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第31話 晩餐会、事前打ち合わせ
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弟スタルフと従者サンを同席させ、事前の打ち合わせを開いた。
場所はロロシュ邸内の商談部屋をお借りした。
他列席者は家主のロロシュ。
サルベイン、シュルツ、フィーネ、ソプラン、ゼファー。
国防からはノイツェ、ライラ。の計11名。
「お忙しい中、対フレゼリカ向けの事前打ち合わせに足を運んで頂き感謝します。少々面倒な話なので、挨拶諸々全員の敬称は省きます。
スタルフは絶対に口を挟むな。どうしても理解出来ない箇所は後で個別に説明する」
スタルフが頷くのを見て。
「ここに集まって貰った方々は、フレゼリカと直接会う可能性が在る人の内、主要な人物。
タイラント側王族、下臣方面は全てヘルメンに任せます。
色々な対抗手段を多く持っていますので、ノイツェ以外は危惧する必要性はありません。
これまで私が、フレゼリカの事を糞虫、塵豚などと罵って来ましたが、最初にその理由から説明して行きます。
私が10歳になった頃、母リリーナが家族だけの会食中に毒殺されました。個別に、目の前で。
勘の鋭い父は、誰が仕掛けたか。事後で直ぐに気付いたでしょう。
私が最初にフレゼリカに疑念を抱いたのは、真にその母の葬儀の後です。
周りから誰も居なくなった瞬間に。母の墓前で、一瞬だけ本当に一瞬だけ。あいつは薄ら笑った。
凍り付くような微笑でした。
それから私は年数を掛け、父の伝手を使いフレゼリカの周辺調査を行いました。
そしたら出るわ出るわ。
下臣、従者、大物貴族、令嬢等々。ある人は行方不明。
ある人は夜襲に。ある人は喉を切られて奴隷落ち。
その全てに於いて、フレゼリカの腹心たちが関わっていました。巧妙且つ大胆に。あいつからの勅命に従い。
指示が出ていた証拠は1つとして在りません。
ですが確実に言える事として、あいつは複数のスキルを持っています。
汚すぎて手を握ったこともないので、正確な名称は解りません。
1つは、目を合わせた人間に恐怖心を植え付けるスキルです。
その力は、過去にロロシュ、サルベイン、ヘルメンを一時的に屈服状態に堕とした、と言えば解って貰えるかと。
1つは、真逆のスキル。
人の猜疑心を利用し、懐柔する力です。
個々はそれ程に強力ではありません。フレゼリカの人間性を熟知している者なら容易に回避出来ます。
父や私の様に。
しかし、世間一般の知らない人から見れば。置かれた状況次第で完全な初見殺しと成り得ます。
ここまでで何か在りますか?」
全員の言葉は無い。スタルフが手を挙げたがって、我慢している様子だった。今は無視して続ける。
「続けます。
主な対応として。長時間目を合わせない事。視線を合わせる機会があっても、あいつの眉間や鼻元を凝視し続けて下さい。例え、あいつから発言を求められてもです。
ソプランは求められても決して口を利いては駄目だ。そんな状況があるなら、必ず俺を盾にする事。
次に。フレゼリカが嫌う言葉の使用を禁じます。
否定系の語句。しかし、ですが、でも、だが、だけど。
などの反意を示す言葉です。
口から出掛かったら大袈裟に口を塞いで、考えている。返答に困っています。自分は返せる立場に在りません。
などと逃げの一手で凌いで下さい。
この中だと…シュルツ。君はライザーの婚約者として何かを求められる可能性が高い。
そんな時は、そうだな…。ライザーかロロシュを頼り、よく相談して後程お返事する、とでも言って逃げろ。
俺に関して聞かれても、存じ上げません。それ程に親密ではありませんと答えて欲しい」
「はい」
素直でいい子だ。
「次いでスタルフ。お前はこれまでに、直接あいつと接見する機会は在ったのか」
「在りません」
「なら結構。今度は俺を剥がした状態で呼ばれるかも知れない。そんな時は、父や俺と相談してみますと答えろ。
失言する位なら、何も解らぬ馬鹿に徹してくれ。
もしも、マッハリアの王子や王女に
「お友達になりましょう」などと誘いを受けても同様だ。
お友達って何ですか?位の馬鹿さ加減で頼む」
「わ、解りました…」不安だなぁ。
ロロシュ氏から受け取った会場の配席図を壁に貼り。
「これが会場の見取り図。スタルフは予想通りの末端席に居る。俺とは離れてるな…。
国賓席から遠いからって油断はするなよ。
ミラージュ家は左手上下卓か。
特にサルベイン。貴方の背中はガラ空きだ。ゼファーはロロシュとシュルツしか守れない。充分に注意して欲しい。
自衛手段として、トイレに長時間籠るとか。自国の御令嬢の尻を追いかけ回すとか。逃げ回るのも手だな」
「わ、わかっ…たが。念の為、父の侍女長も連れて行く」
あの人か…。ゼファーさんとあの人が居れば問題は無さそうだ。
「俺の背中はソプラン。離れる時は一声欲しい」
「了解。…畏まりました!…ハァ…」
泣き言を聞いてやれる暇は無い。
「問題のサンの扱いだが。決めたのか」
先にサンが答えた。
「発表出来るまでの準備時間が在りませんので。今回は従者としてスタルフ様の後ろに控えます」
「誰かに突っ込まれた時だけ。婚約を申し込む予定だと答える事にしました」
賢明な判断だ。
「解った。それで頼む」
フィーネが手を挙げた。
「私は、この邸内で寝てろって言われてるけど。私も変装して、スタンの従者に扮するのでは駄目なの?
正直な気持ち。スタンの傍に居たい」
「それはとても嬉しいけど難しい。
妻は病で床に伏せていると言って逃げ切る積もりだが。
それでもいいから連れて来い、って命令された時に凄く困るんだ。
相手があれじゃなきゃ。迷わずフィーネを同席させたい。
場に看破とかの上位スキル持ちが紛れてたら。見抜かれて全てが水の泡になる。
大人しくここで待っててくれ。流石に迎賓会場内で戦闘になる事はないからさ」
「…フンッ!」拗ねちゃったよ…。
話題を逸らそう。
「ノイツェ。警備に関して口を挟む積もりは毛頭無い。
こないだの宝物殿に関しては済まなかった。入れる人数に制限が在って。ヘルメンが、あいつも道具に関して欲深い所があるから、そもそも駄目って言ってた」
「い、今…それは聞きたくなかった…。忠義が揺らぐ。
さて置き。今回は例年に比べ、諸外国からの国賓の人数も多い。万全にして望もう」
「右に同じく。不審人物は即刻捉えます。ニーダは城から遠ざけます!ハイネハイネにでも出張させましょう」
ライラも気合い充分だな。
「そうしてくれ。ノイツェ。タイラント、マッハリア、アッテンハイム。この三国で三つ巴の戦いに成るとしたら、主要な場所が何処になるか。見当は付くか」
「考えたくもないが…。私なら、マッハリア領の南西端。
サイシェット大平原に当てる、だろうな」
「そうですか…」
あの空白地帯。丁度、三国が折り合う場所だ。成程。
「ミラージュ家の采配は卿に任せます。間違ってもキレてフレゼリカに殴り掛からないで下さい」
「そんな事になったら…。先にヘルメンを殴りに行く。安心しろ」
できねーよ!!隙あらばって感じが怖い。
「フレゼリカに喧嘩を売るのは私の仕事です。他の皆さんは指を咥えて見てて下さい。
私がラザーリアを出る直前の接見でも、否定系の言葉を織り交ぜて挑発しました。
今、あいつの矛先は私に向いています。余計な邪魔はしないで下さいね」
スタルフの手が上がった。
「他事は後で聞き直しますが。兄上。
我が国の、クライフ王陛下は注視しなくて良いのですか」
お、中々いい質問だ。
「その点抜けてましたね。
城に上がっている方は垣間見たかも知れませんが。
あれはフレゼリカの犬で奴隷です。
勿論敬意は払えど、特別注意すべき点は在りません。
陽気に何かを問われた場合。クライフ、フレゼリカの順で答えればいいです」
ノイツェが困り顔。
「国の王が奴隷で陽気に…。不思議な間柄なのだな」
「年数を掛け。徐々に精神支配を受けた結果でしょう。
哀れには思いますが、容易には救えない所まで来ている。
あれは洗脳に近い。精神的な奴隷の類です。
今回来ている第二王子、第三王女然り。あちらの家系はボロボロです。
今でもクライフを王に据えているのは、単に扱い易いからだと私は思っています。国の全権を握ってしまうと、裏で好き勝手に動けなくなる。
そんな所でしょうか」
その他。水やグラスは給仕が置いた物ではなく、各従者に持参させた物を極力使う。酒や果実水を注がれそうになっても体調が悪い、手に持ち上げるだけに留める。
と言うのを追加した。
「最後に。フィーネは怒らずに聞いて欲しい」
「内容に依るわ」
「俺が不敬の罪で捕えられた時。死刑宣告を受けた場合の話だよ」
「ふざけないで!!」
やっぱり怒るよな、普通に。
「ふざけてない。とても重要な話なんだ。
俺を含め、邪魔者を全て排除した後に、何が起こるのか。
フレゼリカが求める物。
一部の人には、それは世界の全てだと説きました。
それを寿命が尽きる前に達成する方法について。
火蓋は帝国かマッハリア。タイラントを武力制圧した後、
フレゼリカが次に狙うのは、南部の主要港町2つ。
ラフドッグのロロシュ財団が所有する商船。あいつの本当の狙いはそれです。ラフドッグから大陸西側。果ては西の大陸へと進出。
荒れるウィンザートを踏み潰して海賊船を拿捕。そのまま横取りして東の大陸へ進出。
ロルーゼは遅かれ早かれ帝国に侵略され、マッハリアは同盟でも結んで中央大陸の半分を占領。
二国の軍備が整い次第。強力な魔人の量産体制が整えられてしまったら。
早ければ5年。最大でも10年内。
フレゼリカの目標の大半は達成するでしょう。
ノイツェ。以前に聞いた西方三国の動きは」
「…最近になって。三国は対等な同盟連合を結ぼうとする動きを見せている。
西大陸への進出の取り止めに関しては、表からでは何も掴めなかったが。
水竜教徒の繋がりで得た情報に因れば、どうやら魔族の生き残りが、残る魔物を統合し挙兵。
派兵された三国の統合師団が壊滅した、らしい」
「タイラントが堕とされそうになったら、西方三国に救いを求めて下さい。
現状の中央大陸で望みがあり、鍵を握るのは。
その大三国同盟と」
壁の配席表を指差し。
「ロルーゼです」
「兄上!その様なことは!」
「黙れスタルフ。もし俺が死んだら。
今回の晩餐会が決裂すれば。お前はマッハリアへ戻り、
父と共に協力者を募り、クーデターを起こせ。
それがお前だけに託せる、未来への希望だ」
「そんな…、そんなの…僕には」
「無理を承知で頼んでいる。嫌なら1人で何処へでも逃げ出せ。父上は、失う者が周りから居なくなれば。
最後の1人になってもやり遂げる人だ」
皆が各々に苦しい表情を浮べて押し黙っていた。
「と!散々脅してしまいましたが!
晩餐会でフレゼリカは、びっくりする位に。もうあっさりと手を引きますよ。
それ程の切り札を手に入れたんです。
今度は、この土壇場であれを用意してくれたコマネンティさんが世界を救う事になりますね♡」
ソプランが溜息混じりに泣き笑い。
「お前なぁ…。頼むぜ、マジで」
半泣きのフィーネからは軽い平手を頂いた。
本気だったら死んでます。
「だから怒るなって前置きしたでしょ」
最後には泣かれてしまった。
この様子じゃ。あの話は出来んなぁ。
「今は無理でしょうね…」うん。
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城勤めのノイツェたちや、スタルフ夫妻(仮)が帰った後。
今宵は趣向を変えて。
シュルツとオセロに似たゲームに興じた。
何故かって?
そりゃ午前の打ち合わせが終わってから、嫁さんが俺の隣から動こうとせず。
シュルツがフィーネ(抱き枕)の奪取に失敗したからさ。
返せ!
俺とシュルツの間では、何方がフィーネと寝るかの添い寝権を賭けての勝負になっている。
「もー、何時までやってんの?もう三人で寝ればいいじゃない。ベッド余裕なんだしさぁ」
嫁さんはとても眠いらしい。
「と、殿方と眠るなど。緊張して………名案ですね!」
どっちやねん。
勝負は負けが込んでて部が悪かった。
「ぐぬぬぬ…」
「それにしても弱いですね。ムルシュさんの方が断然強いです。
あれ程聡明で、知略に長けたスターレン様なのに。
不思議ですね」
「前より強なってるて君ぃ。かなわんわぁ、ホンマ」
「面白い喋り方ですね。何処か地方の方言か何かですか」
「に、西かなぁ…。何処だっけなぁ…。忘れちゃった」
「何ですか、それ。キャッ」
クスリと笑った後に可愛い悲鳴。フィーネに両脇を持ち上げられたシュルツがいた。
「寝るんでしょ。お終いお終い」
今夜はシュルツの自室ではなく、隣のツインの部屋。
男に自室は見られたくないようだ。
1つのベッドに…ではない。俺1人に対し、お隣は2人。
これ…意味あったん?
晩餐会は2日後。糞虫からの急な呼び出しがあるかと構えていたが。特にない様子。
人様のお国では思い通りにならないみたいだな。
明日は1日オフにしよう。
呼び出されても知らんわ。お前とも此れっ切りにしたい。
糞虫め。
何処に行こうか考えていると、隣から平和そうな小さな寝息が2つ、聞こえて来た。
肘を立てて頭を起こして、2人の姿を眺めた。
俺たちの子供にしては大きいが、未来の姿を重ねる。
いいな、こう言うのも。
幸せだ。
幸せを噛み締めつつ、姿勢を正すと直ぐにでも寝られそうだった…。でもちょいトイレ行きたい。
行かなくてもいい気もする。微妙さがもどかしい。
仕方なく起きた。
扉を静かに開け閉め。廊下に出て侍女か兵隊さんの…倒れとるがな!
侍女さんだったので助けよう。
「大丈夫で御座るか?」
反応は無いが、呼吸はしている。首は折れてない。
首筋に痣。当て身?おーリアル当て身だ。
プロの仕事だ。
誰だ。厳重警戒態勢の中。外部からか内部か。
1人で刺客に対処するのは何時振りだったかな。
ロイドちゃん。相手何人くらい?
「そうですね…。近場に3。敷地外に1は見えます」
外からか。身内じゃなくて良かった良かった。
よし!外の奴を捕まえよう。絶対いいの持ってるぜ!
廊下直近の窓を開いて飛び降りた。
2階から、露出した地面に降りても痛くない。
ただの綿の靴下なんだけど…。
あちらから見える高い建物は、中継の鐘撞き塔のみ。
あれでいい?「ですね」
夜中に鐘を鳴らす程、近所迷惑な話はない。
安眠妨害、断固反対。
静寂を保ち、安全に処理する為には…。を考えていたら両サイドの建物脇から敵影2。
上、2階の窓が開いたと思ったら、人影が飛び出して直ぐに引っ込んだ。
接近する地上の2人。なんで突っ込んで来るかなぁ。
時間操作:前1
左から来た敵の喉元に肘を突っ込んだ。
右から…の奴は、遅れて来たソプランが背後から裸締めで処理してくれた。
「わりぃ。油断してたわ」
左で倒れた刺客を指差し。
「これ、お願いします。俺、こっから塔狙います」
「あそこにいんのかよ。上は」
「嫁さん居るんで」
「そりゃそうか。結構距離あるぞ」
「まあ試しです。殺さないように調整しようかなと」
推定距離:700m前後
上空の風:微風
空模様:快晴
ロープの先端を極限に細く、速く、伸ばす。
塔の上に向かって弧を描く様に投げ放った。
先端が柔らかい何かに当たった感触がした。
それにロープを一気に巻き付ける。
「釣れたぜ!」左手の親指を立てた。
「マジか!なんも見えん。凄えな」
照れますわ。
上空を逆さ吊りで運搬…。
「「おお!」」
地上の2人。見上げる空。星空に映える逆さ吊り。
ロマンチックではない。
浮遊して移動する刺客。逆ホラーや!
「二人して何し…」
刺客の首を持って降りて来たフィーネが、俺たちの視線を追って見上げた先に絶句した。
「やってみるもんだわ。生け捕りにしたった」
「中々シュールね」
ソプランがフィーネに尋ねた。
「内部は三匹か?」
「周りに敵意は無いわ」
「シュルツは?」
「ぐっすりよ」
安眠は保たれた。
刺客4人を纏めて縛り上げ、猿轡までがワンセット。
翌朝。警備長がロロシュの前で土下座中。
「弛んどるわ!!」
「も、申し訳ありません!」
簀巻きにされた刺客4匹を前にロロシュの怒号が、朝っぱら邸内に響いた。
「まあみんな無事だったんで、その辺で」
「客人に全部やらせてしまうとは…。何の為に雇っているんだか解らんぞ」
「返す言葉もありません!」
「こいつら全員身包み剥がして、カメノスさんとこ放り込みたいんですが」
「任せる。結果だけ知りたい。明日に使えそうか?」
「微妙ですね。多分金で雇われてるだけだと思います。
足は付かないように。但し、この鐘撞き塔に居たこいつだけは多少は使えるかな」
「そんな場所に…。全方位見直しだ!!」
外枠の塀を全面高くする。
有刺鉄線を追加。
電撃を流せる魔道具の設置。
ここは…、刑務所か何かか…。
見張り役の道具を探った。
やっぱりいい物持ってたよ。
名前:遠見の双眼(古代兵器)
性能:1km圏内の物体を解析
特徴:意識した対象物の素性が丸裸
透視を試みた場合、男性は一定期間失明する
看破スキルの上位互換
この制作者は男に恨みがあるようだ。
うーうー五月蠅い4人を大きな箱に詰め、カメノス邸へ配送した。
ロロシュ氏に許可を得た医学書を手土産に、準備を整え運搬用の荷馬車に3人で乗り込もうとした所。
「お待ち下さい!私もカメノス様にご挨拶を」
とシュルツが同行を求めてきた。
怒り任せにゼファーと警備長に指示を出しまくるロロシュに目を遣ると。
「君らの傍より安全な場所はない。一緒に連れて行け」
押し付けられた感はあるが、シュルツは前から行きたがっていたので連れて行く事にした。
「シュルツは挨拶だけだぞ。中には見せられない物も多いから」
色んな意味で。
「はい!カメノス様と、出来れば警護をして頂けた担当の方にご挨拶をするだけです。客間で皆さんをお持ちしております」
健気やねぇ。つい抱き締めたくなっちゃう。
…フィーネに肩を掴まれた。しませんわ!
「クワッ!」
屋根の上からクワンティの声も聞こえた。
呼んでないのに…。ロロシュ邸の鳩小屋から退屈で出て来た模様。
馬車のサイドドアを開け、クワンティを招いた。
右腕に乗せ、左手で頭を撫でた。
「鳩も間近で見ると可愛いもんだな。俺も…、いや聞くの怖えから止めとこ」
「雌なら最低でも金100万枚以上だそうです」
「だから聞いてねえって!スターレン様!…面倒くせえなこれ!」
「慣れですよ、慣れ」
クワンティが4人の服の上をぴょんぴょん移ること数分。
だ、か、ら!少し離れたお隣に行くだけだってば。
カメノス邸の門前へ到着。
客台を降りる以前に、開門され入場。
窓から覗くと、本館前にカメノス+従者たちが構えていた。
その隣にはモーラスと1人の女性の姿。
カメノスの娘さん?
先に降り、女性2人をエスコート。
「またまた押し掛けて済みません。特に連絡してないんですが…」
「その鳩が先に飛んで来たのでな」
おぉ凄い。指示もしてないのに。
「クワンティは偉いな」
頭を撫でて褒めてやると、嬉しそうにクルッと鳩っぽく鳴いた。
つい抱き締めたくなっちゃう。
…フィーネに肩を掴まれた。なんでや!!
少し離れた隣では。
「全く似合ってないな。ソプラン」
「うっせーよ!」
今のソプランは執事用の外装。黒服に短髪オールバックだもんな。普段とは全然違う。
「簡単に紹介する。モーラスの隣に居るのが、
次女のペルシェだ。長女はかなり前にロルーゼの水竜教神官の元に嫁いでいて、ここには居ない。挨拶を」
「次女のペルシェです。薬剤類とショウユの開発に従事しております。…その。お忙しいスターレン様に、今申し上げ難いのですが」
え?挨拶だけでは終わらなかった。
何でも近く、生誕祭が終わった後でモーラスと結婚したいらしい…。
カメノス氏は肩を竦めている。許可は下りている様子。
そこで何故に俺の許可が?
「初めまして、ペルシェさん。スターレンと申します。
醤油の開発についての相談ではなく…。お二人のご結婚の話にどうして俺の許しが必要なのですか?」
「前にお見合いパーティーを予定していただろ。そこに私も参加する予定だった事を話してしまってな」
「あぁ…、成程。いや、別に構いませんよ。独身予定の方だけを集める予定でしたので。決まったお相手が居るなら強制退場です。ご心配なく」
「あぁ良かったです。安心しました」
ホッと大きなお胸を撫で下ろしたペルシェさん。
「不躾ながら…。スターレン様のお人柄が、父やモーラスや面識の在る者たちに聞いても…。全く要領を得ず。
少々悩んでおりましたのです」
「俺って…。そんなに怖いの?」
周りに助けを求めてみたが、ソプランが答えてくれた。
「無自覚か!隣国の貴族様の倅で。商人としても成功。
冒険者としても一流。
カメノス様や、ロロシュ卿、コマネンティ氏とも仲が良く!
ヘルメン王陛下や王族や軍部の幹部に臆する処か!
説教まで垂れる異常な馬鹿だ。
一般平民が理解出来る訳がねえだろ!!」
えー。そんなにかぁ。
「普通にしてるだけなんですがね」
「「「普通じゃない!」」」
各所からそんなお言葉を頂いた。
クワンティだけが首を捻っている。君だけが味方さ!
カメノスに挨拶を終えたシュルツが、兵舎に行くと案内人に連れ出された所で。
本館内の議室で打ち合わせを行った。
「お土産に連れてきた4人は、昨夜俺を狙って送り込まれた刺客たちです。
好きに使って下さいって言いたいとこですが、状況に依っては明日返却するかも知れませんので、殺さないようにお願いします。
取れる情報も少ないでしょう」
「うむ。通常の拷問程度に留めよう」
「今日は少しだけ別件を」
リュックから医学書を取り出して机上に並べた。
それを6人で覗き込む。
「これらは医学書。男女別の人体解剖図です。
将来の医療事業に役立てて欲しいので、全てカメノスさんに寄贈します。
ロロシュさんの許可も取ってあります。
ただ。これ、詳しく書かれ過ぎてて。耐性が無い人が読むと吐きます。俺でもこれはちょっと無理でした」
中身を見てしまったソプランとフィーネが思わず口を押さえた。
早々にソプランがリタイヤ。
「ちょ、ちょっと外の空気吸ってくる。直ぐ戻る」
他の3人は割と平気な顔をしていた。
フィーネも頑張って口を押さえながら見ている。
先生!俺も無理っす!
軟弱な男二人が逃げ出してしまった。
私も先に行けばと思いつつ、本の内容はとても興味深い物だった。
少し取っ付きにくい人だと印象を受けたペルシェさんが、並び真ん中の本を手に取ると。
「フィーネ様。ちょっと…」
本をモーラスさんとカメノスさんに見せないように持ち上げ、私の手を引いた。
離れた室内で二人で本を読む。
内容は自粛割愛するが、それは女性に纏わる説明図。
平均的な生理周期表から、命の源に関して…。
「これなら…。授かりにくい体質の方でも…」
「まずは周期を掴む所から…」
「夢は広がりますね♡」
「ペルシェさん。これは、男には見せない方が」
「これだけは、隠して預かります」
「また見に来ますね」
「是非。他の適齢女性も集めて、お茶会でも」
予期せぬ所で友達が出来てしまった。
世界とは関係してないと思っていた、月の満ち欠けまで関係する可能性が在ったなんて………凄い!
周期に関しては個人差が強い。
体型の成熟度だったり、食事環境であったり。
平均的に一月に一回周期。私は…大体四ヶ月位。
今まで全く授からなかった理由を理解すると同時に、この肉体の大凡の寿命が解ってしまった。
詰り…、平均寿命の約四倍だと推測される。
スタンの予想とも誤差内。この本は真実を語っていた。
早く安住の地を見付けて、本格的に計画したい。
日常生活をレスにする気はサラサラないけれど。
ペルシェさん曰く、夢は広がる♡
場所はロロシュ邸内の商談部屋をお借りした。
他列席者は家主のロロシュ。
サルベイン、シュルツ、フィーネ、ソプラン、ゼファー。
国防からはノイツェ、ライラ。の計11名。
「お忙しい中、対フレゼリカ向けの事前打ち合わせに足を運んで頂き感謝します。少々面倒な話なので、挨拶諸々全員の敬称は省きます。
スタルフは絶対に口を挟むな。どうしても理解出来ない箇所は後で個別に説明する」
スタルフが頷くのを見て。
「ここに集まって貰った方々は、フレゼリカと直接会う可能性が在る人の内、主要な人物。
タイラント側王族、下臣方面は全てヘルメンに任せます。
色々な対抗手段を多く持っていますので、ノイツェ以外は危惧する必要性はありません。
これまで私が、フレゼリカの事を糞虫、塵豚などと罵って来ましたが、最初にその理由から説明して行きます。
私が10歳になった頃、母リリーナが家族だけの会食中に毒殺されました。個別に、目の前で。
勘の鋭い父は、誰が仕掛けたか。事後で直ぐに気付いたでしょう。
私が最初にフレゼリカに疑念を抱いたのは、真にその母の葬儀の後です。
周りから誰も居なくなった瞬間に。母の墓前で、一瞬だけ本当に一瞬だけ。あいつは薄ら笑った。
凍り付くような微笑でした。
それから私は年数を掛け、父の伝手を使いフレゼリカの周辺調査を行いました。
そしたら出るわ出るわ。
下臣、従者、大物貴族、令嬢等々。ある人は行方不明。
ある人は夜襲に。ある人は喉を切られて奴隷落ち。
その全てに於いて、フレゼリカの腹心たちが関わっていました。巧妙且つ大胆に。あいつからの勅命に従い。
指示が出ていた証拠は1つとして在りません。
ですが確実に言える事として、あいつは複数のスキルを持っています。
汚すぎて手を握ったこともないので、正確な名称は解りません。
1つは、目を合わせた人間に恐怖心を植え付けるスキルです。
その力は、過去にロロシュ、サルベイン、ヘルメンを一時的に屈服状態に堕とした、と言えば解って貰えるかと。
1つは、真逆のスキル。
人の猜疑心を利用し、懐柔する力です。
個々はそれ程に強力ではありません。フレゼリカの人間性を熟知している者なら容易に回避出来ます。
父や私の様に。
しかし、世間一般の知らない人から見れば。置かれた状況次第で完全な初見殺しと成り得ます。
ここまでで何か在りますか?」
全員の言葉は無い。スタルフが手を挙げたがって、我慢している様子だった。今は無視して続ける。
「続けます。
主な対応として。長時間目を合わせない事。視線を合わせる機会があっても、あいつの眉間や鼻元を凝視し続けて下さい。例え、あいつから発言を求められてもです。
ソプランは求められても決して口を利いては駄目だ。そんな状況があるなら、必ず俺を盾にする事。
次に。フレゼリカが嫌う言葉の使用を禁じます。
否定系の語句。しかし、ですが、でも、だが、だけど。
などの反意を示す言葉です。
口から出掛かったら大袈裟に口を塞いで、考えている。返答に困っています。自分は返せる立場に在りません。
などと逃げの一手で凌いで下さい。
この中だと…シュルツ。君はライザーの婚約者として何かを求められる可能性が高い。
そんな時は、そうだな…。ライザーかロロシュを頼り、よく相談して後程お返事する、とでも言って逃げろ。
俺に関して聞かれても、存じ上げません。それ程に親密ではありませんと答えて欲しい」
「はい」
素直でいい子だ。
「次いでスタルフ。お前はこれまでに、直接あいつと接見する機会は在ったのか」
「在りません」
「なら結構。今度は俺を剥がした状態で呼ばれるかも知れない。そんな時は、父や俺と相談してみますと答えろ。
失言する位なら、何も解らぬ馬鹿に徹してくれ。
もしも、マッハリアの王子や王女に
「お友達になりましょう」などと誘いを受けても同様だ。
お友達って何ですか?位の馬鹿さ加減で頼む」
「わ、解りました…」不安だなぁ。
ロロシュ氏から受け取った会場の配席図を壁に貼り。
「これが会場の見取り図。スタルフは予想通りの末端席に居る。俺とは離れてるな…。
国賓席から遠いからって油断はするなよ。
ミラージュ家は左手上下卓か。
特にサルベイン。貴方の背中はガラ空きだ。ゼファーはロロシュとシュルツしか守れない。充分に注意して欲しい。
自衛手段として、トイレに長時間籠るとか。自国の御令嬢の尻を追いかけ回すとか。逃げ回るのも手だな」
「わ、わかっ…たが。念の為、父の侍女長も連れて行く」
あの人か…。ゼファーさんとあの人が居れば問題は無さそうだ。
「俺の背中はソプラン。離れる時は一声欲しい」
「了解。…畏まりました!…ハァ…」
泣き言を聞いてやれる暇は無い。
「問題のサンの扱いだが。決めたのか」
先にサンが答えた。
「発表出来るまでの準備時間が在りませんので。今回は従者としてスタルフ様の後ろに控えます」
「誰かに突っ込まれた時だけ。婚約を申し込む予定だと答える事にしました」
賢明な判断だ。
「解った。それで頼む」
フィーネが手を挙げた。
「私は、この邸内で寝てろって言われてるけど。私も変装して、スタンの従者に扮するのでは駄目なの?
正直な気持ち。スタンの傍に居たい」
「それはとても嬉しいけど難しい。
妻は病で床に伏せていると言って逃げ切る積もりだが。
それでもいいから連れて来い、って命令された時に凄く困るんだ。
相手があれじゃなきゃ。迷わずフィーネを同席させたい。
場に看破とかの上位スキル持ちが紛れてたら。見抜かれて全てが水の泡になる。
大人しくここで待っててくれ。流石に迎賓会場内で戦闘になる事はないからさ」
「…フンッ!」拗ねちゃったよ…。
話題を逸らそう。
「ノイツェ。警備に関して口を挟む積もりは毛頭無い。
こないだの宝物殿に関しては済まなかった。入れる人数に制限が在って。ヘルメンが、あいつも道具に関して欲深い所があるから、そもそも駄目って言ってた」
「い、今…それは聞きたくなかった…。忠義が揺らぐ。
さて置き。今回は例年に比べ、諸外国からの国賓の人数も多い。万全にして望もう」
「右に同じく。不審人物は即刻捉えます。ニーダは城から遠ざけます!ハイネハイネにでも出張させましょう」
ライラも気合い充分だな。
「そうしてくれ。ノイツェ。タイラント、マッハリア、アッテンハイム。この三国で三つ巴の戦いに成るとしたら、主要な場所が何処になるか。見当は付くか」
「考えたくもないが…。私なら、マッハリア領の南西端。
サイシェット大平原に当てる、だろうな」
「そうですか…」
あの空白地帯。丁度、三国が折り合う場所だ。成程。
「ミラージュ家の采配は卿に任せます。間違ってもキレてフレゼリカに殴り掛からないで下さい」
「そんな事になったら…。先にヘルメンを殴りに行く。安心しろ」
できねーよ!!隙あらばって感じが怖い。
「フレゼリカに喧嘩を売るのは私の仕事です。他の皆さんは指を咥えて見てて下さい。
私がラザーリアを出る直前の接見でも、否定系の言葉を織り交ぜて挑発しました。
今、あいつの矛先は私に向いています。余計な邪魔はしないで下さいね」
スタルフの手が上がった。
「他事は後で聞き直しますが。兄上。
我が国の、クライフ王陛下は注視しなくて良いのですか」
お、中々いい質問だ。
「その点抜けてましたね。
城に上がっている方は垣間見たかも知れませんが。
あれはフレゼリカの犬で奴隷です。
勿論敬意は払えど、特別注意すべき点は在りません。
陽気に何かを問われた場合。クライフ、フレゼリカの順で答えればいいです」
ノイツェが困り顔。
「国の王が奴隷で陽気に…。不思議な間柄なのだな」
「年数を掛け。徐々に精神支配を受けた結果でしょう。
哀れには思いますが、容易には救えない所まで来ている。
あれは洗脳に近い。精神的な奴隷の類です。
今回来ている第二王子、第三王女然り。あちらの家系はボロボロです。
今でもクライフを王に据えているのは、単に扱い易いからだと私は思っています。国の全権を握ってしまうと、裏で好き勝手に動けなくなる。
そんな所でしょうか」
その他。水やグラスは給仕が置いた物ではなく、各従者に持参させた物を極力使う。酒や果実水を注がれそうになっても体調が悪い、手に持ち上げるだけに留める。
と言うのを追加した。
「最後に。フィーネは怒らずに聞いて欲しい」
「内容に依るわ」
「俺が不敬の罪で捕えられた時。死刑宣告を受けた場合の話だよ」
「ふざけないで!!」
やっぱり怒るよな、普通に。
「ふざけてない。とても重要な話なんだ。
俺を含め、邪魔者を全て排除した後に、何が起こるのか。
フレゼリカが求める物。
一部の人には、それは世界の全てだと説きました。
それを寿命が尽きる前に達成する方法について。
火蓋は帝国かマッハリア。タイラントを武力制圧した後、
フレゼリカが次に狙うのは、南部の主要港町2つ。
ラフドッグのロロシュ財団が所有する商船。あいつの本当の狙いはそれです。ラフドッグから大陸西側。果ては西の大陸へと進出。
荒れるウィンザートを踏み潰して海賊船を拿捕。そのまま横取りして東の大陸へ進出。
ロルーゼは遅かれ早かれ帝国に侵略され、マッハリアは同盟でも結んで中央大陸の半分を占領。
二国の軍備が整い次第。強力な魔人の量産体制が整えられてしまったら。
早ければ5年。最大でも10年内。
フレゼリカの目標の大半は達成するでしょう。
ノイツェ。以前に聞いた西方三国の動きは」
「…最近になって。三国は対等な同盟連合を結ぼうとする動きを見せている。
西大陸への進出の取り止めに関しては、表からでは何も掴めなかったが。
水竜教徒の繋がりで得た情報に因れば、どうやら魔族の生き残りが、残る魔物を統合し挙兵。
派兵された三国の統合師団が壊滅した、らしい」
「タイラントが堕とされそうになったら、西方三国に救いを求めて下さい。
現状の中央大陸で望みがあり、鍵を握るのは。
その大三国同盟と」
壁の配席表を指差し。
「ロルーゼです」
「兄上!その様なことは!」
「黙れスタルフ。もし俺が死んだら。
今回の晩餐会が決裂すれば。お前はマッハリアへ戻り、
父と共に協力者を募り、クーデターを起こせ。
それがお前だけに託せる、未来への希望だ」
「そんな…、そんなの…僕には」
「無理を承知で頼んでいる。嫌なら1人で何処へでも逃げ出せ。父上は、失う者が周りから居なくなれば。
最後の1人になってもやり遂げる人だ」
皆が各々に苦しい表情を浮べて押し黙っていた。
「と!散々脅してしまいましたが!
晩餐会でフレゼリカは、びっくりする位に。もうあっさりと手を引きますよ。
それ程の切り札を手に入れたんです。
今度は、この土壇場であれを用意してくれたコマネンティさんが世界を救う事になりますね♡」
ソプランが溜息混じりに泣き笑い。
「お前なぁ…。頼むぜ、マジで」
半泣きのフィーネからは軽い平手を頂いた。
本気だったら死んでます。
「だから怒るなって前置きしたでしょ」
最後には泣かれてしまった。
この様子じゃ。あの話は出来んなぁ。
「今は無理でしょうね…」うん。
---------------
城勤めのノイツェたちや、スタルフ夫妻(仮)が帰った後。
今宵は趣向を変えて。
シュルツとオセロに似たゲームに興じた。
何故かって?
そりゃ午前の打ち合わせが終わってから、嫁さんが俺の隣から動こうとせず。
シュルツがフィーネ(抱き枕)の奪取に失敗したからさ。
返せ!
俺とシュルツの間では、何方がフィーネと寝るかの添い寝権を賭けての勝負になっている。
「もー、何時までやってんの?もう三人で寝ればいいじゃない。ベッド余裕なんだしさぁ」
嫁さんはとても眠いらしい。
「と、殿方と眠るなど。緊張して………名案ですね!」
どっちやねん。
勝負は負けが込んでて部が悪かった。
「ぐぬぬぬ…」
「それにしても弱いですね。ムルシュさんの方が断然強いです。
あれ程聡明で、知略に長けたスターレン様なのに。
不思議ですね」
「前より強なってるて君ぃ。かなわんわぁ、ホンマ」
「面白い喋り方ですね。何処か地方の方言か何かですか」
「に、西かなぁ…。何処だっけなぁ…。忘れちゃった」
「何ですか、それ。キャッ」
クスリと笑った後に可愛い悲鳴。フィーネに両脇を持ち上げられたシュルツがいた。
「寝るんでしょ。お終いお終い」
今夜はシュルツの自室ではなく、隣のツインの部屋。
男に自室は見られたくないようだ。
1つのベッドに…ではない。俺1人に対し、お隣は2人。
これ…意味あったん?
晩餐会は2日後。糞虫からの急な呼び出しがあるかと構えていたが。特にない様子。
人様のお国では思い通りにならないみたいだな。
明日は1日オフにしよう。
呼び出されても知らんわ。お前とも此れっ切りにしたい。
糞虫め。
何処に行こうか考えていると、隣から平和そうな小さな寝息が2つ、聞こえて来た。
肘を立てて頭を起こして、2人の姿を眺めた。
俺たちの子供にしては大きいが、未来の姿を重ねる。
いいな、こう言うのも。
幸せだ。
幸せを噛み締めつつ、姿勢を正すと直ぐにでも寝られそうだった…。でもちょいトイレ行きたい。
行かなくてもいい気もする。微妙さがもどかしい。
仕方なく起きた。
扉を静かに開け閉め。廊下に出て侍女か兵隊さんの…倒れとるがな!
侍女さんだったので助けよう。
「大丈夫で御座るか?」
反応は無いが、呼吸はしている。首は折れてない。
首筋に痣。当て身?おーリアル当て身だ。
プロの仕事だ。
誰だ。厳重警戒態勢の中。外部からか内部か。
1人で刺客に対処するのは何時振りだったかな。
ロイドちゃん。相手何人くらい?
「そうですね…。近場に3。敷地外に1は見えます」
外からか。身内じゃなくて良かった良かった。
よし!外の奴を捕まえよう。絶対いいの持ってるぜ!
廊下直近の窓を開いて飛び降りた。
2階から、露出した地面に降りても痛くない。
ただの綿の靴下なんだけど…。
あちらから見える高い建物は、中継の鐘撞き塔のみ。
あれでいい?「ですね」
夜中に鐘を鳴らす程、近所迷惑な話はない。
安眠妨害、断固反対。
静寂を保ち、安全に処理する為には…。を考えていたら両サイドの建物脇から敵影2。
上、2階の窓が開いたと思ったら、人影が飛び出して直ぐに引っ込んだ。
接近する地上の2人。なんで突っ込んで来るかなぁ。
時間操作:前1
左から来た敵の喉元に肘を突っ込んだ。
右から…の奴は、遅れて来たソプランが背後から裸締めで処理してくれた。
「わりぃ。油断してたわ」
左で倒れた刺客を指差し。
「これ、お願いします。俺、こっから塔狙います」
「あそこにいんのかよ。上は」
「嫁さん居るんで」
「そりゃそうか。結構距離あるぞ」
「まあ試しです。殺さないように調整しようかなと」
推定距離:700m前後
上空の風:微風
空模様:快晴
ロープの先端を極限に細く、速く、伸ばす。
塔の上に向かって弧を描く様に投げ放った。
先端が柔らかい何かに当たった感触がした。
それにロープを一気に巻き付ける。
「釣れたぜ!」左手の親指を立てた。
「マジか!なんも見えん。凄えな」
照れますわ。
上空を逆さ吊りで運搬…。
「「おお!」」
地上の2人。見上げる空。星空に映える逆さ吊り。
ロマンチックではない。
浮遊して移動する刺客。逆ホラーや!
「二人して何し…」
刺客の首を持って降りて来たフィーネが、俺たちの視線を追って見上げた先に絶句した。
「やってみるもんだわ。生け捕りにしたった」
「中々シュールね」
ソプランがフィーネに尋ねた。
「内部は三匹か?」
「周りに敵意は無いわ」
「シュルツは?」
「ぐっすりよ」
安眠は保たれた。
刺客4人を纏めて縛り上げ、猿轡までがワンセット。
翌朝。警備長がロロシュの前で土下座中。
「弛んどるわ!!」
「も、申し訳ありません!」
簀巻きにされた刺客4匹を前にロロシュの怒号が、朝っぱら邸内に響いた。
「まあみんな無事だったんで、その辺で」
「客人に全部やらせてしまうとは…。何の為に雇っているんだか解らんぞ」
「返す言葉もありません!」
「こいつら全員身包み剥がして、カメノスさんとこ放り込みたいんですが」
「任せる。結果だけ知りたい。明日に使えそうか?」
「微妙ですね。多分金で雇われてるだけだと思います。
足は付かないように。但し、この鐘撞き塔に居たこいつだけは多少は使えるかな」
「そんな場所に…。全方位見直しだ!!」
外枠の塀を全面高くする。
有刺鉄線を追加。
電撃を流せる魔道具の設置。
ここは…、刑務所か何かか…。
見張り役の道具を探った。
やっぱりいい物持ってたよ。
名前:遠見の双眼(古代兵器)
性能:1km圏内の物体を解析
特徴:意識した対象物の素性が丸裸
透視を試みた場合、男性は一定期間失明する
看破スキルの上位互換
この制作者は男に恨みがあるようだ。
うーうー五月蠅い4人を大きな箱に詰め、カメノス邸へ配送した。
ロロシュ氏に許可を得た医学書を手土産に、準備を整え運搬用の荷馬車に3人で乗り込もうとした所。
「お待ち下さい!私もカメノス様にご挨拶を」
とシュルツが同行を求めてきた。
怒り任せにゼファーと警備長に指示を出しまくるロロシュに目を遣ると。
「君らの傍より安全な場所はない。一緒に連れて行け」
押し付けられた感はあるが、シュルツは前から行きたがっていたので連れて行く事にした。
「シュルツは挨拶だけだぞ。中には見せられない物も多いから」
色んな意味で。
「はい!カメノス様と、出来れば警護をして頂けた担当の方にご挨拶をするだけです。客間で皆さんをお持ちしております」
健気やねぇ。つい抱き締めたくなっちゃう。
…フィーネに肩を掴まれた。しませんわ!
「クワッ!」
屋根の上からクワンティの声も聞こえた。
呼んでないのに…。ロロシュ邸の鳩小屋から退屈で出て来た模様。
馬車のサイドドアを開け、クワンティを招いた。
右腕に乗せ、左手で頭を撫でた。
「鳩も間近で見ると可愛いもんだな。俺も…、いや聞くの怖えから止めとこ」
「雌なら最低でも金100万枚以上だそうです」
「だから聞いてねえって!スターレン様!…面倒くせえなこれ!」
「慣れですよ、慣れ」
クワンティが4人の服の上をぴょんぴょん移ること数分。
だ、か、ら!少し離れたお隣に行くだけだってば。
カメノス邸の門前へ到着。
客台を降りる以前に、開門され入場。
窓から覗くと、本館前にカメノス+従者たちが構えていた。
その隣にはモーラスと1人の女性の姿。
カメノスの娘さん?
先に降り、女性2人をエスコート。
「またまた押し掛けて済みません。特に連絡してないんですが…」
「その鳩が先に飛んで来たのでな」
おぉ凄い。指示もしてないのに。
「クワンティは偉いな」
頭を撫でて褒めてやると、嬉しそうにクルッと鳩っぽく鳴いた。
つい抱き締めたくなっちゃう。
…フィーネに肩を掴まれた。なんでや!!
少し離れた隣では。
「全く似合ってないな。ソプラン」
「うっせーよ!」
今のソプランは執事用の外装。黒服に短髪オールバックだもんな。普段とは全然違う。
「簡単に紹介する。モーラスの隣に居るのが、
次女のペルシェだ。長女はかなり前にロルーゼの水竜教神官の元に嫁いでいて、ここには居ない。挨拶を」
「次女のペルシェです。薬剤類とショウユの開発に従事しております。…その。お忙しいスターレン様に、今申し上げ難いのですが」
え?挨拶だけでは終わらなかった。
何でも近く、生誕祭が終わった後でモーラスと結婚したいらしい…。
カメノス氏は肩を竦めている。許可は下りている様子。
そこで何故に俺の許可が?
「初めまして、ペルシェさん。スターレンと申します。
醤油の開発についての相談ではなく…。お二人のご結婚の話にどうして俺の許しが必要なのですか?」
「前にお見合いパーティーを予定していただろ。そこに私も参加する予定だった事を話してしまってな」
「あぁ…、成程。いや、別に構いませんよ。独身予定の方だけを集める予定でしたので。決まったお相手が居るなら強制退場です。ご心配なく」
「あぁ良かったです。安心しました」
ホッと大きなお胸を撫で下ろしたペルシェさん。
「不躾ながら…。スターレン様のお人柄が、父やモーラスや面識の在る者たちに聞いても…。全く要領を得ず。
少々悩んでおりましたのです」
「俺って…。そんなに怖いの?」
周りに助けを求めてみたが、ソプランが答えてくれた。
「無自覚か!隣国の貴族様の倅で。商人としても成功。
冒険者としても一流。
カメノス様や、ロロシュ卿、コマネンティ氏とも仲が良く!
ヘルメン王陛下や王族や軍部の幹部に臆する処か!
説教まで垂れる異常な馬鹿だ。
一般平民が理解出来る訳がねえだろ!!」
えー。そんなにかぁ。
「普通にしてるだけなんですがね」
「「「普通じゃない!」」」
各所からそんなお言葉を頂いた。
クワンティだけが首を捻っている。君だけが味方さ!
カメノスに挨拶を終えたシュルツが、兵舎に行くと案内人に連れ出された所で。
本館内の議室で打ち合わせを行った。
「お土産に連れてきた4人は、昨夜俺を狙って送り込まれた刺客たちです。
好きに使って下さいって言いたいとこですが、状況に依っては明日返却するかも知れませんので、殺さないようにお願いします。
取れる情報も少ないでしょう」
「うむ。通常の拷問程度に留めよう」
「今日は少しだけ別件を」
リュックから医学書を取り出して机上に並べた。
それを6人で覗き込む。
「これらは医学書。男女別の人体解剖図です。
将来の医療事業に役立てて欲しいので、全てカメノスさんに寄贈します。
ロロシュさんの許可も取ってあります。
ただ。これ、詳しく書かれ過ぎてて。耐性が無い人が読むと吐きます。俺でもこれはちょっと無理でした」
中身を見てしまったソプランとフィーネが思わず口を押さえた。
早々にソプランがリタイヤ。
「ちょ、ちょっと外の空気吸ってくる。直ぐ戻る」
他の3人は割と平気な顔をしていた。
フィーネも頑張って口を押さえながら見ている。
先生!俺も無理っす!
軟弱な男二人が逃げ出してしまった。
私も先に行けばと思いつつ、本の内容はとても興味深い物だった。
少し取っ付きにくい人だと印象を受けたペルシェさんが、並び真ん中の本を手に取ると。
「フィーネ様。ちょっと…」
本をモーラスさんとカメノスさんに見せないように持ち上げ、私の手を引いた。
離れた室内で二人で本を読む。
内容は自粛割愛するが、それは女性に纏わる説明図。
平均的な生理周期表から、命の源に関して…。
「これなら…。授かりにくい体質の方でも…」
「まずは周期を掴む所から…」
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「ペルシェさん。これは、男には見せない方が」
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「また見に来ますね」
「是非。他の適齢女性も集めて、お茶会でも」
予期せぬ所で友達が出来てしまった。
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