3 / 135
3「ソードアート・オンライン」
しおりを挟むその学校のカラーもあることなので色々だろうなとは思うけれど、うちの学校はそんなに勉強ができる人が多くない……らしい(実は、とある先生にこう言われて絶句したことがある・苦笑)。
だからなのか、放っておいても自分でしっかり読書ができるという生徒は多くない。
けれども、それでも「読みたい」と思わせる作品には、やっぱり力がある。
たとえば川原礫さんの「ソードアート・オンライン(SAO)」シリーズ。
表紙が今どきの萌えキャラ絵で、いわゆるライトノベルらしい装丁であるために、最初は私も、先生方の顔色をうかがいつつ恐る恐る、そろ~っと入れた。
実はほかの学校の司書さんで「あの装丁に嫌悪感がある」という方を知っている。
「生徒は『入れて、入れて』ってすごく言うけど、あれは入れたくないのよね」
「あの背表紙がうちの書架に並ぶのがイヤで……」
と、そんなことを本当に嫌そうに語っておられた。言葉尻からも表情からも、かなり敬遠していることがうかがわれた。
「えーと……。いや、うち、あるんだけど……」
と思いつつ、私はその方がうちにあるSAOをぺらぺらめくって顔を顰めているのを黙って観察していた。
古きよき本を愛する人ほど、ああいう装丁にはアレルギー反応が出るという良い例だなと思った。ましてや、ある程度のお年になっている真面目な司書さんだと、そうなりがちなのだろうなと。
あの装丁も、本の売れなくなったこの時代に、出版社が売るために必死に編み出した方法のひとつなわけだ。けれど、現場の(真面目な)司書には毛嫌いされ、はねられてしまいかねないというこの現実……。
とは言え、すでに書いた通り、うちは気にせず入れている。あれも、ちゃんと中身を読めば、読者に「色々つらいことがあっても、それでも頑張ろうよ」というメッセージが読み取れる作品だと思うからだ。
生徒たちもよく分かっていて、他の子が借りていて今は図書館になくても、「つぎ、借りたいです」と予約まで入れていく子も多い。
一応、教育現場であるという縛りがあって、入れられる本にはある程度の制限がある。けれど、それでもここは図書館だ。
図書館は、できるだけ利用者の需要に応える場所でなくてはならない。
学校である以上、18禁のものは当然ダメだけれど、少なくとも単なる司書の好みや勝手な判断で「これは入れよう、これは入れたくない」と利用者から本を遠ざけるのはいかがなものかと私は思う。
それを読んで、ちょっと元気になったり、同じ本を読んだことのある友達と、休み時間に話に花が咲いたりする。そういうことのための本があってもいいわけだ。
ついでながら数か月後、同じ司書さんが同様のことを理由に「やっぱりアレ、入れることにしようかと思って……」とおっしゃった。
それを聞いて、ちょっとほっとした私がいたのでした。ははは。
さてさて、今回はここまでといたします。
お付き合いをありがとうございました。
気が向いたらまた更新したいと思います。
0
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
アルファポリスとカクヨムってどっちが稼げるの?
無責任
エッセイ・ノンフィクション
基本的にはアルファポリスとカクヨムで執筆活動をしています。
どっちが稼げるのだろう?
いろんな方の想いがあるのかと・・・。
2021年4月からカクヨムで、2021年5月からアルファポリスで執筆を開始しました。
あくまで、僕の場合ですが、実データを元に・・・。
中1でEカップって巨乳だから熱く甘く生きたいと思う真理(マリー)と小説家を目指す男子、光(みつ)のラブな日常物語
jun( ̄▽ ̄)ノ
大衆娯楽
中1でバスト92cmのブラはEカップというマリーと小説家を目指す男子、光の日常ラブ
★作品はマリーの語り、一人称で進行します。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる