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物語の続きを
しおりを挟む何も無い場所にいた。死んだ筈なのに、ふわふわと白い世界にいた。歩いていくと机と本が置いてあった。風が吹いて、本のページが捲れていく。走馬灯というやつかもしれない。リオールの過去が記載されていた。
公爵である父の愛人の子供。オメガという忌まれるバースだったが故に何処にも出されずただ屋敷の中だけで過ごしていた。正妻に疎まれ、十六で男爵家に嫁に出された。アルバは、十も歳上のアルファだった。アルバは男爵だった父を殺して爵位に就いた。いい噂のない男だった。
リオールはそれでもはじめて普通の生活をした。息をしていてもいいのだと思った。アルバは怖くて厳しい人だったが、リオールが息をすることは許してくれた。リオールは、ふっと唇を緩めた。ペラペラとページを飛ばし、自分が死ぬところまで捲る。自分が首を切って死んだところで、まだページが半分ほど残っていた。あとはアルバの人生が他人事このように綴られていた。彼は生きたのだ。リオールが死んだ後、アルバは捕えられた。リオールが書いた最初で最後の父親に向けての手紙は、聞き届けられた。彼は生きて、公爵家に仕えた。
「よかったっ、よかった…………」
指で文字をなぞる。
アルバは五年後に突然現れた聖人に執着をする。聖人とは、この世界に突如現れた聖なる力を宿す者のことで、願いを叶える力があると言われている存在だ。彼を手に入れようと、躍起になる。どんな汚い手段を使っても、人を殺しても、彼を攫っても、アルバは彼を手にしようとした。リオールは、複雑な気持ちになった。アルバは、聖人を愛したのだろうか。リオールに死ねと言ったのに。
ページを捲る。アルバは、王家によって断罪されていた。聖人に惚れたのは王子だけではなく、色んな家や事情が絡み、聖人を攫ったアルバは王子によって捕えられ、処刑を待つ。アルバはただ静かに星を見上げ、首を掻き切った。かつてリオールに命じたように。
「は、はあ……!? なん、なんで!」
物語はハッピーエンドで締めくくられていた。聖人は王子と結婚をし、アルバの死は踏み台のようにサラリと描かれる。自分の人生はなんだったのか。呆れた。ムカついた。アルバは物語りの悪役として描かれていた。妻を死なせ、王子の恋人に執着をし、最期は自ら命を断つ哀れで滑稽で愚かな男だと評価をされていた。怒りが込み上げる。それはアルバに対してか、アルバを嗤う人にか、この本を書いた作者にか分からなかった。
怒りに上がった息を整えて、本を閉じた。分厚い物語りの、半分以下。自分が蔑ろにされたことに怒ったのだと思う。あの人は俺のことを何とも思ってないのに、俺はあの人のことを愛していたことに怒ってるのだと思う。死んでくれだなんて、簡単に言えるのだ。
「やり直したい」
ポツッとそう言った。アルバはきっと死んだリオールのことを嗤っただろう。馬鹿だなと。
眠くなってきた。腕を枕にして机に突っ伏す。左手の指には指輪が嵌っていた。瞬きの間隔が長くなり、暗闇の時間が増える。ああ、この指輪、持ってきてしまったのだ。リオールが初めて贈られた、『俺のもの』だからかな。やがて目を開けてられなくなる。風が吹いてぱらぱらと本のページが捲れる音が聞こえた。頬を撫でるような優しい風に、心地よく眠りに落ちた。
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