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2「天国までの49日間」
しおりを挟む職業柄、当然のこととして、館内の本を自分でも色々と読んでみる必要がある。そもそも、内容をまったく読まずに子どもたちに提供することはできないからだ。
先日たまたま読んだのが、生徒からのリクエストがあって入れた、櫻井千姫さんの「天国までの49日間」。
もとはケータイ小説だったらしいが、作者の生年と執筆年を照らし合わせてみると、どうやらこれは作者が20歳を少し超えたころに完結させた作品であるようだ。
しかし、読んでみて個人的にはかなり「う~ん……」となるお話だった。
何より、全体に精神年齢が幼すぎる。いくら中学生だとはいっても、これは幼すぎるのではないか。
主人公とその周囲の友達がみんな中学生なので、まあそこまではいい。だとしても、周りの大人たち、先生であるとか親であるとか、そういった人々のメンタリティまでがとても浅く、また幼く感じるのだ。執筆当時の作者がかなりお若いわけなので、ある程度仕方がないのかもしれないが。
ただ司書の立場から、「これを、この本の本来のターゲット層であるのだろう生身の中学生が喜んで読んでくれるか?」と考えると、かなり疑問に思ってしまった。
むしろ「バカにしてんの?」と腹を立てる子がいそうな気がして心配になる。
なにしろ、背伸びしたい盛りだし。
以下、ややネタばれが含まれるかもしれませんので、ご注意ください。
全体に、いじめという非常に重い問題を扱っているにしては、解決がお手軽すぎるようにも見える。
冒頭で主人公の少女はいじめを苦に自殺してしまうわけだが、その後、いじめていた側の子たちの内面を知って、つぎつぎに彼女たちを理解し、許していく。その流れが、どうも安易にすぎる気がしてしまうのだ。
主人公がどんなにお人好しの「いい子」なのだとしても、いじめを苦に自殺する子がこういうメンタリティなのは腑に落ちない。
もしも現実にいじめに遭っている子がこれを読んで、どれほど心に響くのだろうと、司書としてそういう部分も心配になった。
引き合いに出して申し訳ないけれども、高校生で「君の膵臓をたべたい」でデビューした住野よるさんは、もっとずっと精神的に大人な小説を書いておられる。彼の作品は、うちの図書館でも次々に子どもたちが借りていく人気作のひとつだ。
どこかクールで、何かを諦めていて、「どうせ何をやっても大したことはできないし」といったような、どうにもならない閉塞感。そんな、いまの若い人たちの空気感がどの作品にも全編に漂っていて、読んでいて少しつらくなる時もあるけれども。
でも、それが「時代を映す」ということなのかなとも思ったり。
ここまで書いてきて少し心配になったのでひと言。
このエッセイでは、特に個別の本や作者について批判をおこなう意図はありません。
どの本にもそれぞれの存在意義があり、所感は私個人の感想に過ぎません。読者それぞれの感想や、好みがあってよいことだと思います。ただ「こういう風に受け取る人がいるんだな」ぐらいの感じで流してくだされば結構です。
興味が湧くかたはどうぞ、実際にその本をお手に取ってみてくださいね。
それが何よりだと思います。
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