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不安と安堵
しおりを挟む「出してくれ、リオールは何処だ」
「まあまあ、アルバ殿。少しお話でも」
「話などない。リオールは何処だ」
舞踏会の最中、いなくなったリオールをずっと探していた。人混みに紛れていなくなったリオールを何度も何度も人に尋ねては知らないと言われ、結局お開きとなった後も一人会場にいた。
王子であるセドリックと、聖人であるエリオにリオールを会わせたのはアルバだった。前世からの悲願であり、王子と聖人は前世の記憶を有していたからだ。聖人エリオの召喚は予定よりも早く、王子とのやり取りの中で彼の存在を知った。エリオはただの人にしか見えないが、アルバとリオールの姿を見てよかったと笑った。その後のリオールの様子は異変としか言いようがなかった。過呼吸気味になり、体に力が入らないようにふらふらと後ずさっていた。まるで、怖いものでも見たかのように。そこから、リオールの姿は追えなかった。
「心配だな。早く行くといい」
「ああ」
セドリックはアルバに探しに行くように促した。エリオはふりふりと片手を振る。緊張感のない人たちだ。
会場の波を掻き分けてもその姿は見つからず、会場内はいろんな匂いがしていてリオールの匂いが辿れなかった。会場に人がまばらになった頃、使用人に声を掛けられた。
「男爵様。お探しなのは奥方様でしょうか。奥方様は伯爵家にてご療養中と、伯爵様がおっしゃっておりました」
「…………っ」
「馬車は用意させていただいております」
「…………分かった」
早く言えと怒鳴りそうになったが飲み込んだ。アルバはリオールを社交界に出したことがなく、彼自身も公爵家にいた時も表舞台に立ったことがなかった。つまり誰もリオールの顔を知らないと言うことで、知らないと言われるのは当たり前のことであった。
「馬だけ借りる。御者と籠はいらない」
「かしこまりました」
王都と伯爵邸はそこまで離れていない。馬を走らせれば、そんなに時間はかからなかったが、アルバに気持ちが急いていて永遠のように感じた。門扉の前に立ち、名前を名乗ればお待ちしておりましたと声を掛けられる。馬を任せて屋敷に入るとクロードがいた。
「リオールくん、今寝たところなんだ。うちの医者に診せて問題ないとのことだったよ。過呼吸を起こしていたみたい。今日は泊まっていけばいい」
「会わせてくれ、顔だけでもいい……」
「起こすのは得策じゃない。お互い冷静になる時間が必要だよ。少し離れたほうがいい」
「無事かどうかだけ見れればいい。遠くからでもいいんだ」
クロードは困ったように笑った。アルバの隣にクロードは歩いて寄ってきた。耳元で小さな声で囁く。
「妻を死なせる気?」
「……っ、そんなわけ、が……」
「追い詰めるような行動になるよ。今はお互い冷静にならないと」
「俺は冷静だ」
「うん、そうだね。でもリオールくんが冷静かどうかは分からないだろ」
クロードの落ち着いた声にアルバは息をついた。コツコツと中央階段から人が降りてくる音がした。アルバが視線を上に向けるとフォスだった。
「お前、よく来たな。話したいことが五万とある。まず返答次第で殺すが、聖人なる存在とお前の関係は?」
「聖人と俺……? 何も関係はない」
「知り合いだろう」
「きちんと顔を合わせたのは二度だ」
まあ、前世は誘拐などもしてみたが。話をした覚えはない。顔をキチンと合わせたのは、先ほどと前世の自分が死んだ日だ。
「リオールを捨てる気は?」
「ないが」
「まあ、そうだな。そこはあいつの被害妄想だと思っている。じゃあ、湯浴みをして半刻後、書斎に来い。お前の知っていることを話せ」
フォスの言葉に引っ掛かり、リオールの昔の発言が蘇る。聖人が貴方を好くかもしれないと、リオールはそんなことを言っていたはずだ。
「リオールは、俺と聖人が惹かれ合うなどといった妄言をまた言っていたのか」
「…………まあ……、アレの勘違いとも思えるが、勘違いさせたままのお前も悪いのではないか」
「キチンと否定をした。何処から来た妄想なのか分からない」
「過呼吸を起こすほどだ。きちんと否定できてないに他ならないではないのか」
グッと言葉を飲み込む。確かにとしか言いようがない。
深夜に差し掛かる時間。アルバは汗を流し、リオールのいるという部屋の前にいた。顔を見ることはするなと言われた。扉の前にいるとフォスと会話するリオールの声が聞こえた。
「体調はどうだ」
「いえ……、だいじょうぶです」
「明日の朝、もう一度医師に診てもらう。コルセットをしていたが外した。いつもつけているものではないだろう。余計に息がしづらい」
「すみません、にいさま……」
か弱い声だが確かにリオールだった。良かった、此処にいるのだ。アルバはふう、と安堵の息をつく。
「あの、あの……」
「なんだ」
「…………いえ、すみません。大丈夫です」
「寝ろ。必要なものがあればうちの者に言いつけろ」
扉を開けて出てきたフォスはアルバの姿を見て驚いたためその口を塞いだ。フォスは一秒もせずに状況を理解したのか睨み付けてくるため手を離した。
「気配を殺すな」
「すまない」
フォスは顎で着いてこいと指示をし、書斎に向かった。
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