不細工な男は無理と姉に婚約を押し付けられましたが、私は喜んでその話をお受けします。

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不細工な男は無理と姉に婚約を押し付けられましたが、私は喜んでその話をお受けします。

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「私、不細工な男は無理なの。だから妹のあなたが、代わりに婚約なさい。」

 姉は私に、相手の身上書を投げてよこした。

「あなたはお世辞せじにも良い顔立ちとは言えないから、その男にお似合いよ。」

 美人の姉は、いつもそう言って私を見下している。
 
 私はそんな姉に、心底うんざりしていた。

 私は床に落ちた身上書を拾い上げ、そこに書かれた相手の名を見た。

 …この方は!

「その男、この領地一不細工で有名な男よね。この美人の私と婚約したいなど、図々しいにも程があるわ!」

「…お姉様、ならば言われた通り、私はこの方と婚約します。ただし、後から文句は言わないで下さいね。」

「はぁ?そんなの言う訳ないでしょう…約束してあげるわ!」

※※※

 何を馬鹿な事を言うのやら。
 私は、あきれ妹を見た。

 そんな不細工、くれてやる。
 
 私はね、その方の兄と婚約したいのよ。

 兄の方は、この地一の美形と噂の男よ?
 美人な私の相手には、ピッタリだと思うのよね!

 私は、早速お父様に兄の方と婚約したいと申し出た。
 でもお父様は、どうしようか考えている様子で、返事は保留ほりゅうとなってしまった。

 早くしないと、彼が他の女に取られちゃう!

 お父様が当てにならない以上…私自ら動いた方が早いわ─。

 次のお休みに彼の家まで会いに行こう…。
 彼とはパーティーで何度か会ってるんだし、適当な理由を付けて─。

 そして当日、私はめかし込んで彼の家を訪ねた。

 居たわ…庭で、誰かと話してる。
 あの女は、誰─?

 目をらしよく見れば、そこに居たのは妹だった。

 あ、あの子、何でここに…そして、何故なぜ彼とあんなに楽しそうに話をしてるの─!

 私は大声を上げ、妹の名を呼んだ。

※※※

「あなた、何やってるの!?」

「何って…彼とは婚約者になったので、お話してるだけですが?」

「馬鹿おっしゃい!あなたの婚約相手は、弟の方でしょう?身上書を見たじゃない!」

 すると、私の元に婚約者である彼が近付きこう言った。

「一度彼女が弟の相手になったんだが、弟が君の事を諦めたくないと駄々をこねてね。君さえ手に入れば他には何も要らない、そうまで言うんだ。」

「だから私は、彼から身を引きました。まぁ、そうなるだろうとは思ってましたから構いませんが。」

「そんな彼女に、俺はすぐさま婚約を申し込んだんだ。俺は、学園時代から彼女の事を好きだったから。」

 その言葉に、姉はショックを受け固まってしまって居る。

「お姉様、あなたはやはり、弟君と婚約しなければならないみたい。というのも、あなたが豪遊し散在して作った借金を、弟君が返して下さったから。あなたは彼に借りがあるの。借りたものは、その身をもってお返しせねばね。」

「そ、そんな…!」

「俺としてもそうして欲しいな。あいつは弟と言っても、全く血が繋がっていないんだ。元はこの家の前に捨てられていた子で…父の恩情でここまでこの家で育ってきたけど…俺の容姿をねたみ、くだらない嫌がらせを繰り返し…。だから、君さえ手に入れば何も要らない…そう言ってくれて安心している。弟は君との婚約を持って、この家とは縁を切り…そして君を連れ、この地を出て行く事に決まった。」

「私…あなたと離れたくは─」

「俺は君の様に金にだらしなくて、妹を見下す性格の悪い女は嫌いだ。だがそんな君だから、弟とはお似合いだと思うぞ?」

 それを聞いた姉は号泣…その声を聞きつけた弟が家から飛び出して来て姉を抱きしめると、姉は更に大粒の涙を流した。

 そして弟は、涙を流す姉の手を取り、嫌がる姉を無視しそのまま家を出て行った─。

※※※

 お父様があなたの頼みを聞かなかったのは、あなたの借金とあなたにうんざりしてたから。
 
 お父様はあなたの頼みより、借金を肩代わりすると言う弟君の申し出を取った。
 そして彼はあなたより私を取った、私も…こうなる事を計算した上で行動し、その結果予定通り彼を─。
 あなたは例え私に弟君を押し付けても、結局は彼と結ばれる運命にあったという事よ。

 弟君の束縛はそれはそれは激しい物で…半ば監禁状態の姉は逃げたくても逃げられず、毎日好きでもない彼に求められ、地獄の様な日々を送っているそうだ。

 せめて借金さえなかったらこんな事には…そう悔やみ、そして私に騙されたと愚痴ぐちこぼしているらしいが…後で文句は言わない、そうご自分で約束なさったでしょう?
 だから、今更何を言っても無駄なのよ─。
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