家ごと異世界転移〜異世界来ちゃったけど快適に暮らします〜

奥野細道

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作戦会議

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 天空の舟は西へと進路を取り、数日後、再びアストリア王国の旧王都上空へと差し掛かった。荒廃した街並みは依然として痛々しいが、健太の心には以前のような絶望はなかった。彼の隣には、ミストニアとガルーダ、そしてアストリアの精鋭たちが控えている。彼らの存在が、健太に確かな力を与えていた。

「ルミナ、西方三国の動きに変化は?」

健太の問いに、ルミナの声が響く。

『主、西方三国は、アストリア王国の占領地において、さらに警戒を強めている模様です。特に、ヴァルカン王国は、新たに魔導兵器を配置し、防衛線を強化しています。また、各国の間で物資の分配や統治権を巡る小競り合いが頻発しており、同盟関係は不安定な状態が続いています』

健太は頷いた。内部分裂は、彼らにとって好機となる。

「エルフの里長とガルーダの族長をここに転移させてくれ。作戦会議を行う」

健太の指示に、ルミナは即座に応じた。次の瞬間、健太の「家」のリビングに、ミストニアのエルフの里長とガルーダの族長が転移してきた。二人は、突然の空間移動にも動じることなく、健太の「家」の内部を興味深そうに見回した。

「なるほど、これが貴殿の『家』か。神秘的な空間だな」

里長が穏やかな声で呟いた。族長もまた、周囲を見渡し、その広大さに感嘆の声を漏らした。

「ふむ、これほど広々としていれば、ガルーダの戦士たちも窮屈に感じることはなかろうな」

健太は彼らをテーブルに案内し、ロア、ユーリ、そしてアストリアの騎士団長代理を務めることになったレオン、ガルーダから同行してきた獣人戦士の代表であるガルムが席に着いた。作戦会議の場には、各国の要人が揃った形だ。 

「本日はお集まりいただきありがとうございます。アストリア王国の現状、そして西方三国の動きについて、ルミナから報告させます」

健太の言葉に、ルミナがホログラムスクリーンを出現させ、アストリア王国の地図と西方三国の兵力配置図を映し出した。ルミナは、簡潔かつ的確に現在の状況を説明した。

『現在、西方三国はアストリア王国の主要都市を占領し、各々が統治区域を定めています。最も大きな勢力はヴァルカン王国で、王都を中心に強力な魔導兵器を配備しています。ゼフィール王国は商業都市を、ガリア王国は豊かな農耕地帯を占領しています。各国は共同で防衛網を構築していますが、内部での連携は十分に取れていないと推測されます』

ルミナの報告が終わり、健太が口を開いた。

「皆さんもご存知の通り、西方三国は内部で意見の対立があるようです。これは我々にとって大きな好機です。この隙を突き、奴らを分断し、各個撃破に持ち込みたい」

ミストニアの里長が静かに頷いた。

「うむ。分散した敵の力を一つずつ削いでいくのは理にかなっている。しかし、どの国から攻めるべきか。ヴァルカンは魔導兵器を持つゆえ、最も手ごわい相手となるだろう」

続いてガルーダ族長が低い声で言った。

「ヴァルカンは確かに厄介だが、奴らが最も多くの兵力を割いているということは、それだけ他の地域の防衛が手薄になっているということだ。まずは、手薄なところから叩き、我々の勢力圏を広げていくべきではないか?」

レオンが、地図を指差しながら進言した。

「私も族長殿の意見に賛成です。ヴァルカン王国は強固ですが、それ故に他の二国との連携が甘くなる可能性があります。まずは、兵力が分散しているゼフィール王国かガリア王国を攻めるのが賢明かと」

健太は全員の意見を聞き、熟考した。

「ルミナ、西方三国で最も補給線が長く、兵站が不安定な国はどこだ?」
『スキャン結果、最も補給線が長く、兵站が脆弱なのはゼフィール王国です。彼らは商業都市の占領に重きを置いているため、兵糧の確保や輸送網の維持に苦慮している可能性があります』

ルミナの報告に、健太は頷いた。

「よし。標的はゼフィール王国とする。まずは、ゼフィール王国の商業都市を奪還し、奴らの補給線を断ち、経済的な打撃を与える。そして、その混乱に乗じて、他の二国との連携をさらに乱す」

ミストニアの里長が健太の決定に賛同した。

「賢明な判断だ。ゼフィールは魔導兵器の配備もヴァルカンほどではない。我々のエルフの魔法と弓術であれば、十分に対抗可能だろう」

ガルーダ族長も力強く頷いた。

「うむ。獣人たちの俊敏性と、地の利を生かした奇襲攻撃で、奴らの補給路を徹底的に叩いてやる」

健太は、具体的な作戦を説明し始めた。

「天空の舟で一気にゼフィール王国の商業都市に奇襲をかける。ルミナのステルス機能を使えば、敵のレーダーに捕捉されずに接近できるはずだ。我々は、主要な物資集積所と兵站基地を狙い、一気に制圧する。ロア、ユーリ、そして騎士団は、市街地の制圧と民間人の保護を頼む。ガルーダの戦士たちは、補給路の寸断と、敵の援軍を足止めする役割をお願いしたい。里長、エルフの魔法部隊は、敵の魔術師部隊の無力化と、我々の進軍を援護してほしい」

各部隊の役割が明確になり、皆の顔に決意の表情が浮かんだ。

「一つ懸念もある」

ミストニアの里長が手を挙げた。

「ゼフィール王国は、アストリア王国から奪取した魔導具や資源を、彼ら独自の技術で強化している可能性がある。特に、アストリア王国の魔力炉を改造し、より強力な魔導兵器を開発している可能性も否定できない」

健太は眉をひそめた。

「ルミナ、ゼフィール王国が保有している可能性のある、強力な魔導兵器の情報をスキャンできるか?」

『スキャンを開始します。過去のアストリア王国の設計図や、西方三国の技術レベルから推測し、ゼフィール王国が開発している可能性のある魔導兵器を特定します』

数秒後、ルミナが報告した。

『ゼフィール王国は、アストリア王国の魔力炉を改良し、長距離広範囲攻撃が可能な「魔力収束砲」を開発している可能性が高いです。また、特定の対象を追尾し、魔力を吸収する「魔力吸収兵器」の存在も示唆されています。これらは、我々の天空の舟や、強力な魔術を行使するエルフの魔術師にとって脅威となる可能性があります』

健太は表情を引き締めた。

「そうか……。魔力収束砲と魔力吸収兵器か。厄介だな。ルミナ、それらの兵器の対策は?」

『魔力収束砲は、発射に時間がかかるため、そのチャージ中に攻撃を仕掛け、機能を停止させるのが有効です。魔力吸収兵器については、魔力を直接吸収するため、物理攻撃による破壊が最も効果的です。また、高密度の魔力を一時的に放出し、オーバーロードさせることも可能です』

健太は頷いた。

「分かった。対策を練ろう。レオン、ガルーダの皆には、魔力収束砲のチャージ中に接近し、破壊する役割をお願いしたい。エルフの皆には、魔力吸収兵器の動きを封じるための援護をお願いしたい」

ガルーダ族長が力強く答えた。

「任せておけ。我らの戦士たちが、奴らの大砲を木っ端微塵にしてくれるわ!」

ミストニアの里長も穏やかに頷いた。

「魔力吸収兵器については、我らが対処しよう。精霊魔法で動きを封じ、その隙に物理的な破壊を促す」

健太は全員の顔を見回した。

「他に何か懸念点はあるか?」

ロアが手を挙げた。

「ケンタ様、西方三国が保有している、こっちが知らない新型兵器や、奇策を講じてくる可能性もあると思う」

ユーリも続いた。

「はい。アストリアの王都が陥落した際も、想像以上の兵力と魔導兵器を投入してきました。油断は禁物です」

健太は頷いた。

「ルミナ、常に周辺の状況をスキャンし、不審な動きがあればすぐに報告してくれ。我々は、常に最悪の事態を想定して行動する」
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