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形から入る
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村の端にある牧場の、牛が放されている柵の中。緩やかな丘の上にある牛舎に飛び込むと、ミアは元気に声を張り上げた。
「ディーン、行くわよ!冒険者ギルドに案内してちょうだい」
「あのさ、何でオレがここに居るって知ってるの?」
「牛乳配達に来た時にカーズさんが言ってたのよ。剣の修理もまだでしょ?カートさん材料が足りないって言ってたしついでに買いに行くわよ」
「遅いと思ったらそういうことか…町でやればよかった」
うまい具合に牛小屋掃除のバイトを終わらせたディーンをお供に、ミアは一番近いギルドがあるトナの町へと向かった。ちゃっかり借りた馬を走らせると、20分ほどで到着だ。馬に乗れないディーンを相乗りさせて、ミアは見事な手綱さばきを披露する事となった。
「ところで姉ちゃん、ギルドに何の用?」
「あぁ、冒険者になろうと思って」
「は!?」
ギルドの扉を、今まさにくぐろうとした所だった。
「…はぁ!?」
「何よその反応」
開いた扉をもう一度閉めて、ディーンはミアに回れ右を促す。
「…本気?」
「もちろん。店で新しい商品を扱いたいんだけど、冒険者じゃないとだめなんですって」
「って事は危険な物を取り扱うんだな?何か騙されてないかそれ」
「弟が斡旋するから平気よ」
と、説明してみてもディーンは中に入れてくれなかった。
「とりあえず、その恰好はまずい。この地方は女の冒険者が少ないから、絶対変な連中に絡まれるぞ」
「じゃあ装備整えるの付き合ってよ。軽くて丈夫な鞄も欲しいの、よろしくね先輩」
「…じゃあ俺がいつもいく店覗くか」
先輩と呼ばれたことに気をよくしたのか、心なし協力的になったディーンであった。
「まず厚手のズボンと…皮のベストぐらいは付けて欲しいな。柔らかいグローブもあれば」
「初心者だから軽めでしっかり守れって感じなのね」
「いや、もういい年してるから重いとヘバるから。後やっぱ女だし傷が残らないように」
「やだ怒る前に誤魔化されたわ…やるわねあんた」
気のいい店主も交えて相談しながら、ズボンとベストを選ぶ。元々ワンピースを着ていたので、ズボンと合わせるシャツもお買い上げだ。
「最低限これぐらいは必要だろ。600オルクってとこか、姉ちゃん予算は?」
「えっとねー、今財布見たら10万入ってたから余裕!ディーンも何か買ってあげるよ」
「まじか、すげぇ!本気なんだな!だったら上をブレスト・アーマーと皮のコルセットにして、ズボンは防水でポケットが多いヤツで耐熱の手袋探してブーツも買いに行こうぜ。仕込みスパイクのいい靴があるんだ、帽子もいいな髪をまとめると女っぽくないし」
急にスイッチが入ったディーンに身を任せ、ミアは徐々に見た目だけはがっつり冒険者になっていった。
おそらく今言ったラインナップはディーン自身が欲しくて目を付けていた商品だと推測し、お尻の部分がやや変色しているのでズボンをプレゼントする事にして、二人で色違いのお揃い姿となった。
装備が完成したところで、軽く食事をしてから武器屋に向かう。髪をまとめて帽子に入れたことで男性的な印象になったのか、屋台から兄ちゃんと客引きされてミアはおかしそうに笑った。
「私の顔って男っぽかったのね」
「いやそんな事ないから気にしないで、その恰好だからだよ。女の冒険者って露出多い人が目立つし」
言われてみれば、村で見かけた魔法使いちゃんはミニスカにロングブーツだったなとミアは思い出す。
まぁあの軽装はバトルスタイルにもよるものだとは思うが。
「守ってくれる人がいるからできる格好だよな。都会には結構いるよ、回復とか補助専門の女冒険者」
「別にいいんじゃない?やっぱり需要はあるんだろうし、支える人も必要だし」
お店の経営側から言わせてもらうとやっぱり受付は可愛い女の子の方が客入りがいいし、とは声には出さなかった。看板娘はいても看板息子はあまり聞かない。そういう事である。男が多い冒険者相手に稼ぐ店舗限定なのかもしれないが。
「そういや武器、どうする?姉ちゃん何が使えるの」
「武器はね、か弱いから手斧とかがいいかなって思ってるんだけど」
「か弱いから斧ってどういう事だよ!短剣でいいだろ」
「剣はコツがいるでしょ。斧はぶん回せばいいし振りかぶれば威力が上がるじゃない」
脳筋な発想から片手斧を購入し、冒険者としての形が完成した。
「よし、これで大丈夫だろ」
ディーンを先頭に、ギルドの門をくぐる。
ようやくミアはギルドへ入ることが許されたのであった。
「ディーン、行くわよ!冒険者ギルドに案内してちょうだい」
「あのさ、何でオレがここに居るって知ってるの?」
「牛乳配達に来た時にカーズさんが言ってたのよ。剣の修理もまだでしょ?カートさん材料が足りないって言ってたしついでに買いに行くわよ」
「遅いと思ったらそういうことか…町でやればよかった」
うまい具合に牛小屋掃除のバイトを終わらせたディーンをお供に、ミアは一番近いギルドがあるトナの町へと向かった。ちゃっかり借りた馬を走らせると、20分ほどで到着だ。馬に乗れないディーンを相乗りさせて、ミアは見事な手綱さばきを披露する事となった。
「ところで姉ちゃん、ギルドに何の用?」
「あぁ、冒険者になろうと思って」
「は!?」
ギルドの扉を、今まさにくぐろうとした所だった。
「…はぁ!?」
「何よその反応」
開いた扉をもう一度閉めて、ディーンはミアに回れ右を促す。
「…本気?」
「もちろん。店で新しい商品を扱いたいんだけど、冒険者じゃないとだめなんですって」
「って事は危険な物を取り扱うんだな?何か騙されてないかそれ」
「弟が斡旋するから平気よ」
と、説明してみてもディーンは中に入れてくれなかった。
「とりあえず、その恰好はまずい。この地方は女の冒険者が少ないから、絶対変な連中に絡まれるぞ」
「じゃあ装備整えるの付き合ってよ。軽くて丈夫な鞄も欲しいの、よろしくね先輩」
「…じゃあ俺がいつもいく店覗くか」
先輩と呼ばれたことに気をよくしたのか、心なし協力的になったディーンであった。
「まず厚手のズボンと…皮のベストぐらいは付けて欲しいな。柔らかいグローブもあれば」
「初心者だから軽めでしっかり守れって感じなのね」
「いや、もういい年してるから重いとヘバるから。後やっぱ女だし傷が残らないように」
「やだ怒る前に誤魔化されたわ…やるわねあんた」
気のいい店主も交えて相談しながら、ズボンとベストを選ぶ。元々ワンピースを着ていたので、ズボンと合わせるシャツもお買い上げだ。
「最低限これぐらいは必要だろ。600オルクってとこか、姉ちゃん予算は?」
「えっとねー、今財布見たら10万入ってたから余裕!ディーンも何か買ってあげるよ」
「まじか、すげぇ!本気なんだな!だったら上をブレスト・アーマーと皮のコルセットにして、ズボンは防水でポケットが多いヤツで耐熱の手袋探してブーツも買いに行こうぜ。仕込みスパイクのいい靴があるんだ、帽子もいいな髪をまとめると女っぽくないし」
急にスイッチが入ったディーンに身を任せ、ミアは徐々に見た目だけはがっつり冒険者になっていった。
おそらく今言ったラインナップはディーン自身が欲しくて目を付けていた商品だと推測し、お尻の部分がやや変色しているのでズボンをプレゼントする事にして、二人で色違いのお揃い姿となった。
装備が完成したところで、軽く食事をしてから武器屋に向かう。髪をまとめて帽子に入れたことで男性的な印象になったのか、屋台から兄ちゃんと客引きされてミアはおかしそうに笑った。
「私の顔って男っぽかったのね」
「いやそんな事ないから気にしないで、その恰好だからだよ。女の冒険者って露出多い人が目立つし」
言われてみれば、村で見かけた魔法使いちゃんはミニスカにロングブーツだったなとミアは思い出す。
まぁあの軽装はバトルスタイルにもよるものだとは思うが。
「守ってくれる人がいるからできる格好だよな。都会には結構いるよ、回復とか補助専門の女冒険者」
「別にいいんじゃない?やっぱり需要はあるんだろうし、支える人も必要だし」
お店の経営側から言わせてもらうとやっぱり受付は可愛い女の子の方が客入りがいいし、とは声には出さなかった。看板娘はいても看板息子はあまり聞かない。そういう事である。男が多い冒険者相手に稼ぐ店舗限定なのかもしれないが。
「そういや武器、どうする?姉ちゃん何が使えるの」
「武器はね、か弱いから手斧とかがいいかなって思ってるんだけど」
「か弱いから斧ってどういう事だよ!短剣でいいだろ」
「剣はコツがいるでしょ。斧はぶん回せばいいし振りかぶれば威力が上がるじゃない」
脳筋な発想から片手斧を購入し、冒険者としての形が完成した。
「よし、これで大丈夫だろ」
ディーンを先頭に、ギルドの門をくぐる。
ようやくミアはギルドへ入ることが許されたのであった。
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