7 / 13
必要に迫られて
しおりを挟む
「僕が学校に行きたいって言ったら、応援してくれたもん。今度は姉さんが好きな事をする番だよ!」
「いや無理」
「昔から憧れてたでしょ、体鍛えたりしてたよね」
「子供の時はそりゃね、もうやってないから無理よ。大体冒険者になるのって10代でしょ、若い子に混じって、恥ずかしいじゃない」
レオは様々な角度からミアの説得を試みるが、真っ向から断られた。
「田舎暮らしはぱっとしないって言ってたじゃない」
「確かに私、あんたの卒業式を口実に村から出る予定だったけど。どうせ私には都会は向いてないっていうか、遠出してみてやっぱ冒険者は無理って諦めるためだったもの。それにもう、いまさらだし…」
冒険者になりたくないわけではないが、色々と言い訳になる事象が多いようだ。
新しい事を始めるに事に年齢制限はないが、今まで続けた生活は長ければ長いほど捨てづらい。
「大丈夫、姉さんならすぐランクアップできるよ。採取のクエストだけでも赤まではいけるみたいだし」
「採取っていってもほら、魔物がでる場所まで行くでしょ。戦ったことなんかないのよ私」
「鳥も絞めれるし猪ぐらいなら解体できるでしょ、魔物も似たようなものだから」
絶対違う、と否定しようとして、ミアは言葉を飲み込んだ。実際、畑を荒らしに来た豚を鍬で撃退したら後々魔物だったということが発覚した事件は、村では武勇伝として語られている。
それと同時に、レオの言葉に違和感を覚える。
「…何かしつこいわね、変よ」
「実は、姉さんには絶対に冒険者になってもらわなきゃ困るんだ」
とっておきの、切り札。姉の為に弟が用意した、大義名分。
人は強制される運命を嫌うが、時として後押しともなるものだ。
「冒険者相手に自作の商品を扱うなら、店の人はギルドに入らなきゃいけないんだって」
「お父さんが加盟してるじゃない」
「支援の組合員じゃなくて、色持ちじゃないとだめらしいよ。物を売るなら信用がいるから、せめて黄色の冒険者じゃないとね」
冒険者になってもいいよ、から 冒険者になってほしい、へと言葉が変わる。ミアは考え込むように口元に手をやっているが、先ほどまでの困ったような怒ったような表情ではなくなっていた。
「ミアなら冒険者の知り合いもいるだろう、手伝って貰えばいいじゃないか」
「そうね、気になる…仲のいい子は居ないの?冒険者なら自立してるだろうし、中々いいんじゃないかしら」
「お母さん、私別に出会いを探しに行くわけじゃないからね」
呆れたように言ったミアは、不敵に笑った。
「分かった」
冒険者になれば、立ち入り禁止の森の奥や洞窟にも入れるようになる。そういった危険区域には結界が張られていて、ギルドカードのランクによって制限が解除されるようになっていた。
遠くまで行かなくとも、冒険はできる。ずっと行けなかった、近くて遠い場所。
「しょうがないから、やるわ 私」
20年続けた平穏な生活をやめて、ミアは新しい道を選んだ。
「お店はお父さんに任せていいわよね?あ、お母さん庭は一切触らないで!レオ、その丈夫そうな鞄貸してうだい」
「まさか…今からギルドに行く気かい?」
「もちろん」
選んだ後の行動は恐ろしく早かった。
在庫の数と発注をかけた伝票を父に引き継ぎ、荷解きするであろう母にこの8年で変わった事を簡単に伝える。長旅用に準備されたのであろう弟の鞄をぶんどり、中身を詰め替える。
いつもは緩く左肩でまとめるだけの髪を、三つ編みにしてお団子にまとめる。普段履きの柔らかい布の靴から、山に行くときの使い古した皮のブーツに履き替えればもう準備は終わったとばかりに出立を告げる。
「とりあえず登録だけしてくるわ、今日の夕食は豪勢にいきましょ!何か買ってくるわね」
「それは母さんに任せて!ミアが好きな物いっぱい作って待ってるわ」
「姉さんにその鞄重いでしょ、これで装備を整えるといいよ」
あぁ、そういうのは俺の役目だろ!と拗ねるシドを差し置いて、レオは自分の財布をミアに託した。
「あらずいぶん羽振りがいいわね、全部使っちゃおうかしら」
「いいよ、これからも儲けるつもりだしね。8年分のお小遣いだと思って好きに使ってよ」
渡された長財布は分厚く、ずっしりとしていた。
「ありがと。じゃあ行ってきます!」
中身を確認する事もなく、ミアは嬉しそうに駆け出した。
残された家族は、それぞれの日常に戻っていく。
「じゃあ私、挨拶回りしてくるわ~。お土産に買ってきた薔薇のジャムはどこに入れたかしら?」
「さて久々の開店準備といくか。来るメンツも代わったんだろうなぁ…」
「僕は機材運を組もうかな。ねぇ父さん、庭の納屋建て替えていい?あそこを工房にするよ」
机の上には、鞄から放り出されたレオの荷物が広がっている。ペンや目薬、お菓子にハンカチ。手帳と水筒と時計と木箱。雑に置かれてどこかから飛び出した一枚の白いカードは、話題に上ることなくそっとレオポケットに回収された。
「いや無理」
「昔から憧れてたでしょ、体鍛えたりしてたよね」
「子供の時はそりゃね、もうやってないから無理よ。大体冒険者になるのって10代でしょ、若い子に混じって、恥ずかしいじゃない」
レオは様々な角度からミアの説得を試みるが、真っ向から断られた。
「田舎暮らしはぱっとしないって言ってたじゃない」
「確かに私、あんたの卒業式を口実に村から出る予定だったけど。どうせ私には都会は向いてないっていうか、遠出してみてやっぱ冒険者は無理って諦めるためだったもの。それにもう、いまさらだし…」
冒険者になりたくないわけではないが、色々と言い訳になる事象が多いようだ。
新しい事を始めるに事に年齢制限はないが、今まで続けた生活は長ければ長いほど捨てづらい。
「大丈夫、姉さんならすぐランクアップできるよ。採取のクエストだけでも赤まではいけるみたいだし」
「採取っていってもほら、魔物がでる場所まで行くでしょ。戦ったことなんかないのよ私」
「鳥も絞めれるし猪ぐらいなら解体できるでしょ、魔物も似たようなものだから」
絶対違う、と否定しようとして、ミアは言葉を飲み込んだ。実際、畑を荒らしに来た豚を鍬で撃退したら後々魔物だったということが発覚した事件は、村では武勇伝として語られている。
それと同時に、レオの言葉に違和感を覚える。
「…何かしつこいわね、変よ」
「実は、姉さんには絶対に冒険者になってもらわなきゃ困るんだ」
とっておきの、切り札。姉の為に弟が用意した、大義名分。
人は強制される運命を嫌うが、時として後押しともなるものだ。
「冒険者相手に自作の商品を扱うなら、店の人はギルドに入らなきゃいけないんだって」
「お父さんが加盟してるじゃない」
「支援の組合員じゃなくて、色持ちじゃないとだめらしいよ。物を売るなら信用がいるから、せめて黄色の冒険者じゃないとね」
冒険者になってもいいよ、から 冒険者になってほしい、へと言葉が変わる。ミアは考え込むように口元に手をやっているが、先ほどまでの困ったような怒ったような表情ではなくなっていた。
「ミアなら冒険者の知り合いもいるだろう、手伝って貰えばいいじゃないか」
「そうね、気になる…仲のいい子は居ないの?冒険者なら自立してるだろうし、中々いいんじゃないかしら」
「お母さん、私別に出会いを探しに行くわけじゃないからね」
呆れたように言ったミアは、不敵に笑った。
「分かった」
冒険者になれば、立ち入り禁止の森の奥や洞窟にも入れるようになる。そういった危険区域には結界が張られていて、ギルドカードのランクによって制限が解除されるようになっていた。
遠くまで行かなくとも、冒険はできる。ずっと行けなかった、近くて遠い場所。
「しょうがないから、やるわ 私」
20年続けた平穏な生活をやめて、ミアは新しい道を選んだ。
「お店はお父さんに任せていいわよね?あ、お母さん庭は一切触らないで!レオ、その丈夫そうな鞄貸してうだい」
「まさか…今からギルドに行く気かい?」
「もちろん」
選んだ後の行動は恐ろしく早かった。
在庫の数と発注をかけた伝票を父に引き継ぎ、荷解きするであろう母にこの8年で変わった事を簡単に伝える。長旅用に準備されたのであろう弟の鞄をぶんどり、中身を詰め替える。
いつもは緩く左肩でまとめるだけの髪を、三つ編みにしてお団子にまとめる。普段履きの柔らかい布の靴から、山に行くときの使い古した皮のブーツに履き替えればもう準備は終わったとばかりに出立を告げる。
「とりあえず登録だけしてくるわ、今日の夕食は豪勢にいきましょ!何か買ってくるわね」
「それは母さんに任せて!ミアが好きな物いっぱい作って待ってるわ」
「姉さんにその鞄重いでしょ、これで装備を整えるといいよ」
あぁ、そういうのは俺の役目だろ!と拗ねるシドを差し置いて、レオは自分の財布をミアに託した。
「あらずいぶん羽振りがいいわね、全部使っちゃおうかしら」
「いいよ、これからも儲けるつもりだしね。8年分のお小遣いだと思って好きに使ってよ」
渡された長財布は分厚く、ずっしりとしていた。
「ありがと。じゃあ行ってきます!」
中身を確認する事もなく、ミアは嬉しそうに駆け出した。
残された家族は、それぞれの日常に戻っていく。
「じゃあ私、挨拶回りしてくるわ~。お土産に買ってきた薔薇のジャムはどこに入れたかしら?」
「さて久々の開店準備といくか。来るメンツも代わったんだろうなぁ…」
「僕は機材運を組もうかな。ねぇ父さん、庭の納屋建て替えていい?あそこを工房にするよ」
机の上には、鞄から放り出されたレオの荷物が広がっている。ペンや目薬、お菓子にハンカチ。手帳と水筒と時計と木箱。雑に置かれてどこかから飛び出した一枚の白いカードは、話題に上ることなくそっとレオポケットに回収された。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
仕事繁忙期の為、2月中旬まで更新を週一に致します。
カクヨム(吉野 ひな)様にも投稿しています。
記憶喪失の私はギルマス(強面)に拾われました【バレンタインSS投下】
かのこkanoko
恋愛
記憶喪失の私が強面のギルドマスターに拾われました。
名前も年齢も住んでた町も覚えてません。
ただ、ギルマスは何だか私のストライクゾーンな気がするんですが。
プロット無しで始める異世界ゆるゆるラブコメになる予定の話です。
小説家になろう様にも公開してます。
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!
家族転生 ~父、勇者 母、大魔導師 兄、宰相 姉、公爵夫人 弟、S級暗殺者 妹、宮廷薬師 ……俺、門番~
北条新九郎
ファンタジー
三好家は一家揃って全滅し、そして一家揃って異世界転生を果たしていた。
父は勇者として、母は大魔導師として異世界で名声を博し、現地人の期待に応えて魔王討伐に旅立つ。またその子供たちも兄は宰相、姉は公爵夫人、弟はS級暗殺者、妹は宮廷薬師として異世界を謳歌していた。
ただ、三好家第三子の神太郎だけは異世界において冴えない立場だった。
彼の職業は………………ただの門番である。
そして、そんな彼の目的はスローライフを送りつつ、異世界ハーレムを作ることだった。
お気に入り・感想、宜しくお願いします。
悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる
竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。
評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。
身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。
神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします
夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。
アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。
いわゆる"神々の愛し子"というもの。
神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。
そういうことだ。
そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。
簡単でしょう?
えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか??
−−−−−−
新連載始まりました。
私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。
会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。
余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。
会話がわからない!となるよりは・・
試みですね。
誤字・脱字・文章修正 随時行います。
短編タグが長編に変更になることがございます。
*タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる