お願いだから俺に構わないで下さい

大味貞世氏

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第38話 魔剣ソラリマデュラン(後編)

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筺の中身は何じゃろな。

ある程度中身が予期せぬ所で見えてしまったが。


寝室の窓を開け、香の残り香を逃した。
「…ごめん。我慢、出来なくて」
「これは私が悪い。使ってしまったのは私だし。
スタンに喜んで貰おうと、調子に乗っちゃった…。
これじゃ、人の事言えないね」

「あ…、ダメだ。そんな優しい言葉、聞いちゃうと…」

「え?…え?嘘…」



結局昼前まで抜け切らず。

チェックアウトからラウンジで遅めのブランチを取り、お買い物(謝罪品)に向かった。

歩きながら、袖や脇の匂いチェック。
「大丈夫かな?匂わない?」
「大丈夫!だと…思う」

若干不安だが、明日は用事があるので仲直りは早いに越した事はないと町に繰り出した。

「スカーフリボンは喜んでたね。ネックレスはあれ以上の物は無いし。他にシュルツが好きそうな物って何かないか知ってる?」
「どうかなぁ。スタンが選んだ物なら…って。あのブローチは私も無いわ。言っては悪いけど、ご年配臭い」

おぉ、そんなに酷かったかぁ。


指輪?それは無い。更に心の傷に塩を塗り込む行為だ。
ましてや彼女はセカンド王女になる女性。
指輪だけは絶対無い。

冷静に考えると、昨日の俺の行動は可笑しかった。
もしかしたら。闇の魔道具を触りまくった影響があったのかも知れない。

熟々フィーネが居てくれて助かった。

邪念は捨てる。


取り敢えずミーシャの店で、同じオレンジ色のチョーカーを購入した。

店内を一通り見て回ったが、他にはグッと来なかった。

「これだけじゃダメだ。何かないか…」
「うーん。服も沢山持ってるし。ドレスもある。
やっぱりアクセサリーかなぁ」


次の店。

俺たちの結婚指輪を買った店に入店してみた。

結婚指輪は今、それぞれの貴重品ホルダーに入っている。
大事な指輪を付けて剣を振る馬鹿はいない。

使い潰す魔道具系なら躊躇は無いが。

もう少し丈夫なチェーンが見付かれば、ネックレスリングとして身に付けようかと思う。

ちょっと首周りがじゃらじゃらするな。


「ようこそいらっしゃいませ~」
あの頃の店員さんじゃない人だ。
他の店に移ったのかも。

適当に会釈して見回した。

冷たい客だと罵られても今は時間が惜しい。

ここでもグッとは来なかった。


外へ出て一息。
「あの頃の俺たちは貧乏だった。だから庶民的な店の品揃えでは、毎年高級品が贈られる貴族令嬢のお眼鏡には適わない」
「ふむふむ」

「シュルツは至って庶民的な感覚を身に付けたが。
端的に言って、フィーネが身に付けている物を欲しがったと見える」
「ほうほう成程」

「フィーネが喜ぶ物なら、シュルツも喜ぶと思われる」
「おぉ、それで」

「そこで。3区の高級ジュエリーショップだ」
「ほー」

「シュルツの事だけを考えずに。ぶっちゃけ、俺たち纏めて3人でお揃いと言うのはどうだろう」
「お!中々いいかも」



3区へ移動。

4区と同じく高級住宅も並び、城へ近付く程に商店も多くなる。

南に行けばコマネの邸宅。更に南西に回れば明日にお世話になる闘技場が見える。

しかし今は奥には行かない。

お城付近の高級店に焦点を当てた。


ジュエリーショップは一店しか無かった。
これで選択肢は絞れる。

「よし、ここにしよう。ここしか無いけど」
「高級店かぁ。初めて入るね」

「いざ!」
「いざ!」

俺たちのテンションは高い。
昨日は徹夜。からの今日も殆ど寝ていない…。
寝不足だ。

どうしてこれで眠くならないのか。
全ては装備品のお陰です。

とは言え今は武装の殆どは袋入りだ。
2人とも普段着に近い。
俺だけメインの紐は巻いているが。


「いらっしゃいませ」
物腰の整った静かなセルジュさんだ。
店内の柔らかな照明。雰囲気とも合っている。

これは期待出来そうだ。

こちらを見ているが、声は掛けて来ない。
いいな、好感が持てる


「すいません。私たち夫婦で使えて、更に妻の妹の12歳位にも丁度いい物って何か無いですかね」

「そうですねぇ」
店員さんに手や腕、首周りを吟味され。
少し離れて、俺たちの全体を見てくれた。

触れてもいない。全て眼力だけ。お主やるな。

「お客様は、冒険者様ですか?商人様でしょうか?」

どっちに見えます?なんてアホな問答は要らん。

「兼業です。何方かというと商人寄りですね」
「私も一緒です」

「これは珍しい。ご夫婦で兼業とは。
冒険者も兼ねていらっしゃるのなら。
指輪は違いますね」

店員さんは再び離れて全体像を見て唸る。

「脱着が容易で、シンプル。子供から大人まで使える物となると…。ブレスレットと言うのはどうでしょうか。
奇抜なデザイン性を求めないなら、特に性別は関係ありませんし。手首の太さは急激には変化しません」

「それだ!」
「いいわね!」


「大変失礼ですが、お召し物からは類推する事が出来ません。ご主人様のお名前を頂戴しても宜しいですか」

「ストアレン商会の、スターレンです」

その瞬間、店員さんの目が光った。ように見えた。

「キーラ!昨日入荷したばかりのアレをお出ししなさい。
丁度三本在った筈です!」

「はい!少々お待ちを」
カウンターから動向を見守っていたキーラさんが奥へ引っ込んだ。

最近多いなこう言うの。

「申し遅れました。私が店長のトーラスと申します」
店長さんだったんかい。

店頭で自ら目利きするとは。素晴らしい商人だ。

「ご高名なスターレン様と聞いた上で、値を張る商品しか出さないと誤解されるかも知れませんが。
現状ブレスレットで冒険にも使える物となると、
今からお出しする物しか。胸を張ってお勧め出来る揃えを持ちません。どうかご了承を」

流れるような前置きだ。此奴!

「この際です。物が良ければ値段は問いません」

「そう言って頂けると、とても助かります」


暫くするとキーラさんが、長型の銀トレイの上に白い小箱を3つ並べて運んで来た。


箱から出された商品。

白い手袋をしたトーラスさんが、手に取り提示してきた。

シンプルなチェーンブレスレット。チェインの繋ぎ目の所に鮮やかな紫石が埋め込まれていた。

試着させて貰ったが、余力長さ、太さ、重さも丁度良く、これならユニセックスでも通用する。

「こちらは総プラチナ製の商品で。紫のサファイアを遇っております」

「普通にいいなこれ。どうよ」
「いいわ。これなら邪魔にならない。ガントレットにも内蔵出来そう。勿論好きな色。これがサファイアかぁ」

「お気に召された様で何よりです。
…そしてその商品の値が張る理由ですが。
正しく使えば、体内魔力のストッカーにも成る優れ物だからです」

「凄いな。確かにそう出てる。でも名前がないですね」

「やはり鑑定眼をお持ちでしたか。
そちらは、裏には負けないと表の職人が丹精込めた魔道具の類。しかし表向きは飽くまでもアクセサリーで御座います」

「あぁ。これがノーネームなんだ」
「ノーネーム?」

「名無しって言う意味でね。俺たちがよく目にする純粋な魔道具は、大体が制作者が品物に名前を付けた物。
表で商売したい商品には、敢えて名前を付けないんだ」
「無記名って事ね」

「然様で御座います」

パッと見た感じ、ストック量もかなり高い。

値段を聞くと、1つ金100枚。
性能で考えれば寧ろ安い位だ。

「全て買います。それと、また良い品を仕入れたら一声お願いします。商業ギルド経由で」

「畏まりました。必ず。
末永いお付き合いを心待ちにしております」



精算を済ませ、店を出た。

手には4つの袋。チョーカーとブレスレット3つ。
「久し振りにいい買い物したわぁ。
これなら絶対喜んで貰える」
「そうね。私もそう思う」


颯爽とロロシュ邸へ赴き、シュルツに手渡し、3人でブレスレットを見せ合い。シュルツのご機嫌は急上昇した。

シュルツのお許しを頂き、ロロシュ邸へ止めて貰う事となった。


夜。
前によくやっていた、1人と2人で同じ寝室。
隣は楽しそうに小声で話し込んでいた。

シュルツが寝息を立て始めた頃。

「ねぇ。そっち行っていい?念の為、シュルツには最弱のスリープ掛けたから」

「にしても静かにしないとダメだぞ。
…俺も一緒に寝たい」



翌日の事も考え。人様の家である事。隣には令嬢。

夫婦の営みには至らなかった。

それは幸運と言えたであろう。

連日の徹夜に近い行動に依り、夫婦の注意力は散漫になっていた。

本来なら、香の効果も全く通じない筈の妻であったが。
人から聞いた話。お隣さんの遠吠え。自分からの挑発。
それらの要因を以て大いに勘違いした。

異世界の旅人たちはそれをこう呼ぶ。
プラシーボ効果と。


令嬢は2人が居ない間に、魔力枯渇を繰り返し、魔力耐性が上昇していた。

そうシュルツにはスリープが効いてはいなかった。
実際には寝たふりをしていたのである。

薄目を開けて。

更にフィーネのサイレントの効果範囲も曖昧になっていて隣の令嬢に丸聞こえ。

激甘な囁き「愛」の言葉と、時折見える大人のキス。

大人のキスを認識した時点でシュルツは悟った。
昨日のあれは、挨拶程度の物だったのだと。

少女の傷は大分和らいだ。
和らぎはしたが、暫く続けられた夫婦の語らいにシュルツの頭は完全にショート。

彼女は気絶するように眠った。




---------------

かなり納得が行かない部分が多すぎる。
探訪者さん。あんたいったい何者なんだよ…。

もう大切な筺すら開ける気がしなくなっていた。

「どうする。筺開けるの止めない?」
「今更止められないでしょ!闘技場も借りちゃったのに」
「何か別の玩具出してさ」
「そんな子供騙し。王様怒っちゃうよ」
「…開けるか…」
「私は中身を見たい」

嫁さんの圧勝。

荒れ果てた夫婦の心を癒やす為。
シュルツに協力を仰ぎ、真ん中に置いて。
3人でお手々を繋いで貰い、闘技場までの道を歩いた。

クワンティはシュルツのお肩に大人しくしている。

ロロシュ氏は私兵を連れて後で来るそうだ。

誰が集まっているかは知らないが、ライラだけはニーダの教育と保護の任務を天から投げられ、今回は居ない。


到着してしまった。こうなったら腹を括るしかない。

天覧席にライザーも座ると聞き、我らの心の拠所を引き渡して別れた。

地上、場中アリーナ手前の控え室で2人で生着替え。

「…何じろじろ見てるの?別にいいけど、恥ずかしいよ」
「無性に癒されたくて」
「うじうじ悩むな」

優しいキスを頂いて、かなりやる気復活。
よーし、何を見ても驚かないぞ!


2人は現状での完全武装。とプラチナブレスレット。

フィーネのピチピチライダーは格好いいし、色っぽい。
お披露目したくない。独り占めしたい。

「…口から全部溢れてるよ。マントも着るね」
「そうして下さい」


場中へ出る手前の階段に足を掛けた。

「なぁ。これってさ。俺たちが殴り合うのかと勘違いされてないか」
「そ…、それは…ないとおも…」


入場してアリーナ中央に立った。


観客席は結構な人が居た。

王族一家+メルシャン様。王子…暇なの?
クインザは居ないがムートンは居る。拒否リストに入れれば良かった…。

我らの頼れる味方ロロシュ氏はシュルツと並んでる。
あれ?シュルツはライザーの隣ではと目線を送ったが、視線を外されてしまった。大丈夫かあの2人。
隣の卿はニヤリと笑った。い、嫌な予感が…。

騎士団長以下3名(2人は新顔で知らん)がヘルメンの後ろに控えている。
武装は前よりは大人しい感じだな。

後は国防の重役2人。


お筺の中身を改めるだけなのに大袈裟!


シュルツに手を振りたいが、他者に誤解されるので我慢して控えた。


長い筺を取り出し、俺たちの間に設置。


観衆の反応は面倒なので一切無視する。


ヘルメンの開始宣言を待つ。
座を立ち、右腕を掲げたが直ぐに引っ込めた。

後で聞いたら、面倒になったそうだ。何だとコラ!

「…席は埋まった。後は任せる!」ぞんざいな挨拶だ。


筺を挟んで対面のフィーネと視線を合わせ頷き合った。

開けよう。何も考えず。

筺の上中下のストッパーを外した。
どっちが上?とは突っ込まないで欲しい。


筺の半面をそっと開けて、こっそり…一気に開いた。

「「……」」


それは長剣ではない。大剣バスタードの姿。

全身がドス黒く、刀身を包む鞘と同じく、歪な赤紫の装飾隆起が施されていた。

両手で持てる柄の端まで繋ぎ目が見当たらない。

最早どうやって造られたのかが理解出来ない一本物。

正しく魔剣の姿だった。


「俺が持ってもいいの?」
「…どうぞ。私は鑑定出来ないもん」可愛い!

気を戻して大剣と向い合う。


取り敢えず片手で鞘毎持ち上げ、観衆に大丈夫のアピールをした。

小さな響めきと女性客たちの引き攣った声。


俺は掲げた時点で、固まった。

名前:魔剣ソラリマデュラン(二神の加護:大)
性能:攻撃力2000
   使用承認可能数:2名(現在未設定)
   装備者に対し侵食同化機能搭載
   (同化時:知能以外の全能力値+1200)
   同化解除方法:装備者任意
   装備者の潜在能力解放(装備時の間、限定)
   物理破壊不能
   全干渉攻撃無効(全承認者)
   魔属性保有
   聖属性追加保有
   両属性完全耐性
   紛失時自動帰還(何方かの承認者の下)
特徴:古代竜の牙から加工された大剣(鞘含む)
   独自の思考回路を保有(お喋り機能搭載)
   加工方法、制作者不明
   (製作後に追加工された痕跡有)
   竜種特効:鱗剥ぎ(装備者技能に依存)

「「…凄い…」」

フィーネにだけ聞こえるレベルで中身はご説明。

それにしてもハイスペック。見てはいないがこれは聖剣に匹敵するのではと思える。

二極性を併せ持ち、欲しいレジスト機能が満載。
これ無敵じゃね?とふと過ってしまうが、探訪者も書いていたように、過信だけはしてはいけない。

所詮剣と道具は使い用。

今回はロイドちゃんから前置きされて、それなりの覚悟はしていたが。

大変有り難いんですが!
物には限度があると、俺は思うんですよ!
ロイドちゃん。お二人に苦情入れといて。
「お伝えはしますが…。どうせ私の言葉など。お二人は今耳を塞がれて居られます。『反省』の二文字の持ち合わせは無い様です。以上!」



「あれ。…抜けない」
鞘から剣を引き抜こうと、全力で引っ張ってみたがびくともしなかった。

「抜けないの?…観客の目が痛いよ」
「いや解ってるんだけどね。全力出しても、全然、抜けそうにない。代わる?」

「嫌だ。それ気持ち悪いもん」可愛い!

「え?これ形見じゃなかったっけ」
「違うわ」

そう言って妻は地面に置かれた筺を指差した。

「大切な形見は筺よ。そんな汚物じゃないわ」
汚物って言っちゃった。

「私はそれに、お母さんの形見のカーディガンと、シュルツから貰ったドレスを入れるの。
そうこれは、優しいお父さんがお母さんに贈った、箪笥の筺よ!」
そうだったのか!!

何か御父上様と言ってたニュアンスと全く違うけど。
フィーネがそれでいいなら。

「その大切な筺はフィーネが仕舞って。大変丈夫な筺だから大事に使うといいよ。
で、こっちはちょっと雑に使うよ」

「遠慮無くどーぞ」
上機嫌のフィーネさんは筺を払って、大事そうにポーチに収納した。


おいらは大剣を振り上げ、上段から地面に叩き付けた。
どうせ魔力流しても受け付けないなら、躾けするしか道は無い!

ガキンと地面が抉れる。


「陛下!ちょっと地面、穴だらけにしても宜しいですか!
性能が良すぎて!抜くのに!手子摺り!そうで!」

「遣りながら言うでない!許可する!好きにせよ!」

やったぜ。言ってみるもんだ。

そして取り敢えずの10回目に変化が起こった。

『…我を抜きたくば、力を示せ』
地鳴りのように周囲に響く野太い声。

「どうやって?」

『…我を抜きたくば、力を示せ』

レコーダータイプだな。何か別の方法でもあるのかな。
などと一息付いて考えていたら。

「スタン。白い絨毯敷いて、その汚物を転がして」
鬼の形相のフィーネたんが、白銀のハンマーを持って立っていた。

俺はたった今、従順な犬に転職しました!

ロープを引き伸ばし、絨毯状に折り重ねて敷き、魔剣を中心に転がして少し離れて様子を見守った。


「私は…、ずっと。ずーーーっと、待ってたの。どんな事をしても!壊れない!お前の様な存在を!」
転がる魔剣が一瞬震えた。

その真上から、冷徹なハンマーを振り降ろす。
それはフィーネ史上、全力全開。

サヨウナラ、壊れぬ魔剣。短い付き合いだったな。
お前が悪いんだぞ。嫁さん怒らすから。

当然!

ガキャーーーン!!!
鼓膜を突き抜ける轟音。否!痛音。

本人は大丈夫か!と見てみれば、チョーカーマスクが変化して耳栓になっていた。

「シュルツがいけないのよ!可愛すぎて!」
「抱き締めたいのに!力一杯!抱き締めたいのに!」
「最近は!やっと!旦那を!抱き締められる様になって!落着いたのに!」
「毎回!毎回!会う度に!可愛くなって!」
「どうやって!!我慢すれば!!いいのよぉー!!!」
そうだったのか。気付かなくてごめんな。

これまで溜めて込んできたストレスをぶち撒いて。

観客席を振り返る。シュルツは、え?え?て顔で困惑。
他は耳を塞ぎながらも、何とか聞き取ろうと…。

これはいけない。

「観衆の皆さん!」
「妻は!錯乱中でして!」
「暫くすれば!落着くんで!」
「もしもの場合は!俺が!全力で止めますんで!」
「出来れば!忘れて貰って!」
「あんまり!見ないで!貰えますか!」
「これ!絶対に!恥ずかしくて!」
「後で!死にたく!なるやつですから!!」

観客全員ウンウンと大きく頷いてくれた。


轟音と共に、叩き続けること10数分。

『…ちょ…まっ…』
「あぁ、気持ち良い。気持ちいいわ!!」
『…話を…聞いて…』
「心が、洗われる…。もっとよ!!」
『…聞いて…ね…お願い…します…』
「足りないわ!!!」

だって…御本人、耳栓してるんだもん。

更に数分後。


剣から離れ、ハンマーを床に降ろし、肩で息をして、顔面汗でびっちょりのフィーネたん。

頬と額の汗を腕で拭い、清々しい美しい笑顔。
耳栓が勝手に取れてる…。

「あースッキリしたぁー。…どうしたの?みんな」
「ど、どうもしないっす。よ、よかったなぁ、スッキリしたみたいで」

「うん。今日からまた頑張れそう。でも、定期的に叩かせてね」
「おぉ、オッケー」

ストレスを全て吐き出し、戦姫から美姫に変身。


転がる魔剣は、無傷で震えていた。


『我は、誇り高き古竜の一族から生まれ出でし者』
「違うわ。お前は、古竜様から抜け落ちた、只の虫歯よ」
マジですか!!

『…え…』
「全身真っ黒じゃない。赤いの付いてるし。
嘘を吐いちゃ駄目よ。
お前は虫歯で間違い無い。私が保証する」

俺含め、全員呆然。

『…誇り……え?…』
「まずは!白色と、綺麗な紫色に成れ!そうすれば、汚物と呼ばなくて済む。話はそれからよ」

『…解り…ました…』


一瞬だけ光り、装飾の紋様とベース色が反転した。


「これで、落着いて話が出来るわね。スタンの手間を取らせないで。今日もこれからお買い物に行くんだから」
全力で御供させて頂きます。


一歩退いたフィーネに入れ替わり。
「で?俺たちは認められたの?正しい方法があるなら教えて欲しい。然もないと…」

『登録は完了しました』

では遠慮なく。

柄を掴み、引き抜いた。

響めく場内、現われたその刀身は。
牙に相応しい乳白色だった。
日の光を受け輝いて見える。

フィーネの顔も満足げな微笑み。


ここで大変重要な情報を頭に焼き付けよう。
ロイドちゃんも焼き付けるんだぞ。

我が嫁が好きな色は。

乳白色、白、銀、白銀、水色、鮮やかな赤、綺麗な紫、
ベーシックな黒。

更に重要な情報だ。ここを間違えてはいけない。

禍々しい黒と赤のコントラストは汚物。

さぁ焼き付けよう。
「焼き付けました」


全て終わりかと思いきや。
「気に入らないわ!!」
『…まだ何か…』

「お前の名前よ。折角白になったのに。魔剣ソラリマデュランなんて頭イカれてるわ!長いし。
お父さんに拾って貰った分際で、娘の私に命名権が無いのは変よ!

今日からお前は、聖剣ソラリマ。デュランすら要らない」

『えぇ…でも我は、魔剣として生ま』
「古竜様の牙ならどっちだっていいじゃない!
聖属性付いてるんだし。聖剣よ。異議は認めない!」

『解り、ました。今から我は、聖剣ソラリマ。です』


再び響めく場内。
こうして強制的に、世界に2本目の聖剣が爆誕した。

だから言わんこっちゃない。
「ですね」



しかしその後。冷静に戻ったフィーネさんは。
控え室に閉じこもって泣き出してしまった。

俺とシュルツの1時間に及ぶ、説得と慰めが必要だった事を付け加えておこう。


今日は色んなフィーネが見れた日だった。



名前:聖剣ソラリマ(二神の加護:大)
性能:攻撃力2000
   使用承認可能数:2名(☆フィーネ/スターレン)
   承認者解除方法:両承認者死亡時解除
   装備者に対し侵食同化機能搭載
   (同化時:知能以外の全能力値+1200)
   同化解除方法:装備者任意
   承認者の潜在能力解放
   物理破壊不能
   全干渉攻撃無効(全承認者)
   魔属性保有
   聖属性保有
   両属性完全耐性
   紛失時自動帰還(何方かの承認者の下)
特徴:古代竜の牙から加工された大剣(鞘含む)
   独自の思考回路を保有
   (お喋り機能搭載:要フィーネの許可)
   加工方法、制作者不明
   (製作後に追加工された痕跡有)
   竜種特効:鱗剥ぎ(装備者技能に依存)
   ☆フィーネに絶対服従


修正が加わり、微妙な変更もあった。

んが。

この性能が中央大陸で必要になることはない、と思われるので。当面の間はお蔵入り決定。
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