ジ・エンドブレイカー

アックス☆アライ

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第一章 とても不思議な世界

29話 森の侵入者達①

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 秋の日の事。
 鬱蒼とした木々に覆われている里山。その低い頂近くに、禿げ上がった頭の様に地表が顔を覗かせている場所があった。
 日々喜はそこに立ちながら、下界に広がる街並みを見渡している。木々は赤く色付き、明確な季節の節目を伝えていた。
 しかし、人の手によって伐採されたその場所からは、日々喜達の住む街を見下ろす事しかできず、色付いた風景を一望する事は出来なかった。
 想像したのとは少し違うな。
 小さく映る街並みの景観は、写真やテレビ等で何度も見て来た雄大な自然の風景とは天と地の差があると感じた。
 日々喜は落胆を顔に出す事もせず、自分がこの場所に何を期待していたのかを考え始めた。
 こう言う街並みではなく、もっと大きくて、広くて、遠くが見渡せて、それでいて、人がいない所が良かったんだ。
 日々喜はそう考えた。

 「気に入ったかい、日々喜?」

 同行していた大伯父の灯馬が、日々喜の背後から声を掛けた。

 「はい、とても」

 自分のコレクションを見せた時とは明らかに異なる表情で応える姪孫を見て、灯馬はそれが正直な気持ちではない事を理解する。

 「そうか、それは良かった。……こっちに来なさい」

 灯馬はそう言うと、火を焚いたキャンプ地へと日々喜を座らせた。灯馬もまた、その焚火を挟んで、日々喜の真向かいへと座り直す。
 日々喜が祖母の家に来てから三ヶ月ほどが経っていた。
 無口な姪孫は相変わらず自分から言葉を発する事はあまり無く、質問をすれば先ほど見た通り、同意か承諾の答えしか返しはしなかった。
 年相応に口数の少なくなった灯馬は、黙って火の番をしながらも、ぼうっとした様に目の前の焚火をながめ続ける日々喜から目を離さずにいた。
 日々喜は否定する事を避けている。
 極力、周りと同じ考えを選ぼうとする。老人の目にはそれがまるで、わがままを通す事を全て諦めてしまったかのように映った。
 身の上に起こった不幸を考えれば、元気を無くすのは当然の事だろう。しかし、そればかりに支配されるのが人の人生ではない。僅かにでも感じる喜びと楽しみを切っ掛けにして、元の自分を取り戻して行かなくてはいけない。
 その為にも、灯馬は自らの姪孫が見せる僅かなサインを見逃さぬよう、注意深く観察を続けて来た。
 少年の考えを理解するには、自分はあまりにも年を取り過ぎていると実感させられたが、それでも、ようやくつかみかけた糸口にすがる思いで、日々喜を無理やりこの登山に巻き込んだのであった。

 「ここに慣れたら、今度はもっと高い山に登ってみよう」

 灯馬は、温めたお茶を日々喜に差し出しながら話し掛けた。

 「分かりました。ありがとうございます」

 そう言うと、日々喜は差し出されたお茶を受け取った。

 「ここは標高も低いし、見晴らしも良くない。近くの名高い山なら、写真で見せたような景色も楽しむ事ができるだろう」
 「……そんなに高いんですか?」

 僅かに興味を引いたかのように、日々喜は顔を上げ質問を返した。

 「県下随一! 百名山にも選ばれた山がある。日々喜に見せた写真も、そこで撮ったのだ」

 灯馬は日々喜の見せた僅かな目の輝き見逃さず、意気揚々と話し続けた。

 「何時ですか?」
 「ん?」
 「直ぐに登りますか?」

 矢継ぎ早に質問を繰り返す日々喜に対し、灯馬は待て待てと、慌てて懐から自らのスケジュール帳を取り出した。日程は、生憎な事に年末までびっしりと埋まっていた。

 「うーむ……」

 悩まし気な唸り声を上げる中、日々喜は焚火に照らされたオレンジ色の顔を灯馬に向け続けた。

 「ふむ、そうだな……、もうしばらく、日々喜がこの山に慣れてからがいいかもしれん。私の様に足腰を鍛えてから挑戦するんだ」

 そう言われて、日々喜は目の前に座る老人の身体を上から下まで見渡した。年の割にがっしりとした体格は、登山用に厚着した服装からも分かる程に鍛え上げられている。都会育ちの自分の身体とは比べ物にはならない。

 「……分かりました」

 そう言うと、日々喜は再び焚火を見つめ始めた。その瞳には先程見咎めた輝きは消えており、代わりに炎のオレンジ色の明かりを灯馬の方へ反射した。
 灯馬は内心しまったと思いながら、弁解するように話し掛けた。

 「日々喜。山を侮ってはいけないよ。日常を離れた世界では、思いもよらない危険が沢山ある。体を鍛える事よりも、日々喜はそれらに慣れる必要があるという意味さ」
 「日常を、離れた世界、ですか?」

 灯馬は頷くと自分達がキャンプを張る周囲を示した。既に日が傾き始め、日々喜達の周りは、ほのかに影が差し始めている。

 「ここには電気もガスもないだろ。この焚火に薪を加えなければ、足下さえおぼつかない程の暗闇になる。現代人が日常を過ごす生活環境とはかけ離れているのさ」

 日々喜は灯馬の話を聞きながら、周囲へ目を配り始めた。生い茂る草木の中は既に闇が支配し、気の早い秋夜の虫達が鳴き声を上げ始めていた。
 変わって、木々が伐採され切り開かれた空間からは、先程まで目にしていた街の景観の一部を見る事ができる。夕闇の広がりに呼応するかのように、家々の明かりが灯されて行くのが分かった。
 日常から離れた世界。
 あそこが人の住む世界なら、ここは虫たちの住む世界だ。
 遠く街の灯をながめる日々喜はそう考えた。

 「遠くに来た気分になったな、日々喜?」
 「遠く?」

 灯馬は優しく笑いながら頷いた。

 「君が庭先から良くながめていた山の一つがここ。我が家とは目と鼻の先だけど、登ってみると、あんなに家が小さく映る。そして、夕日に照らされながらも、木々に囲まれた山はこんなにも暗いんだ。遠いいと言うのはね、こうした君の知らない世界の事を言うんだよ」
 「僕の知らない世界……」
 「そう感じるのは素敵な事だ。そして、知らない事だからこそ慎重に、ゆっくり慣れて行く必要がある。知らない世界を知りたいと思った気持ちは、それまで大切にしまっておきなさい」

 知りたい。自分がそう感じていた。
 映像から見た風景。そこから感じた気持ちをハッキリとした言葉にして来なかった。しかし、目の前に鎮座する大伯父からそう言われ、日々喜はその時の身体を揺さぶられた感覚を思い出した。
 それが自分に取って、知りたいという感覚なのだ。
 日々喜は混乱しているかのように視線を右往左往と泳がせると、ようやくの所で目の前の焚火に焦点を定めた。

 「……分かりました」

 日々喜がそう言うと、灯馬は頭をうなだれる様にして苦笑した。
 日々喜は今年で十三歳、自分が同じ年齢であった時を考えれば、こんな曖昧な言葉で言いくるめるのは馬鹿にし過ぎだったかも知れない。何とか仕事のスケジュールを詰めて、秋の終わりまでにもう一度山に登れるようにするべきか。
 再び自身のスケジュール帳を確認しながら灯馬はそう考えた。

 「伯父様!」

 日々喜が立ち上がり、叫ぶような声を上げた。

 「ん!? なんだい?」
 「僕、この山で修行します。心身共に鍛え上げて、伯父様の様な立派な足腰に仕上げて見せます」
 「日々喜……」
 「一緒に山へ行きましょう! 知りたい事が沢山あるんです」

 姪孫のまくし立てたセリフに呆気にとられ、灯馬は茫然と日々喜の事を見つめ続けた。

 ――良く言った。日々喜!

 日々喜の耳に、そのような言葉が響いた時、どこからともなく一羽のカラスが舞い降りて来た。

 ――話は聞かせてもらった。この山にあっては俺が面倒を見よう! 

 カラスは焚火を囲う二人のそばで、しきりにカアカアとわめき散らすと、両翼を力強く広げ意気込みの様な物を見せつけた。
 そんなカラスの不思議な動きを見てか、呆気に取られていた灯馬は現実へと帰って来た。

 「そうだな、前向きに考えてくれて私もうれしいよ。この山を含め、家が所有してる山なら好きな時に登って構わない。好きなだけ遊んで行きなさい」
 「はい、ありがとうございます」

 ――ついでに剣術も教えてやろう灯馬。日々喜には才能がある。この俺がトウワ国にさえ通じる剣士に育て上げてやるぞ!

 「それと、日々喜。これだけは守ってくれ。夜一人で山に入ってはいけない。いいね」
 「夜ですか?」

 夜間の登山など考えもしていなかった。思わず、日々喜は聞き返す。

 「そうだ。君の生まれるずっと昔、ここで事故があった。慣れない子供が夜中に山に入ったのだ」
 「その子はどうなったのでしょう?」
 「未だに見つかっていない。きっと遠くに行ってしまったのだろうね」

 灯馬は何処か悲しみを帯びたような声でそう言うと、じっと焚火を見つめ続けた。

 ――ふははは! 俺様が見張っててやる。夜中に悪さをしたら、頭をくちばしで突っついてやるぞ! ふははは!

 「ふむ、カラスの巣が近くにあったのかな?」

 灯馬は傍らで騒ぐカラスを見据えてそう言うと、一本の薪をつかみ立ち上がった。

 ――うわわ!? ば、馬鹿。冗談だ。冗談、冗談。小僧相手には、羽で叩く程度に留めてやるよ!

 焚火を背にして立ち上がった巨体の老人を前に、カラスは慌てた様に飛び去って行った。

 ◆◇◆◇◆

 フォーリアムの敷地内、宿舎を挟んだ倉庫の中には、研究で用いられる機材や庭のせんてい用の道具、馬車等がしまい込まれている。
 夜、日々喜は一人でそこに居た。
 昼間の騒動を経て、今まで仮眠を取っていたのだった。
 森に入る為の準備として、ランタンを探していた。夜空は満月の様に輝く靄が掛かっており、ある程度は見通しが利くのだが、それでも、森の中となれば話が違ってくるだろう。
 日々喜は並べて置いてあるランタンを一つ一つ手に取り、火をつけ、明るさを確かめながら選んで行った。
 頭の中では、後継者を探すための計画を練っている。
 行く先はイバラの森の東側、ルーラーの住処。森全域の大まかな地図は既に頭の中に入っている。迷わず行ける自信があった。その上で、警戒にあたる魔導士達に見つからず、モンスターや獣にも遭遇しない様に努めなくてはいけない。
 日々喜は自分の腰に携帯するアトラスに目をやった。
 大きすぎて不便で邪魔だ。魔導がちゃんと使えれば、話しも変わって来るのだが、残念な事に今の日々喜には何度やっても上手く使いこなす事が出来ない。代わりに刃物を持って行きたいとも考えたが、ナイフ一本すら持ってはいなかった。そして、身の上を偽っている今、日々喜にはどうしてもこの邪魔なアトラスを手放す事が出来なかった。
 選び終えたランタンを腰に身に着け、日々喜は深呼吸をした。
 ふと、大伯父灯馬の言葉が頭を過る。イバラの森にも思いもよらない危険が沢山あるかもしれない。
 日々喜は、自分が想定しない危険が起きない事を祈りながらマントを羽織ると、倉庫を後にした。

 「あれ、日々喜何してるの?」

 倉庫を出たところで、日々喜は呼び止められた。

 「オ、オレガノ!? まだ起きてたの?」
 「うん。研究会。今終わった所よ」

 オレガノは眠そうに目を擦ってそう言った。

 「日々喜は今起きたの? 体調は平気?」
 「うん。平気だよ。……その、それじゃ急ぐので、失礼します」

 日々喜はそう言うと、そそくさとその場を立ち去ろうとした。

 「ん? 怪しいわ! ちょっと待って」

 日々喜はオレガノに捕まった。

 「オレガノ静かに。夜中ですよ」
 「お、さぼり野郎。今更お目覚めかよ」

 オレガノに続き、リグラと、研究用の機材を抱えたキリアンが姿を現した。

 「さぼりじゃないわ。そんな事よりリグラ、キリアン、日々喜が怪しいのよ」
 「どうした。こんな時間にそんな恰好で、森にでも行くのか?」
 「え!? えっと……」

 キリアンは日々喜が答えるのを待たないで、機材を抱えたまま倉庫へと入って行った。

 「そうなの日々喜。森に行く気だったの?」

 オレガノの質問に日々喜はくちごもる。

 「ダメよ! 森はモンスターが出るの、知っているでしょ?」
 「まあまあ、まず理由を聞いてみないと。それに、本当に森に行こうとしてるのか分かりませんし」
 「ごめん、リグラ。本当なんだ。僕は森に行くよ」
 「え!? 正気なんですか? 一体何の為に?」

 日々喜は、昼にブレア達から聞いたアイディ・クインの話をし始めた。

 「そんな、アイディが……」

 リグラもオレガノも驚いた様子で日々喜の話しを聞いていた。特にイバラ領出身のオレガノはショックを受けたようだった。

 「オレガノ、リグラ。お嬢様もショックを受けていた。イバラ領の事をとても心配されてる。僕はそんな彼女の力になりたい。少しでも元気が取り戻せればいいと思ったんだ」
 「それで、後継者を探しに……。ですけど、危険な事は分かっているのでしょう? 貴方は魔法陣だって、満足に展開できないのに」
 「分かってるリグラ。それでも、行かなきゃ」
 「日々喜。それは、分かっていません。無謀ですよ。後継者を探すにしても、準備を行う必要があります。ルーラーの住処にだって、無断で入る事は憚れる事なのです。貴方の気持ちは分かりますが、日を改めて、フォーリアムの皆さんと話し合った上で決めるべきですよ」
 「……僕には時間が無いんだ」
 「どういう意味です?」
 「コウミと話をした。コウミはここが危険だから、今晩中に僕を連れて領外に出ると言っていた。だから、今日中に、僕一人で解決させなくちゃダメなんだ」
 「日々喜……」
 「ごめん、リグラ。危険な事も、無謀な事も承知してるけど、それでも今日、僕は行かなくちゃいけない」
 「分かったわ、日々喜」

 日々喜の話しを聞き、オレガノがそう言った。

 「オレガノ? 日々喜を行かせてしまうのですか?」
 「ええ。でも、一人では行かせない。私も一緒に行くわ」
 「オ、オレガノ!? 正気ですか?」

 オレガノはリグラに頷き答える。

 「ここはイバラ領だもの。私の故郷の危機は、イバラの魔導士が解決しなくちゃ。それに、一人で行くのは無謀だって、そう言ったのはリグラじゃない」

 戸惑うリグラ。
 タイミング良く倉庫から顔を出したキリアンに、助けを求める様に視線を送った。

 「話し、まとまったのか?」

 キリアンは、手にランタンを二つぶら下げながら尋ねる。

 「見つかったら厄介だろ? さっさと準備して行こうぜ」
 「キリアン!? 行くつもりですか?」
 「当然だろ。ルーラーの代替わり何て滅多にある事じゃない。お嬢の事なんかどうでもいいけど、後継者っての見てみたいんだ。あんたが日々喜を止めも無駄だぜ。俺は一人で行けるからな」
 「貴方って人は……」
 「心配しないでリグラ。朝までには帰って来るわ。それに、危険を感じたら直ぐに引き返して来る。その時は日々喜が何と言おうと引きずって帰って来るから」
 「俺にそんな必要は無いからな。帰るなら二人だけで帰れよ」
 「あら? キリアンは一人で行けるんでしょ? 途中まで私達と一緒に行くの?」
 「こいつめ……」

 キリアンとオレガノのやり取りを茫然とながめるリグラ。ふと、日々喜が自分の事を見つめ続けている事に気が付いた。
 リグラの次のセリフに期待しているのか、一切視線を外す事無く、その場の空気の様なものを目で伝え続ける。

 「……分かりました。それなら、私も行きますよ」

 リグラが折れた。

 「本当!? いいの、リグラ?」

 オレガノがそれを聞いて喜んだ。

 「はい……、正直、一人で残される方が不安ですよ」
 「決まりだな。全員準備して、後で宿舎の裏庭に集合しようぜ」

 倉庫前で密談を行っていた見習い魔導士の一団は、中庭を突っ切り、宿舎へと向かい始めた。

 「皆、ありがとう」

 後に続く日々喜が、前を歩く見習い達にそう言った。
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