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33 一緒に来てくれないか?
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大きな「ドオン」という音が響く。
「な、なにっ?」
私たちに襲い掛かろうとしていた赤服軍団の先頭が、大きな鉄の玉みたいなものに押しつぶされている。そこへ「殲滅しろ!」という声がかかって、緑の服を着た騎士たちが、赤服たちに襲い掛かった。
「アロイスさん…?」
緑の服を着た騎士たちの先頭にいるのはアロイスさんだ。「頼んだぞ!」と隊列を抜け、馬を走らせて私たちのもとにやってくる。
「レオ…!サティ殿!無事かっ!?」
アロイスさんが馬から飛び降りるさまが、スローモーションのように映る。こんなときまでキラキラにかっこいいのか、この人は。というか、なんでいつもいいタイミングで現れるんだろう。
アロイスさんは私ごとレオくんを抱きしめる。
「よかった…本当によかった。遅くなってすまない。もう大丈夫だ」
アロイスさんの鼓動が早いのがわかる。それでも、私たちを抱く腕はとても優しかった。
テオくんが「俺一人で対処できたのに」とぶつくさいいながら、ブレスレットをはめ直す。私はアロイスさんの腕から抜け出して、テオくんをぎゅっと抱きしめた。
「助けようとしてくれて、ありがとう。でもあんな姿はもう見たくないし、あんな言葉も聞きたくないよ」
「サティ、俺は…」
「見たくないの、弟が危険なことをするなんて。お姉ちゃんは絶対に止めるんだから」
テオくんは「いつまでそんなこと言ってるんだよ」と、私の腕の中でふいっと目を逸らした。
ーーー
赤服たちはいなくなったけど、私たちの小屋は燃やされてしまったということだったので、私たちはアロイスさんやその部下さんの馬に乗せてもらって、ひとまずカウベルフェルトへ向かうことにした。
おじいちゃんが心配だったので、アロイスさんに頼んで村に向かう道を探してもらう。おじいちゃんは殴られていたけど、アロイスさんの部下さんがすぐに手当てしてくれて、幸い命に別状はなかった。
それに村の人たちの中にも、私たちの小屋を守ろうとしてくれて、クワやスキで赤服たちに抵抗して、殴られたり斬られたりして怪我をした人がたくさんいるらしい。アロイスさんに「大丈夫だ。死んだ村人はいないし、衛生兵を一人置いてきたから」と説明されて、私は胸をなでおろした。
私は背中にアロイスさんの体温を感じながら聞く。
「ところで今回のこれは、どういうことなんでしょうか。もうすぐレオくんが安全に家に帰れるとおっしゃっていたのに…」
アロイスさんの正妻に、レオくんの存在と居場所がバレてしまったのだろうか。
不倫したのはアロイスさんであって、アロイスさんと不倫相手の間に生まれてきたレオくんが悪いわけではない。なのにレオくんが危険にさらされるなんて納得できないし、許せない。
アロイスさんの正妻さんが怒るのはごもっともだけど、その怒りは夫であるイケメン不倫野郎にぶつけるべきだ。
「最後の最後でレオの居場所がバレてしまうなんて…私の力が足りず、サティ殿やレオや子どもたち、それに村の人たちを危険にさらしてしまい、申し訳ない」
「本当ですよ」
「けれどレオは守れたし、準備も整った。これで本当に、レオは帰れる」
「本当の本当に、安全なんですか?」
「ああ、安全だ」
今日のが怒り狂った奥様の最後の一手だったのかな。
ということは、レオくんとは、もうお別れなんだ。
私は私とアロイスさんが乗っている馬のすぐ後ろ、いかつい軍人さんと一緒に馬に乗っているレオくんに目をやる。
「ん?というかアロイスさん、なんでレオくんじゃなく、私と馬に乗ってるんですか?赤の他人の私じゃなくて、息子さんと乗るのが普通では?」
この状況がおかしいってことに気付いたら、今の今まで温かくて気持ちよかったアロイスさんの体温が、急に恥ずかしくなってくる。なぜ私は、園児を横目に、保護者と馬に揺られているのだ。他の保護者に見られたらえらいことになる。私が不倫相手だと噂が広まる五秒前。
「そのことだが、サティ殿は勘違いされている」
「勘違い、とは?」
「私とレオは親子ではない」
なんですと!?驚きすぎて声も出ない。こんなに似てるのに?アロイスさんが不倫したんじゃなかったの?じゃあこの一連の騒動は、ますます何?
「私にとって、レオは甥だ」
「だから似ているんですね」
「ああ、私は兄とも似ていたから」
「似ていた」。過去形。
「レオくんのお父さんは…?」
「病気で死んだ。母親とも死別しているから、レオには父も母もいない。私が親代わり…になれているかはわからないが、後見人のようなものだ」
「アロイスさんは立派な親代わりですよ。高熱を出してふらふらになりながら、レオくんを守ろうとしていたじゃないですか」
アロイスはそっと私の肩に顎を乗せた。おおおおお、横を向くと彼の頬にキスしてしまいそう。そしてさっきからずっと私の周りに漂っているいい匂いが少し濃くなって、柔らかい濃い金髪が頬にさらりと触れて、ドキドキしてしまう。手汗がすごいから早く離れておくれ、イケメンよ。
「サティ殿がそう言ってくれると、本当にそうだという気がする」
耳元で聞こえるアロイスさんの声が少し頼りなく、助けを求めているように聞こえて、私は肩に乗る彼の頭の重みを許容した。
「だって本当にそうですもん」
「…ありがとう」
アロイスさんは私の肩に顎を乗せたまま、ほんのちょっと私のほうを向く。アロイスさんの唇が私の頬に触れそうで、頬が脂ぎっていないか心配になってしまう。
「サティ殿。ずっと言いたかったことがあるのだが」
耳にイケボが直撃してどうにかなりそうなんですが。
「な、なんでしょう」
「一緒に、来てくれないか?」
「一緒にって…どこへですか?」
「私とレオの家だ」
「な、なにっ?」
私たちに襲い掛かろうとしていた赤服軍団の先頭が、大きな鉄の玉みたいなものに押しつぶされている。そこへ「殲滅しろ!」という声がかかって、緑の服を着た騎士たちが、赤服たちに襲い掛かった。
「アロイスさん…?」
緑の服を着た騎士たちの先頭にいるのはアロイスさんだ。「頼んだぞ!」と隊列を抜け、馬を走らせて私たちのもとにやってくる。
「レオ…!サティ殿!無事かっ!?」
アロイスさんが馬から飛び降りるさまが、スローモーションのように映る。こんなときまでキラキラにかっこいいのか、この人は。というか、なんでいつもいいタイミングで現れるんだろう。
アロイスさんは私ごとレオくんを抱きしめる。
「よかった…本当によかった。遅くなってすまない。もう大丈夫だ」
アロイスさんの鼓動が早いのがわかる。それでも、私たちを抱く腕はとても優しかった。
テオくんが「俺一人で対処できたのに」とぶつくさいいながら、ブレスレットをはめ直す。私はアロイスさんの腕から抜け出して、テオくんをぎゅっと抱きしめた。
「助けようとしてくれて、ありがとう。でもあんな姿はもう見たくないし、あんな言葉も聞きたくないよ」
「サティ、俺は…」
「見たくないの、弟が危険なことをするなんて。お姉ちゃんは絶対に止めるんだから」
テオくんは「いつまでそんなこと言ってるんだよ」と、私の腕の中でふいっと目を逸らした。
ーーー
赤服たちはいなくなったけど、私たちの小屋は燃やされてしまったということだったので、私たちはアロイスさんやその部下さんの馬に乗せてもらって、ひとまずカウベルフェルトへ向かうことにした。
おじいちゃんが心配だったので、アロイスさんに頼んで村に向かう道を探してもらう。おじいちゃんは殴られていたけど、アロイスさんの部下さんがすぐに手当てしてくれて、幸い命に別状はなかった。
それに村の人たちの中にも、私たちの小屋を守ろうとしてくれて、クワやスキで赤服たちに抵抗して、殴られたり斬られたりして怪我をした人がたくさんいるらしい。アロイスさんに「大丈夫だ。死んだ村人はいないし、衛生兵を一人置いてきたから」と説明されて、私は胸をなでおろした。
私は背中にアロイスさんの体温を感じながら聞く。
「ところで今回のこれは、どういうことなんでしょうか。もうすぐレオくんが安全に家に帰れるとおっしゃっていたのに…」
アロイスさんの正妻に、レオくんの存在と居場所がバレてしまったのだろうか。
不倫したのはアロイスさんであって、アロイスさんと不倫相手の間に生まれてきたレオくんが悪いわけではない。なのにレオくんが危険にさらされるなんて納得できないし、許せない。
アロイスさんの正妻さんが怒るのはごもっともだけど、その怒りは夫であるイケメン不倫野郎にぶつけるべきだ。
「最後の最後でレオの居場所がバレてしまうなんて…私の力が足りず、サティ殿やレオや子どもたち、それに村の人たちを危険にさらしてしまい、申し訳ない」
「本当ですよ」
「けれどレオは守れたし、準備も整った。これで本当に、レオは帰れる」
「本当の本当に、安全なんですか?」
「ああ、安全だ」
今日のが怒り狂った奥様の最後の一手だったのかな。
ということは、レオくんとは、もうお別れなんだ。
私は私とアロイスさんが乗っている馬のすぐ後ろ、いかつい軍人さんと一緒に馬に乗っているレオくんに目をやる。
「ん?というかアロイスさん、なんでレオくんじゃなく、私と馬に乗ってるんですか?赤の他人の私じゃなくて、息子さんと乗るのが普通では?」
この状況がおかしいってことに気付いたら、今の今まで温かくて気持ちよかったアロイスさんの体温が、急に恥ずかしくなってくる。なぜ私は、園児を横目に、保護者と馬に揺られているのだ。他の保護者に見られたらえらいことになる。私が不倫相手だと噂が広まる五秒前。
「そのことだが、サティ殿は勘違いされている」
「勘違い、とは?」
「私とレオは親子ではない」
なんですと!?驚きすぎて声も出ない。こんなに似てるのに?アロイスさんが不倫したんじゃなかったの?じゃあこの一連の騒動は、ますます何?
「私にとって、レオは甥だ」
「だから似ているんですね」
「ああ、私は兄とも似ていたから」
「似ていた」。過去形。
「レオくんのお父さんは…?」
「病気で死んだ。母親とも死別しているから、レオには父も母もいない。私が親代わり…になれているかはわからないが、後見人のようなものだ」
「アロイスさんは立派な親代わりですよ。高熱を出してふらふらになりながら、レオくんを守ろうとしていたじゃないですか」
アロイスはそっと私の肩に顎を乗せた。おおおおお、横を向くと彼の頬にキスしてしまいそう。そしてさっきからずっと私の周りに漂っているいい匂いが少し濃くなって、柔らかい濃い金髪が頬にさらりと触れて、ドキドキしてしまう。手汗がすごいから早く離れておくれ、イケメンよ。
「サティ殿がそう言ってくれると、本当にそうだという気がする」
耳元で聞こえるアロイスさんの声が少し頼りなく、助けを求めているように聞こえて、私は肩に乗る彼の頭の重みを許容した。
「だって本当にそうですもん」
「…ありがとう」
アロイスさんは私の肩に顎を乗せたまま、ほんのちょっと私のほうを向く。アロイスさんの唇が私の頬に触れそうで、頬が脂ぎっていないか心配になってしまう。
「サティ殿。ずっと言いたかったことがあるのだが」
耳にイケボが直撃してどうにかなりそうなんですが。
「な、なんでしょう」
「一緒に、来てくれないか?」
「一緒にって…どこへですか?」
「私とレオの家だ」
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