米国名門令嬢と当代66番目の勇者は異世界でキャンプカー生活をする!~錬金術スキルで異世界を平和へ導く~

だるま 

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デンジャラスな登山

デンジャラスな登山③

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 陽が傾きかけた頃、恐れていた事態に陥った。
 連なる山々の向こう側から、小さな点が2、3現れたと思ったら、物凄い勢いでこちらに飛んできたのだ。
 良く見える位置まで近づかれ、マリはその姿に唖然とした。鳥の様な翼が生えているのに、胴体は肉食獣を思わす。

「何あれ!?」

「グリフォンだ! 伏せて!」

 グリフォンとやらは、鋭い鈎爪を立てながら、マリ達が居る場所に突っ込んで来る。
 グレンに大きく手を引かれ、地面に倒れ込むようにして回避すると、今立っていた場所に巨体なモンスターが着地していた。

「Aランクのモンスターだね……。術が見破られたんだ」

 立ち上る砂ぼこりが若干収まると、グリフォンの姿が良く確認出来た。鋭い嘴からチロチロと吐き出されているのは、赤い火炎。スキルか魔法なのだろうか。
 その鋭い目が、マリの方をヒタリと見つめている。

(ぐぅ……! 私狙われてる!? 一番弱そうだからか!)

 マリが腰に下げた短機関銃を構えるのと、グリフォンが飛び掛かって来たのはほぼ同時だった。嘴に銃身を叩き入れる。
 巨体の体重を食い止められたのは、後ろから伸びてきたグレンの腕が、短機関銃を支えてくれたからだ。
 恐ろしい頭部が間近に迫り、マリは限界まで目を見開く。

(ヒィ! 怖すぎ……)

「マリさん下がって!」

「う、うん!」

 銃器から手を放し、ササっと後ろに下がる。
 グリフォンはその鋭い嘴で銃身を破壊し、グレンに鋭い前脚を振り上げた。しかしそのままやられるグレンでは無かった。雷電を纏わせた手でグリフォンの頭部を強打したのだ。

 グリフォンの身体がブルルと痙攣する。

「離れろ!」

 隙を付いたセバスちゃんが体当たりし、化物の身体は地面に倒れた。
 さっき上空に見えた他の2体はどうなっているかと視線を回すと、公爵が一人で迎撃してくれていた。

 グリフォン達は、火炎を纏わせた豪風をコチラに向かって吐き出していて、足場がジワジワと崩落しつつあった。

「これはやばい……。僕はバリアを張るから、取りあえずそいつを倒してくれないかな?」

 『ソイツ』とは、マリを襲ったグリフォンだ。奴は唸り声を上げながら身体を起こしていた。
 公爵がバリアを張ったのに気が付いたのか、ターゲットを彼に切り替えてしまっている。
 杖を上に掲げる公爵に向かって、勢いを付けて飛び掛かった。

「お前の相手は僕だ」

 グレンはコンプレストウォーターサーベルを構え、グリフォンに切りかった。化物はそれを俊敏な動きでそれを回避したかに見えたが――不思議な事に、その場に血まみれで倒れていた。
 胴体には深く抉られた痕。一体何が起きたのか。

「2秒過去に遡って突き刺したんだ」

 なるほど、グレンは水の神から得たスキルを使ったらしい。
 過去に遡り、グリフォンが回避する行動をとる直前に致命傷を負わせたんだろう。
 このスキルをグレンが使ったのを初めて見たのだが、完全に使いこなせている。

「グレン、最高じゃん!」

「魔力を大量に使うのがネックだけどね」

 マリ達が感心している間に、グレンはバリアの外に出て、残り二体にプラズマの矢を撃ち始めた。

(そっか、もう二体を倒さないといけないね。協力しよう)

 マリはセバスちゃんと頷き合い、バリアから出て銃撃する。
 近接戦にならないのは有難いが、相手が素早すぎる。先読みしながら只管発砲しまくる。
 二匹を撃ち落とせたのは辺りが夕焼けでオレンジ色に染まる頃だった。

 疲労した身体に鞭打ちながら山を登って危険地帯を抜ける。

 複数体のAランクモンスターに襲撃されるのは、結構リスキーなのが分かったので、出来るだけ安全な場所で夜を越したいのだ。
 30分程歩くと、比較的平らな10㎡のスペースに辿り着く。
 薄暗くなってしまったため、これ以上適した所を見付けられないだろうと判断し、今晩はここに泊まる事になった。

 セバスちゃんと公爵がテントを張る傍らで、マリは持って来た食材や鍋、レギュレーターストーブを取り出す。

「夕飯を作るの?」

 周囲を見回りしていたグレンが近寄って来て、腰を下ろした。

「簡単な物を作るつもり。あ、アンタに託した冷ご飯を出してくれる?」

「そういえばそうだった」

「後はこの鍋に水を入れて」

「魔法でいい?」

「そのつもりだった」

 グレンとやり取りしながら、夕食作りに使う食材を確認する。
 大き目のタッパーに入っているのは、細切りした人参やネギ、ニラで、小さめのタッパーには茹でた鳥のささ身だ。どれもこれも、山で煮込む時間を短縮する為に、今朝一工夫した物。
 リュックの中で零れていなかったのに安心した。
 そして何よりも大事なのは、キムチ鍋の素だ。いつもはちゃんと調味料を合わせて韓国料理を作るマリなのだが、今回はこれに頼る事にした。時にはお手軽感が重要だ。

「マリさん、ここに置いておくからね」

「お、有難う!」

 グレンはタッパーに詰め込んだ白飯と、水の入った鍋をレギュレーターストーブの近くに置いてくれた。
 マリは早速鍋を火にかける。

「普段と違う調理器具だから新鮮……」

 アウトドア用品を使うのを初めてみたのか、グレンの目は普段より輝いている。
 確かに、暗がりの中、ゴツイ金属の機器から激しく炎が立ち、鍋を温めている風景はなかなかに情緒溢れていて悪くない。

「普段より美味しく出来そうな気がしない?」

「……あぁ、何か分かるかも」

 共感出来たのが嬉しくて、少し笑みが零れる。
 グリフォンに襲われ、尖っていた神経が徐々に薙いでいくようだ。

「マリちゃん。卵を割らずに持ってくる使命を果たしたよ」

「あ、そうそう卵も入れるんだった! 公爵有難う!」

 テントを張り終えた公爵が、クッション材に包まれた卵を持って来てくれた。昨日ドワーフの里で貰ったものだけど、味はどうだろうか。
 グツグツいい始めた鍋の中に卵以外の材料を全て入れ、かき混ぜる。立ち上る刺激的な香りに、セバスちゃんのお腹が盛大に鳴った。

「おや、お恥ずかしい」

「もうちょっとで出来るから待ってて!」

 鍋の中に卵を落とし、キムチクッパの完成だ。

 セバスちゃんが灯してくれた石油ランタンを四人で囲む。周囲が暗いので、この明かりは良く目立つ。モンスターに気づかれる前にさっさと夕食を食べなければならない。
 ほんのひと時でも、皆の顔を見ながら食事出来るのは気が休まった。

 キムチクッパの他に、今朝マリが作ったカボチャのバターソテーやジャーサラダもあり、それらを、コソコソと会話しながら楽しむ。

「暖まるね。身体が冷えてきていたから助かるよ」

「流石はマリお嬢様。力が蘇ってきます」

 セバスちゃんや公爵は、笑顔でキムチクッパを食べてくれる。

「お腹の中から温まった方がいいと思ったんだ。気に入ってくれてよかった」

「ご飯料理も良かったけど、このサラダも色んな味が入ってて美味しい……」

「ふふん、当然っ」

 グレンはジャーサラダをランタンの灯りに翳し、シゲシゲと見ている。メイソンジャーという蓋つきの瓶の中にポテトサラダや蒸したエビ、アボガドやトマトをぎゅうぎゅう詰めにしたそれは、見た目が楽しいだけでなく、栄養もバッチリだ。
 ちなみにマリのリュックの中には、もう8つ程入っていたりする。

「見張りは僕とグレン君で交替で回そう」

「うん。それがいいと思う」

 話は、夜間の安全確保に移った。マリとセバスちゃんは見張りの頭数に入れない流れになっているが、それで大丈夫なのだろうか?

「私達二人一組で見張ってもいいよ?」

「ええ、銃器があれば多少の時間稼ぎは出来ます」

 マリ達が主張してみても、グレン達は微妙な表情を浮かべるだけだった。

「僕達が警戒しなきゃならないのは、Aランク以上のモンスターだから、二人には出来れば安全な所に居てほしい」

「そうだよね。さっきのグリフォン戦もヒヤヒヤしちゃったし」

 グリフォン戦で足を引っ張った自覚があるマリとセバスちゃんは大人しく引き下がる事にした。
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