10 / 19
九曜/廃墟の封印
しおりを挟む
「まったく……神無月先輩っ! まだですか~!」
九曜は顔をしかめながら、廃墟――元は寮だった建物の中を走り回っていた。
何故なら。
九曜の後ろから、異形のモノが追いかけて着ているからだ。
九曜は【人成らざるモノ】を惹き付けてしまう能力を生まれ付き持っている。
何せ生まれが神社の跡取り息子。
しかも【人成らざるモノ】と多く接する神道系の神社だった。
そのせいか、九曜には本人が望まずとも強い力が付いてしまった。
本人はとてもイヤがっているものの、親戚一同はとても喜んでいた。
それに輪をかけてしまったのが、周囲の反応。
『神社の跡取り息子』としての立場があるせいか、普通なら気味悪がって遠ざかるはずだが、何故かとても尊敬されてしまった。
なので故郷にいるのがイヤになった九曜は、電車で1時間もかかるこの学院を選んだ。
しかし、だ。
この学院には学院なりの面倒事があった。
やっぱり逃れられないのか、とガックリ項垂れたが。
「わ~! 神無月先輩っ! まだなんですか~!」
階段を上へ下へ走り、廊下をどたどたと走る。
コレでも本体を探そうとしているのだが、周囲が邪魔をしてくるので上手くはいっていない。
「九曜っ! ゴメン、お待たせっ!」
数メートル先に神無月の姿を見つけ、スピードをアップした。
「先輩っ!」
九曜は神無月に腕を引っ張られ、一つの部屋に押し込められた。
「遅くなってゴメン! 封印に思ったより時間かかってさ」
「いっいえ……。来てくれただけでも嬉しいですよ」
青白い顔でぜぇぜぇ言っている九曜を見て、神無月は慌てた。
「ホントにゴメン。ちょっと遠かったからさ」
「いえいえ。それより依琉先輩から連絡が来まして、プールの方も終わったみたいですよ」
「さすが依琉ね。去年もあっと言う間に終わらせてたし」
感心とも呆れともつかない表情で、神無月は肩を竦めた。
「依琉先輩は順応力が強いですもんね」
「馴染みやすすぎるのよ。受け入れやすいと言うか……。まあ裏も表も<視>えるから、あんまり物事に深くこだわらないのかもしれないけど」
「それも良し悪しですが……。まずは俺のとこの封印を行いましょうか」
「そうね。後ろからせっつかれているし」
二人とも、青い顔で微笑みあう。
何故なら――二人の後ろには、異形のモノ達が迫って来ているからだ。
「「ぎやぁああああ~!」」
廃墟に二人の声が響き渡った。
二人は部屋を飛び出した。
ちなみに九曜が惹きやすい異形のモノとは、恐ろしい異形のモノではない。
どちらかと言えば単色で、幼稚園児でも描けそうなほど単純な姿・形をしている。
言わば低級――である。
時々中級も混じるが、追いかけて来るのはもっぱら低級である。
「わああ~! 追いかけて来るなぁ!」
「ねっねぇ、九曜! 私、思ったんだけどさっ!」
「何ですか! 神無月先輩!」
「生き物って逃げるものを追いかける習性があるんだって! 逃げなきゃいいんじゃないの?」
「止まったら止まったで、ヤツらの餌食になるだけです! 生気、吸い取られたいんですかっ?」
「それは絶対イヤッ!」
全力で否定するもレンズに触れ、何とか本体を探そうとする。
「とっとりあえず、私の<言霊>で一時動きを止めるから、九曜は耳を塞いで!」
「分かりました!」
角を曲がると二人は足を止めた。
九曜は耳を塞いで、その場にうずくまった。
神無月は息を吸い込み、角を曲がって追いかけて来た異形のモノに向かって叫ぶ。
――動くなっ!――
建物がガタガタっと揺れた。
異形のモノ達は、ぴたっとその動きを止めた。
「今の内に本体を探すわよ!」
「はっはい!」
九曜もレンズを操作し、本体を探し始める。
「廃墟こと、この寮の本体は確か『空間』! 見るけるのが困難だけど、一度見つければ後は封印するだけだから」
「空間……。と言うことは、歪んで見えるのが……」
「ええ! それ自体が本体なの! 九曜、どこか視界が歪んで見える所、無かった?」
九曜は今まで逃げ回っていたコースを思い出した。
そして一ヶ所だけ、通った時に違和感を感じた場所があった。
「ありました! 二階の右端にある部屋のカーテンに隠れた時、何か変な感じがしました!」
「じゃあ今年はそこね! 空間は動けないから、とっとと行くわよ!」
「はい!」
二人は走るスピードを上げ、二階に向かった。
九曜の言った通りの部屋で、本体は見つかった。
ボロボロになったカーテンを神無月が開けると、窓の向こうの景色は歪んでいた。
「九曜!」
「はい!」
九曜はレンズに本体を映し、声を張り上げた。
「吸引!」
歪んでいた景色が更に歪んだ。
そしてそのまま九曜のレンズに吸い込まれはじめた。
「くぅっ!」
「耐えて、九曜!」
「分かってます!」
やがて歪みは九曜のレンズに全て吸い込まれ、部屋は元通りになった。
はじめての封印に、九曜はふらつきながらも一枚のレンズを手に入れた。
九曜は顔をしかめながら、廃墟――元は寮だった建物の中を走り回っていた。
何故なら。
九曜の後ろから、異形のモノが追いかけて着ているからだ。
九曜は【人成らざるモノ】を惹き付けてしまう能力を生まれ付き持っている。
何せ生まれが神社の跡取り息子。
しかも【人成らざるモノ】と多く接する神道系の神社だった。
そのせいか、九曜には本人が望まずとも強い力が付いてしまった。
本人はとてもイヤがっているものの、親戚一同はとても喜んでいた。
それに輪をかけてしまったのが、周囲の反応。
『神社の跡取り息子』としての立場があるせいか、普通なら気味悪がって遠ざかるはずだが、何故かとても尊敬されてしまった。
なので故郷にいるのがイヤになった九曜は、電車で1時間もかかるこの学院を選んだ。
しかし、だ。
この学院には学院なりの面倒事があった。
やっぱり逃れられないのか、とガックリ項垂れたが。
「わ~! 神無月先輩っ! まだなんですか~!」
階段を上へ下へ走り、廊下をどたどたと走る。
コレでも本体を探そうとしているのだが、周囲が邪魔をしてくるので上手くはいっていない。
「九曜っ! ゴメン、お待たせっ!」
数メートル先に神無月の姿を見つけ、スピードをアップした。
「先輩っ!」
九曜は神無月に腕を引っ張られ、一つの部屋に押し込められた。
「遅くなってゴメン! 封印に思ったより時間かかってさ」
「いっいえ……。来てくれただけでも嬉しいですよ」
青白い顔でぜぇぜぇ言っている九曜を見て、神無月は慌てた。
「ホントにゴメン。ちょっと遠かったからさ」
「いえいえ。それより依琉先輩から連絡が来まして、プールの方も終わったみたいですよ」
「さすが依琉ね。去年もあっと言う間に終わらせてたし」
感心とも呆れともつかない表情で、神無月は肩を竦めた。
「依琉先輩は順応力が強いですもんね」
「馴染みやすすぎるのよ。受け入れやすいと言うか……。まあ裏も表も<視>えるから、あんまり物事に深くこだわらないのかもしれないけど」
「それも良し悪しですが……。まずは俺のとこの封印を行いましょうか」
「そうね。後ろからせっつかれているし」
二人とも、青い顔で微笑みあう。
何故なら――二人の後ろには、異形のモノ達が迫って来ているからだ。
「「ぎやぁああああ~!」」
廃墟に二人の声が響き渡った。
二人は部屋を飛び出した。
ちなみに九曜が惹きやすい異形のモノとは、恐ろしい異形のモノではない。
どちらかと言えば単色で、幼稚園児でも描けそうなほど単純な姿・形をしている。
言わば低級――である。
時々中級も混じるが、追いかけて来るのはもっぱら低級である。
「わああ~! 追いかけて来るなぁ!」
「ねっねぇ、九曜! 私、思ったんだけどさっ!」
「何ですか! 神無月先輩!」
「生き物って逃げるものを追いかける習性があるんだって! 逃げなきゃいいんじゃないの?」
「止まったら止まったで、ヤツらの餌食になるだけです! 生気、吸い取られたいんですかっ?」
「それは絶対イヤッ!」
全力で否定するもレンズに触れ、何とか本体を探そうとする。
「とっとりあえず、私の<言霊>で一時動きを止めるから、九曜は耳を塞いで!」
「分かりました!」
角を曲がると二人は足を止めた。
九曜は耳を塞いで、その場にうずくまった。
神無月は息を吸い込み、角を曲がって追いかけて来た異形のモノに向かって叫ぶ。
――動くなっ!――
建物がガタガタっと揺れた。
異形のモノ達は、ぴたっとその動きを止めた。
「今の内に本体を探すわよ!」
「はっはい!」
九曜もレンズを操作し、本体を探し始める。
「廃墟こと、この寮の本体は確か『空間』! 見るけるのが困難だけど、一度見つければ後は封印するだけだから」
「空間……。と言うことは、歪んで見えるのが……」
「ええ! それ自体が本体なの! 九曜、どこか視界が歪んで見える所、無かった?」
九曜は今まで逃げ回っていたコースを思い出した。
そして一ヶ所だけ、通った時に違和感を感じた場所があった。
「ありました! 二階の右端にある部屋のカーテンに隠れた時、何か変な感じがしました!」
「じゃあ今年はそこね! 空間は動けないから、とっとと行くわよ!」
「はい!」
二人は走るスピードを上げ、二階に向かった。
九曜の言った通りの部屋で、本体は見つかった。
ボロボロになったカーテンを神無月が開けると、窓の向こうの景色は歪んでいた。
「九曜!」
「はい!」
九曜はレンズに本体を映し、声を張り上げた。
「吸引!」
歪んでいた景色が更に歪んだ。
そしてそのまま九曜のレンズに吸い込まれはじめた。
「くぅっ!」
「耐えて、九曜!」
「分かってます!」
やがて歪みは九曜のレンズに全て吸い込まれ、部屋は元通りになった。
はじめての封印に、九曜はふらつきながらも一枚のレンズを手に入れた。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
霊和怪異譚 野花と野薔薇
野花マリオ
ホラー
その“語り”が始まったとき、世界に異変が芽吹く。
静かな町、ふとした日常、どこにでもあるはずの風景に咲きはじめる、奇妙な花々――。
『霊和怪異譚 野花と野薔薇』は、不思議な力を持つ語り部・八木楓と鐘技友紀以下彼女達が語る怪異を描く、短編連作形式の怪異譚シリーズ。
一話ごとに異なる舞台、異なる登場人物、異なる恐怖。それでも、語りが始まるたび、必ず“何か”が咲く――。
語られる怪談はただの物語ではない。
それを「聞いた者」に忍び寄る異変、染みわたる不安。
やがて読者自身の身にも、“あの花”が咲くかもしれない。
日常にひっそりと紛れ込む、静かで妖しいホラー。
あなたも一席、語りを聞いてみませんか?
完結いたしました。
タイトル変更しました。
旧 彼女の怪異談は不思議な野花を咲かせる
※この物語はフィクションです。実在する人物、企業、団体、名称などは一切関係ありません。
エブリスタにも公開してますがアルファポリス の方がボリュームあります。
表紙イラストは生成AI
皆さんは呪われました
禰津エソラ
ホラー
あなたは呪いたい相手はいますか?
お勧めの呪いがありますよ。
効果は絶大です。
ぜひ、試してみてください……
その呪いの因果は果てしなく絡みつく。呪いは誰のものになるのか。
最後に残るのは誰だ……
それなりに怖い話。
只野誠
ホラー
これは創作です。
実際に起きた出来事はございません。創作です。事実ではございません。創作です創作です創作です。
本当に、実際に起きた話ではございません。
なので、安心して読むことができます。
オムニバス形式なので、どの章から読んでも問題ありません。
不定期に章を追加していきます。
2026/1/16:『せきゆすとーぶ』の章を追加。2026/1/23の朝4時頃より公開開始予定。
2026/1/15:『しばふ』の章を追加。2026/1/22の朝4時頃より公開開始予定。
2026/1/14:『でんしれんじ』の章を追加。2026/1/21の朝4時頃より公開開始予定。
2026/1/13:『こえ』の章を追加。2026/1/20の朝4時頃より公開開始予定。
2026/1/12:『あけてはいけない』の章を追加。2026/1/19の朝4時頃より公開開始予定。
2026/1/11:『みきさー』の章を追加。2026/1/18の朝4時頃より公開開始予定。
2026/1/10:『つかまれる』の章を追加。2026/1/17の朝8時頃より公開開始予定。
※こちらの作品は、小説家になろう、カクヨム、アルファポリスで同時に掲載しています。
意味が分かると怖い話(解説付き)
彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです
読みながら話に潜む違和感を探してみてください
最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください
実話も混ざっております
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる