完結|ひそかに片想いしていた公爵がテンセイとやらで突然甘くなった上、私が12回死んでいる隠しきゃらとは初耳ですが?

七角@書籍化進行中!

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幕間Ⅳ

八回目

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「なんで悪役でもないのに死ぬエンドばっかりなんだ……!」

 僕は仕事を押し付けようと寄ってきた上司に一言も発させず、庁舎のトイレの個室にこもった。

(ユーリィが生きられるなら、僕とじゃなくてもいいと思ったけど……失敗だった)

 淡い恋を諦めた七回目。僕はユーリィの政略結婚をまとめた。国のためだと言えば、ユーリィは従順に聞き入れた。

 新天地へ送り出す際には一瞬恨めしげな視線を投げられたものの、新婚生活を送るうちに令嬢との愛情も芽生えるだろう。他人思いの優しい子だし。

 僕は僕で、ユーリィのいない人生は抜け殻も同然だけど、万一僕の命と引き換えに彼を守る事態になったときのため、処刑を回避すべく動く。なのに。

『ユーリィ殿下は、ヴォルクを介した風土病で亡くなられたと……』
『嘘でしょ!? まだ結婚して半年ですけど!?』

 執事の肩を掴んで揺さぶる。でも執事は僕の剣幕に怯えるばかり。
 ユーリィが遠くの地で苦しんでいるのも知らず、看取ってあげることさえできなかった。
 自分に腹が立ち、半狂乱でニコに襲い掛かって、速攻処刑された。

「……ゲームの裏設定とかないか、調べてみよう」

 ユーリィの優しい笑顔を思い浮かべ、何とか気持ちを切り替える。
 シナリオは結構なボリュームで、日本に巻き戻ってから異世界に転生するまでの数時間ではとても読み切れない。SNSで感想もチェックしていく。

「『※ネタバレ』ってついてる感想、ちょいちょいある」

 そのうちのひとつが、割と詳しく展開を紹介していた。食い入るようにスクロールする。

「魔力の封印解く具体的な方法、まじか。まあBLゲームだしな。……って、ええええ、ユーリィが!?」

 あやうくスマホを便器に落とすところだった。
 なぜなら――物語終盤、闇堕ちしたユーリィが隣国のステヴァンと通じ、フセスラウに攻め込むとか書かれている。

「あの優しい子がそんなわけ……、境遇を悲観しちゃってステヴァンにつけ込まれるのか。コンスタンティネと作画が似てるからって、ひどいな」

 「再来の王子の戴冠」は、実は王子であるニコが、実質的な王にならんと企む悪役エドゥアルドを退け、王太子と結ばれる話、に留まらない。

 メインカプ以外を掘り下げるサブストーリーも含めてすべて読むと、トゥルーエンドが解放される。
 ニコは王太子と力を合わせ、チートとも言える圧倒的な魔力の質量で以って、もう一人の悪役ステヴァンを倒す。国に真の平和をもたらし、戴冠するまでが描かれるのだ。

(もう一人の王子であるユーリィは、最後のキーになる隠しキャラだったんだ)

 七回失敗してようやく辿り着いた設定。主人公のトゥルーエンドまでに死ぬ強制力が掛かるのも頷ける。

 スマホが鳴る。さぼりに激怒した上司からの着信だ。そろそろパシられて、コンビニに急いで、車に跳ね飛ばされる時間だ。

「次は魔法でどうにかしよう」

 青白いヘッドライトに包まれ、異世界に転生する。

 早速、エドゥアルド公爵の悪魔的な美貌を駆使し、パルラディ王族の女性と一夜を共にする。


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