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ツイノベVer.
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αに溺愛されるβの話
アルファとベータは中学時代からの友人であり、高校でクラスが分かれても交流は続いていた。平凡な見た目で、能力も一般的なβである自分に対し、アルファは「好きだ」と告白してくれた。
ベータは「自分じゃ釣り合わない」と答えたが、アルファの気持ちは変わらなかった。何度も告白を繰り返すアルファに、ベータは少しずつ自分の気持ちに素直になろうとしていた。
◇
ある日、2人はショッピングモールに出かけた。
ベータは帰り道にアルファへ告白しようと心に決めていた。しかし、その機会はある出来事をきっかけに奪われてしまう。
ショッピングモールを歩いていると、大勢の人とすれ違った。ふと、アルファが立ち止まったことにベータは気づく。アルファの周りに異様な空気が漂い、彼がひとりの少年をじっと見つめて固まっている。ベータはすぐに悟った。
『アルファが運命の番を見つけた』と。
これまで何度も考えてきた『アルファの運命の番』。どんな相手でも、運命の番に敵わないことをベータは知っていた。
(運命の番と一緒にいるアルファなんて見たくない……)
そう思った瞬間、アルファがベータに駆け寄ってきたが、ベータはその場から逃げ出してしまった。
家に帰ったベータは、布団に潜り込んで泣き続けた。
◇
数日後、アルファがベータ宅を訪ねてきた。 ベータは数日間、一度も外に出ず、アルファからの着信も無視し続けていた。だが、アルファは「ベータが出てくるまでここにいる」と言い張る。
泣きはらした顔をアルファに見せるのは嫌だったが、このままじゃ近所迷惑になると思い、ベータはようやく姿を現した。
ベータがドアを開けた瞬間、アルファはベータの顔を見て驚いた顔をしていたが、すぐにベータを強く抱きしめた。そしてベータに不安な思いをさせたことを謝罪する。
「恋人でもないのに謝罪なんておかしいだろ」
「ベータは恋人じゃなくても、こんな顔になるくらい俺のことを想ってくれるの?」
「……うるさい」
アルファはベータの泣き顔にそっと唇を重ね、抱きしめながら「ある喫茶店に来て欲しい」と告げた。
ベータは身支度を整え、アルファに連れられて喫茶店に向かった。
そこには2人の男がいた。ひとりは見覚えのある顔──忘れようもない、アルファの運命の相手であるΩだった。
ベータは思わず身体を固くし、その場から動けなかった。
(なんでアルファの運命の相手がここにいるんだ……)
(やっぱり2人は……)
(でもアルファは俺のこと……)
ベータの頭の中は混乱でぐちゃぐちゃだった。
すると、もうひとりの男が「まだこの男に説明してないのか」と責める口調で言った。“運命の番”が慌ててその男をなだめる。
“運命の番”はとても愛らしい容姿をしていた。
ベータが思わず見とれていると、“運命の番”が口を開いた。
「あの……ベータさん、単刀直入に言います。僕はアルファさんと番になるつもりはありません」
「え…」
ベータは“運命の番”の顔をまじまじと見てしまった。
「僕はαくんという恋人がいて、僕が18歳になったら番になろうって約束してるんです」
「……そう、なんですか」
「だから……ベータさんには誤解して欲しくなくて」
「その方が“αくん”、なんですか?」
ベータが尋ねると、隣の男がうなずいた。
「そうだ。俺がαで、Ωの恋人だ。ほんと何の説明もせずに連れてきたんだな」
「俺が説明するより直接会う方がいいだろう」
アルファはそう言って、ベータをそっと自分のそばに引き寄せた。
「そういう言葉足らずなところが、今回のことを招いたんだろ!」
「俺はベータに順を追ってきちんと説明したかったんだ。そんなことも分からないのか」
「うるせぇ!」
「ちょっとαくん!やめてよ!」
“運命の番”が慌てて仲裁に入る。 α同士が揃うとダメらしい。
「とにかく、僕はアルファさんと番にならない。それをベータさんに伝えたかったんです」
「それは……分かりました」
「僕たちは隣県に住んでいるので、会うこともないと思います」
「あの……Ωさんに聞きたいことがあって」
「なんですか?」
「Ωさん……アルファってどんな匂いがしますか?」
「え!?」
周囲の人間が一斉に吹き出した。
「おい!こいつΩになんてこと聞くんだ?常識がないのか?」
「ベータ、なんでそんなこと……」
「アルファはいい匂いがしますか?」
「ベータ……」
ベータの突拍子もない質問にも“運命の番”は真剣に答えてくれた。
「……そうですね。正直アルファさんはいい匂いがします。抑制剤を飲まないと呑み込まれてしまう感じでしょうか?」
「俺はβなのでアルファのフェロモンが分かりません。運動した後は普通に臭いし……」
「ベータ……!?」
「ベータさん……」
「アルファに相応しいのは、こういうΩさんみたいな人なんでしょうね。今後もこの気持ちはなくならないと思う」
「……」
「だけど、アルファの隣にいるのは俺がいい。この気持ちは誰にも負けない」
「ベータさん!」
「Ωさん、ありがとうございました。Ωさんのおかげで自分の気持ちを整理できた気がします」
アルファと共に二人を見送った後、並んで歩いた。
「ベータ、その……」
「アルファはほんと趣味が悪いと思う。こんな面倒くさいβを選ぶなんてさ」
「好きになったんだから仕方ない。俺、ベータを手放す気はないから」
「俺はβだしアルファを幸せになんて出来ないかもしれない」
「……」
「だけど、そうだったとしても…俺はアルファのそばにいたい」
「俺も……。ベータ、俺の恋人になってくれますか?」
「よろしくお願いします」
2人は恋人として幸せに暮らし始めた。
アルファとベータは中学時代からの友人であり、高校でクラスが分かれても交流は続いていた。平凡な見た目で、能力も一般的なβである自分に対し、アルファは「好きだ」と告白してくれた。
ベータは「自分じゃ釣り合わない」と答えたが、アルファの気持ちは変わらなかった。何度も告白を繰り返すアルファに、ベータは少しずつ自分の気持ちに素直になろうとしていた。
◇
ある日、2人はショッピングモールに出かけた。
ベータは帰り道にアルファへ告白しようと心に決めていた。しかし、その機会はある出来事をきっかけに奪われてしまう。
ショッピングモールを歩いていると、大勢の人とすれ違った。ふと、アルファが立ち止まったことにベータは気づく。アルファの周りに異様な空気が漂い、彼がひとりの少年をじっと見つめて固まっている。ベータはすぐに悟った。
『アルファが運命の番を見つけた』と。
これまで何度も考えてきた『アルファの運命の番』。どんな相手でも、運命の番に敵わないことをベータは知っていた。
(運命の番と一緒にいるアルファなんて見たくない……)
そう思った瞬間、アルファがベータに駆け寄ってきたが、ベータはその場から逃げ出してしまった。
家に帰ったベータは、布団に潜り込んで泣き続けた。
◇
数日後、アルファがベータ宅を訪ねてきた。 ベータは数日間、一度も外に出ず、アルファからの着信も無視し続けていた。だが、アルファは「ベータが出てくるまでここにいる」と言い張る。
泣きはらした顔をアルファに見せるのは嫌だったが、このままじゃ近所迷惑になると思い、ベータはようやく姿を現した。
ベータがドアを開けた瞬間、アルファはベータの顔を見て驚いた顔をしていたが、すぐにベータを強く抱きしめた。そしてベータに不安な思いをさせたことを謝罪する。
「恋人でもないのに謝罪なんておかしいだろ」
「ベータは恋人じゃなくても、こんな顔になるくらい俺のことを想ってくれるの?」
「……うるさい」
アルファはベータの泣き顔にそっと唇を重ね、抱きしめながら「ある喫茶店に来て欲しい」と告げた。
ベータは身支度を整え、アルファに連れられて喫茶店に向かった。
そこには2人の男がいた。ひとりは見覚えのある顔──忘れようもない、アルファの運命の相手であるΩだった。
ベータは思わず身体を固くし、その場から動けなかった。
(なんでアルファの運命の相手がここにいるんだ……)
(やっぱり2人は……)
(でもアルファは俺のこと……)
ベータの頭の中は混乱でぐちゃぐちゃだった。
すると、もうひとりの男が「まだこの男に説明してないのか」と責める口調で言った。“運命の番”が慌ててその男をなだめる。
“運命の番”はとても愛らしい容姿をしていた。
ベータが思わず見とれていると、“運命の番”が口を開いた。
「あの……ベータさん、単刀直入に言います。僕はアルファさんと番になるつもりはありません」
「え…」
ベータは“運命の番”の顔をまじまじと見てしまった。
「僕はαくんという恋人がいて、僕が18歳になったら番になろうって約束してるんです」
「……そう、なんですか」
「だから……ベータさんには誤解して欲しくなくて」
「その方が“αくん”、なんですか?」
ベータが尋ねると、隣の男がうなずいた。
「そうだ。俺がαで、Ωの恋人だ。ほんと何の説明もせずに連れてきたんだな」
「俺が説明するより直接会う方がいいだろう」
アルファはそう言って、ベータをそっと自分のそばに引き寄せた。
「そういう言葉足らずなところが、今回のことを招いたんだろ!」
「俺はベータに順を追ってきちんと説明したかったんだ。そんなことも分からないのか」
「うるせぇ!」
「ちょっとαくん!やめてよ!」
“運命の番”が慌てて仲裁に入る。 α同士が揃うとダメらしい。
「とにかく、僕はアルファさんと番にならない。それをベータさんに伝えたかったんです」
「それは……分かりました」
「僕たちは隣県に住んでいるので、会うこともないと思います」
「あの……Ωさんに聞きたいことがあって」
「なんですか?」
「Ωさん……アルファってどんな匂いがしますか?」
「え!?」
周囲の人間が一斉に吹き出した。
「おい!こいつΩになんてこと聞くんだ?常識がないのか?」
「ベータ、なんでそんなこと……」
「アルファはいい匂いがしますか?」
「ベータ……」
ベータの突拍子もない質問にも“運命の番”は真剣に答えてくれた。
「……そうですね。正直アルファさんはいい匂いがします。抑制剤を飲まないと呑み込まれてしまう感じでしょうか?」
「俺はβなのでアルファのフェロモンが分かりません。運動した後は普通に臭いし……」
「ベータ……!?」
「ベータさん……」
「アルファに相応しいのは、こういうΩさんみたいな人なんでしょうね。今後もこの気持ちはなくならないと思う」
「……」
「だけど、アルファの隣にいるのは俺がいい。この気持ちは誰にも負けない」
「ベータさん!」
「Ωさん、ありがとうございました。Ωさんのおかげで自分の気持ちを整理できた気がします」
アルファと共に二人を見送った後、並んで歩いた。
「ベータ、その……」
「アルファはほんと趣味が悪いと思う。こんな面倒くさいβを選ぶなんてさ」
「好きになったんだから仕方ない。俺、ベータを手放す気はないから」
「俺はβだしアルファを幸せになんて出来ないかもしれない」
「……」
「だけど、そうだったとしても…俺はアルファのそばにいたい」
「俺も……。ベータ、俺の恋人になってくれますか?」
「よろしくお願いします」
2人は恋人として幸せに暮らし始めた。
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