す必要なんてない。公にしてよい関係だから」
「なんで……」
二人きりだと思っていた空間に突如、新たな人物が現れた。オレの後ろには真っ白なウェディングドレスを着た派遣社員の女性が立っていた。よく見ると、オレの格好は白いタキシード姿だ。これではまるで。
「結婚おめでとう。末永くお幸せに」
オレの目の前では紗々さんがハンカチ片手に涙を拭いている。紗々さんも紺色のドレスワンピを着用して結婚式の招待客のような服装だ。
「おめでとう、兄貴」
「おめでとう、攻(おさむ)」
「これでようやく孫が期待できるわね」
オレが驚いて固まっている間に周りに続々とオレの親せきが集まってくる。弟の亨(きょう)に千沙さん、オレの母親。いつの間にか、オレたちは謎の白い空間ではなく、結婚式の会場に瞬間移動していた。
「めでたいねえ。大鷹君には申し訳ないが、まさか君を超える男が紗々をもらってくれるとは思わなかった」
「本当に。こんなに運の良い子だとは思いませんでした」
「お母さん、お父さん」
紗々さんの両親も現れた。明らかな異常事態だが、オレの心はまだ冷静だった。これは夢だ。夢ならいずれ覚めて現実に戻るだろう。そう思っていたのに。
「○○さん!」
「あああああああ!」
紗々さんがオレに見せたことのない甘い笑顔を見知らぬ男に向けた瞬間、オレは絶叫していた。
※※
「大丈夫ですか!」
目が覚めると、いつもの見慣れた寝室の天井が視界に入る。とんでもない夢を見てしまった。
(これがもし、本当に起きてしまったら)
オレは正気で居られるだろうか。起きたばかりの寝起きの頭で考えていたら、突然、部屋のドアが開かれた。ドアを開けて入ってくるのはひとりしかいない。
「おはようございます。紗々さん」
オレは基本的に紗々さんの部屋に入るときはノックしているが、紗々さんがオレの部屋に来るときはノックしないことが多い。隠したいことも特にないので気にしたことは無いが、今朝の紗々さんはどうにも様子がおかしい。無言でオレの目の前までやってくると、額にしわを寄せてオレの額に手を当てる。
「いきなり大声がしたので何事かと思いました。何か変な夢でも見ましたか?熱は無いようですが、随分と汗をかいていますね。クーラーは入っているようですけど」
どうやら、夢でも現実でもオレは叫んでいたようだ。紗々さんの部屋にまで響いたということは、相当の音量だったらしい。紗々さんはオレの様子を見に来てくれた。変な夢を見た後に紗々さんのこの行動は心にしみわたる。悪い夢が紗々さんのおかげで薄れていく。
「すいません。紗々さんのいう通り、変な夢を見ていました。でも、紗々さんの顔を見れたので、もう大丈夫です」
「いやいや、私の顔見て元気になるとかないで」
「あるんです。こうやって、紗々さんの顔を毎日見られることがオレの幸せです」
「はあ」
紗々さんのひんやりした手が火照った身体に心地よい。オレは紗々さんが逃げないのをよいことにそっと彼女を抱きしめる。いつもなら、恥ずかしがって離れようとするはずが、オレのただならぬ様子に気づいたのか、紗々さんはそのままオレの腕の中でおとなしくしていた。
(そういえば、今日は金曜日だ)
ちらりとベッドわきに置かれた目覚まし時計を見ると、6時少し前だった。紗々さんもオレも仕事がある。名残惜しいが起きなくてはいけない。
「きょ、今日は七夕ですね。何かお願いことがあれば短冊に書いておくと叶うかも、しれないですよ」
腕の中の紗々さんのささやくような声に我に返る。顔を赤くしているのがこの距離だと丸見えだ。ちょっといたずらしたくなり、紗々さんの頬に軽く口づける。
「ななななな!」
紗々さんはオレの腕の中から抜け出して、頬を抑えて部屋のドアぎりぎりまで離れてしまった。
「心配してくれてありがとうございます。今週もあと一日、お互い仕事を頑張りましょう」
「ゲンキニナッタヨウデヨカッタデス」
それから、オレたちはいつもどおりに朝食をとって、身支度を整えて仕事場に向かった。玄関から外に出ると、どんよりとした曇り空が広がっていたが、オレの心は晴れの日のように明るかった。夢見は悪かったが、紗々さんのおかげで気分が良かった。
「昨日は本当にすみません。実は大鷹さんの話を聞いて、他人事じゃないなと思ってしまって、思わず大鷹さんのプライベートに干渉してしまいました」
相変わらず、彼女は小さな弁当箱を持参していた。それにしても、昨日の今日でまったく反省していないことはまるわかりだ。それにしても、「他人事ではない」とは相手の同情を誘いたいという気持ちが丸見えだ。こちらから聞かなくても勝手に話してくるだろう。
今日のランチは唐揚げ定食にした。暑い日でもしっかりと食事をとって夏バテしないようにしなくては。そう思いながら、黙々と食事に集中していたら、とんでもないことに気づいてしまった。
「実は私、彼氏に浮気されているみたいなんです。それで、その相手は私と正反対の女性で、彼氏に問い詰めたらお前はもう、用済みだと言ってきて……」
派遣社員の女性の声が聞こえるが、オレの頭はたった今思いついた仮説で頭がいっぱいだ。
どうしてその可能性に今まで気づかなかったのか。紗々さんだって女性で恋する乙女なのだ。
オレは急いで昼食の唐揚げ定食を食べ終え、派遣社員の女性を無視して席を立つ。慌てて食事を終えたオレのことを戸惑いながらも見守っていた女性だったが、オレの鬼気迫る表情に気圧されて、オレが席を離れても追いかけてくることは無かった。
※※
「大鷹さんが浮気しているなんて、知りませんでした。やっぱり、私との結婚生活は退屈でしたよね?大丈夫です、いつも言っていたでしょう。本来なら、私が大鷹さんの幸せのために大鷹さんにとって最善な相手を見つけなければいけなかった。それが大鷹さん自ら相手を選んだことに私は傷ついてなんかいません」
これは夢だとオレは直ぐに理解した。オレと紗々さんは謎の白い空間に立っていた。辺りに人の気配はなく、その場にはオレと紗々さん二人きりだ。
「オレは浮気なんてしていません。どこの誰からそんな嘘を聞いたんですか?」
「嘘だなんて。大鷹さんの後ろにいる女性に、心当たりはありませんか?」
「攻(おさむ)君。奥さんは私たちを認めてくれているんだよ。恥ずかしがらなくていいよ。私たちの関係はもう、隠す必要なんてない。公にしてよい関係だから」
「なんで……」
二人きりだと思っていた空間に突如、新たな人物が現れた。オレの後ろには真っ白なウェディングドレスを着た派遣社員の女性が立っていた。よく見ると、オレの格好は白いタキシード姿だ。これではまるで。
「結婚おめでとう。末永くお幸せに」
オレの目の前では紗々さんがハンカチ片手に涙を拭いている。紗々さんも紺色のドレスワンピを着用して結婚式の招待客のような服装だ。
「おめでとう、兄貴」
「おめでとう、攻(おさむ)」
「これでようやく孫が期待できるわね」
オレが驚いて固まっている間に周りに続々とオレの親せきが集まってくる。弟の亨(きょう)に千沙さん、オレの母親。いつの間にか、オレたちは謎の白い空間ではなく、結婚式の会場に瞬間移動していた。
「めでたいねえ。大鷹君には申し訳ないが、まさか君を超える男が紗々をもらってくれるとは思わなかった」
「本当に。こんなに運の良い子だとは思いませんでした」
「お母さん、お父さん」
紗々さんの両親も現れた。明らかな異常事態だが、オレの心はまだ冷静だった。これは夢だ。夢ならいずれ覚めて現実に戻るだろう。そう思っていたのに。
「○○さん!」
「あああああああ!」
紗々さんがオレに見せたことのない甘い笑顔を見知らぬ男に向けた瞬間、オレは絶叫していた。
※※
「大丈夫ですか!」
目が覚めると、いつもの見慣れた寝室の天井が視界に入る。とんでもない夢を見てしまった。
(これがもし、本当に起きてしまったら)
オレは正気で居られるだろうか。起きたばかりの寝起きの頭で考えていたら、突然、部屋のドアが開かれた。ドアを開けて入ってくるのはひとりしかいない。
「おはようございます。紗々さん」
オレは基本的に紗々さんの部屋に入るときはノックしているが、紗々さんがオレの部屋に来るときはノックしないことが多い。隠したいことも特にないので気にしたことは無いが、今朝の紗々さんはどうにも様子がおかしい。無言でオレの目の前までやってくると、額にしわを寄せてオレの額に手を当てる。
「いきなり大声がしたので何事かと思いました。何か変な夢でも見ましたか?熱は無いようですが、随分と汗をかいていますね。クーラーは入っているようですけど」
どうやら、夢でも現実でもオレは叫んでいたようだ。紗々さんの部屋にまで響いたということは、相当の音量だったらしい。紗々さんはオレの様子を見に来てくれた。変な夢を見た後に紗々さんのこの行動は心にしみわたる。悪い夢が紗々さんのおかげで薄れていく。
「すいません。紗々さんのいう通り、変な夢を見ていました。でも、紗々さんの顔を見れたので、もう大丈夫です」
「いやいや、私の顔見て元気になるとかないで」
「あるんです。こうやって、紗々さんの顔を毎日見られることがオレの幸せです」
「はあ」
紗々さんのひんやりした手が火照った身体に心地よい。オレは紗々さんが逃げないのをよいことにそっと彼女を抱きしめる。いつもなら、恥ずかしがって離れようとするはずが、オレのただならぬ様子に気づいたのか、紗々さんはそのままオレの腕の中でおとなしくしていた。
(そういえば、今日は金曜日だ)
ちらりとベッドわきに置かれた目覚まし時計を見ると、6時少し前だった。紗々さんもオレも仕事がある。名残惜しいが起きなくてはいけない。
「きょ、今日は七夕ですね。何かお願いことがあれば短冊に書いておくと叶うかも、しれないですよ」
腕の中の紗々さんのささやくような声に我に返る。顔を赤くしているのがこの距離だと丸見えだ。ちょっといたずらしたくなり、紗々さんの頬に軽く口づける。
「ななななな!」
紗々さんはオレの腕の中から抜け出して、頬を抑えて部屋のドアぎりぎりまで離れてしまった。
「心配してくれてありがとうございます。今週もあと一日、お互い仕事を頑張りましょう」
「ゲンキニナッタヨウデヨカッタデス」
それから、オレたちはいつもどおりに朝食をとって、身支度を整えて仕事場に向かった。玄関から外に出ると、どんよりとした曇り空が広がっていたが、オレの心は晴れの日のように明るかった。夢見は悪かったが、紗々さんのおかげで気分が良かった。
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