ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活

天三津空らげ

文字の大きさ
187 / 285
九章 噂と理不尽

187. 星の魔女と女性用品

しおりを挟む
 お風呂から上がった後のマグダリーナ達は、あれよあれよとスラゴー達に美健魔法を施され、身体中を美容クリームでマッサージされる。

 ミネットだけは、別室でエステラが施術していた。きっとその間に悩みを聞いているんだろう。

 美健魔法の施術の後は、エステラはミネットに『おブラ様』と『特別な日のショーツ』を選ぶ。
 そしてショーツにつける薄型のクッションと洗浄浄化機能付きポーチ……これは……

「この薄型クッションが経血を吸い取ってくれるわ。こんな風に」

 エステラは一リットルはあるであろう、水入れの中の水を、クッションにザブっとかけた。
 明らかに溢してると思われたが、周囲の何処にも濡れた所がない。
 クッションの方は水を吸って少し膨れていたが、直ぐに元に戻った。

「この貝型のポーチに近づければ、汚れもなく清潔な状態になって、何度も使えるわ」

 エステラはポーチの中に、クッション三枚とショーツ二枚、そして身体に汚れがついた時の洗浄布と洗浄水の入ったボトルを入れた。
 そして、最後に真珠貝で作った腕輪型の時計をミネットの腕につける。

 「これは濡れても何しても壊れないから安心して。身につけてる間の貴女の身体情報を取得管理して、体調が良くない時や月経の周期のお知らせをしてくれるの。説明書はこれね」

「こんなすごい魔導具の数々……それに先程の施術……い…いくら払えば良いんんでしょう」

 制服を着たが、ミネットは震えてる。

「その真珠貝はショウネシーの海で獲れた、ショウネシーだけの真珠貝。このショウネシーの魔法使いの加護魔法が込めてあるわ。誰かに聞かれたら、そう答えてくれればいい。あと魔導具の使い心地や改良して欲しい所とかあったら教えて。そして結果が出なくても、さっき言ったことを実践してくれるなら、それでいいわ」

 エステラはふんわり笑った。

 ミネットは腕輪をみて呆然とした。
「真珠貝……これが……?! 生まれて初めて見たわ……」



◇◇◇



 ミネットを送り届けたあと、ショウネシーに帰る。
 異変に真っ先に気づいたのは、レベッカだった。

「どういうことですの……どうしてリーナお姉様とライアン兄様、二人とも髪もお肌もツヤツヤして、揃って良い匂いさせていますの?!」

 ダーモットの顔色がサッと変わる。
 助け船を出したのは、デキる双子のメイドだった。

「レベッカ様、私たちもツヤプルなんですよー。とっても良い匂いなんですの」
「せっかくのんびりエステラ様の王都の工房で美容三昧してたら、父さんがわざわざリーナ様とライアン様を連れて迎えに来るんですよぉ、私たちマゴーと一緒だったのに」

「ええーもしかしてお姉様も兄様も、金と星の工房でお風呂に入って美容三昧してきましたの? ずるい……」
「ごめんなレベッカ、今度はちゃんとエステラに頼んで皆んなで行こう? ダーモット父さんも一緒に」
「いつ? いつにしますの?」

 何処か縋るようなレベッカの様子に、大分いっぱいいっぱいになってるんだなと、マグダリーナとライアンは切なくなった。

 マグダリーナとライアンはダーモットを見る。

「今週末の二日間……エステラ達さえ良ければ……」

 半ば押されるように、ダーモットは言った。
 マグダリーナは早速、エステラの予定を確認したのだった。



◇◇◇



「うん、大丈夫だよー」

 マグダリーナに快く返事をして、エステラは通信を切った。

 エステラはディオンヌ商会の事務所にいた。
 そこにはエステラの他に、エデンとニレル、そしてドーラがいた。

「ごめんねドーラさん、ルシンお兄ちゃん勝手に王都で、エルロンドの本売ってたの。もしかして黙って在庫持ってってるんじゃ無いか心配になって……」
「それは確認したから大丈夫よ。ちゃんと代金払って買って行ったみたいだから。いくらで売ってたの?」
「金一」
「金一ねぇ……写本では無いし、王都で売るなら妥当な価格かしら」

 ニレルがそれぞれの前にお茶を置いていく。
 お茶の香りを堪能しながら、エデンが告げた。
「例の動画、とうとう公開されるらしいぞ。次の土曜からだ。うちはアーケード広場と図書館にするか?」
 エステラは頷いた。
「そうね……あと各家庭のアッシでも配信ね。マゴー、準備はお願い」
「かしこまりましたー」


「あ、それでねドーラさん、女性用の下着とか必需品を幾つか作ったの。今何人かにモニターしてもらってるから、ドーラさんとカレンさんにもお願いできる?」
「あら、どんな商品?」

 エステラは双子やミネットに渡した製品をドーラやカレンの分も渡し、最後に真珠を使った腕輪時計を渡して、絶句された。

「まさかこれを配るつもり? ショウネシーの身内以外には、絶対おやめなさい」
「あ、はい。リーナの友達には真珠貝で作ったのを渡してます」
「貝ならまだ大丈夫かしらね。そっちも見せてくれる?」
「はい……」
「それでこっちの商品はリオローラで売れる?」
「おブラ様はサイズが重要なので、通販には合わないかも……」

 ドーラは素朴な疑問を口にした。
「なんで『様』なんてついてるの?」
「女性の大事なお胸を守る下着だからです! 私も今つけてます! というわけで、エデンちょっと触ってみて」

「んっはぁぁあ?! ダメだろ娘の胸とか触りたくないぞ」
「至極真っ当なご意見に、初めてエデンが父親で良かったと思うわ。でもこれ性能実験だからやって」

 エデンは躊躇いつつも、そっとエステラの胸に手を近づける。近づけると触れる前にバチっと電撃が走った。

「っ痛て、なるほど、魔法付与付きか」
 エデンが腕をみると『この人変態です』と火傷で描かれていた。

「…………」
 エデンはスンとした。

「それからニレル、これで思い切りやって」
 エステラはニレルに短剣を渡した。
 ニレルは手の中で短剣を回転させて握り直すと、エステラの胸を狙って振り下ろした。

 瞬時に防御壁が展開され、短剣の刃が折れた。

「…………」
 ニレルはやっぱりかという顔をした。

「もしかして、下半身の方の下着も、同じ防御力かしら?」

 ドーラの問いに、エステラは頷いた。

「ダメ?」
「ダメではないけど、びっくりして声が出なかったわ」

「こういうものは、まずショウネシー領の女性達に広めたいの。各家庭に魔導洗濯機もあるし、雑貨屋内に専用コーナー作ろうかと。おブラ様とかはともかく、月経関係用品は女性の生活向上に絶対必要だもの。そこは頑張ってスラゴー達に生産してもらうつもりだから、リオローラの通販にも乗せて欲しいし」

「ねぇ、エステラの言う月経って穢血のことかしら?」
「え……けつ?」
「女性は穢れを溜めやすいから、溜まった穢れを血で流すようにできてるのよ」

 エステラは目が点になった。

 そうか異世界。前世と人体の仕組みは違うのか。そもそもハイエルフだって生理ないしなと、ディオンヌから引き継いだ『集合的情報記憶魔法』を使う。

 違う、そうじゃなかった。人族のそこは前世の人間と一緒だわ。

 思ったより、この世界、医療進んでなかった。魔法あるから。

「ドーラさん、それ違う。その出血はそんなんじゃない……」
「そうなの?!」

「動画……正しい知識の動画作らねば……」
 エステラは頭を抱えた。
しおりを挟む
感想 7

あなたにおすすめの小説

辺境貴族ののんびり三男は魔道具作って自由に暮らします

雪月夜狐
ファンタジー
書籍化決定しました! (書籍化にあわせて、タイトルが変更になりました。旧題は『辺境伯家ののんびり発明家 ~異世界でマイペースに魔道具開発を楽しむ日々~』です) 壮年まで生きた前世の記憶を持ちながら、気がつくと辺境伯家の三男坊として5歳の姿で異世界に転生していたエルヴィン。彼はもともと物作りが大好きな性格で、前世の知識とこの世界の魔道具技術を組み合わせて、次々とユニークな発明を生み出していく。 辺境の地で、家族や使用人たちに役立つ便利な道具や、妹のための可愛いおもちゃ、さらには人々の生活を豊かにする新しい魔道具を作り上げていくエルヴィン。やがてその才能は周囲の人々にも認められ、彼は王都や商会での取引を通じて新しい人々と出会い、仲間とともに成長していく。 しかし、彼の心にはただの「発明家」以上の夢があった。この世界で、誰も見たことがないような道具を作り、貴族としての責任を果たしながら、人々に笑顔と便利さを届けたい——そんな野望が、彼を新たな冒険へと誘う。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

転生したら領主の息子だったので快適な暮らしのために知識チートを実践しました

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
不摂生が祟ったのか浴槽で溺死したブラック企業務めの社畜は、ステップド騎士家の長男エルに転生する。 不便な異世界で生活環境を改善するためにエルは知恵を絞る。 14万文字執筆済み。2025年8月25日~9月30日まで毎日7:10、12:10の一日二回更新。

異世界転生目立ちたく無いから冒険者を目指します

桂崇
ファンタジー
小さな町で酒場の手伝いをする母親と2人で住む少年イールスに転生覚醒する、チートする方法も無く、母親の死により、実の父親の家に引き取られる。イールスは、冒険者になろうと目指すが、周囲はその才能を惜しんでいる

猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣で最強すぎて困る

マーラッシュ
ファンタジー
旧題:狙って勇者パーティーを追放されて猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣だった。そして人間を拾ったら・・・ 何かを拾う度にトラブルに巻き込まれるけど、結果成り上がってしまう。 異世界転生者のユートは、バルトフェル帝国の山奥に一人で住んでいた。  ある日、盗賊に襲われている公爵令嬢を助けたことによって、勇者パーティーに推薦されることになる。  断ると角が立つと思い仕方なしに引き受けるが、このパーティーが最悪だった。  勇者ギアベルは皇帝の息子でやりたい放題。活躍すれば咎められ、上手く行かなければユートのせいにされ、パーティーに入った初日から後悔するのだった。そして他の仲間達は全て女性で、ギアベルに絶対服従していたため、味方は誰もいない。  ユートはすぐにでもパーティーを抜けるため、情報屋に金を払い噂を流すことにした。  勇者パーティーはユートがいなければ何も出来ない集団だという内容でだ。  プライドが高いギアベルは、噂を聞いてすぐに「貴様のような役立たずは勇者パーティーには必要ない!」と公衆の面前で追放してくれた。  しかし晴れて自由の身になったが、一つだけ誤算があった。  それはギアベルの怒りを買いすぎたせいで、帝国を追放されてしまったのだ。  そしてユートは荷物を取りに行くため自宅に戻ると、そこには腹をすかした猫が、道端には怪我をした犬が、さらに船の中には女の子が倒れていたが、それぞれの正体はとんでもないものであった。  これは自重できない異世界転生者が色々なものを拾った結果、トラブルに巻き込まれ解決していき成り上がり、幸せな異世界ライフを満喫する物語である。

異世界は流されるままに

椎井瑛弥
ファンタジー
 貴族の三男として生まれたレイは、成人を迎えた当日に意識を失い、目が覚めてみると剣と魔法のファンタジーの世界に生まれ変わっていたことに気づきます。ベタです。  日本で堅実な人生を送っていた彼は、無理をせずに一歩ずつ着実に歩みを進むつもりでしたが、なぜか思ってもみなかった方向に進むことばかり。ベタです。  しっかりと自分を持っているにも関わらず、なぜか思うようにならないレイの冒険譚、ここに開幕。  これを書いている人は縦書き派ですので、縦書きで読むことを推奨します。

うっかり女神さまからもらった『レベル9999』は使い切れないので、『譲渡』スキルで仲間を強化して最強パーティーを作ることにしました

akairo
ファンタジー
「ごめんなさい!貴方が死んだのは私のクシャミのせいなんです!」 帰宅途中に工事現場の足台が直撃して死んだ、早良 悠月(さわら ゆずき)が目覚めた目の前には女神さまが土下座待機をして待っていた。 謝る女神さまの手によって『ユズキ』として転生することになったが、その直後またもや女神さまの手違いによって、『レベル9999』と職業『譲渡士』という謎の職業を付与されてしまう。 しかし、女神さまの世界の最大レベルは99。 勇者や魔王よりも強いレベルのまま転生することになったユズキの、使い切ることもできないレベルの使い道は仲間に譲渡することだった──!? 転生先で出会ったエルフと魔族の少女。スローライフを掲げるユズキだったが、二人と共に世界を回ることで国を巻き込む争いへと巻き込まれていく。 ※9月16日  タイトル変更致しました。 前タイトルは『レベル9999は転生した世界で使い切れないので、仲間にあげることにしました』になります。 仲間を強くして無双していく話です。 『小説家になろう』様でも公開しています。

大工スキルを授かった貧乏貴族の養子の四男だけど、どうやら大工スキルは伝説の全能スキルだったようです

飼猫タマ
ファンタジー
田舎貴族の四男のヨナン・グラスホッパーは、貧乏貴族の養子。義理の兄弟達は、全員戦闘系のレアスキル持ちなのに、ヨナンだけ貴族では有り得ない生産スキルの大工スキル。まあ、養子だから仕方が無いんだけど。 だがしかし、タダの生産スキルだと思ってた大工スキルは、じつは超絶物凄いスキルだったのだ。その物凄スキルで、生産しまくって超絶金持ちに。そして、婚約者も出来て幸せ絶頂の時に嵌められて、人生ドン底に。だが、ヨナンは、有り得ない逆転の一手を持っていたのだ。しかも、その有り得ない一手を、本人が全く覚えてなかったのはお約束。 勿論、ヨナンを嵌めた奴らは、全員、ザマー百裂拳で100倍返し! そんなお話です。

処理中です...