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第37話 魔剣ソラリマデュラン(前編)
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約一週間半の新婚旅行、前半弾丸パートを終え。
幾つかの宿題を持ち帰り、戻りましたよパージェント。
まっ先に向かったのは、家が無いのでホテルの予約。
弟に泊まらせて、自分たちは一度も使ってない。
これはいけないと、エリュグンテのスウィートを2泊…。
取れませんでした!
頭に来たので、ワンランク下。最上階の下の階に捻じ込んだった。
同時に、来週からの2週間。
ラフドッグに在る系列リゾートホテルをごり押しで取ってやったわ!
「ねぇ、スタン。そこって、ここのスウィートと同じ位の大きさなのよね…」
「そうだと思うけど。気に入らない?」
「そんな事は…微塵も無いけど…。ど、どんな要求を…」
「ん?最後よく聞こえなかった」
顔を真っ赤に、それ以上聞かせてくれなかった。
次に向かったのはライラとニーダの所。
兵舎でお仕事中の所にお邪魔し、流れで城内のランチを頂いた。裏方さん用もレベルアップしていた…。
小物のお土産を2人に渡すと同時に、前にライラが俺とキスをしたがっていた事を思い出し、アメリカンなチューをしてみた所。…3人に引っ叩かれました。
「目の前で浮気をするな!しかも人妻と」
「どうして結婚前にしてくれないのですか!!」
「破廉恥です!」
どうしてニーダまで?女性の思考が解らない。
「友達として。ただの挨拶だってば」
「関節キスは良くて。何で挨拶でおこんのさ」
「ニーダ。今のは、挨拶なんだ。覚えておくといい」
「「「挨拶な訳があるか!」」」
全く解らない。
ライラとニーダを外に追い出し、城内のノイちゃんの国防執務室に邪魔しに行き、室長室に居たギルマートにアポ無しで奇襲を掛けた。
「西部の野盗の放置はどう言う了見だ!!」
「放置ではない!人員が足りぬのだ!!
西南の拠点を二つも潰してくれた事には感謝する。
感謝はするが誰も頼んでない!どれ程、陛下に叱責されたと…」
泣きそうだったので許してやろうと…。
「メルフィスさん。私たちからの依頼を終えたら国内に戻して。モンドリアさんも一緒に。意味は解るわね?」
「…まさか…、メルフィスが、本気に…」
「私たちが勝手に首を突っ込んだのは抜きにしても。
特に南側はとても酷い有様だった…。
直ぐには無理でも、出来る限り善処して欲しいの」
「…了解、した…」
アポ無しでは流石に王様は無理だったので一時撤退。
外に出て、商業ギルドの支部長室に殴り込んだ。
「ムートン卿!てめぇ!有り難う」
「声が大きい。娘の対応をさせたのは済まない。
が、君が欲していたであろう報酬も偶然噛み合った。
これが中立の難しき所。何方か一方だけには肩入れは出来ぬだ。許して欲しい」
まぁいいや。多少引っ掛かるが、水に流そう…。
「その娘さん。モンドリアさんと本気で結婚したがっていたわ。無事に国内に戻せたら、対処は出来そう?
出来ないと言われると、手伝ってあげると言った私たちの立場がないの」
「…ぐぅの根も出んな。戻したら、好きにさせよう。
その代わり…、王には黙っていてくれ!!」
「娘さんには。追加で私たちからの依頼もしました。
内緒にする譲歩として、その件も飲んで下さい」
「…解った」
非常に優秀な秘書官様が、ここに居ました。
続きまして。シュルツとお猿に会いにロロシュ邸へ。
高確率でシュルツは邸内に居る。
再会を喜び、抱き締め合う2人の姿は本当の姉妹に見えて素直に感動した。
2週間も、離れてはいないのに…。
その2人から離れ、サルの家へ訪問。
「サルベインさん。お土産~」
「藪から棒に。何だ」
デッカい氷の魔石を接客テーブルの上に置いた。
「これは…」
「アッテンハイムの南部で拾ってきました。腕のいい細工師と、魔石の入荷ルートの確保をコマネさんの所へ依頼して下さい」
「独占は…出来ないのか」
「まーた。家族を危険に晒すんですか?好きですねぇ。
貴方たち兄弟は。
次に何かあっても、シュルツ以外は助けませんから。そのお積りでなら、どうぞご勝手に」
「…どうも私は、欲に駆られ易い。父とコマネに相談して慎重に進めるよ。感謝する」
「そうして下さい。自覚が在るだけまだマシです。
自分を律するのも、商売の内だと。俺は思いますよ」
「胸に刻むとも」
そのままロロシュ氏を交えて夕食を御馳走に成れると聞いたので、時間まで定番の書庫へと引き籠もった。
前より更に増えてた書物を適当に読み漁る。
特に有益な情報は何も無かったが、ロマンス小説ぽい書が在った。
『とある女神様と悪しき魔王の禁断の恋』
………嫌な予感しかしません!!!
そっと書を棚に戻した。
「智哉…」
なんだい?ロイドちゃん。
「私は、善処はしました。私なりに頑張ったのです。粘り強く交渉はしたのです。信じて下さい」
何があったかは敢えて聞かないけれど…。
ただ言えるのは。
俺たちに、御自分の本心を投影しないで欲しい。
それだけは伝えて貰える?
「はい。お伝えしておきます。ただ、既に執行された物に付いては、取り消しは困難ですので。ご了承を」
解りましたよーだ。
夕食後に。シュルツがフィーネを連れ去る俺を、親の敵を見るような目で睨んで来た。
代わりにクワンティを預けてきた。
「シュルツを守ってて。緊急時以外はこっちに来ちゃ駄目だよ」
「クワッ!」
しょーがないじゃん。だって新婚旅行中だよ?
高級ホテルの初泊だよ。邪魔されたくないのはこっちなんだけどなぁ…。
取った部屋は上のスウィートとは違う、下の上級部屋にした筈だった…。
ホテルに戻ると、最上を取っていたどっかの貴族様が急病で倒れ、キャンセルになったと言うではないか。
勝手にアップグレードされてしもた。
「やっぱり、広いね…」
「広いねぇ」
広すぎる室内を見渡し、大きな出窓からは中央広場と総本堂の姿も小さく見え…。
「「見下ろして御免なさい!」」
バーカウンター前で窓からの夜景を肴に、ロゼワインを開けた。
「やっと。二人切りになれたね。長かった…」
「ああ、やっとだな。待たせてごめん」
本当の意味で。正真正銘の2人切り。
髪をアップに整え、丈の短い紺色のシルク地ナイトドレスを着流して、物凄く色っぽい。
自分は水色のシルクガウンに白い腰帯。
「謝らないでよ」
ほんのり笑う、ピンク色の唇。
透き通るような白い肌に、鮮やかな茶髪。同じ色の瞳。
正面から向き合うと、心臓が…。
「緊張してきた。…俺と、結婚してくれて有り難う。
フィーネ、愛してる」
「私も緊張してる。半魔の私を、貰ってくれるなんて奇特な人は、あなただけよ。…愛しています、スターレン」
小さくグラスを当て2人切りの乾杯を。
心臓の鼓動が全く収まらない。
「フィーネ。もう少し、紳士を続けたかったけど。どうやらもう限界です」
「私も。淑女って難しいね。今夜は、寝かせてあげない」
また俺の台詞取られた…。
頬を朱に染め、フィーネは立ち上がった。
本当は恥ずかしいのに、何時も無理をして。
何も言わず、彼女を抱き締め口吻を交わした。
徹夜明けの朝。気怠さは全く感じない。
風呂に入り、昨日の服のまま。
オーダーした朝食を、窓辺の席で食べた。
今日も天気は快晴。
何気ない日常。愛する人が居る。
それだけで、どうしてこんなに幸せなんだろう。
そんな他愛ない会話で笑い合った。
「今日は。どうしますか、スタン君」
「お城へ行って、闘技場の使用を陳情したいと思いますフィル様」
「お、呼び方を変えたな。宜しいスタン君。
好きに呼び給え。
お城へ行く前に、スカーフを買ったアクセショップに寄りましょう。シュルツが私のを見てお強請りをしたのだよ」
「然様でありますか。しかし開店までには時間がありそうですので、朝から開いてるあの本屋に行ってみたいと思います。如何でしょう、フィル様!」
「うむ。例の本を買った店だな。行こうではないか」
「ははぁ」
テンションだけは、思い切りぶっ飛んでいた…。
シルビィ(看板娘?の孫)の古書店。
丁度、シルビィが店番をいているタイミングで入店した。
彼女は俺の顔を見ると。
「あ、スターレン様。丁度良い所に…お隣の方は奥様でしょうか」
「お久し振り。フィーネよ。ご心配なく」
「あぁ良かった。有名な方なので、浮気相手ではないかと思いましたよぉ」
「あんまり人にぺらぺら話して回るなよ。それより丁度良かったとは、何か入ったの?」
「お客様の秘密は厳守です!…これってお探しの物かと思いまして」
カウンター奥の抽斗から取り出した一冊の小冊子。
書籍とは違い、薄くて軽い。
そして…。
~東大陸探訪記、竜退治編~
表題は日本語だった。
「昨日だったか。お店の横に設置した不要品の回収箱に入れられていました。スターレン様にギルド経由で連絡をしようか考えていた所です。どうですか?」
「ああ。間違い無い。即決で購入します。
言い値で払うよ」
「拾い物なので、無料でと言いたい所なのですが。
お婆ちゃんが腰を痛めてしまい、入り用のお金が欲しいのです。ですので、金一枚を奮発して頂けないかと」
「金5枚払うよ。現金だと不便だから紙切るね」
「そ、そんなに!?いいんですか…」
「いいよいいよ。お婆さんのお見舞い金として」
サラリと書いて手渡した。
「とっても助かります。これであの馬鹿高い治療費も支払い出来ます」
ん?馬鹿高い?
「ひょっとして。カメノスの診療院のこと?」
「そうです!よくご存じで。今、新規展開で最新の治療が受けられると聞き、診療所に行ってみたんですが…。
もうびっくりする程の治療費でして」
「それなら、俺も関わってるから紹介状書くよ」
サラサラ書き書き。
「そ、そんな…」
「またか…ハァ…」
何故かフィーネの盛大な溜息が聞こえるが気にしない。
お婆さんの名前を聞いて、シルビィさんとの連名で書き上げて渡した。
割り引けこんちくしょーと。
「何とお礼申し上げて良いやら。お買い上げ有り難う御座いました!」
「またいつか寄らしてもらうよ」
「はい。是非お越しを。また何か入荷したら、必ずご連絡差し上げます」
「お婆様。お大事にね」
「はい!」
長くなりそうなので、早速退散。
チラ読みしようと開こうとした所でフィーネに奪われた。
「没収~」
「えー。ちょっとだけ」
「だーめ。夜に。私にも読んで聞かせて。これは、私も聞かなきゃいけない気がするの。
そうじゃなくても聞きたい」
「解りましたよ。フィル様」
本をキッチリとポーチの奧底に詰め込んだフィーネの顔が信じられない程綻ぶ。
「様は余計だなぁ。フィルでもいいけど。なんかお父さんに呼ばれてるみたいで、背筋がむず痒いよ」
そっか。ちょっとデリカシー無かったな。
それから小声で囁いた。
「いつか赤ちゃん出来るまで。それは取って置いてね」
俺のハーツに穴が空きました。
次行ってみよー。
ミーシャ(やり手店員)のお店へ移動。
入店直後にミーシャの姿を見付けるや否や。
「ミーシャさん。これと同じ…。スタンは外出てて」
「マジかー。なんで俺に内緒なんだよ」
「シュルツがスタンに褒めて欲しいってさ」
何となく理解しました。
「解ったよ」
フィーネもフィーネでシュルツに激甘だな。
お店周辺の露店を見て回り、時間潰し。
ミーシャと挨拶する暇も無かった…。
「お待たせ~。お城の前に、ちょっと個人的に寄りたい店があるから先に行ってて」
返事も聞かずに4区方面へ歩いて行ってしまった。
一頃よりも落ち着きを取り戻した王都。
もう1人で歩いても問題無い。
少し寂しいと思う反面。俺は思った。
これって…。初めてじゃね?
もしかして、男の1人遊び出来んじゃね?
3区の高級歓楽街、行ってもいいんじゃね?
ちょっと朝から一杯女の子侍らせて飲むだけだし。
浮気ではない!
浮き足立って早く歩いてしまい、王城南門前で右往左往。
門番さんの視線が痛い。
やっぱりお酒臭かったらバレるよな。
香水の匂いプンプンしてたら誰でも気付くよな。
尋問されるに決まってる。
尋問の前に1発はビンタがあるな。
しかしおいらは痛いの大好きド変態だ。
フィーネのビンタなら、ご飯3杯は行けちゃうな。
お米はいつまで経っても見付からないから。
食パン3斤は行けちゃうだろうな。
などと考えていたら、門番さんの1人が寄って来た。
「す、スターレン様。何をお悩みかは存じませんが。
あまり門前をうろうろとされるのは人目にも触ります。
問答無用で通せとのお達しですし。中でお待ちになってはどうでしょう」
ん?何か誤解を与えてしまった様子。
「ちょっと。妻のフィーネを待っているので」
「やはりそうでしたか。それでは、もう少しだけ落着かれては如何でしょうか」
「すんません。直立不動で考えます」
「そ、そうですか。先に、本日の御用向きは」
「ヘルメン様のご予定が空いているなら、少しの時間でも接見を願いたいなと」
「了解しました。上に伝えて参ります」
勘違いされたまま解決してしまった。ま、いっか。
---------------
その頃。スターレンの妻フィーネは、
四区のとあるランジェリーショップにて物色中。
どうしよう。勇気を出して来てみたものの…。
凄い形。凄い薄さ。凄く色が豊富。
素材は知らないが伸縮性に富み、凄く小さい。
伸ばすともっとスッケスケ。
でも成人女性用と書いてあるし。
これで正解なのだと思う。
どうしよう。早くお城に行かないと。
旦那と王様が待っているかも知れない。
もしかしたら、私が傍に居ない事をいいことに、
三区に遊びに行っているかも知れない。
浮気が心配だ。超絶心配だ。
誰かに聞きたい。誰に聞こう。
いやいやそんな暇は無い。
責めてスタンに色の好みは聞くべきだった。
自分がここまで優柔不断だったとは思わなかった。
いいや女は度胸。
お香のお店で例の物。の、最上級品を衝動買いしてしまったし。
綺麗な下着。
勝負下着を買わなくては意味が半減してしまう。
決めたわ。
「店員さん。一番人気の色って」
「断トツで赤、で御座います」即答だった。
世のお金持ちの御婦人は皆買っているのだろうか。
私も今ではそのお金持ちのど真ん中の嫁。
私も準備しなくては!
「深紅のこれを買うわ。お幾らかしら」
「上下セットで金十五枚になります!」
た、高い!想像以上に高い!
どうして下着で金貨が十枚以上飛んで行くの??
いいわ。スタンが喜ぶなら。
お金はある!
「安いわね。粗悪品だったら苦情入れますよ」
「お客様。お言葉では御座いますが。
上綿よりも優れたしなやかさ。上シルク以上の肌触り。
当店自慢の特殊な伸縮素材。ちょっとやそっと引き延ばした程度では破れぬ保証付き。
但し!!…お客様、少々お耳を」
「な、何かしら」
小声で囁かれたその言葉。
「下の毛の処理を怠ると。はみ出ます」
「………」
そっちかぁーーー!!!
---------------
あれから南門前で待つ事30分程度。
やっとフィーネが来た。
良かった…3区行かなくて。
「遅かったな」
「ちょっとだけ…買い物に悩んでしまったの」
ほんのり顔が赤い。
走った訳でも無さそうだが。
まあ女性には色々あるさ。
合流して間も無く、門番に呼ばれ。
速攻で後宮の私室に通された。
顔を合せて早々に。
「膝は折るな。座れ」
何?ちょっと怒ってるの?
顔ぶれは。ヘルメン、ミラン様、メルシャン様。
王子は居ない代わりに、
何故かノイちゃんが同席していた。
下の席に着席。
ヘルメンっちが盛大な溜息。
「頼んでもいない事をよくも遣ってくれる。
文句ではない。感謝を述べたいが、相応しい褒美が見付からないのでな」
「あれはお互いに無かった事にすれば善いかと。
偶然偶々利害が一致しただけですし」
「君がいいならそうしよう。して。
昨日も待っていたのに訪ねに来なかった、
君の話とは何だ」
嫌みだわぁ。直接言うならそんな怒ってないのかも。
「昨日はお約束自体を持ってませんでしたから。
今日は。闘技場で試したい事が在り、お借り出来ないかのご相談と。
陛下の宝物殿はいつ頃お見せ頂けるのかの確認に参りました」
「宝物庫はこの後。君の都合がいいなら案内する。
闘技場で試したい事とは何だ」
「それは見てからのお楽しみです。
どの道、見せろ。と仰るのではと愚考します。
前回の宝具よりは遙かに安全ですが、外で開くには少々人目が気になりまして」
「…いいだろう。誰か見せたくない人物が居るなら明日までに報告しろ。
闘技場は二日後だ。明日は余も忙しい。
君の後始末でな!…まあいい。無かった事だ」
やっぱあの件で機嫌が悪いようだ。
良い事した筈なのに!
「明後日のお時間は如何でしょう。
出来れば前回と同じく、昼頃が希望なのですが」
「それでいい。どの道一日空ける。
して。宝物庫はこの後か。闘技場の件の後か」
「この後でお願い致します」
「うむ。誤解を与える前に話すが。
あの下には。特に女性に悪影響を及ぼす物が多い。
なので今日は余とノイツェとスターレン殿だけとする。
行っている間。夫人が暇を持て余すだろうと、ミランとメルシャンを呼んでおいた。
何か文句はあるか」
最大限気を遣ってくれたのか。
「ご配慮。痛み要ります」
「ご配慮。感謝致します」
宝物殿に至る道。
「ノイちゃん緊張し過ぎ」
「ば、馬鹿を言うな。陛下の御前で。
私とて緊張もするわ!」
「仲が良いのだな。それで其方らの本筋は何なのだ」
まぁ言わないと拙いよなぁ。
「陛下には事後で申し訳なく思いますが。
今、ノイツェ殿の支配下で。1人の少女を預かって貰っているんです。
少女の名はニーダ。
彼女は私の鑑定でも、ノイツェ殿の眼鏡でも。
嘗ての英雄、ベルエイガの魂の欠片を内包していると出ました」
「何だと」
ヘルメンが足を止めた。
「彼女自身は正常です。所が最近、そのベルエイガの魂が夢見に何事かを囁き掛けるそうです。それは、怒っているようだったとも」
「それで、君の見立ては」
「彼女は私が、マッサラの北の谷で助けた生き残り。
取り戻した記憶では、元はロルーゼからの巡礼者の一行の1人だと。
彼女の話の信憑性に付いては、妻が嘘ではないと判断しました。それである程度は信用出来ます。
一見すると。彼女は自分自身の意志で動いたような感覚で居ますが。私は、ベルエイガがある程度操っているのではと見ました」
「この王都を目指して、かね」
「十中八九、そうではないかと確信しています。
相変わらず根拠はないですが。英雄が狙う物が何なのかを考えた時。
私には、あの中しか思い浮かびませんでした」
宝物殿の扉を指差した。
「それで。二人で、その狙われそうな物が無いかを探りに来たと言う訳だな」
「詰りはそうです」
「ご指摘の通りにて」
宝物殿の中に入った。
相変わらず眩しいの一言。
ノイちゃんもおーおー言ってる。
「ノイツェは何も触れるな。触れていいのはスターレン君だけだ」
君って。おじさんのデレは要らんのだが。
「ハッ!」
前回使ったゴーグルを借りて部屋の奥へ。
行きすがらに行く前に1つの錫杖を見た。
「下に行く前に確認したいのですが」
「何だ」
「この支配の王錫は、使う積もりだったのですか?」
「…どうだろうな。君の交渉が決裂していたら。
もしか使っていたかも知れぬ。元から君が居なくなっていたらな」
手に持って鑑定してみても、特殊効果は前に見たまま。
「敢えて申し上げますが、敵はフレゼリカだけとは限りませんよ。どうやら後任も居るようですし。
そもそもあれを操っても何処まで稼げるか」
「そんな事は解っておる。玩具のように振るでない!」
発動しなけりゃ只の杖なのに。チェッ
仕方なく振り回すのを止めて置き台に戻した。
ノイちゃんが青い顔をしている。
「陛下と…気軽に…」
「何を惚けておる。口外すれば貴様とて降格だぞ」
「承知しました」
「まあ英雄が狙うのは、こんな玩具じゃないのでいいです」
「玩具と言ってくれるな!」
「まあまあ。そんなに怒らない怒らない。
さ、下に行きましょー」
舌打ちしたヘルメンが、奥向い左手の床に立った時。
「二人は後ろを向いていろ」
「ハッ」
「はーい」
後ろから聞こえる。豪快な地滑りの音。
床の仕掛けを踏んだのかな。
「良い。こちらを向け」
振り返ると、左端の床が迫り上がり、内側へスライドしていた。開いた所には下への階段。
「降りる前に参考に聞くが、ここが在ると何処で気付いた」
「それは簡単です。そりゃそうですよ。
私が半壊させ、ノイちゃん経由で国に預けた、
背徳の腕輪が1階に無いんですもん」
「「あ!!」」
「脇が甘いなぁ、お二人共」
「くぅー。失念しておった…」
「君はここまで予想していたのか」
「流石にそれは偶然です。私は悪運が強いので」
しょんぼりと前を行くヘルメンの背中を摩ってあげると。
「気軽に触れるな!」
怒られた。
「怒らない怒らない」
「陛下と…きが」
そんな短い遣り取りをしている間に、下の階へは直ぐに到着した。
内観は上と同じ造り。明るさも。容積も。
階段分はロスが在るが、収納にはまだまだ空きが見えた。
如何わしい物がそんな沢山在っても困るけど。
一通り物色。
壊れた背徳は片隅に転がされていた。雑!
室内中央付近に並べられた品々。
「死滅の弓…、結日の竪琴…、苦渋の槌…、
仮初の刃…、好色の短剣…、無色の果肉…、
確かに女性の敵ですねこれらは」
「そうだろう」
他に取り留めて気になる物が無く、最後の一品。
『締結の鎖』
「これだ!」
「私の眼鏡では殆ど何も見えん」
「説明しろ」
名前:締結の鎖(古代兵器)
特徴:使用回数制限1回
どんな物でも締結させる
例えその欠片が世界の果てに在ろうとも
強制執行者の手元の欠片を起点とする
「「……」」
「ノイちゃんどう思う?」
「ベルエイガは、それで自分の元の魂を復元しようとしているのか」
「可能性は大いに在ると、俺は思います」
「…この私か、近親者を操り。ここから奪うか」
「それしか無いかと」
その可能性は幾らでも。
「当面の間。ニーダは城内に入れない方が良いでしょう。
とは言え目の届く範囲に置かないと、何を仕出かすか解らない。忙しい私では預かれない。監視をするにも限界と抜け道がある。
幽閉しようとしても、無実の罪では裁けない。
彼女を監禁しても、また欠片を持った別の誰かがここへ辿り着く。
彼の英雄も。とんだ屑ですね」
ハッキリ言って気持ち悪い。
「現状打つ手無し、か」
「陛下とノイちゃんは、これまで通りの対応でいいと思います。英雄に、ニーダに望み在りだと思わせ続ければ時間は稼げます。
問題は、英雄の魂が何分割されていて、保有者は何人に上るのか。それが解らない事には厳しい」
ノイちゃんが悪態を吐いた。
「一難去ってまた一難。忌々しい!」
「現状で確実性の高い事象は2つ。
魂の分割を施した場所と時期。
初代ベルエイガが死んだ場所。ロルーゼの王城です」
「「…」」
「彼が死んで以降の出生者で、ロルーゼからの入国者。
先日の大使の関係者とか、従者とかもめちゃめちゃ怪しいですね。
私は挨拶すらしませんでしたので知りませんが。
先ずはそこから調べれば宜しいかと」
「陛下。この件の許可を」
「うむ。追ってギルマートから指示させる。
家系全てが対象か。英雄め。ふざけた真似を」
「戻りましょう。家族が、待ってます」
「そう…だな。君は何処まで私に恩を着せる積もりだ」
「何処まででも。この国は、私が逃げ込める大陸で唯一の場所ですので」
ヘルメンは小さく笑った。
「君らしい言葉だな」
ノイツェも釣られて笑う。
「全くです」
---------------
ロロシュ邸に寄り、クワンティに挨拶して。
フィーネがシュルツに来月誕生日の、前倒しプレゼントと称して、オレンジ色のスカーフを贈った。
前倒しと聞いて、一瞬悲しそうな顔になったが。
フィーネに結ばれた頃には、満面の笑みになった。
何も考えてなかった俺は褒め千切るしかない。
千切らなくても充分に可愛いのだが。
「おー、良く似合ってる。明るい茶髪にも合ってるし。
こないだの黄色のドレスにもピッタリ。
可愛さ倍増だな。ストレートでも勿論可愛いぞ」
「嬉しいです。…スターレン様は、何か…」
昨日の普通のブローチではダメなのかと、一瞬頭を過ったがここは素直に。
「ごめん!何も考えて無かった。今度ラフドッグで何か買って来るよ。それか明日、都内で何かを」
みるみる赤くなるシュルツ。
え?ヤバいか。ヤバいのか。だってまだ先だろ?
「…では。キ、キスを…。頑張ったご褒美として」
「キス?それでいいの?」
キスならプライスレスだ。
昨日渡した物は気に入らなかったんだな…。
デザインが臭かったかなぁ。
「は、はい!」
正面を向いてギュッと目を瞑った。
しょーがないなぁと。唇にアメリカンなキスをプレゼントした…。
「そこはホッペでしょ!!」
フィーネさんに蹴り飛ばされました。
オロオロし出すシュルツ。泣いてはいない。
「で、殿下よりも…。早く…。ち、誓いの、口吻を…」
俺は逃げた。何もかも投げ出して。
怖い怖いロロシュ氏が恐ろしくて。
外野で見詰める侍女たちの。
「信じられない」と口元を覆う、驚きの眼差しが怖くて。
そうだ。このまま南に走ろう。全力で走ろう。
やがてロロシュ邸の正門が見え
「逃げてどうすんのよ」
猫のように首を持ち上げられ、連行された。
「ごめんね、シュルツ」
嗚咽を漏らす少女の目の前で正座中。
ここは中庭。今日は立ち寄るだけだと、室内でもない。
「いいんです。殿下には、黙って、おきますから」
「調子に乗ってしまって。シュルツが可愛くて。
居ないけど、本当の妹みたいに見えちゃって」
「私も居ないけど。もし兄弟が居ても、これ位の歳の子にはしないと思うよ」
フィーネの真っ白な眼差しが胸に刺さる。
数分の土下座謝罪の後、やっと泣き止んでくれた。
その日は夕食にもお呼ばれせず。解散となった。
ホテルに逃げ帰ると、最上のリビングで再び正座。
フカフカの絨毯の上。
対面にフィーネも正座で座った。
「ダメだよね」
「はい…」
「私とのキスは、そんなにも軽い物なのかな」
「滅相も、御座いません。いつも感謝と愛情を込めさせて頂いております」
「シュルツからは前々から。スタンから何かのご褒美が欲しいって言われてて。ならキスでもせがんでみればって言ったのは私だけど」
「はい…」
「まさか口にするとは思わないよ。普通」
「ごめんなさい…」
「ライラさんにした時に、みんなに怒られたでしょ」
「はい…」
「どうして反省してくれないの」
「ごめんなさい…」
フィーネは盛大に溜息を吐き出して立った。
「もういいわ。明日何か買って謝りに行こう。一緒に行くから、昨日のブローチよりもセンスいいの買って来て。
それから今日は罰としてお風呂は別々。私が先に入るから。後でスタンが上がったら、本読みましょ」
「うん…」
やっぱりブローチはダメだったんだ…。
長いフィーネの後で、短めのお風呂。
最後に冷水を出して、頭を冷やした。
俺は何をやっているんだ。
可愛いシュルツの心を傷付けて。
風呂から上がり、身体を乾かし、温かいリビングへ。
既にオーダーされた料理と、開けた赤ワイン。
「早く座って。行儀悪いけど、食べながら読んで。
…それから」
椅子から立ち上がり、軽めのキスをくれた。
「先に進まないから、全部許す。許すと言っても、他の人とのキスを許した訳じゃないから。
私のキスも、軽く無いんだよ。解ってる?」
「二度と致しません!」
「なら結構。元気出して、頑張って」
めっちゃやる気出て来た!俺って単純。
明日ちゃんとプレゼント選んで、謝り直そう。
ある程度腹が満たされた所で、受け取った本を開いた。
~東大陸探訪記、竜退治編~
本文項。
こんにちは、同胞諸君。
魔道具大全集を執筆した、名も無き探訪者だ。
この書を大全集よりも先に受け取っていたら済まない。
大全集の見出しで。
長寿の方法が在るだとか。黒竜を倒せば何事も覆せるだとか。曖昧な言い回しをしてしまった事を大変申し訳なく思う。
その反省と謝罪を踏まえ、本書を起こした。
今回は、黒竜にソロで挑んでみました編だ。
場所は、東大陸では有名な話なので特筆はしない。
最高峰のドラゴンにソロで挑むとか馬鹿なの?
との叱責は一切無視をする。
当時の私は、やんちゃだった。
まあよし。結果から述べると、惨敗だった。
鱗一枚剥がせず、軽く前足で叩かれて終了した。
ブレス一つも吐かれる前にだ。
これを書いている、と言う事は。私は生きている。
黒竜の前で泣きながら土下座し、どうにかこうにか左手の小指一本で許して貰えた。
黒竜は、話の解る素敵なドラゴン様だった。
有用な魔道具を沢山作り、装備も整え。
彼の山に挑んだ。
正直、黒竜手前までは楽勝ムードだった。
翼竜を撃ち落とし、氷竜を砕き、赤竜を爆死させ捲った。
これだけ倒せば、さぞレベルも上がっただろうと思われるかも知れないが。
この世界にレベリングは存在しない。非常に無念だ。
竜の数々を削り倒し、山の中腹から内部に侵入。
何コレチョロくない?俺って最強じゃね?
それらの慢心が敗北を招いた。
私はどうして、水竜、古代竜らと並び立つ黒竜を。
そこいらの雑魚と一緒と考えてしまったのか。
山に挑む前の自分を見付けたら、絞めて持ち帰りたい。
話を進めよう。
黒竜に再挑戦する条件として、私には何が足りないかを懸命に模索した。
結果。それは武器だと結論付けた。
この点に於いて馬鹿!との言葉は甘んじて受け付ける。
私と同胞たちの故郷の世界に存在した、
対戦車砲や対艦魚雷や電磁砲等の破壊兵器。
安心して欲しい!そんな物は再現出来なかった。
では。この世界の基本。剣である。
ぶっちゃけて言うと槍でも良かった。
聖剣ではどうだ!と探してみても。それは休眠中だと言われて泣いて帰った。何処だったかは内緒にする。
答えを言ってしまったら、同胞諸君は激怒するだろう。
ならば特効はどうだ!と探してみた。在った。
竜種特効:ドラゴンキラーだ。
東大陸(答え言ってんじゃねーか!の声は聞こえない)
から東に泳いで海を渡った。嘘だ。
魔道具でアホ改造をした船で西大陸に渡った。
他の大陸は粗方制覇していたからだ。
残るは西大陸だけだと、私の胸は踊りに踊った。
魔王の因子や卵さんたちに見付からぬよう慎重に。
取り敢えず真っ直ぐ東に横断してみた。
辿り着いた東海岸線で平和に釣りをしていた魔族殿を発見したので、この人ならお話出来るかも。
と、竜の特効武器は知らないかとお尋ねしてみた。
一杯殴られた。ガチで痛かった。それでも私は粘り強く交渉した。し続けたのだ。
他の人に聞けばいいじゃんとの突っ込みは受け付けない。
人語を話せる魔族さんが他に見付からなかった。
そうだ美味しいご飯で釣ってみようと思い立ち、手料理を拵えて奉納してみた所。やっと。
「美味いな。話だけなら聞いてやる」
友情が芽生えた瞬間だった。
話せば話す程に意気投合し、酒を飲み交わすまでの仲となる。こうして無二の初魔族親友のグラリーズ君が出来たのだった。
目出度し目出度しでは終われない。
グラリーズ君に尋ね直した。竜種特効は知らないかと。
そうした所。何と!彼自身が特効武器を隠し持っていたではないか!
嬉しさの余りキスをしてみたら、一杯殴られた。
仲直りするのも早く、改めて。
「ちゃんと返すから貸して」とお願いした。
ちゃんと返せよと気前よく貸してくれた。嬉しかった。
これでリベンジじゃ!と再び東大陸へと戻った。
後に、冷静に考えると。グラリーズ君にも一緒に来て貰えば良かったと後悔する。後の祭だ。
ソロだから苦しんだのに。学習能力の無い私は、
一度お許し頂いた黒竜に意気揚々と再戦を挑んだ。
頑張って足首くらいまでは届いたかな…。
脱皮しかけの鱗を一枚有り難く頂戴して、私はグラリーズ君に剣を返却した。
「なんだよ。人間にもちゃんと約束守る奴が居るんだな」
彼の言葉が胸に染みた。
良い奴も居れば悪い奴も居る。それはどの種族でも一緒だと私は説いた。
人間の女性の素晴らしさを伝え。
都会の女は糞だ!とお話して。
口説くなら、森とか山とかに隠れ住んでいるお淑やかな女性を選ぶべきだと、強く強くお勧めしておいた。
西大陸を離れ、彼とはもう会っていないが。
彼なら百年後、二百年後に必ず大成しているだろう。
その姿が見られないのはとても残念だ。
あの日、彼と飲み交した酒の味が忘れられない。
~名も無き異世界の探訪者より~
「…お父さん…」
「………」
そっと本を閉じ。
グランさんの遺品の筺を取り出して、2人で眺めた。
だからまだ中央大陸も終わってねーよ!!
---------------
翌朝。
物凄く良く効いた、お香の残り香の中で覚醒し、
寝室の窓を開けに行く寸前で力尽きた。
無防備のお嫁さんに襲い掛かってしまった。
反省はしているが、後悔は無い。
昨日の夕方。
不用意に読んでしまった体験記。それを。
「ちょっと…。一回、忘れよっか」と言われ。
そうしようそうしようと。
「落着くいいお香買ってきたから。寝室いこ」
と誘われて付いて行った。
深いスリットから覗かせた真っ赤な布に堪え切れず。
紳士な反省を示し、昨晩は我慢する積もりだったのに。
正常な自我が在ったのは、お香焚き始めの数分間まで。
俺は獣に成ってしまいました。
結果は凄い効いた!
嫌な事も全部忘れられた!
幾つかの宿題を持ち帰り、戻りましたよパージェント。
まっ先に向かったのは、家が無いのでホテルの予約。
弟に泊まらせて、自分たちは一度も使ってない。
これはいけないと、エリュグンテのスウィートを2泊…。
取れませんでした!
頭に来たので、ワンランク下。最上階の下の階に捻じ込んだった。
同時に、来週からの2週間。
ラフドッグに在る系列リゾートホテルをごり押しで取ってやったわ!
「ねぇ、スタン。そこって、ここのスウィートと同じ位の大きさなのよね…」
「そうだと思うけど。気に入らない?」
「そんな事は…微塵も無いけど…。ど、どんな要求を…」
「ん?最後よく聞こえなかった」
顔を真っ赤に、それ以上聞かせてくれなかった。
次に向かったのはライラとニーダの所。
兵舎でお仕事中の所にお邪魔し、流れで城内のランチを頂いた。裏方さん用もレベルアップしていた…。
小物のお土産を2人に渡すと同時に、前にライラが俺とキスをしたがっていた事を思い出し、アメリカンなチューをしてみた所。…3人に引っ叩かれました。
「目の前で浮気をするな!しかも人妻と」
「どうして結婚前にしてくれないのですか!!」
「破廉恥です!」
どうしてニーダまで?女性の思考が解らない。
「友達として。ただの挨拶だってば」
「関節キスは良くて。何で挨拶でおこんのさ」
「ニーダ。今のは、挨拶なんだ。覚えておくといい」
「「「挨拶な訳があるか!」」」
全く解らない。
ライラとニーダを外に追い出し、城内のノイちゃんの国防執務室に邪魔しに行き、室長室に居たギルマートにアポ無しで奇襲を掛けた。
「西部の野盗の放置はどう言う了見だ!!」
「放置ではない!人員が足りぬのだ!!
西南の拠点を二つも潰してくれた事には感謝する。
感謝はするが誰も頼んでない!どれ程、陛下に叱責されたと…」
泣きそうだったので許してやろうと…。
「メルフィスさん。私たちからの依頼を終えたら国内に戻して。モンドリアさんも一緒に。意味は解るわね?」
「…まさか…、メルフィスが、本気に…」
「私たちが勝手に首を突っ込んだのは抜きにしても。
特に南側はとても酷い有様だった…。
直ぐには無理でも、出来る限り善処して欲しいの」
「…了解、した…」
アポ無しでは流石に王様は無理だったので一時撤退。
外に出て、商業ギルドの支部長室に殴り込んだ。
「ムートン卿!てめぇ!有り難う」
「声が大きい。娘の対応をさせたのは済まない。
が、君が欲していたであろう報酬も偶然噛み合った。
これが中立の難しき所。何方か一方だけには肩入れは出来ぬだ。許して欲しい」
まぁいいや。多少引っ掛かるが、水に流そう…。
「その娘さん。モンドリアさんと本気で結婚したがっていたわ。無事に国内に戻せたら、対処は出来そう?
出来ないと言われると、手伝ってあげると言った私たちの立場がないの」
「…ぐぅの根も出んな。戻したら、好きにさせよう。
その代わり…、王には黙っていてくれ!!」
「娘さんには。追加で私たちからの依頼もしました。
内緒にする譲歩として、その件も飲んで下さい」
「…解った」
非常に優秀な秘書官様が、ここに居ました。
続きまして。シュルツとお猿に会いにロロシュ邸へ。
高確率でシュルツは邸内に居る。
再会を喜び、抱き締め合う2人の姿は本当の姉妹に見えて素直に感動した。
2週間も、離れてはいないのに…。
その2人から離れ、サルの家へ訪問。
「サルベインさん。お土産~」
「藪から棒に。何だ」
デッカい氷の魔石を接客テーブルの上に置いた。
「これは…」
「アッテンハイムの南部で拾ってきました。腕のいい細工師と、魔石の入荷ルートの確保をコマネさんの所へ依頼して下さい」
「独占は…出来ないのか」
「まーた。家族を危険に晒すんですか?好きですねぇ。
貴方たち兄弟は。
次に何かあっても、シュルツ以外は助けませんから。そのお積りでなら、どうぞご勝手に」
「…どうも私は、欲に駆られ易い。父とコマネに相談して慎重に進めるよ。感謝する」
「そうして下さい。自覚が在るだけまだマシです。
自分を律するのも、商売の内だと。俺は思いますよ」
「胸に刻むとも」
そのままロロシュ氏を交えて夕食を御馳走に成れると聞いたので、時間まで定番の書庫へと引き籠もった。
前より更に増えてた書物を適当に読み漁る。
特に有益な情報は何も無かったが、ロマンス小説ぽい書が在った。
『とある女神様と悪しき魔王の禁断の恋』
………嫌な予感しかしません!!!
そっと書を棚に戻した。
「智哉…」
なんだい?ロイドちゃん。
「私は、善処はしました。私なりに頑張ったのです。粘り強く交渉はしたのです。信じて下さい」
何があったかは敢えて聞かないけれど…。
ただ言えるのは。
俺たちに、御自分の本心を投影しないで欲しい。
それだけは伝えて貰える?
「はい。お伝えしておきます。ただ、既に執行された物に付いては、取り消しは困難ですので。ご了承を」
解りましたよーだ。
夕食後に。シュルツがフィーネを連れ去る俺を、親の敵を見るような目で睨んで来た。
代わりにクワンティを預けてきた。
「シュルツを守ってて。緊急時以外はこっちに来ちゃ駄目だよ」
「クワッ!」
しょーがないじゃん。だって新婚旅行中だよ?
高級ホテルの初泊だよ。邪魔されたくないのはこっちなんだけどなぁ…。
取った部屋は上のスウィートとは違う、下の上級部屋にした筈だった…。
ホテルに戻ると、最上を取っていたどっかの貴族様が急病で倒れ、キャンセルになったと言うではないか。
勝手にアップグレードされてしもた。
「やっぱり、広いね…」
「広いねぇ」
広すぎる室内を見渡し、大きな出窓からは中央広場と総本堂の姿も小さく見え…。
「「見下ろして御免なさい!」」
バーカウンター前で窓からの夜景を肴に、ロゼワインを開けた。
「やっと。二人切りになれたね。長かった…」
「ああ、やっとだな。待たせてごめん」
本当の意味で。正真正銘の2人切り。
髪をアップに整え、丈の短い紺色のシルク地ナイトドレスを着流して、物凄く色っぽい。
自分は水色のシルクガウンに白い腰帯。
「謝らないでよ」
ほんのり笑う、ピンク色の唇。
透き通るような白い肌に、鮮やかな茶髪。同じ色の瞳。
正面から向き合うと、心臓が…。
「緊張してきた。…俺と、結婚してくれて有り難う。
フィーネ、愛してる」
「私も緊張してる。半魔の私を、貰ってくれるなんて奇特な人は、あなただけよ。…愛しています、スターレン」
小さくグラスを当て2人切りの乾杯を。
心臓の鼓動が全く収まらない。
「フィーネ。もう少し、紳士を続けたかったけど。どうやらもう限界です」
「私も。淑女って難しいね。今夜は、寝かせてあげない」
また俺の台詞取られた…。
頬を朱に染め、フィーネは立ち上がった。
本当は恥ずかしいのに、何時も無理をして。
何も言わず、彼女を抱き締め口吻を交わした。
徹夜明けの朝。気怠さは全く感じない。
風呂に入り、昨日の服のまま。
オーダーした朝食を、窓辺の席で食べた。
今日も天気は快晴。
何気ない日常。愛する人が居る。
それだけで、どうしてこんなに幸せなんだろう。
そんな他愛ない会話で笑い合った。
「今日は。どうしますか、スタン君」
「お城へ行って、闘技場の使用を陳情したいと思いますフィル様」
「お、呼び方を変えたな。宜しいスタン君。
好きに呼び給え。
お城へ行く前に、スカーフを買ったアクセショップに寄りましょう。シュルツが私のを見てお強請りをしたのだよ」
「然様でありますか。しかし開店までには時間がありそうですので、朝から開いてるあの本屋に行ってみたいと思います。如何でしょう、フィル様!」
「うむ。例の本を買った店だな。行こうではないか」
「ははぁ」
テンションだけは、思い切りぶっ飛んでいた…。
シルビィ(看板娘?の孫)の古書店。
丁度、シルビィが店番をいているタイミングで入店した。
彼女は俺の顔を見ると。
「あ、スターレン様。丁度良い所に…お隣の方は奥様でしょうか」
「お久し振り。フィーネよ。ご心配なく」
「あぁ良かった。有名な方なので、浮気相手ではないかと思いましたよぉ」
「あんまり人にぺらぺら話して回るなよ。それより丁度良かったとは、何か入ったの?」
「お客様の秘密は厳守です!…これってお探しの物かと思いまして」
カウンター奥の抽斗から取り出した一冊の小冊子。
書籍とは違い、薄くて軽い。
そして…。
~東大陸探訪記、竜退治編~
表題は日本語だった。
「昨日だったか。お店の横に設置した不要品の回収箱に入れられていました。スターレン様にギルド経由で連絡をしようか考えていた所です。どうですか?」
「ああ。間違い無い。即決で購入します。
言い値で払うよ」
「拾い物なので、無料でと言いたい所なのですが。
お婆ちゃんが腰を痛めてしまい、入り用のお金が欲しいのです。ですので、金一枚を奮発して頂けないかと」
「金5枚払うよ。現金だと不便だから紙切るね」
「そ、そんなに!?いいんですか…」
「いいよいいよ。お婆さんのお見舞い金として」
サラリと書いて手渡した。
「とっても助かります。これであの馬鹿高い治療費も支払い出来ます」
ん?馬鹿高い?
「ひょっとして。カメノスの診療院のこと?」
「そうです!よくご存じで。今、新規展開で最新の治療が受けられると聞き、診療所に行ってみたんですが…。
もうびっくりする程の治療費でして」
「それなら、俺も関わってるから紹介状書くよ」
サラサラ書き書き。
「そ、そんな…」
「またか…ハァ…」
何故かフィーネの盛大な溜息が聞こえるが気にしない。
お婆さんの名前を聞いて、シルビィさんとの連名で書き上げて渡した。
割り引けこんちくしょーと。
「何とお礼申し上げて良いやら。お買い上げ有り難う御座いました!」
「またいつか寄らしてもらうよ」
「はい。是非お越しを。また何か入荷したら、必ずご連絡差し上げます」
「お婆様。お大事にね」
「はい!」
長くなりそうなので、早速退散。
チラ読みしようと開こうとした所でフィーネに奪われた。
「没収~」
「えー。ちょっとだけ」
「だーめ。夜に。私にも読んで聞かせて。これは、私も聞かなきゃいけない気がするの。
そうじゃなくても聞きたい」
「解りましたよ。フィル様」
本をキッチリとポーチの奧底に詰め込んだフィーネの顔が信じられない程綻ぶ。
「様は余計だなぁ。フィルでもいいけど。なんかお父さんに呼ばれてるみたいで、背筋がむず痒いよ」
そっか。ちょっとデリカシー無かったな。
それから小声で囁いた。
「いつか赤ちゃん出来るまで。それは取って置いてね」
俺のハーツに穴が空きました。
次行ってみよー。
ミーシャ(やり手店員)のお店へ移動。
入店直後にミーシャの姿を見付けるや否や。
「ミーシャさん。これと同じ…。スタンは外出てて」
「マジかー。なんで俺に内緒なんだよ」
「シュルツがスタンに褒めて欲しいってさ」
何となく理解しました。
「解ったよ」
フィーネもフィーネでシュルツに激甘だな。
お店周辺の露店を見て回り、時間潰し。
ミーシャと挨拶する暇も無かった…。
「お待たせ~。お城の前に、ちょっと個人的に寄りたい店があるから先に行ってて」
返事も聞かずに4区方面へ歩いて行ってしまった。
一頃よりも落ち着きを取り戻した王都。
もう1人で歩いても問題無い。
少し寂しいと思う反面。俺は思った。
これって…。初めてじゃね?
もしかして、男の1人遊び出来んじゃね?
3区の高級歓楽街、行ってもいいんじゃね?
ちょっと朝から一杯女の子侍らせて飲むだけだし。
浮気ではない!
浮き足立って早く歩いてしまい、王城南門前で右往左往。
門番さんの視線が痛い。
やっぱりお酒臭かったらバレるよな。
香水の匂いプンプンしてたら誰でも気付くよな。
尋問されるに決まってる。
尋問の前に1発はビンタがあるな。
しかしおいらは痛いの大好きド変態だ。
フィーネのビンタなら、ご飯3杯は行けちゃうな。
お米はいつまで経っても見付からないから。
食パン3斤は行けちゃうだろうな。
などと考えていたら、門番さんの1人が寄って来た。
「す、スターレン様。何をお悩みかは存じませんが。
あまり門前をうろうろとされるのは人目にも触ります。
問答無用で通せとのお達しですし。中でお待ちになってはどうでしょう」
ん?何か誤解を与えてしまった様子。
「ちょっと。妻のフィーネを待っているので」
「やはりそうでしたか。それでは、もう少しだけ落着かれては如何でしょうか」
「すんません。直立不動で考えます」
「そ、そうですか。先に、本日の御用向きは」
「ヘルメン様のご予定が空いているなら、少しの時間でも接見を願いたいなと」
「了解しました。上に伝えて参ります」
勘違いされたまま解決してしまった。ま、いっか。
---------------
その頃。スターレンの妻フィーネは、
四区のとあるランジェリーショップにて物色中。
どうしよう。勇気を出して来てみたものの…。
凄い形。凄い薄さ。凄く色が豊富。
素材は知らないが伸縮性に富み、凄く小さい。
伸ばすともっとスッケスケ。
でも成人女性用と書いてあるし。
これで正解なのだと思う。
どうしよう。早くお城に行かないと。
旦那と王様が待っているかも知れない。
もしかしたら、私が傍に居ない事をいいことに、
三区に遊びに行っているかも知れない。
浮気が心配だ。超絶心配だ。
誰かに聞きたい。誰に聞こう。
いやいやそんな暇は無い。
責めてスタンに色の好みは聞くべきだった。
自分がここまで優柔不断だったとは思わなかった。
いいや女は度胸。
お香のお店で例の物。の、最上級品を衝動買いしてしまったし。
綺麗な下着。
勝負下着を買わなくては意味が半減してしまう。
決めたわ。
「店員さん。一番人気の色って」
「断トツで赤、で御座います」即答だった。
世のお金持ちの御婦人は皆買っているのだろうか。
私も今ではそのお金持ちのど真ん中の嫁。
私も準備しなくては!
「深紅のこれを買うわ。お幾らかしら」
「上下セットで金十五枚になります!」
た、高い!想像以上に高い!
どうして下着で金貨が十枚以上飛んで行くの??
いいわ。スタンが喜ぶなら。
お金はある!
「安いわね。粗悪品だったら苦情入れますよ」
「お客様。お言葉では御座いますが。
上綿よりも優れたしなやかさ。上シルク以上の肌触り。
当店自慢の特殊な伸縮素材。ちょっとやそっと引き延ばした程度では破れぬ保証付き。
但し!!…お客様、少々お耳を」
「な、何かしら」
小声で囁かれたその言葉。
「下の毛の処理を怠ると。はみ出ます」
「………」
そっちかぁーーー!!!
---------------
あれから南門前で待つ事30分程度。
やっとフィーネが来た。
良かった…3区行かなくて。
「遅かったな」
「ちょっとだけ…買い物に悩んでしまったの」
ほんのり顔が赤い。
走った訳でも無さそうだが。
まあ女性には色々あるさ。
合流して間も無く、門番に呼ばれ。
速攻で後宮の私室に通された。
顔を合せて早々に。
「膝は折るな。座れ」
何?ちょっと怒ってるの?
顔ぶれは。ヘルメン、ミラン様、メルシャン様。
王子は居ない代わりに、
何故かノイちゃんが同席していた。
下の席に着席。
ヘルメンっちが盛大な溜息。
「頼んでもいない事をよくも遣ってくれる。
文句ではない。感謝を述べたいが、相応しい褒美が見付からないのでな」
「あれはお互いに無かった事にすれば善いかと。
偶然偶々利害が一致しただけですし」
「君がいいならそうしよう。して。
昨日も待っていたのに訪ねに来なかった、
君の話とは何だ」
嫌みだわぁ。直接言うならそんな怒ってないのかも。
「昨日はお約束自体を持ってませんでしたから。
今日は。闘技場で試したい事が在り、お借り出来ないかのご相談と。
陛下の宝物殿はいつ頃お見せ頂けるのかの確認に参りました」
「宝物庫はこの後。君の都合がいいなら案内する。
闘技場で試したい事とは何だ」
「それは見てからのお楽しみです。
どの道、見せろ。と仰るのではと愚考します。
前回の宝具よりは遙かに安全ですが、外で開くには少々人目が気になりまして」
「…いいだろう。誰か見せたくない人物が居るなら明日までに報告しろ。
闘技場は二日後だ。明日は余も忙しい。
君の後始末でな!…まあいい。無かった事だ」
やっぱあの件で機嫌が悪いようだ。
良い事した筈なのに!
「明後日のお時間は如何でしょう。
出来れば前回と同じく、昼頃が希望なのですが」
「それでいい。どの道一日空ける。
して。宝物庫はこの後か。闘技場の件の後か」
「この後でお願い致します」
「うむ。誤解を与える前に話すが。
あの下には。特に女性に悪影響を及ぼす物が多い。
なので今日は余とノイツェとスターレン殿だけとする。
行っている間。夫人が暇を持て余すだろうと、ミランとメルシャンを呼んでおいた。
何か文句はあるか」
最大限気を遣ってくれたのか。
「ご配慮。痛み要ります」
「ご配慮。感謝致します」
宝物殿に至る道。
「ノイちゃん緊張し過ぎ」
「ば、馬鹿を言うな。陛下の御前で。
私とて緊張もするわ!」
「仲が良いのだな。それで其方らの本筋は何なのだ」
まぁ言わないと拙いよなぁ。
「陛下には事後で申し訳なく思いますが。
今、ノイツェ殿の支配下で。1人の少女を預かって貰っているんです。
少女の名はニーダ。
彼女は私の鑑定でも、ノイツェ殿の眼鏡でも。
嘗ての英雄、ベルエイガの魂の欠片を内包していると出ました」
「何だと」
ヘルメンが足を止めた。
「彼女自身は正常です。所が最近、そのベルエイガの魂が夢見に何事かを囁き掛けるそうです。それは、怒っているようだったとも」
「それで、君の見立ては」
「彼女は私が、マッサラの北の谷で助けた生き残り。
取り戻した記憶では、元はロルーゼからの巡礼者の一行の1人だと。
彼女の話の信憑性に付いては、妻が嘘ではないと判断しました。それである程度は信用出来ます。
一見すると。彼女は自分自身の意志で動いたような感覚で居ますが。私は、ベルエイガがある程度操っているのではと見ました」
「この王都を目指して、かね」
「十中八九、そうではないかと確信しています。
相変わらず根拠はないですが。英雄が狙う物が何なのかを考えた時。
私には、あの中しか思い浮かびませんでした」
宝物殿の扉を指差した。
「それで。二人で、その狙われそうな物が無いかを探りに来たと言う訳だな」
「詰りはそうです」
「ご指摘の通りにて」
宝物殿の中に入った。
相変わらず眩しいの一言。
ノイちゃんもおーおー言ってる。
「ノイツェは何も触れるな。触れていいのはスターレン君だけだ」
君って。おじさんのデレは要らんのだが。
「ハッ!」
前回使ったゴーグルを借りて部屋の奥へ。
行きすがらに行く前に1つの錫杖を見た。
「下に行く前に確認したいのですが」
「何だ」
「この支配の王錫は、使う積もりだったのですか?」
「…どうだろうな。君の交渉が決裂していたら。
もしか使っていたかも知れぬ。元から君が居なくなっていたらな」
手に持って鑑定してみても、特殊効果は前に見たまま。
「敢えて申し上げますが、敵はフレゼリカだけとは限りませんよ。どうやら後任も居るようですし。
そもそもあれを操っても何処まで稼げるか」
「そんな事は解っておる。玩具のように振るでない!」
発動しなけりゃ只の杖なのに。チェッ
仕方なく振り回すのを止めて置き台に戻した。
ノイちゃんが青い顔をしている。
「陛下と…気軽に…」
「何を惚けておる。口外すれば貴様とて降格だぞ」
「承知しました」
「まあ英雄が狙うのは、こんな玩具じゃないのでいいです」
「玩具と言ってくれるな!」
「まあまあ。そんなに怒らない怒らない。
さ、下に行きましょー」
舌打ちしたヘルメンが、奥向い左手の床に立った時。
「二人は後ろを向いていろ」
「ハッ」
「はーい」
後ろから聞こえる。豪快な地滑りの音。
床の仕掛けを踏んだのかな。
「良い。こちらを向け」
振り返ると、左端の床が迫り上がり、内側へスライドしていた。開いた所には下への階段。
「降りる前に参考に聞くが、ここが在ると何処で気付いた」
「それは簡単です。そりゃそうですよ。
私が半壊させ、ノイちゃん経由で国に預けた、
背徳の腕輪が1階に無いんですもん」
「「あ!!」」
「脇が甘いなぁ、お二人共」
「くぅー。失念しておった…」
「君はここまで予想していたのか」
「流石にそれは偶然です。私は悪運が強いので」
しょんぼりと前を行くヘルメンの背中を摩ってあげると。
「気軽に触れるな!」
怒られた。
「怒らない怒らない」
「陛下と…きが」
そんな短い遣り取りをしている間に、下の階へは直ぐに到着した。
内観は上と同じ造り。明るさも。容積も。
階段分はロスが在るが、収納にはまだまだ空きが見えた。
如何わしい物がそんな沢山在っても困るけど。
一通り物色。
壊れた背徳は片隅に転がされていた。雑!
室内中央付近に並べられた品々。
「死滅の弓…、結日の竪琴…、苦渋の槌…、
仮初の刃…、好色の短剣…、無色の果肉…、
確かに女性の敵ですねこれらは」
「そうだろう」
他に取り留めて気になる物が無く、最後の一品。
『締結の鎖』
「これだ!」
「私の眼鏡では殆ど何も見えん」
「説明しろ」
名前:締結の鎖(古代兵器)
特徴:使用回数制限1回
どんな物でも締結させる
例えその欠片が世界の果てに在ろうとも
強制執行者の手元の欠片を起点とする
「「……」」
「ノイちゃんどう思う?」
「ベルエイガは、それで自分の元の魂を復元しようとしているのか」
「可能性は大いに在ると、俺は思います」
「…この私か、近親者を操り。ここから奪うか」
「それしか無いかと」
その可能性は幾らでも。
「当面の間。ニーダは城内に入れない方が良いでしょう。
とは言え目の届く範囲に置かないと、何を仕出かすか解らない。忙しい私では預かれない。監視をするにも限界と抜け道がある。
幽閉しようとしても、無実の罪では裁けない。
彼女を監禁しても、また欠片を持った別の誰かがここへ辿り着く。
彼の英雄も。とんだ屑ですね」
ハッキリ言って気持ち悪い。
「現状打つ手無し、か」
「陛下とノイちゃんは、これまで通りの対応でいいと思います。英雄に、ニーダに望み在りだと思わせ続ければ時間は稼げます。
問題は、英雄の魂が何分割されていて、保有者は何人に上るのか。それが解らない事には厳しい」
ノイちゃんが悪態を吐いた。
「一難去ってまた一難。忌々しい!」
「現状で確実性の高い事象は2つ。
魂の分割を施した場所と時期。
初代ベルエイガが死んだ場所。ロルーゼの王城です」
「「…」」
「彼が死んで以降の出生者で、ロルーゼからの入国者。
先日の大使の関係者とか、従者とかもめちゃめちゃ怪しいですね。
私は挨拶すらしませんでしたので知りませんが。
先ずはそこから調べれば宜しいかと」
「陛下。この件の許可を」
「うむ。追ってギルマートから指示させる。
家系全てが対象か。英雄め。ふざけた真似を」
「戻りましょう。家族が、待ってます」
「そう…だな。君は何処まで私に恩を着せる積もりだ」
「何処まででも。この国は、私が逃げ込める大陸で唯一の場所ですので」
ヘルメンは小さく笑った。
「君らしい言葉だな」
ノイツェも釣られて笑う。
「全くです」
---------------
ロロシュ邸に寄り、クワンティに挨拶して。
フィーネがシュルツに来月誕生日の、前倒しプレゼントと称して、オレンジ色のスカーフを贈った。
前倒しと聞いて、一瞬悲しそうな顔になったが。
フィーネに結ばれた頃には、満面の笑みになった。
何も考えてなかった俺は褒め千切るしかない。
千切らなくても充分に可愛いのだが。
「おー、良く似合ってる。明るい茶髪にも合ってるし。
こないだの黄色のドレスにもピッタリ。
可愛さ倍増だな。ストレートでも勿論可愛いぞ」
「嬉しいです。…スターレン様は、何か…」
昨日の普通のブローチではダメなのかと、一瞬頭を過ったがここは素直に。
「ごめん!何も考えて無かった。今度ラフドッグで何か買って来るよ。それか明日、都内で何かを」
みるみる赤くなるシュルツ。
え?ヤバいか。ヤバいのか。だってまだ先だろ?
「…では。キ、キスを…。頑張ったご褒美として」
「キス?それでいいの?」
キスならプライスレスだ。
昨日渡した物は気に入らなかったんだな…。
デザインが臭かったかなぁ。
「は、はい!」
正面を向いてギュッと目を瞑った。
しょーがないなぁと。唇にアメリカンなキスをプレゼントした…。
「そこはホッペでしょ!!」
フィーネさんに蹴り飛ばされました。
オロオロし出すシュルツ。泣いてはいない。
「で、殿下よりも…。早く…。ち、誓いの、口吻を…」
俺は逃げた。何もかも投げ出して。
怖い怖いロロシュ氏が恐ろしくて。
外野で見詰める侍女たちの。
「信じられない」と口元を覆う、驚きの眼差しが怖くて。
そうだ。このまま南に走ろう。全力で走ろう。
やがてロロシュ邸の正門が見え
「逃げてどうすんのよ」
猫のように首を持ち上げられ、連行された。
「ごめんね、シュルツ」
嗚咽を漏らす少女の目の前で正座中。
ここは中庭。今日は立ち寄るだけだと、室内でもない。
「いいんです。殿下には、黙って、おきますから」
「調子に乗ってしまって。シュルツが可愛くて。
居ないけど、本当の妹みたいに見えちゃって」
「私も居ないけど。もし兄弟が居ても、これ位の歳の子にはしないと思うよ」
フィーネの真っ白な眼差しが胸に刺さる。
数分の土下座謝罪の後、やっと泣き止んでくれた。
その日は夕食にもお呼ばれせず。解散となった。
ホテルに逃げ帰ると、最上のリビングで再び正座。
フカフカの絨毯の上。
対面にフィーネも正座で座った。
「ダメだよね」
「はい…」
「私とのキスは、そんなにも軽い物なのかな」
「滅相も、御座いません。いつも感謝と愛情を込めさせて頂いております」
「シュルツからは前々から。スタンから何かのご褒美が欲しいって言われてて。ならキスでもせがんでみればって言ったのは私だけど」
「はい…」
「まさか口にするとは思わないよ。普通」
「ごめんなさい…」
「ライラさんにした時に、みんなに怒られたでしょ」
「はい…」
「どうして反省してくれないの」
「ごめんなさい…」
フィーネは盛大に溜息を吐き出して立った。
「もういいわ。明日何か買って謝りに行こう。一緒に行くから、昨日のブローチよりもセンスいいの買って来て。
それから今日は罰としてお風呂は別々。私が先に入るから。後でスタンが上がったら、本読みましょ」
「うん…」
やっぱりブローチはダメだったんだ…。
長いフィーネの後で、短めのお風呂。
最後に冷水を出して、頭を冷やした。
俺は何をやっているんだ。
可愛いシュルツの心を傷付けて。
風呂から上がり、身体を乾かし、温かいリビングへ。
既にオーダーされた料理と、開けた赤ワイン。
「早く座って。行儀悪いけど、食べながら読んで。
…それから」
椅子から立ち上がり、軽めのキスをくれた。
「先に進まないから、全部許す。許すと言っても、他の人とのキスを許した訳じゃないから。
私のキスも、軽く無いんだよ。解ってる?」
「二度と致しません!」
「なら結構。元気出して、頑張って」
めっちゃやる気出て来た!俺って単純。
明日ちゃんとプレゼント選んで、謝り直そう。
ある程度腹が満たされた所で、受け取った本を開いた。
~東大陸探訪記、竜退治編~
本文項。
こんにちは、同胞諸君。
魔道具大全集を執筆した、名も無き探訪者だ。
この書を大全集よりも先に受け取っていたら済まない。
大全集の見出しで。
長寿の方法が在るだとか。黒竜を倒せば何事も覆せるだとか。曖昧な言い回しをしてしまった事を大変申し訳なく思う。
その反省と謝罪を踏まえ、本書を起こした。
今回は、黒竜にソロで挑んでみました編だ。
場所は、東大陸では有名な話なので特筆はしない。
最高峰のドラゴンにソロで挑むとか馬鹿なの?
との叱責は一切無視をする。
当時の私は、やんちゃだった。
まあよし。結果から述べると、惨敗だった。
鱗一枚剥がせず、軽く前足で叩かれて終了した。
ブレス一つも吐かれる前にだ。
これを書いている、と言う事は。私は生きている。
黒竜の前で泣きながら土下座し、どうにかこうにか左手の小指一本で許して貰えた。
黒竜は、話の解る素敵なドラゴン様だった。
有用な魔道具を沢山作り、装備も整え。
彼の山に挑んだ。
正直、黒竜手前までは楽勝ムードだった。
翼竜を撃ち落とし、氷竜を砕き、赤竜を爆死させ捲った。
これだけ倒せば、さぞレベルも上がっただろうと思われるかも知れないが。
この世界にレベリングは存在しない。非常に無念だ。
竜の数々を削り倒し、山の中腹から内部に侵入。
何コレチョロくない?俺って最強じゃね?
それらの慢心が敗北を招いた。
私はどうして、水竜、古代竜らと並び立つ黒竜を。
そこいらの雑魚と一緒と考えてしまったのか。
山に挑む前の自分を見付けたら、絞めて持ち帰りたい。
話を進めよう。
黒竜に再挑戦する条件として、私には何が足りないかを懸命に模索した。
結果。それは武器だと結論付けた。
この点に於いて馬鹿!との言葉は甘んじて受け付ける。
私と同胞たちの故郷の世界に存在した、
対戦車砲や対艦魚雷や電磁砲等の破壊兵器。
安心して欲しい!そんな物は再現出来なかった。
では。この世界の基本。剣である。
ぶっちゃけて言うと槍でも良かった。
聖剣ではどうだ!と探してみても。それは休眠中だと言われて泣いて帰った。何処だったかは内緒にする。
答えを言ってしまったら、同胞諸君は激怒するだろう。
ならば特効はどうだ!と探してみた。在った。
竜種特効:ドラゴンキラーだ。
東大陸(答え言ってんじゃねーか!の声は聞こえない)
から東に泳いで海を渡った。嘘だ。
魔道具でアホ改造をした船で西大陸に渡った。
他の大陸は粗方制覇していたからだ。
残るは西大陸だけだと、私の胸は踊りに踊った。
魔王の因子や卵さんたちに見付からぬよう慎重に。
取り敢えず真っ直ぐ東に横断してみた。
辿り着いた東海岸線で平和に釣りをしていた魔族殿を発見したので、この人ならお話出来るかも。
と、竜の特効武器は知らないかとお尋ねしてみた。
一杯殴られた。ガチで痛かった。それでも私は粘り強く交渉した。し続けたのだ。
他の人に聞けばいいじゃんとの突っ込みは受け付けない。
人語を話せる魔族さんが他に見付からなかった。
そうだ美味しいご飯で釣ってみようと思い立ち、手料理を拵えて奉納してみた所。やっと。
「美味いな。話だけなら聞いてやる」
友情が芽生えた瞬間だった。
話せば話す程に意気投合し、酒を飲み交わすまでの仲となる。こうして無二の初魔族親友のグラリーズ君が出来たのだった。
目出度し目出度しでは終われない。
グラリーズ君に尋ね直した。竜種特効は知らないかと。
そうした所。何と!彼自身が特効武器を隠し持っていたではないか!
嬉しさの余りキスをしてみたら、一杯殴られた。
仲直りするのも早く、改めて。
「ちゃんと返すから貸して」とお願いした。
ちゃんと返せよと気前よく貸してくれた。嬉しかった。
これでリベンジじゃ!と再び東大陸へと戻った。
後に、冷静に考えると。グラリーズ君にも一緒に来て貰えば良かったと後悔する。後の祭だ。
ソロだから苦しんだのに。学習能力の無い私は、
一度お許し頂いた黒竜に意気揚々と再戦を挑んだ。
頑張って足首くらいまでは届いたかな…。
脱皮しかけの鱗を一枚有り難く頂戴して、私はグラリーズ君に剣を返却した。
「なんだよ。人間にもちゃんと約束守る奴が居るんだな」
彼の言葉が胸に染みた。
良い奴も居れば悪い奴も居る。それはどの種族でも一緒だと私は説いた。
人間の女性の素晴らしさを伝え。
都会の女は糞だ!とお話して。
口説くなら、森とか山とかに隠れ住んでいるお淑やかな女性を選ぶべきだと、強く強くお勧めしておいた。
西大陸を離れ、彼とはもう会っていないが。
彼なら百年後、二百年後に必ず大成しているだろう。
その姿が見られないのはとても残念だ。
あの日、彼と飲み交した酒の味が忘れられない。
~名も無き異世界の探訪者より~
「…お父さん…」
「………」
そっと本を閉じ。
グランさんの遺品の筺を取り出して、2人で眺めた。
だからまだ中央大陸も終わってねーよ!!
---------------
翌朝。
物凄く良く効いた、お香の残り香の中で覚醒し、
寝室の窓を開けに行く寸前で力尽きた。
無防備のお嫁さんに襲い掛かってしまった。
反省はしているが、後悔は無い。
昨日の夕方。
不用意に読んでしまった体験記。それを。
「ちょっと…。一回、忘れよっか」と言われ。
そうしようそうしようと。
「落着くいいお香買ってきたから。寝室いこ」
と誘われて付いて行った。
深いスリットから覗かせた真っ赤な布に堪え切れず。
紳士な反省を示し、昨晩は我慢する積もりだったのに。
正常な自我が在ったのは、お香焚き始めの数分間まで。
俺は獣に成ってしまいました。
結果は凄い効いた!
嫌な事も全部忘れられた!
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