キミがいる

hosimure

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彼の存在

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ボクはイジメを受けていた。

高校に入学したての頃は、クラスメート達とも仲が良かった。

だけど夏休みを過ぎた辺りから、様子が少しずつ変わってきた。

何がどうとは言えない。

かすかな違和感。

それが現実となるのに、そう時間はかからなかった。

靴入れが荒らされていたり、また靴自体が隠されていたり。

ロッカーに入れといた物が出されていたり、または体育着が切り刻まれたり…。

やられたことを語ると、一晩はかかりそうなことをされた。

でも犯人は分からなかった。

クラスメート達はボクがイジメられていることを知り、関わることをやめた。

担任が何とかしてくれようとしたが、結局全てがムダだった。

直接ボクに何かあったワケじゃないのが、せめてもの救いかもしれない。

別に悪口を言われたわけでも、暴力をふるわれたわけでもない。

遠巻きにされているだけ。

無視されてもいないし、必要最低限は話をしてくれる。

―だから不思議なんだ。

誰が犯人なんだろう?って。 

ボクは正直言って、地味な人間だ。

自慢できる趣味や特技はないし、容姿だって平凡なものだ。

自ら目立とうとはしないし、平凡な人間だと思っている。

小・中学は、そこそこ平和に過ごしていた。

男女関わらず友達がいたし、孤独を強いられることはまずなかった。

なのに高校に入ってからの、この異変はさすがに気落ちした。

イジメなんて小・中学で卒業しそうなものだが、未だに高校生でもやる人がいるんだと、ちょっと感心してしまったりもした。

いつまでも続く、誰が犯人か全く分からないイジメは、高校3年になった今でも続いていた。

ここまで続くと、ボクも周囲の人間も慣れてきてしまった。

イジメというより、嫌がらせというのかな?

すでに何が起こっても、大して動じない性格になってしまったのだ。

周囲の人達の対応も、すでに事務化しているのが怖い。

だからか、今でも不思議でならない。

犯人はボクをどうしたいのだろう?

学校へ来なければ満足なのか?

それとも精神的に参ればいいのか?

犯人の正体が分からなければ、問うこともできない。

そもそもボクをイジメて、何かおもしろいのだろうか? 

「はあ…」

「何だよ? タメ息なんてついちゃってさ」

「あっああ、キミか」

昼休み、誰もいない校庭の隅で食事をしていると、彼が来た。

ニッコリ微笑む彼とは、幼馴染だった。

幼稚園の頃に知り合って、小学校は同じ所へ通えた。

けれど彼のご両親の仕事の関係で、彼は引っ越してしまった。

だから中学は別だった。

しかし交流は続いていて、高校は同じ所へ行こうと約束をして、それは叶った。

高校1年の時は別のクラス、2年は同じクラス、そして3年の今はまた別のクラスになってしまった。

だけど相変わらず、ボクのことを気にかけてくれる。

「ヒドイ顔で食事をしてても、美味しく感じないだろう?」

「そんなにヒドイ顔してた?」

「ああ、ゾンビも真っ青な顔」

…どういう顔だよ?

「何だ何だ、進路のことか?」

「まあね。やっぱりボク、キミと同じ大学には行けそうにないと思うな」

「んなこと言うなよ。勉強、手伝ってやるから、同じ大学行こうぜ」

そう言いつつ、彼はボクの隣に座った。

「ボクも同じ所に行きたいけど…ボクの成績じゃあね」

彼は高校入学時から、トップをキープしている。 
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