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chapter.10-3 / 断罪者は婚約破棄を華麗に謳う(3)
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「あら?リエリーナ・エシェ子爵令嬢にフィオナ・ヴァンダーベルト伯爵令嬢。あなたたちもこの婚約式に参列していたの」
デルフィーネはくすくすと面映ゆそうに扇を閉じて笑みを零すと、正体を知ろうと顔を覗かせていた貴族たちの表情が凍り付くのが見て取れる。
リエリーナとはまた対照的な雰囲気である意味、デルフィーネと同じくらい社交界を賑わせている異端の貴族、フィオナ・ヴァンダーベルトの姿に。社交を嫌い、ほとんど姿を見せないでいる絶世の美貌の主が彼女だとわかると色めき立って、人を押しのけ様子を見に来ようと歩を進める人物もいる。
自分が珍妙な動物としていい餌としてこの場に、わざわざ無理矢理に着飾って連れて来られたのを承知しながら、フィオナは美しい相貌をすっと細めて優雅にデルフィーネとクラウスに礼を執る。
「両殿下におかれましては、本日もご機嫌麗しく」
「世辞は結構ですよ、フィオナ殿」
親しげに笑いかけたのはクラウスで、足早にフィオナの隣に寄り添うように立つと、頭一つ分背の低い白銀の君の顔を覗き込む。
「今日の君はいつにもまして美しいですね」
「皇太子殿下におかれましてはお戯れもほどほどに」
無表情で感情のこもらない声で突っぱねると、フィオナは視線を外しリエリーナに頷いた。
「リエリーナ。あなたに贈らせたドレスがとてもよく似合っていてよ。さて、感想は後ほど聞くとして、あなたの見解を聞かせてもらえるかしら?」
会話に割って入った、貴族としての身分であればこの中で最下位。しかもエシェ嬢が平民出身で、養子として子爵家に入ったことは周知の事実である。通常であれば口をはさむどころか、この場に足を踏み入れることも不敬であるのだが、デルフィーネが示したように彼女は特別目をかけられていることが誰の目から見ても明らかだった。
リエリーナは完璧な令嬢としての作法で恭しく礼を執りながら、セレーネが震える手で掲げ持っている耳飾りの一つをゆっくりと手に取った。びくり、と彼女の方が魚のように大きく跳ねる。
「恐れながら、わたしの目にはこの宝石が淡い金色の光を帯びているように見られます。わたしの目が急な病でおかしくなったのでなければ、これは宝石には見られない現象です」
「へぇ、そうなの?どういうことなのか、わたくしにもわかるように説明してくれるかしら?」
とぼけるようなデルフィーネの言葉に、リエリーナは大きく頷いて、エヴァンゼリンに目を向けた。背後に控えていたエヴァンゼリンは進み出ると、侍女を呼び、一つの箱を開けさせた。
デルフィーネはくすくすと面映ゆそうに扇を閉じて笑みを零すと、正体を知ろうと顔を覗かせていた貴族たちの表情が凍り付くのが見て取れる。
リエリーナとはまた対照的な雰囲気である意味、デルフィーネと同じくらい社交界を賑わせている異端の貴族、フィオナ・ヴァンダーベルトの姿に。社交を嫌い、ほとんど姿を見せないでいる絶世の美貌の主が彼女だとわかると色めき立って、人を押しのけ様子を見に来ようと歩を進める人物もいる。
自分が珍妙な動物としていい餌としてこの場に、わざわざ無理矢理に着飾って連れて来られたのを承知しながら、フィオナは美しい相貌をすっと細めて優雅にデルフィーネとクラウスに礼を執る。
「両殿下におかれましては、本日もご機嫌麗しく」
「世辞は結構ですよ、フィオナ殿」
親しげに笑いかけたのはクラウスで、足早にフィオナの隣に寄り添うように立つと、頭一つ分背の低い白銀の君の顔を覗き込む。
「今日の君はいつにもまして美しいですね」
「皇太子殿下におかれましてはお戯れもほどほどに」
無表情で感情のこもらない声で突っぱねると、フィオナは視線を外しリエリーナに頷いた。
「リエリーナ。あなたに贈らせたドレスがとてもよく似合っていてよ。さて、感想は後ほど聞くとして、あなたの見解を聞かせてもらえるかしら?」
会話に割って入った、貴族としての身分であればこの中で最下位。しかもエシェ嬢が平民出身で、養子として子爵家に入ったことは周知の事実である。通常であれば口をはさむどころか、この場に足を踏み入れることも不敬であるのだが、デルフィーネが示したように彼女は特別目をかけられていることが誰の目から見ても明らかだった。
リエリーナは完璧な令嬢としての作法で恭しく礼を執りながら、セレーネが震える手で掲げ持っている耳飾りの一つをゆっくりと手に取った。びくり、と彼女の方が魚のように大きく跳ねる。
「恐れながら、わたしの目にはこの宝石が淡い金色の光を帯びているように見られます。わたしの目が急な病でおかしくなったのでなければ、これは宝石には見られない現象です」
「へぇ、そうなの?どういうことなのか、わたくしにもわかるように説明してくれるかしら?」
とぼけるようなデルフィーネの言葉に、リエリーナは大きく頷いて、エヴァンゼリンに目を向けた。背後に控えていたエヴァンゼリンは進み出ると、侍女を呼び、一つの箱を開けさせた。
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