米国名門令嬢と当代66番目の勇者は異世界でキャンプカー生活をする!~錬金術スキルで異世界を平和へ導く~

だるま 

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デンジャラスな登山

デンジャラスな登山④

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 夕食の後片付けや歯磨き等をした後、公爵に見張りをお願いし、マリ達はテントの中に引き上げた。
 たったこれだけの事でも、魔法頼りの水や、使い慣れないアウトドア用品の所為で結構時間がかかり、気が付けば時刻は20時を回ってしまっていた。

 マリは月明かりを頼りに自分の寝袋に潜り込む。
 こちらの世界に来てからは何度も寝袋で寝ているので、慣れたと言えば慣れたのだが、今は特殊な状態なので落ち着かない。危険がいっぱいな場所での雑魚寝状態は覚悟してきたというのに、実際やってみると想像以上のストレスなのだ。

 目を真ん丸に開いてテントの一番高い箇所を眺める。風の音も無い中、誰かが身動きする音がやたら大きく聞こえる。
 幾ら寝返りをうっても眠気は訪れず、仕方がなしに寝袋に頭まで潜ってスマートフォンゲームを始めた。
 音を消した状態で、マインクラフトの世界の地面をせっせと掘り続ける。
 画面下のバーに石のブロックがどんどんカウントされていく表示は、さながら羊を数えるかのよう。そのうち眠気が訪れるだろう。

 暫くすると、テントの中の誰かが野太いイビキをかき始めた。

「……む」

 方向的にセバスちゃんだ。
 寝顔を見てやろうと寝袋から顔を出して、ギクリとする。
 隣に横になっているグレンと目が合ったのだ。

「……っ!? ビックリした。まだ眠れていなかったんだ?」

「いつも寝付きが悪いから……」

「アンタは公爵と後でから交替するんだから、早く寝なよ」

「そうできたらいいんだけど」

 そう言って小さく笑うグレンから、マリはササっと目を反らした。妙な色気があるのが恐ろしい。

 動揺して腹に手を乗せると、堅い物に触れた。
 ボールダーの欠片だ。

 それを手に取り、寝袋の外に出す。月明かりの光に翳すと、形はかなり球体に近付いていた。
 ここまでの道中で、欠片に何度か錬金術をかけていた甲斐あり、スキルのコツを掴めた気がする。眠りにつく前にもう一度やってみようと、欠片に意識を集中させた。

 暗がりの中で幻想的に輝くソレは、今度こそ芍薬の蕾に近い姿に成型される。

「いい感じ」

「マリさん、さっきから何やってるの? ボールダーの欠片だよね?」

 朝からさり気なくスキルを使っていたつもりだったが、バレバレだったらしい。

「意図して錬金術を使える様になったみたいだから、訓練しているんだ。ほら、見てこれ」

 蕾型のフォルムになったボールダーの欠片を渡すと、グレンは寝袋から身を起こしてソレを見てくれた。

「錬金術で加工して、どんな効果になったんだろう?」

「う~ん……」

 カミラがやっているのと同じようにスキルを使ったので、後もうひと手間でオーパーツの効果になってほしいところだが、肝心の材料が異なる。別物になっている可能性が高いだろう。

「……そのうち分かるよ。マリさんが創った物なんだから、役に立つものなんじゃないかな」

「それならいいんだけどね」

 グレンに欠片を返してもらい、ポケットに戻す。
 なんだか彼のユッタリした声を聞いているうちに眠くなってきた。

「眠れそう。おやすみ」

「お疲れ様、マリさん」

 若干よれた寝袋をグレンが直してくれるのを嬉しく思いながら、マリは眠りに落ちていった。



 翌日もマリ達はモンスターと戦闘しながら登山を続ける。
 昼頃になると辺りに霧が立ち込め、足元は滑りやすくなっていた。

 足を進めるごとに濃くなる霧。先頭のグレンと最後尾のセバスちゃんの姿は見えるものの、それ以上の距離ともなると、風景がほとんど見えない。

「濃霧が厄介だ……」

 立ち止まったグレンは表情を硬くしている。これ以上進むのは危険なのだろうか。

「無風状態だから、暫くは晴れないかもしれないね」

 マリ達に追いついた公爵が困り顔で笑う。

「進む?」

「どうしようかね?」

 引き返すか進むかを四人で話し合っていると、霧の向こうから生き物の鳴き声が聞こえてきた。小さかったそれは、次第に大きくなり、こちらに近付いて来ているのだと察する。
 濃い霧の所為で、目で見て確認出来ないのが非常に怖い。

 見えないながらも、鳴き声は明らかにモンスターのものだと識別できる。耳を澄ませると、単体だけのものではなく、様々な声が混ざっている。複数いるのだ。

(これ、凄い数なんじゃ? やばくない?)

 取りあえず近くにある岩の影に四人で身を隠す。

 沈黙のまま様子を伺っていると、荒々しい足音が轟き、マリ達が隠れる岩の傍を素通りしていった。
 やはりモンスターだった。何かから全力で逃げている様に見えるのだが、どうした事か。
 全てのモンスターが通り過ぎた後、上方から聞こえてきたのは、一際大きな咆哮。この世界の何物にも似てない声質の主は一体何なのだろうか?

(もしかして、モンスター達はこの咆哮の主から逃げて来ていた? この先にいるのは……?)
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