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七章 腹黒妖精熊事件
128. 夜のショウネシー
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「領地の家門毎に分かれてやる模擬戦だよ。因みに拝名貴族の家は、どこかの領地の陣営に入れてもらう仕組みな。中等部から参加必須」
「参加必須?!」
ヴェリタスの説明に、マグダリーナは思わず大きな声が出た。
「初等部の秋に二日間休みの日があったろ? 数日前から各領地毎に陣地取りとかして、剣、魔法、従魔、魔導具……父兄と部外者の直接参加以外は何使っても良い。一日目は魔石集め、二日目は自陣を守りつつ他の陣地の旗を集めて競うんだ」
「領地毎にって、この人数だとかなり不利じゃない?」
「んー? コッコやマゴーも使えるからそうでもないと思うけど、初年度だし、どっかの領と同盟組んで様子見するのも良いかもな」
「なるほど、同盟……」
初めて聞く行事に、びっくりするばかりのマグダリーナだったが、レベッカは冷静にヴェリタスに質問した。
「その……領地戦の成績って、結構重要ですの?」
「上級生にとっちゃかなり重要だ。王や父兄、各騎士団長や魔法師団がこぞって見学にくるから、優秀な成績や目立つ活躍をして、就職先への縁を繋げたいだろうし、拝領貴族の家門にとっては将来の家門の長の力量を見られ、色々判断される場でもある。家門の支援がガンガン入るから、本物の戦場さながらの状態になるらしいよ」
待って! ちょっと待って!? 本物の戦場って、今言った??!
マグダリーナは普通に剣道の試合とか、そういう感じの想像をしていたが、全然違っていた。
「それって、命の危険は……」
「一応ない。ウシュ時代の魔導具で結界を張るんだ。なんでもその結界内の生物は、どんな怪我でも絶命しない……怪我も徐々に回復するし、倒壊した建物とかもそうらしい。あ、家政科の女生徒は、ほぼ後方支援が通例らしいな」
マグダリーナとレベッカは顔を見合わせた。
「うちは棄権でいいんじゃない?」
「最終的に棄権でもいいけど、せっかくだから経験は積んでおきたい。少しだけでも俺とライアンは参加させてくれよ」
「う……確かに……そう言われると経験は大事よね……」
実際ベンソンやケントみたいな人がいたのだ。それにいつでも直ぐにエステラ達が助けてくれる状態にあるとは限らない。
(前世の感覚で、戦闘とかとは無縁でいたいと思ったけど、そういう訳にはいかないんだ……)
「魔獣討伐の方は何日間行く事になるんだ?」
ライアンが少し心配そうに聞いた。
「夏休み三日目から一週間だな。テントの持ち込み出来ないのが残念」
「あら、何があるかわからないんだから、一応テントとアッシはエステラに借りて持っていけば? チャーとルタの収納なら入るでしょう? 使わない前提でも、他にも色々準備してくべきよ。その分シャロン伯母様と私達が安心できるんだから」
「そう言うもんか?」
マグダリーナの意見にライアンも同意する。
「そう言うもんだ。討伐に行くのがリーナやレベッカがだったら、お前だって同じこと言うだろ」
「もっともだ」
ヴェリタスは少し照れたように、笑った。
◇◇◇
今年はショウネシー領の農耕地や道の各所、公園等に、休憩所が設置された。
この休憩所には所謂公衆トイレと、授乳室、小さな水場、テーブルと椅子、そしてアッシが設置された休憩所で、トイレは通常の男女用の他に、小さな子や介護者のための付添可のもの、オムツ替え用、そして魔獣用と五ヶ所もあり、対象外の者は入れない仕組みになっている。魔獣用は主にコッコ達用だ。
アッシも休憩所の空調を整えるだけでなく、飲み物や軽食、ちょっとした消耗品の販売、荷物を自宅へ転送等も出来るようになっていた。
そこの管理役として採用されたのが、エルロンドにも派遣されているサトウマンドラゴラのマゴーだった。その色から白マゴーと呼ばれている。
アッシのいる休憩室は入り口が広いガラス張りで、神殿と同じく妖精燈を使って夜間もほんのり明るく、王都からバンクロフト領へ帰ってくる商人達からも、夜に安心して利用出来ると好評だった。
「あの大地の上に星のような輝きがある所が、ショウネシー領ですか?」
王の生誕祭が終わって直ぐの真夜中、空飛ぶコッコ車の窓から、ドロシー王女は外を眺めてシャロンに尋ねた。
王都や他領でも、夜間に賑わう場所はあるが、大抵は限られた一画だった。
しかしショウネシー領は、信号機や各所に設置された休憩所の燈で、領地全体に小さな星が散りばめられたように見えた。
「ええ、そうです。領内各所に設置した休憩所の燈ですわ」
「休憩所?」
「水場と軽い飲食の出来る休憩場所、そしてお花摘みの場所があり、防御魔法もかかってますので、魔獣が出た際の緊急避難場所にもなりますわ」
「そんな場所がこんなにも……?!」
シャロンは、頷いてさらに説明した。
「元々は畑で働いてる農夫達が利用出来るようにと考えてたようですけど、人の移動する所にはあった方が良いだろうと設置を拡大致しましたの。人の行き来も徐々に増えて来ましたし」
「財政は大丈夫ですの?」
「ギリギリ赤字にならない所を維持してますわね。それもショウネシーの魔法使い達の技術があってこそですけど」
「お帰りなさませ」
「夜勤ご苦労様です。こちら侯爵夫人からの差し入れです。東門と分けて下さい」
「ありがとうございます!!」
王都への行き来は、陸路なら東門だが、コッコ車を使う空路では南門を利用した。
シャロンの従者は南門の門番に、お菓子の差し入れを渡すと、客人の人数と、ショウネシー伯爵のコッコ車は夜が明けて昼前に帰ってくる予定だと伝えた。
そしてコッコ車がアスティン邸に向かって走る途中、信号待ちのコッコ車の前を、見知った顔が鞍も付けずにコッコ(オス)に乗って通り過ぎた。
「ヴェリタス様!?」
「参加必須?!」
ヴェリタスの説明に、マグダリーナは思わず大きな声が出た。
「初等部の秋に二日間休みの日があったろ? 数日前から各領地毎に陣地取りとかして、剣、魔法、従魔、魔導具……父兄と部外者の直接参加以外は何使っても良い。一日目は魔石集め、二日目は自陣を守りつつ他の陣地の旗を集めて競うんだ」
「領地毎にって、この人数だとかなり不利じゃない?」
「んー? コッコやマゴーも使えるからそうでもないと思うけど、初年度だし、どっかの領と同盟組んで様子見するのも良いかもな」
「なるほど、同盟……」
初めて聞く行事に、びっくりするばかりのマグダリーナだったが、レベッカは冷静にヴェリタスに質問した。
「その……領地戦の成績って、結構重要ですの?」
「上級生にとっちゃかなり重要だ。王や父兄、各騎士団長や魔法師団がこぞって見学にくるから、優秀な成績や目立つ活躍をして、就職先への縁を繋げたいだろうし、拝領貴族の家門にとっては将来の家門の長の力量を見られ、色々判断される場でもある。家門の支援がガンガン入るから、本物の戦場さながらの状態になるらしいよ」
待って! ちょっと待って!? 本物の戦場って、今言った??!
マグダリーナは普通に剣道の試合とか、そういう感じの想像をしていたが、全然違っていた。
「それって、命の危険は……」
「一応ない。ウシュ時代の魔導具で結界を張るんだ。なんでもその結界内の生物は、どんな怪我でも絶命しない……怪我も徐々に回復するし、倒壊した建物とかもそうらしい。あ、家政科の女生徒は、ほぼ後方支援が通例らしいな」
マグダリーナとレベッカは顔を見合わせた。
「うちは棄権でいいんじゃない?」
「最終的に棄権でもいいけど、せっかくだから経験は積んでおきたい。少しだけでも俺とライアンは参加させてくれよ」
「う……確かに……そう言われると経験は大事よね……」
実際ベンソンやケントみたいな人がいたのだ。それにいつでも直ぐにエステラ達が助けてくれる状態にあるとは限らない。
(前世の感覚で、戦闘とかとは無縁でいたいと思ったけど、そういう訳にはいかないんだ……)
「魔獣討伐の方は何日間行く事になるんだ?」
ライアンが少し心配そうに聞いた。
「夏休み三日目から一週間だな。テントの持ち込み出来ないのが残念」
「あら、何があるかわからないんだから、一応テントとアッシはエステラに借りて持っていけば? チャーとルタの収納なら入るでしょう? 使わない前提でも、他にも色々準備してくべきよ。その分シャロン伯母様と私達が安心できるんだから」
「そう言うもんか?」
マグダリーナの意見にライアンも同意する。
「そう言うもんだ。討伐に行くのがリーナやレベッカがだったら、お前だって同じこと言うだろ」
「もっともだ」
ヴェリタスは少し照れたように、笑った。
◇◇◇
今年はショウネシー領の農耕地や道の各所、公園等に、休憩所が設置された。
この休憩所には所謂公衆トイレと、授乳室、小さな水場、テーブルと椅子、そしてアッシが設置された休憩所で、トイレは通常の男女用の他に、小さな子や介護者のための付添可のもの、オムツ替え用、そして魔獣用と五ヶ所もあり、対象外の者は入れない仕組みになっている。魔獣用は主にコッコ達用だ。
アッシも休憩所の空調を整えるだけでなく、飲み物や軽食、ちょっとした消耗品の販売、荷物を自宅へ転送等も出来るようになっていた。
そこの管理役として採用されたのが、エルロンドにも派遣されているサトウマンドラゴラのマゴーだった。その色から白マゴーと呼ばれている。
アッシのいる休憩室は入り口が広いガラス張りで、神殿と同じく妖精燈を使って夜間もほんのり明るく、王都からバンクロフト領へ帰ってくる商人達からも、夜に安心して利用出来ると好評だった。
「あの大地の上に星のような輝きがある所が、ショウネシー領ですか?」
王の生誕祭が終わって直ぐの真夜中、空飛ぶコッコ車の窓から、ドロシー王女は外を眺めてシャロンに尋ねた。
王都や他領でも、夜間に賑わう場所はあるが、大抵は限られた一画だった。
しかしショウネシー領は、信号機や各所に設置された休憩所の燈で、領地全体に小さな星が散りばめられたように見えた。
「ええ、そうです。領内各所に設置した休憩所の燈ですわ」
「休憩所?」
「水場と軽い飲食の出来る休憩場所、そしてお花摘みの場所があり、防御魔法もかかってますので、魔獣が出た際の緊急避難場所にもなりますわ」
「そんな場所がこんなにも……?!」
シャロンは、頷いてさらに説明した。
「元々は畑で働いてる農夫達が利用出来るようにと考えてたようですけど、人の移動する所にはあった方が良いだろうと設置を拡大致しましたの。人の行き来も徐々に増えて来ましたし」
「財政は大丈夫ですの?」
「ギリギリ赤字にならない所を維持してますわね。それもショウネシーの魔法使い達の技術があってこそですけど」
「お帰りなさませ」
「夜勤ご苦労様です。こちら侯爵夫人からの差し入れです。東門と分けて下さい」
「ありがとうございます!!」
王都への行き来は、陸路なら東門だが、コッコ車を使う空路では南門を利用した。
シャロンの従者は南門の門番に、お菓子の差し入れを渡すと、客人の人数と、ショウネシー伯爵のコッコ車は夜が明けて昼前に帰ってくる予定だと伝えた。
そしてコッコ車がアスティン邸に向かって走る途中、信号待ちのコッコ車の前を、見知った顔が鞍も付けずにコッコ(オス)に乗って通り過ぎた。
「ヴェリタス様!?」
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