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九章 噂と理不尽
186. ニレルの湯
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ショウネシー家のコッコ車が金と星の魔法工房に近づくと、門扉が自動に開き、誰咎める事なく車置場に停車する。
ヒラやハラ達より、一回り小さな、色とりどりのパステルカラーのスラゴー達が出迎えてくれた。
「いらっしゃーい! お茶にする? お菓子にする? それとも、け・い・しょ・く(軽食)?」
中に入ると、早速笑顔でエステラが聞いてきた。ヒラとハラもぷりんっとイケスラパウダーを撒き散らす。
「あ、はじめましてのお姉さんがいる! こんにちは。ショウネシーの魔法使いでーす」
目にも豪奢な豪邸で、それにもかすまぬ神秘の美貌の少女を見て、ミネットは口をパクパクさせていた。
◇◇◇
「リーナ様、ライアン様、お時間取らせてしまって申し訳ございません」
「お邸のマゴーも一緒なので、帰りも心配無いって言っておいたのに……」
マーシャとメルシャが、ソファでくつろいでいたところを立ち上がって、挨拶する。
「気にしないで! 二人は今日休暇なのでしょう? 私達もここに用事があったのよ」
マーシャとメルシャは、ショウネシー邸でのお仕着せとは違う、柔らかい絹綿混地の、フリルとピンタックのついた、ふわっとしたワンピースを着ている。おしゃれで、リラックスできる格好だ。父親譲りの灰銀の髪を下ろし、髪もお肌も輝いていた。
「二人とも綺麗だね」
ライアンはリーン王国の紳士として、ちゃんと褒めた。
「ありがとうございます。リーナ様にお仕えする身ですもの頑張って爪の先まで磨きをかけてもらいましたの」
「魔法使い様の美健魔法は、本当に素晴らしいんですのよ。全身が軽くなって、お肌も髪もつるつやですもの」
「美健魔法……」
マグダリーナは羨ましそうに、双子を見た。
「健康であることと美しさは切り離せないからね。マーシャとメルシャには、スラゴー達に教え込んだ美健魔法の数々を体験してもらってました。リーナとレベッカも舞踏会の前日はスペシャルコースいくわよ!」
マグダリーナはハッとして、本来の目的であったミネットを紹介する。
「タラ、彼女はミネット・ウィーデン子爵令嬢。昨年のクラスメイトで、レベッカと私の友人よ」
「……ステラ様……ステラ様とリナ嬢だわ……」
ミネットはうっとりと、エステラとマグダリーナを見て言った。
ステラとリナは、『私の魔法使い』の主人公達だ。
◇◇◇
「なるほど、事情はわかったわ」
エステラが『私の魔法使い』に触れると、魔法の光が漏れ出て情報を伝える。
「よし、じゃあ皆んなまずはお風呂にでも浸かって行って。男性陣は遠慮なく長湯をどうぞ。はーい、スラゴー達、あとはよろしくー」
スラゴー達は得意げに飛び跳ねると、それぞれ浴室に案内していく。
残ったエステラは、もう一度『私の魔法使い』を見て、ため息を吐いた。
「街頭占いは良いとして、エルロンドで大銀五の本を金一で転売してるなんて……ドーラさんに報告しておくかなぁ」
◇◇◇
「こちらで服をお脱ぎになって」
「お手伝いいたしましょうか」
「大丈夫よ、マーシャ、メルシャ。ミネットさんは?」
「は……っ、はい、大丈夫です! 自分で脱げます」
大きな鏡のある脱衣所は黄金と輝く宝石で飾られ、埃どころかカビ一つもない。
脱衣籠は自動洗濯機能のついた魔導具だったようで、脱いだ物を入れると、下着も衣服も、汚れもなく丁寧にケアされた状態になった。
ミネットが呆然としているので、その視線を追ったら、マーシャとメルシャが下着姿になっている。
その大事なところを隠しているのは、前世でよく見たブラジャーとパンティだ。その上から、ズロースを穿いていたらしい。
「その下着……作ってもらったの?」
「ええ、この『おブラ様』は素晴らしいんですの!」
「コルセットで押さえ込まなくても、揺れたりしないんですもの。仕事もし易いですわ」
そういえば、マーシャとメルシャは十五歳。立派な丸い膨らみがある。
ミネットは十二歳。それなりに育ちはじめたお胸がある。
マグダリーナは、自分の胸を見た。
「リーナ様はこれからですよ! リーナ様とレベッカ様の為に、お胸を優しく育てるおブラ様を作られたそうですわよ」
「そ……そうなの……?」
マーシャとメルシャは笑顔で頷いた。
浴室も足元のタイル以外は黄金で出来ていた。
スラゴー達に隅から隅まで洗われて、花びらの浮く湯船につかる。
「お風呂気持ちぃ」
マグダリーナは思わず呟いた。
◇◇◇
その頃の男湯では、グレイとライアンも同じように、スラゴーに全身くまなく洗われていた。
「……その、ライアン様」
グレイが何処か言いにくそうに、話しかける。
「ん? どうしたの」
「先程は娘達を誉めて下さり、ありがとうございます……その、もしやライアン様はうちの娘が……」
あっ、これどう答えても面倒なやつ……ライアンは本能的に察して、答えに窮した。
泡だらけのカーバンクルが、浴室のタイル床をぶーっと滑っていく。
そのとき。
ガラリと浴室の戸が開いた。
「ああ、ライアンとグレイか。珍しい組み合わせだね」
「ニレルさん、今日の修行終わったの?」
助かったとばかりにライアンは声をかけた。
ニレルは気怠げに頷く。
美形のハイエルフ達の中でも際立った美貌を持つ青年は、優しげな顔に反して、細身であってもしっかりと筋肉が付いた良い身体をしており、ライアンとグレイも一時言葉も無くして見惚れた。しかも全身ムダ毛もなく、つるぴかだ。
「スラゴー、後は任せたから、僕をエステラの前に出ても恥ずかしく無いよう、仕上げてくれ」
スラゴー達は張り切って、ニレルを泡だらけにして洗い上げると、湯船に浸からせる。
すると、湯が虹と黄金に輝いた。
「……今、湯に浸かると魔力が強まるから、君たちも一緒に入るといい」
そっと湯船に入ってライアンは聞いた。
「もしかしてこれって、ニレルさんの魔力?」
ニレルは湯船の縁にもたれるように顔を上げ、目を瞑る。
「普段は上手く制御出来るのに、2号と向き合った後は、こうやって漏らしてしまう……落ち着くまで、とてもじゃ無いがエステラに会えないよ」
ヒラやハラ達より、一回り小さな、色とりどりのパステルカラーのスラゴー達が出迎えてくれた。
「いらっしゃーい! お茶にする? お菓子にする? それとも、け・い・しょ・く(軽食)?」
中に入ると、早速笑顔でエステラが聞いてきた。ヒラとハラもぷりんっとイケスラパウダーを撒き散らす。
「あ、はじめましてのお姉さんがいる! こんにちは。ショウネシーの魔法使いでーす」
目にも豪奢な豪邸で、それにもかすまぬ神秘の美貌の少女を見て、ミネットは口をパクパクさせていた。
◇◇◇
「リーナ様、ライアン様、お時間取らせてしまって申し訳ございません」
「お邸のマゴーも一緒なので、帰りも心配無いって言っておいたのに……」
マーシャとメルシャが、ソファでくつろいでいたところを立ち上がって、挨拶する。
「気にしないで! 二人は今日休暇なのでしょう? 私達もここに用事があったのよ」
マーシャとメルシャは、ショウネシー邸でのお仕着せとは違う、柔らかい絹綿混地の、フリルとピンタックのついた、ふわっとしたワンピースを着ている。おしゃれで、リラックスできる格好だ。父親譲りの灰銀の髪を下ろし、髪もお肌も輝いていた。
「二人とも綺麗だね」
ライアンはリーン王国の紳士として、ちゃんと褒めた。
「ありがとうございます。リーナ様にお仕えする身ですもの頑張って爪の先まで磨きをかけてもらいましたの」
「魔法使い様の美健魔法は、本当に素晴らしいんですのよ。全身が軽くなって、お肌も髪もつるつやですもの」
「美健魔法……」
マグダリーナは羨ましそうに、双子を見た。
「健康であることと美しさは切り離せないからね。マーシャとメルシャには、スラゴー達に教え込んだ美健魔法の数々を体験してもらってました。リーナとレベッカも舞踏会の前日はスペシャルコースいくわよ!」
マグダリーナはハッとして、本来の目的であったミネットを紹介する。
「タラ、彼女はミネット・ウィーデン子爵令嬢。昨年のクラスメイトで、レベッカと私の友人よ」
「……ステラ様……ステラ様とリナ嬢だわ……」
ミネットはうっとりと、エステラとマグダリーナを見て言った。
ステラとリナは、『私の魔法使い』の主人公達だ。
◇◇◇
「なるほど、事情はわかったわ」
エステラが『私の魔法使い』に触れると、魔法の光が漏れ出て情報を伝える。
「よし、じゃあ皆んなまずはお風呂にでも浸かって行って。男性陣は遠慮なく長湯をどうぞ。はーい、スラゴー達、あとはよろしくー」
スラゴー達は得意げに飛び跳ねると、それぞれ浴室に案内していく。
残ったエステラは、もう一度『私の魔法使い』を見て、ため息を吐いた。
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◇◇◇
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「お手伝いいたしましょうか」
「大丈夫よ、マーシャ、メルシャ。ミネットさんは?」
「は……っ、はい、大丈夫です! 自分で脱げます」
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脱衣籠は自動洗濯機能のついた魔導具だったようで、脱いだ物を入れると、下着も衣服も、汚れもなく丁寧にケアされた状態になった。
ミネットが呆然としているので、その視線を追ったら、マーシャとメルシャが下着姿になっている。
その大事なところを隠しているのは、前世でよく見たブラジャーとパンティだ。その上から、ズロースを穿いていたらしい。
「その下着……作ってもらったの?」
「ええ、この『おブラ様』は素晴らしいんですの!」
「コルセットで押さえ込まなくても、揺れたりしないんですもの。仕事もし易いですわ」
そういえば、マーシャとメルシャは十五歳。立派な丸い膨らみがある。
ミネットは十二歳。それなりに育ちはじめたお胸がある。
マグダリーナは、自分の胸を見た。
「リーナ様はこれからですよ! リーナ様とレベッカ様の為に、お胸を優しく育てるおブラ様を作られたそうですわよ」
「そ……そうなの……?」
マーシャとメルシャは笑顔で頷いた。
浴室も足元のタイル以外は黄金で出来ていた。
スラゴー達に隅から隅まで洗われて、花びらの浮く湯船につかる。
「お風呂気持ちぃ」
マグダリーナは思わず呟いた。
◇◇◇
その頃の男湯では、グレイとライアンも同じように、スラゴーに全身くまなく洗われていた。
「……その、ライアン様」
グレイが何処か言いにくそうに、話しかける。
「ん? どうしたの」
「先程は娘達を誉めて下さり、ありがとうございます……その、もしやライアン様はうちの娘が……」
あっ、これどう答えても面倒なやつ……ライアンは本能的に察して、答えに窮した。
泡だらけのカーバンクルが、浴室のタイル床をぶーっと滑っていく。
そのとき。
ガラリと浴室の戸が開いた。
「ああ、ライアンとグレイか。珍しい組み合わせだね」
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助かったとばかりにライアンは声をかけた。
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