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七章 腹黒妖精熊事件
143. 女神の闇花
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「ゼラ!」
マグダリーナは、エステラの従魔の名を呼んだ。
転移魔法でやって来た、仔竜ハイドラゴンの真っ白ぷにぷにボディを、ニレルとエデンの手ががっつりと掴む。
「タラは無事か?!」
「俺の娘は無事なんだろうな!」
『やめて~今のワシいたいけな仔竜じゃよ。ハイエルフ二人の握力で潰されたくないんじゃ』
手足をバタバタさせて、ゼラはマグダリーナのとこまでふわふわ飛んで逃げて来た。
ここが安全地帯とばかりに、マグダリーナの胸元に飛び込んだゼラだったが、マグダリーナはゼラを受け止めて、決して逃がさないという気迫を込めて聞いた。
「それで、どうしてタラが一緒じゃないの?」
外部にはニレルとエステラは、その名を明かさないよう気を遣っていた。
ディオンヌ商会が作った女神教の動画でも、ニレル役をアンソニーはしていたが、縁あって育ててるハイエルフの子供としかわからない様になっていたし、役名も「ハイエルフの坊や」だった。
動画は現在、国王の配信許可待ち状態だが、ニレルがエルフェーラの息子であることは秘密なのだと察せられた。
それはそうだろう、他国でも女神として祀られている存在の息子が現存してるとなると、面倒事の予感しかない。エステラはいつもニレルと一緒にいるので、二人は一蓮托生で偽名だ。
『人の子の嬢ちゃんまで……ワシを本当に大事にしてくれるのは、ハイエルフの嬢ちゃんだけじゃ』
「それはそうだから。あなたの大切なご主人様はどうしたの?」
『女神の闇花を育てて餓死寸前になったんじゃ……いま王都の工房でスライム達に世話されながら栄養補給しとるから、ワシが先に花を届けに来たんじゃよ。嬢ちゃんもヒラも無茶しよる……でも嬢ちゃんじゃないと花は咲かせられん……ワシも黒のも見守るだけしかできんかった……』
マグダリーナは、ん、と思った。
ニレルはエステラが女神の森に行ってると言ってなかったか。
以前ササミ(オス)はエステラを女神の森の主人だとも言っていた。
おそらくエステラの師でありニレルの叔母たるハイエルフ、ディオンヌがそうであり、エステラがそれを引き継いだんだと思っていたんだけど。
「女神の森に黒のハイドラゴンがいるの?」
ニレルがしまったという顔をした。
『おらんよ? あやつの住処は《果ての地》じゃあ。そこで一度も目覚めたことのない、女神の闇花の卵を守っとったよ』
果ての地とは、女神の森とはまた違った過酷さで、入ったものは帰って来れないと言い伝えられる場所だ。
「ニィ……!!」
「すまない……云えばリーナは必ず心配すると思って」
「当然よ! 一緒に行けなくても心配くらいさせてよ!! だからニィもエデンも心配でずっと難しい顔してたのね……」
「まあまあ、マグダリーナ。キミも俺の娘の為なら相当無茶をする。キミに心配かけてると思うと、俺の娘も採取に集中出来なかっただろう。ゼラ、花を孵すのに必要な血はどの位で済んだんだ?」
『嬢ちゃん四人分じゃよ』
「アァン?! 死んでじゃん、俺の娘!!!!」
「大変! ニィ様息して!!」
ヨナスが真っ青になって胸を押さえるニレルの背中をバンバン叩く。
《場》にいる二人には、こちらの騒動は聞こえないらしく、順調に女神の奇跡を行使していた。
『女神の光花はエルフェーラが、女神の闇花はエデンが作ったんじゃ。光花が使いやすくて闇花を求める者は居らんかった。まず卵から孵して精霊花……にする条件が、女神の名を知るハイエルフの女性の、神力がたっぷりはいった血を与えることじゃったしな』
「あれはディオンヌに贈る為に作った花なんだよ……ディオンヌは受け取ってくれなかったがな」
そう言って、エデンは悲しげに首を振った。
「血が必要なんて条件にしたからだよ」
ヨナスが呆れ顔でいう。
「始めの設定では、一滴あれば充分だったんだ。ところが一度世界が亡びかけ、魔獣が生まれて環境が変わり、花も卵の中で独自の変化をしだしたんだろうな。折角彼女好みの美しい花を造ったのに、残念だよ」
「はあ……そして現在、採取できるのがタラしか居なくなってたって事か……」
ヴェリタスも呆れて、ため息を吐く。
ゼラは羽根をパタパタさせながら、神妙な顔をした。
『黒のに聞いたんじゃが、あの花、初期設定でエデンの声で愛を囁くようになっとったらしいんじゃ。どんなに魔力と薬効高くても、絶対ディオンヌ使わんじゃろ』
「それは使わないわ」
マグダリーナは強く同意した。
『他のハイエルフも使いたくないわな。だから花自身も、精霊花として生まれる前に、その機能捨ててもっと人に役立つ様にとか試行錯誤して無駄に孵化に必要な血が多くなったんじゃ』
捨てられたのか、エデンの声で愛を囁く機能。懸命な選択だと思う。
「……俺の娘、怒ってた?」
『怒っとらんよ。立派な花達じゃと、笑っとったよ。お陰で女神の闇花達にめちゃくちゃ懐かれとるよ』
「タラ四人分の血なんてどうやって用意出来たの?」
マグダリーナは一番肝心な不思議事を確認する。
『嬢ちゃんが、ヒラに奇跡の魔法を教えて、ハラが嬢ちゃんから血を抜いた分、ヒラが嬢ちゃんの血を造って身体に入れとったよ。じゃから貧血や失血死の心配は無かったんじゃが、血中の糖分とかの燃料消費が激しくて餓死寸前になったんじゃ……』
血液は補充可能でも、血中の栄養までは補充できなかったわけだ。
とりあえず蜂蜜水と工房の果樹園の果物で糖分補給していると聞いて、ほっとする。
「それじゃあ、あと足りないのはアルミラージの角二本か……」
「それなんですが……」
ヨナスの確認に、マゴーが珍しくおずおずと言う。
「バーナード第二王子が王宮のマゴーを一体捕まえて、ドミニク・オーブリーの杖を持ち出し、彼がいる罪人の収容所へ向かったそうです」
マグダリーナは目を瞑り、天を仰いだ。
「女神様……どうしてこうなったの……」
呟かずには居られなかった。
マグダリーナは、エステラの従魔の名を呼んだ。
転移魔法でやって来た、仔竜ハイドラゴンの真っ白ぷにぷにボディを、ニレルとエデンの手ががっつりと掴む。
「タラは無事か?!」
「俺の娘は無事なんだろうな!」
『やめて~今のワシいたいけな仔竜じゃよ。ハイエルフ二人の握力で潰されたくないんじゃ』
手足をバタバタさせて、ゼラはマグダリーナのとこまでふわふわ飛んで逃げて来た。
ここが安全地帯とばかりに、マグダリーナの胸元に飛び込んだゼラだったが、マグダリーナはゼラを受け止めて、決して逃がさないという気迫を込めて聞いた。
「それで、どうしてタラが一緒じゃないの?」
外部にはニレルとエステラは、その名を明かさないよう気を遣っていた。
ディオンヌ商会が作った女神教の動画でも、ニレル役をアンソニーはしていたが、縁あって育ててるハイエルフの子供としかわからない様になっていたし、役名も「ハイエルフの坊や」だった。
動画は現在、国王の配信許可待ち状態だが、ニレルがエルフェーラの息子であることは秘密なのだと察せられた。
それはそうだろう、他国でも女神として祀られている存在の息子が現存してるとなると、面倒事の予感しかない。エステラはいつもニレルと一緒にいるので、二人は一蓮托生で偽名だ。
『人の子の嬢ちゃんまで……ワシを本当に大事にしてくれるのは、ハイエルフの嬢ちゃんだけじゃ』
「それはそうだから。あなたの大切なご主人様はどうしたの?」
『女神の闇花を育てて餓死寸前になったんじゃ……いま王都の工房でスライム達に世話されながら栄養補給しとるから、ワシが先に花を届けに来たんじゃよ。嬢ちゃんもヒラも無茶しよる……でも嬢ちゃんじゃないと花は咲かせられん……ワシも黒のも見守るだけしかできんかった……』
マグダリーナは、ん、と思った。
ニレルはエステラが女神の森に行ってると言ってなかったか。
以前ササミ(オス)はエステラを女神の森の主人だとも言っていた。
おそらくエステラの師でありニレルの叔母たるハイエルフ、ディオンヌがそうであり、エステラがそれを引き継いだんだと思っていたんだけど。
「女神の森に黒のハイドラゴンがいるの?」
ニレルがしまったという顔をした。
『おらんよ? あやつの住処は《果ての地》じゃあ。そこで一度も目覚めたことのない、女神の闇花の卵を守っとったよ』
果ての地とは、女神の森とはまた違った過酷さで、入ったものは帰って来れないと言い伝えられる場所だ。
「ニィ……!!」
「すまない……云えばリーナは必ず心配すると思って」
「当然よ! 一緒に行けなくても心配くらいさせてよ!! だからニィもエデンも心配でずっと難しい顔してたのね……」
「まあまあ、マグダリーナ。キミも俺の娘の為なら相当無茶をする。キミに心配かけてると思うと、俺の娘も採取に集中出来なかっただろう。ゼラ、花を孵すのに必要な血はどの位で済んだんだ?」
『嬢ちゃん四人分じゃよ』
「アァン?! 死んでじゃん、俺の娘!!!!」
「大変! ニィ様息して!!」
ヨナスが真っ青になって胸を押さえるニレルの背中をバンバン叩く。
《場》にいる二人には、こちらの騒動は聞こえないらしく、順調に女神の奇跡を行使していた。
『女神の光花はエルフェーラが、女神の闇花はエデンが作ったんじゃ。光花が使いやすくて闇花を求める者は居らんかった。まず卵から孵して精霊花……にする条件が、女神の名を知るハイエルフの女性の、神力がたっぷりはいった血を与えることじゃったしな』
「あれはディオンヌに贈る為に作った花なんだよ……ディオンヌは受け取ってくれなかったがな」
そう言って、エデンは悲しげに首を振った。
「血が必要なんて条件にしたからだよ」
ヨナスが呆れ顔でいう。
「始めの設定では、一滴あれば充分だったんだ。ところが一度世界が亡びかけ、魔獣が生まれて環境が変わり、花も卵の中で独自の変化をしだしたんだろうな。折角彼女好みの美しい花を造ったのに、残念だよ」
「はあ……そして現在、採取できるのがタラしか居なくなってたって事か……」
ヴェリタスも呆れて、ため息を吐く。
ゼラは羽根をパタパタさせながら、神妙な顔をした。
『黒のに聞いたんじゃが、あの花、初期設定でエデンの声で愛を囁くようになっとったらしいんじゃ。どんなに魔力と薬効高くても、絶対ディオンヌ使わんじゃろ』
「それは使わないわ」
マグダリーナは強く同意した。
『他のハイエルフも使いたくないわな。だから花自身も、精霊花として生まれる前に、その機能捨ててもっと人に役立つ様にとか試行錯誤して無駄に孵化に必要な血が多くなったんじゃ』
捨てられたのか、エデンの声で愛を囁く機能。懸命な選択だと思う。
「……俺の娘、怒ってた?」
『怒っとらんよ。立派な花達じゃと、笑っとったよ。お陰で女神の闇花達にめちゃくちゃ懐かれとるよ』
「タラ四人分の血なんてどうやって用意出来たの?」
マグダリーナは一番肝心な不思議事を確認する。
『嬢ちゃんが、ヒラに奇跡の魔法を教えて、ハラが嬢ちゃんから血を抜いた分、ヒラが嬢ちゃんの血を造って身体に入れとったよ。じゃから貧血や失血死の心配は無かったんじゃが、血中の糖分とかの燃料消費が激しくて餓死寸前になったんじゃ……』
血液は補充可能でも、血中の栄養までは補充できなかったわけだ。
とりあえず蜂蜜水と工房の果樹園の果物で糖分補給していると聞いて、ほっとする。
「それじゃあ、あと足りないのはアルミラージの角二本か……」
「それなんですが……」
ヨナスの確認に、マゴーが珍しくおずおずと言う。
「バーナード第二王子が王宮のマゴーを一体捕まえて、ドミニク・オーブリーの杖を持ち出し、彼がいる罪人の収容所へ向かったそうです」
マグダリーナは目を瞑り、天を仰いだ。
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呟かずには居られなかった。
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