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一方的に婚約破棄され、呪われた弟君に嫁げと言われましたが…私は今、とても幸せです!
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私は、婚約者から一方的に婚約破棄され…その上、こんな事まで言われてしまった。
「お前は…森の奥の別荘に居る、弟の元に嫁いでもらう。」
「!?」
「お前も知っての通り、弟は呪いで魔獣に変えられた。そんな姿では、誰も花嫁になろうとする女が居なくてな…。お前は身寄りもないし…俺に捨てられ、もう後が無いだろう?」
「良かったわね、これで路頭に迷わずに済んで。」
元婚約者と幼馴染は、そう言って笑っていた─。
※※※
噂では…弟君は、大きな狼のような姿になってしまわれたとか─。
鋭い爪と牙を持ち、森に近づく者を一呑みにするという話まである。
そんな彼を恐れ、今ではその森に近づく者はほとんど居ない。
ましてや若い娘が、一人でここに立ち入るなんて─。
恐る恐る森に入ると、すぐに一本の道が現れた。
私は、その道をひたすら歩き続け…やがて、目の前に一軒の屋敷が現れた。
ここに、弟君が一人で住んで居るの─?
私は、その屋敷のドアの前に立ち…一呼吸置いて、扉をノックした。
すると、すぐに扉が開き…そこには、一人のとても美しい青年が立って居た。
「よく来てくれたね。俺が…皆から、魔獣と言われる者だよ。」
「え、えぇ…!?」
私が驚くのを見て、彼はにニコリと笑いこう言った。
「実は、俺には魔力があって…獣の姿にもなれるし、こうして人にもなれる。こちらの方が、君が喜んでくれると思ったんだが…どうだろう?」
「と…とても、素敵だと思います。」
「何やら、恐ろし気な噂が独り歩きしているが…せっかく君が、俺の花嫁にと訪ねてくれたんだ。君の事は、うんと大事にして幸せにするよ─。」
それから半年が過ぎ…私と彼は、仲良く暮らして居た。
だが…私には、気になる事があった。
「どうしてあなたは、ここに住んでるのです?あなたの兄は、あなたの事を呪われたなどと言ってましたし…。」
「あぁ…あの人には、そう思われていた方が都合が良いんだ。あの人は、金遣いが荒くて…ちょっと困った人だから。俺がここに住んで居るのは…今は亡き父に、ある物の管理を頼まれたからだよ─。」
そして私は、彼に連れられ、森の奥にある洞窟へと入って行った。
「こ、これは─!?」
何と…そこには金貨や宝石が入った宝箱が、山ほど積まれていた。
「これは、我が家の財産の全てで…昔から、この森のこの洞窟に隠してあるんだ。そして当主となる者が、ずっと守って来たんだよ。でも、兄は魔力もないし…前も言ったように、金遣いが荒くてね。こんな宝があると分かったら、すぐ散財してしまうだろう。それを避ける為…例外ではあるけど、弟である俺が管理する事になったんだ。それで、兄の前でわざと恐ろしい獣に変化したら、すぐに俺をあの家から追い出してくれて…おかげで、宝が守りやすくなったよ。」
確かに…弟君の方がしっかりしているし…あの人に任せるよりはね─。
それに、魔力で獣に変化できるなら、いざという時にこの宝を守れるわ。
でも…そんな時が来ないで欲しい。
私は、このまま彼と穏やかに過ごして居たいもの─。
ところが…私の期待は、見事に打ち砕かれてしまった─。
※※※
「…そんなお宝、本当にあるの?」
「この別荘の周辺に、代々伝わる宝箱があるはずなんだ─。」
それは…宝の在処を嗅ぎ付けた、元婚約者と幼馴染だった。
きっと遊ぶ金欲しさに、ここに探りに来たのだろう─。
「…あなた達に渡す宝など、ありはしませんよ─?」
「あなた…まだ食われてなかったの!?」
「当たり前だ。私は彼女を愛している…そんな相手を食べるはずがないだろう。」
「ま、魔獣よ…魔獣が出たわ!早く宝を見つけないと、殺されちゃう!」
「お、おい…兄である俺に、宝をよこせ!その女をくれてやったんだ…宝と引き換えで良いだろう!?」
獣に変化した弟君に怯えつつも、二人は宝を求めた。
「何を勝手な事を…。あなたは彼女と結ばれる為に、邪魔になった私を彼に押し付けただけじゃない!まぁ…今では、そうしてくれて良かったと思ってますけどね。」
「兄上…あなたの様な欲深い人に、宝は渡せません。ここに忍び込んだが最期…無事では済まない!」
弟君はそう叫ぶと…獣の姿で二人に襲い掛かった。
「嫌、来ないで!」
「た、助けてくれ─!」
すると二人は慌てて屋敷を飛びだし、一目散に逃げて行った。
「…君に、恐ろしい姿を見せてしまったね。」
「いいえ…あなたは、立派に務めを果たしただけです─。それに、ちっとも恐ろしくなんか…銀の毛がキラキラ光って、とても綺麗ですよ。」
そう言って、私は彼の毛並みを撫でた。
「あの二人…今日は引いてくれましたが、またやって来たらどうしましょう。私とあなたの、幸せな日々が壊されてしまうのは耐えられないわ。」
暗い顔をする私に…彼は人の姿に戻ると、私をそっと抱き締めこう言った。
「そんな不安そうな顔をしないでくれ。あの二人は…もうこの森を出る事は出来ないから─。」
「え?」
「あの二人が出て行く時、幻惑魔法をかけたから…今頃は道なき道を進み、迷っている所だろうね。この森は深く、しかも本物の狼も居るから…無事では済まないと言ったのは、こういう事だよ。」
そして彼の言った通り…夜が明けても、あの二人が家に戻る事は無く…結局あの家は正式に弟君に任される事になり、私達は別荘から元の屋敷へと戻る事に─。
そして今では、もう誰もあの二人を探さなくなり…やがて、その存在は完全に忘れ去られたのだった。
こうして私は、弟君との仲を誰にも邪魔される事無く…私達は力を合わせ事業を成功させ、あの宝に頼らずとも、豊かに幸せに暮らして居るのだった─。
「お前は…森の奥の別荘に居る、弟の元に嫁いでもらう。」
「!?」
「お前も知っての通り、弟は呪いで魔獣に変えられた。そんな姿では、誰も花嫁になろうとする女が居なくてな…。お前は身寄りもないし…俺に捨てられ、もう後が無いだろう?」
「良かったわね、これで路頭に迷わずに済んで。」
元婚約者と幼馴染は、そう言って笑っていた─。
※※※
噂では…弟君は、大きな狼のような姿になってしまわれたとか─。
鋭い爪と牙を持ち、森に近づく者を一呑みにするという話まである。
そんな彼を恐れ、今ではその森に近づく者はほとんど居ない。
ましてや若い娘が、一人でここに立ち入るなんて─。
恐る恐る森に入ると、すぐに一本の道が現れた。
私は、その道をひたすら歩き続け…やがて、目の前に一軒の屋敷が現れた。
ここに、弟君が一人で住んで居るの─?
私は、その屋敷のドアの前に立ち…一呼吸置いて、扉をノックした。
すると、すぐに扉が開き…そこには、一人のとても美しい青年が立って居た。
「よく来てくれたね。俺が…皆から、魔獣と言われる者だよ。」
「え、えぇ…!?」
私が驚くのを見て、彼はにニコリと笑いこう言った。
「実は、俺には魔力があって…獣の姿にもなれるし、こうして人にもなれる。こちらの方が、君が喜んでくれると思ったんだが…どうだろう?」
「と…とても、素敵だと思います。」
「何やら、恐ろし気な噂が独り歩きしているが…せっかく君が、俺の花嫁にと訪ねてくれたんだ。君の事は、うんと大事にして幸せにするよ─。」
それから半年が過ぎ…私と彼は、仲良く暮らして居た。
だが…私には、気になる事があった。
「どうしてあなたは、ここに住んでるのです?あなたの兄は、あなたの事を呪われたなどと言ってましたし…。」
「あぁ…あの人には、そう思われていた方が都合が良いんだ。あの人は、金遣いが荒くて…ちょっと困った人だから。俺がここに住んで居るのは…今は亡き父に、ある物の管理を頼まれたからだよ─。」
そして私は、彼に連れられ、森の奥にある洞窟へと入って行った。
「こ、これは─!?」
何と…そこには金貨や宝石が入った宝箱が、山ほど積まれていた。
「これは、我が家の財産の全てで…昔から、この森のこの洞窟に隠してあるんだ。そして当主となる者が、ずっと守って来たんだよ。でも、兄は魔力もないし…前も言ったように、金遣いが荒くてね。こんな宝があると分かったら、すぐ散財してしまうだろう。それを避ける為…例外ではあるけど、弟である俺が管理する事になったんだ。それで、兄の前でわざと恐ろしい獣に変化したら、すぐに俺をあの家から追い出してくれて…おかげで、宝が守りやすくなったよ。」
確かに…弟君の方がしっかりしているし…あの人に任せるよりはね─。
それに、魔力で獣に変化できるなら、いざという時にこの宝を守れるわ。
でも…そんな時が来ないで欲しい。
私は、このまま彼と穏やかに過ごして居たいもの─。
ところが…私の期待は、見事に打ち砕かれてしまった─。
※※※
「…そんなお宝、本当にあるの?」
「この別荘の周辺に、代々伝わる宝箱があるはずなんだ─。」
それは…宝の在処を嗅ぎ付けた、元婚約者と幼馴染だった。
きっと遊ぶ金欲しさに、ここに探りに来たのだろう─。
「…あなた達に渡す宝など、ありはしませんよ─?」
「あなた…まだ食われてなかったの!?」
「当たり前だ。私は彼女を愛している…そんな相手を食べるはずがないだろう。」
「ま、魔獣よ…魔獣が出たわ!早く宝を見つけないと、殺されちゃう!」
「お、おい…兄である俺に、宝をよこせ!その女をくれてやったんだ…宝と引き換えで良いだろう!?」
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「何を勝手な事を…。あなたは彼女と結ばれる為に、邪魔になった私を彼に押し付けただけじゃない!まぁ…今では、そうしてくれて良かったと思ってますけどね。」
「兄上…あなたの様な欲深い人に、宝は渡せません。ここに忍び込んだが最期…無事では済まない!」
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「嫌、来ないで!」
「た、助けてくれ─!」
すると二人は慌てて屋敷を飛びだし、一目散に逃げて行った。
「…君に、恐ろしい姿を見せてしまったね。」
「いいえ…あなたは、立派に務めを果たしただけです─。それに、ちっとも恐ろしくなんか…銀の毛がキラキラ光って、とても綺麗ですよ。」
そう言って、私は彼の毛並みを撫でた。
「あの二人…今日は引いてくれましたが、またやって来たらどうしましょう。私とあなたの、幸せな日々が壊されてしまうのは耐えられないわ。」
暗い顔をする私に…彼は人の姿に戻ると、私をそっと抱き締めこう言った。
「そんな不安そうな顔をしないでくれ。あの二人は…もうこの森を出る事は出来ないから─。」
「え?」
「あの二人が出て行く時、幻惑魔法をかけたから…今頃は道なき道を進み、迷っている所だろうね。この森は深く、しかも本物の狼も居るから…無事では済まないと言ったのは、こういう事だよ。」
そして彼の言った通り…夜が明けても、あの二人が家に戻る事は無く…結局あの家は正式に弟君に任される事になり、私達は別荘から元の屋敷へと戻る事に─。
そして今では、もう誰もあの二人を探さなくなり…やがて、その存在は完全に忘れ去られたのだった。
こうして私は、弟君との仲を誰にも邪魔される事無く…私達は力を合わせ事業を成功させ、あの宝に頼らずとも、豊かに幸せに暮らして居るのだった─。
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