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十三章 女神の塔
255. アーッ‼︎ ダメです、お父さま! ダンジョンじゃなく社交場に行って下さい‼︎
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深夜ギリギリに、なんと王宮からスキルの卵石の売買計画書の承認が届いた。ただし『購入資格は女神教に属するもののみとする』と添文を付けて。
宰相様の筆跡だった。計画書が通ったことより、そんな時間まで働いていたことにマグダリーナの心は震えた。もちろん恐怖で。王宮もブラック職場だったのだ。
そんな苦労があった翌日の朝練に、ダーモットは参加していなかった。エステラも。
「ニレルは心配ないって言ってたけど、エステラが来ないなんて、何かあったのかしら……」
エステラの代わりに、シャロンの散歩に付き添ったマグダリーナは、休憩場のアッシで配信動画を起動した。
「シャロン伯母様はハーブティーですよね」
「ええ、ありがとう」
自分も同じハーブティーを頼んで、シャロンの横に座る。シャロンは熱心にリィンの町の冊子を見ていた。
「それにしても、あの恐ろしい落雷の後に、こんな美しい街が出来るなんて……とにかくエステラちゃん達が無事で良かったわ」
マグダリーナも頷いた。
『え? え? どういうこと? ダーモットさん?! これ生配信よ! リーナ知ってるの?』
アッシの映像画面に、困惑するエステラが映った。
すぐに『かわいい』『嫁にしたい』『娘にしたい』『だれ? 伯爵家の令嬢?』などの文字が流れていく。
マグダリーナは、目が点になった。
『エルフだ!!!!』
『あの服装は使用人だろう』
『こんな綺麗すぎるエルフ少女を使用人にしてるだけで、ショウネシー伯爵家大勝利では?』
『使用人にしては、主人に対する口調ではない気がする』
『バカ! ショウネシーでエルフといえば、ハイエルフだ! 使用人じゃねぇ』
『え? まさか、ショウネシーの魔法使い?!』
思わず、エステラへのコメントに見入ってしまったが、マグダリーナは冷静さを取り戻した。
『どうかなぁ。昨晩のうちに放送の予定開示はしておいたけど』
『あの時間は気づけないわ……! しかもそんな……防具も武器もないし、お洋服もただの服じゃない。まさかそれでダンジョンに入るの?』
『今の私には、自由になるお金はなくてね……それに二階層まではなんとかなるだろう? 装備は現地調達するよ。その方が、ダンジョンの入り易さが伝わるしね』
『ダーモットさん、家門の当主なのに……』
『子供達の結婚にかかる費用を貯めていかないといけないからね』
その時、ダーモットの背後にある、ショウネシー邸入り口の扉が、勢いよく開いた。
◇◇◇
「お父さま!!」
マグダリーナは何が起こってるのか察すると、直ぐにマゴーを呼んで、転移魔法で帰ってきた。運動服姿で。
「お父さまが行くべき場所は、社交場であって、ダンジョンじゃありません!!!!」
『正論』
『本物の娘登場』
『あの服何? ご令嬢も何やってるの? 畑仕事?』
『ショウネシー領ってサトウマンドラゴラの生産地だっけ。踊る農作物』
『想像してた、貴族の生活となんか違う』
『私の職場だった貴族の家と、全く様子が違う……』
「大体お父さま、結婚して十年以上剣を振るってなかったんでしょう? 無理しないで!」
「わかってるよ。無理のない範囲で、ダンジョンと町の宣伝をしてくるよ」
その言葉に、だれのための行動なのかわかって、マグダリーナは口をつぐんだ。
そのかわり、ダーモットに抱きつく。
「ご武運を」
「ああ、ありがとう」
ダーモットは、優しくマグダリーナの頭を撫でた。
拝領貴族の家門の当主が、無装備でダンジョンに入るなど、これ以上のない宣伝だ。だが、心配はある。
『そなた、スライムを攻撃できるのか?』
視聴名〈セド〉さんから、10万レピの投げレピが入った。
投げレピの金額とか視聴名とか、もう気にしない。
セドさんは、マグダリーナの心配事を、見事に言い当てた。マグダリーナは早速タマとヒラにダーモットへの激励をお願いする。
「ダモ! ヒラより可愛いスライムはぁいないのぉ!」
「浮気、しちゃダメよー」
スライム二匹の謎の激励に、ダーモットはによによの顔になり、コメント欄が荒れた。
◇◇◇
ダーモットは本当に、収納係兼トーク係のマゴー1号だけ連れ、新しいリィンの町行きのマゴー車に乗って出発してしまった。
今も生配信は続いていて、移動だけしてる動画に『これ、何の配信?』とかコメントされている。
マゴーがコメントを読み上げたり、情報冊子を広げてこれから向かうリィンの町とダンジョンについて説明していく。さりげなーく、リィンの町の町長がマグダリーナであることも、発表されていた。
とりあえず約一時間の道中は、これで繋いでいけるんじゃないかなと、マグダリーナは安心した。
マゴーが一緒なら、いざという時も大丈夫だろう。
アンソニー達も朝練から戻ってきた。ヴェリタスはシャロンと一緒にアスティン邸に戻り、朝食後はシャロンのお使いで王都に行くとのこと。
マグダリーナは、町民の募集もかけて行かないとと考える。領都と同じく、空き店舗がいくつかある。マンドラゴンと共存できる、柔軟な町民なんて、どうやって募集すれば良いのやら……
やっぱり机に突っ伏した。
そうこうするうちに「ショウネシー公爵のダンジョン挑戦・マゴマゴ特別生配信」は、リィンの町の門前に着いていた。
宰相様の筆跡だった。計画書が通ったことより、そんな時間まで働いていたことにマグダリーナの心は震えた。もちろん恐怖で。王宮もブラック職場だったのだ。
そんな苦労があった翌日の朝練に、ダーモットは参加していなかった。エステラも。
「ニレルは心配ないって言ってたけど、エステラが来ないなんて、何かあったのかしら……」
エステラの代わりに、シャロンの散歩に付き添ったマグダリーナは、休憩場のアッシで配信動画を起動した。
「シャロン伯母様はハーブティーですよね」
「ええ、ありがとう」
自分も同じハーブティーを頼んで、シャロンの横に座る。シャロンは熱心にリィンの町の冊子を見ていた。
「それにしても、あの恐ろしい落雷の後に、こんな美しい街が出来るなんて……とにかくエステラちゃん達が無事で良かったわ」
マグダリーナも頷いた。
『え? え? どういうこと? ダーモットさん?! これ生配信よ! リーナ知ってるの?』
アッシの映像画面に、困惑するエステラが映った。
すぐに『かわいい』『嫁にしたい』『娘にしたい』『だれ? 伯爵家の令嬢?』などの文字が流れていく。
マグダリーナは、目が点になった。
『エルフだ!!!!』
『あの服装は使用人だろう』
『こんな綺麗すぎるエルフ少女を使用人にしてるだけで、ショウネシー伯爵家大勝利では?』
『使用人にしては、主人に対する口調ではない気がする』
『バカ! ショウネシーでエルフといえば、ハイエルフだ! 使用人じゃねぇ』
『え? まさか、ショウネシーの魔法使い?!』
思わず、エステラへのコメントに見入ってしまったが、マグダリーナは冷静さを取り戻した。
『どうかなぁ。昨晩のうちに放送の予定開示はしておいたけど』
『あの時間は気づけないわ……! しかもそんな……防具も武器もないし、お洋服もただの服じゃない。まさかそれでダンジョンに入るの?』
『今の私には、自由になるお金はなくてね……それに二階層まではなんとかなるだろう? 装備は現地調達するよ。その方が、ダンジョンの入り易さが伝わるしね』
『ダーモットさん、家門の当主なのに……』
『子供達の結婚にかかる費用を貯めていかないといけないからね』
その時、ダーモットの背後にある、ショウネシー邸入り口の扉が、勢いよく開いた。
◇◇◇
「お父さま!!」
マグダリーナは何が起こってるのか察すると、直ぐにマゴーを呼んで、転移魔法で帰ってきた。運動服姿で。
「お父さまが行くべき場所は、社交場であって、ダンジョンじゃありません!!!!」
『正論』
『本物の娘登場』
『あの服何? ご令嬢も何やってるの? 畑仕事?』
『ショウネシー領ってサトウマンドラゴラの生産地だっけ。踊る農作物』
『想像してた、貴族の生活となんか違う』
『私の職場だった貴族の家と、全く様子が違う……』
「大体お父さま、結婚して十年以上剣を振るってなかったんでしょう? 無理しないで!」
「わかってるよ。無理のない範囲で、ダンジョンと町の宣伝をしてくるよ」
その言葉に、だれのための行動なのかわかって、マグダリーナは口をつぐんだ。
そのかわり、ダーモットに抱きつく。
「ご武運を」
「ああ、ありがとう」
ダーモットは、優しくマグダリーナの頭を撫でた。
拝領貴族の家門の当主が、無装備でダンジョンに入るなど、これ以上のない宣伝だ。だが、心配はある。
『そなた、スライムを攻撃できるのか?』
視聴名〈セド〉さんから、10万レピの投げレピが入った。
投げレピの金額とか視聴名とか、もう気にしない。
セドさんは、マグダリーナの心配事を、見事に言い当てた。マグダリーナは早速タマとヒラにダーモットへの激励をお願いする。
「ダモ! ヒラより可愛いスライムはぁいないのぉ!」
「浮気、しちゃダメよー」
スライム二匹の謎の激励に、ダーモットはによによの顔になり、コメント欄が荒れた。
◇◇◇
ダーモットは本当に、収納係兼トーク係のマゴー1号だけ連れ、新しいリィンの町行きのマゴー車に乗って出発してしまった。
今も生配信は続いていて、移動だけしてる動画に『これ、何の配信?』とかコメントされている。
マゴーがコメントを読み上げたり、情報冊子を広げてこれから向かうリィンの町とダンジョンについて説明していく。さりげなーく、リィンの町の町長がマグダリーナであることも、発表されていた。
とりあえず約一時間の道中は、これで繋いでいけるんじゃないかなと、マグダリーナは安心した。
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