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もしかして生き別れの兄ちゃんとじいちゃん?
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「元いたところに返してきなさい」
「兄さん、これは捨て犬じゃないんですよ。遠い親戚です」
ユキレラはまず当主の兄に面通しされた。
そして驚愕した。
(い、生き別れの兄ちゃんかーっ!???)
ルシウスも自分とよく似ていたが、背格好の近い彼の兄、リースト伯爵カイルのほうがもっと似ていた。
着ている衣服が、あちらは白い軍服、こちらはど田舎者丸出しの庶民の手縫いのシャツやズボンとの違いはあったが、それだけだ。
青みがかった銀髪、薄い水色の瞳、白い肌と麗しの容貌。
(なるほど、お貴族様としてお手入ればっちりなら、オレもこったら男前さなれるんだなや)
もっとも、ルシウスの兄カイルはとても冷たい印象の男で、人当たり良く面倒見の良いルシウスや、軽めの性格のユキレラとはやはり表情が違う。
リースト伯爵様は孤高のクールビューティー様である。
ルシウスにもユキレラにも、そういった氷属性はないのだった。
話に入れないユキレラは、麗しの美形兄弟ルシウスと彼の兄、リースト伯爵カイルの話をボーッとしながら眺め、聞いていた。
ルシウスは簡単にユキレラの経歴と境遇、王都に知己がいない現状を説明して、当主の兄に後見人になってくれるよう頼んでいる。
だがご当主様は渋い顔をしている。
必死に頼み込んでくる弟と、後ろに所在なさげに立ち尽くしているユキレラとを、何度も交互に見ては、やはり渋い顔のままだ。
だが、やがて諦めたように溜め息をついて、執務室の椅子に深く座り直した。
「そやつと年齢の近い私より、父に頼むと良いだろう」
それだけ言って、鬱陶しそうに執務室から二人まとめて追い払われた。
リースト伯爵家の邸宅の廊下を歩きながら、こそっと聞いてみた。
「お兄さんと仲、悪いんですか?」
「さあ、どうだろうね。兄さんはお嫁様以外には誰にでもあんな感じだよ」
なるほど、そういうキャラか。クーデレというやつだ。
そうして紹介されたルシウスの兄、リースト伯爵カイルが“生き別れの兄”なら、兄弟の父親の前伯爵様は“生き別れのじいちゃん”だった。
青みがかった銀髪や薄い水色の瞳、麗しの容貌もやはり同じ。
だが、この前伯爵様は口周りにふさふさふわふわのお髭があった。
年齢は七十代ほどだろう。髪も髭もだいぶ白髪が混ざっている。
(なんでこんな皆そっくりなんー!???)
「おお、ルシウス。久し振りではないか。む、そちらはどなただね?」
その前リースト伯爵様メガエリスは自室の寝台の上で上半身を起こして、眼鏡をかけて本を読んでいた。
ここに来る前聞いた話では、一年ほど前に怪我をして少し足腰が弱っているとのこと。
「リースト一族の顔してたから連れてきました。ど田舎領、ど田舎村の出身だそうです。父様、何かご存じないですか?」
「ど田舎領か……隣のシルドット侯爵領になら、確か数代前の分家の男子が平民女性と結婚して移り住んでいたはず」
シルドット侯爵領は、ど田舎領のお隣さんだ。
「あっ、そうです、ご先祖様はシルドット侯爵領からど田舎村に移住してきたって親父から聞いたことあります」
「ふーむ。いま平民なら、数代前の戸籍は残っておらんかもしれんなあ」
ちょいちょいっと手招きされたので、大人しく近くに寄ると、頬に手を当てられ、メガネを外してじーっと顔を覗き込まれた。
剣を握っていた者特有の、剣ダコのある硬い手のひらだ。
だが、ユキレラに触れる手つきはとても優しい。
「うむ、瞳も紛うことなき“湖面の水色”よな。この子の後見なら構わない。だがその前に、念のため人物鑑定を受けてくるように」
最後にぽんぽん、と優しく頭を叩かれて解放された。
何だか本当に、おじいちゃんに構われたような感覚だった。
ユキレラの祖父母は父方も母方も、ユキレラが産まれる前に亡くなっているから、想像でしかないのだけれども。
ユキレラが王都に到着してまだ二日目。
急展開に急展開が続いている。
「兄さん、これは捨て犬じゃないんですよ。遠い親戚です」
ユキレラはまず当主の兄に面通しされた。
そして驚愕した。
(い、生き別れの兄ちゃんかーっ!???)
ルシウスも自分とよく似ていたが、背格好の近い彼の兄、リースト伯爵カイルのほうがもっと似ていた。
着ている衣服が、あちらは白い軍服、こちらはど田舎者丸出しの庶民の手縫いのシャツやズボンとの違いはあったが、それだけだ。
青みがかった銀髪、薄い水色の瞳、白い肌と麗しの容貌。
(なるほど、お貴族様としてお手入ればっちりなら、オレもこったら男前さなれるんだなや)
もっとも、ルシウスの兄カイルはとても冷たい印象の男で、人当たり良く面倒見の良いルシウスや、軽めの性格のユキレラとはやはり表情が違う。
リースト伯爵様は孤高のクールビューティー様である。
ルシウスにもユキレラにも、そういった氷属性はないのだった。
話に入れないユキレラは、麗しの美形兄弟ルシウスと彼の兄、リースト伯爵カイルの話をボーッとしながら眺め、聞いていた。
ルシウスは簡単にユキレラの経歴と境遇、王都に知己がいない現状を説明して、当主の兄に後見人になってくれるよう頼んでいる。
だがご当主様は渋い顔をしている。
必死に頼み込んでくる弟と、後ろに所在なさげに立ち尽くしているユキレラとを、何度も交互に見ては、やはり渋い顔のままだ。
だが、やがて諦めたように溜め息をついて、執務室の椅子に深く座り直した。
「そやつと年齢の近い私より、父に頼むと良いだろう」
それだけ言って、鬱陶しそうに執務室から二人まとめて追い払われた。
リースト伯爵家の邸宅の廊下を歩きながら、こそっと聞いてみた。
「お兄さんと仲、悪いんですか?」
「さあ、どうだろうね。兄さんはお嫁様以外には誰にでもあんな感じだよ」
なるほど、そういうキャラか。クーデレというやつだ。
そうして紹介されたルシウスの兄、リースト伯爵カイルが“生き別れの兄”なら、兄弟の父親の前伯爵様は“生き別れのじいちゃん”だった。
青みがかった銀髪や薄い水色の瞳、麗しの容貌もやはり同じ。
だが、この前伯爵様は口周りにふさふさふわふわのお髭があった。
年齢は七十代ほどだろう。髪も髭もだいぶ白髪が混ざっている。
(なんでこんな皆そっくりなんー!???)
「おお、ルシウス。久し振りではないか。む、そちらはどなただね?」
その前リースト伯爵様メガエリスは自室の寝台の上で上半身を起こして、眼鏡をかけて本を読んでいた。
ここに来る前聞いた話では、一年ほど前に怪我をして少し足腰が弱っているとのこと。
「リースト一族の顔してたから連れてきました。ど田舎領、ど田舎村の出身だそうです。父様、何かご存じないですか?」
「ど田舎領か……隣のシルドット侯爵領になら、確か数代前の分家の男子が平民女性と結婚して移り住んでいたはず」
シルドット侯爵領は、ど田舎領のお隣さんだ。
「あっ、そうです、ご先祖様はシルドット侯爵領からど田舎村に移住してきたって親父から聞いたことあります」
「ふーむ。いま平民なら、数代前の戸籍は残っておらんかもしれんなあ」
ちょいちょいっと手招きされたので、大人しく近くに寄ると、頬に手を当てられ、メガネを外してじーっと顔を覗き込まれた。
剣を握っていた者特有の、剣ダコのある硬い手のひらだ。
だが、ユキレラに触れる手つきはとても優しい。
「うむ、瞳も紛うことなき“湖面の水色”よな。この子の後見なら構わない。だがその前に、念のため人物鑑定を受けてくるように」
最後にぽんぽん、と優しく頭を叩かれて解放された。
何だか本当に、おじいちゃんに構われたような感覚だった。
ユキレラの祖父母は父方も母方も、ユキレラが産まれる前に亡くなっているから、想像でしかないのだけれども。
ユキレラが王都に到着してまだ二日目。
急展開に急展開が続いている。
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