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第140話 クワンジア遠征準備01
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全ては休みを取る為に。頑張れる。いや頑張る!
現在5月中旬。出発までざっくり4週間。
帝国で購入出来たお土産の1つ。蓬(ヨモギ)
早速蓬団子を作りながら、4匹貰えた子持ち鮎を塩焼きにして奪われる前に腹に収めた。
陛下に報告に行っている間にフィーネがホテルの予約と指針のブローチ複製品の相談にシュルツの所へ。
後宮に居た陛下にメイザーとキャルベを呼んで頂き、4人でお団子を食べながら紅茶を啜った。
「いやぁ美味い。報告忘れそう」
「忘れるな。美味いがな。この鼻に抜ける爽やかな香り」
「ミントではない柔らかい香りです」
「かなり前に帝国で食した、ような気が」
「余りはこっそりミラン様たちと食べて下さい。後でフィーネがメルシャン様に確認するんで食べ尽くしちゃ駄目ですよ。では」
次に手を伸ばそうとした3人が止まったのを見て。
マッハリア北での出来事から順を追って説明した。
残党の一派を倒し、ハルジエと出会い、現皇帝と共闘して前皇帝の娘、教団幹部アンフィスが率いていた帝国方面は粗方潰し切れたと。
そう言えば昨日ハルジエとスタルフがお茶会してる所に割り込んでしまったな。大丈夫だっただろうか。
「北の大陸ではフェンリル様の他にも教団が狙っている石を守る守護者が居ますので帝国方面は無視出来ます。
アストラ様を始め帝国の総力を以て残党狩りをすると誓って頂きましたし」
メイザーが首を呆れ気味に振り。
「相変わらず尋常ではないスピード感だ。ロルーゼの分割化の話は任せてくれ」
「お願いします。一応スタルフと父上には内容を伝えてあるんで話は早いかと」
「ふむ」
「そしてここからが本題ですが」
自分も邪神召喚の生贄候補に入っていて道具の1つ緋色の結晶石を発見して昨日塵も残さず消し飛ばしたと。
「お前まで候補…」
「危険度としてはペリーニャと同等レベルかと。将来必ず行く西大陸で罠張っていれば私がノコノコやって来るんですから。他の候補者の奪取に本腰を入れてないのも納得です。
私かペリーニャを捧げれば極限に取るのが難しい北大陸の石英は不要に成りますので」
「どうして不要に成るのかは聞かぬが。それでは少々厄介だな」
「何故にでしょう」
「これを見よ」
陛下が差し出した1枚の招待状。
「~本文~
クワンジアのピエールだ。
本年七月中旬に当国王都で闘技大会を開く。
先だって交流を所望している貴国の外交官シュトルフ夫妻を大会の目玉として招待する。
優勝の褒美として、凍土の石英と呼ばれる貴重な宝石を用意している。
是非とも参加させて欲しい」
これか…あの直前の変な動きは。
「これは罠ですね。この石英は私を確実に誘き出し、存在を把握しているかの確認です。
相変わらずピエールは頭が悪い。教団の手先に成っているとも知ってか知らずか。正式文書でヘルメン陛下への挨拶文を抜くとか(笑)教養も無いのでしょうねぇ」
「属民は可哀想に思う(笑󠄁)で、どうするのだ。参加可否の返信は」
「予定通りに参加します。ピエールが完全に教団の手先だった場合はクワンジアを壊滅して来ます」
「涼しい顔で恐ろしい言を吐くな。まあお前なら一般人まで巻き込まないとは思うが」
「大丈夫ですよ。王都が崩壊して国が割れても良識有るモーランゼアとアッテンハイムで吸収出来ます。国の規模がアッテンハイムと逆転しても、根幹には正しい女神教が居ますので寧ろ国民は喜ぶのではないかなと」
「ふむ。そこまで考えているなら任せよう。返事は近日に送る」
キャルベが渋い顔。
「国割りまで行ってしまうとメレディスがどう動くのか」
「その点は確かに微妙ですね」
「私が前皇帝に呼び出されていた時も。メレディスが大陸北西を占める大国であるにも関わらず。殆ど情報が取れなかった謎多き国だ」
思わず腕を組んで唸ってしまった。
「そうですか…。まあ秘策は幾つか用意してますんでクワンジア滞在中に何とか情報を集めてみます。ゴッズを呼び出せる指輪の最後の1つが難点ですが」
微妙な空気になってしまったが頑張りますと締めて報告を終えた。
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こっそりホテルの予約をラフドックに直接取りに行き、6月上旬の1週間が取れた。良かったぁ♡
自宅に戻り蓬団子をシュルツに渡した序でにアローマさんも連れて工房に向かった。
身長が少し伸びたシュルツを膝の上に抱えながら指針のブローチの相談をした。
2つを並べて手に取り、四つ葉眼鏡で鑑定。
「むー。形状は酷似していますが。
配合率の問題でしょうか。お姉様が作られた方はペラニウムの純度が高すぎるのだと思います」
シュルツの肩越しに一緒に眺め。
「複合型は純度を落とさなきゃいけないのかぁ」
「形状はそれ程拘らなくても良いと思います。他に何か伝導性の高い素材や魔力を込められる金属を配合して。
念話が得意なお兄様やペリーニャ様が魔力を封入すれば完成するのかと」
お!マウデリン鉱石が有るじゃない。
肩に乗っているクワンティに収集物を幾つか出して貰い作業台に並べた。
シュルツが丁寧に鑑定。
「マウデリン…。良いですね。理想的な金属です。
これもスマホに使われていると見て間違いないかと。
制作者のベルエイガ様が魔力を封入したのだとすると合点が行きます」
「成程。賢い!」
思わず頬をスリスリしてしまった。
「擽ったいですよ。ですがこのまま砕いて合成してしまうと余計な不純物が混入してしまうので精錬が必要です」
「それなら問題無いわ。専門家の知人の所にスタンが行くから後で聞いてみる」
次に唐草手袋のご相談。
「1000人運べる義眼の転移道具を無くしちゃったから何とかこれと同じ物作れないかな。1つで良いのだけど」
手袋の鑑定には少々時間が掛かった。
「これは難しいですね。恐らくこの構造も大全集の最終巻に記載が有りそうです」
「そっちが先かぁ…」
「こちらは分解出来ませんので。使われていない左手用を解析させて下さい。相反する機能でも基本構造は同じですから何か掴める筈です」
「左手は今スタンが持ってるな。それも後で渡すね」
「はい!」
話が終わったのを見たアローマさんが。
「フィーネ様。スターレン様がお帰りになってからでも良いのですが。温泉郷の候補地に一度行って頂けませんか」
「何かあったの?」
「はい。一度ロロシュ様と護衛隊とで候補地の下見に向かったのですが。スターレン様が源流下手に植えられた山葵が一部根腐れを起こしておりまして。そちらはプリタが除去しましたので問題無いと思われますが。プリタ曰く地質が合っていないのではないかと」
植えただけでは駄目だったのか。
「ありがと。伝えて置くわ。源泉近くで水を汚しちゃ拙いし早めに対処する」
「お願いします」
帝国でゲットした500km双眼鏡をシュルツに渡し。
「これも私の双眼鏡の上位版だから。防水加工のお願いをしたいのと…。エッチなスタンに渡すのは悩ましいけど透視機能は潰さないで。これからはその機能も重要になりそうだから」
「…悩ましいですね。とても、非常に潰したいです」
アローマさんも不安げ。
「何とか成りませんか?最悪、一万歩譲ってスターレン様になら見られても諦められますが。落として他の殿方に奪われた時の事を考えると…」
「おぉロストした時の事までは考えてなかった。対象が女性限定で見えなくするとか…は意味が無いな。どうしよ困った」
「破壊覚悟で改造します。何とか両立出来るように。
手袋の次に頑張ります!」
「お願いします!」
結局丸投げしてしまった。
次に擬態の金チェーンネックレスを取り出した。
「これは性別までは変えられないけど声も見た目も服まで完璧に模写出来る擬態道具なの。運良く敵の秘密兵器奪い取れたから。複製不可能な形に改造お願い。壊しちゃっても良いからね」
「はい!三番目に挑戦してみます。暗黙のクリップの予備が有れば下さい」
前回の水没で取れた物を、はいどぞー。
「アローマさん。他には何かあった?」
「他はライラ様のご予定日が近いのと。クラリア様が私も何方か紹介して欲しいよぉと仰っていたのと」
あんたもかい。もう未婚の知り合い居ないよ…。
「再来週にデニス様のお店で合同婚礼パーティーをと計画されていた所。噂を聞き付けたカメノス様が会場を貸すと言い出し。ロロシュ様が奪わせるものかと抗議し。ノイツェ様がいやいやメドベド様が居るのだし、初回のお見合いは当家でやったんだから会場は家でしょと苦言を」
「ややこし!」
「非常に難航しております」
「解ったそれは私がガツンと言って来る。ノイツェさんのペアとメドベドさんのペアが被ってるんだから。もうそれはガードナーデ家でやるしかないでしょ。1区でやれば集まり易いし。クラリアさんは…考えとく」
スルー出来るかなぁ。
帰宅したスタンに鑑定結果を伝え。本棟で昼食を頂いて帰還報告と水竜様にお参りをした。
私は午後から3軒の邸宅とデニスさんの店を往復して走り回る羽目になった。
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山葵が根腐れを起こしていたのは無念だ。
プリタに詳しく状況を聞いて何となく予想は付いた。
多分水温と水量。風当たりや日照などの立地条件と思われる。
手袋はフィーネが持ってるから明日にでも行く。
序でに人が居なければ温泉にも入っちゃおう。
…プリタも行くから無理だった。いっそ水着で混浴に、は俺のマイサムが堪えられそうにない。
男女別の風呂と更衣室を設ければ行ける!
「明日現地に行ってからお考えを」
ロイドちゃんもご一緒に。
「無理ですね。フィーネさんと手を取り合いながらのお風呂など現実的では有りません。それとも私の身体の基本造形をスターレンが造ったとバラされたいのですか」
前言を撤回させて頂きます。
「真面目にやって下さい。そう言う所から浮気は始まるのですよ」
べ、勉強になります。
気持ちを改めている間にデニーロさんの武器屋へ到着。
「ちわっす。久し振り」
「おー来た来た。お仲間が買い物に来るだけで大将は二度と来ねえと思ってたぜ」
「ちょっと忙しくてさぁ」
店内に他の客が居ないのを見て。
「ちょっと奥で込み入った話がしたい。貴重な材料沢山持って来た」
デニーロの目がキラリと光った。
「いいねぇ。そう来なくちゃ」
直ぐに店を閉め、カウンター奥の商談室に入った。
見せろと言われる前に床にフルプレートメイルを寝かせテーブルの上に鉱石を並べた。
小粒の鉱石を掴み、片眼鏡で鑑定。
「マ…マウデリンじゃねえか!!??」
腰を抜かしたのをロープで支えた。
「ビックリした?」
「び、ビックリなんてもんじゃねえ!」
「床に置いた鎧にも混じってる」
「ホントか!鉱石もこんなに…。何処でこ、いや駄目だそれは聞かねえ。まだ死にたくねえからな」
「大袈裟だなぁ」
「大袈裟じゃねえよ。欲しがる奴なんて世界に五万と居るのに何処を掘っても見つからないで有名な物だぞ。
下手すりゃタイラントが丸ごと買えちまう」
「そんな高いんだ」
「大将。これは武装屋に取って生涯で一度触れるかも解らねえ夢金属だぜ。
こ、これを俺なんかにやらせてくれるのか」
「他に頼める人がデニーロ以外居ないんだ」
「う、嬉しい事言ってくれるじゃねえか!やってやる、じゃねえ。是が非でもやらせてくれ」
「取り敢えず5kgインゴットと長剣、短剣1本ずつ。それと男性用胸当て1つ位は行けるかな。足りなかったらもう少しなら鉱石を追加も出来る」
「溶かしてみねえとハッキリ言えねえが。多分余る位だ」
「余ったらそれもインゴットに。鎧はタングステンと鉄も大量に入ってる。それも分離して超硬弾丸を作れるだけ欲しい」
「ああ解ったぜ」
「高温が出せる火と炎の最上位魔石の用意は有る。何時頃から取り掛かれそう?」
「明日…は無理だった。明後日に国の倉庫に納品があるんだった。
三日後から。仮病使って幾らでも時間作るぜ」
「オッケ。裏の工房訪ねればいい?」
「おう直で来てくれ。ただ…」
「ただ?」
「人手が足りねえ。こんな代物は他の奴には絶対見せられねえ。大将は手伝うんだろうな」
「勿論。勉強したいから」
「じゃあ大量の飲料水と冷却水。塩分高めの食事も頼みてえ。後お供のヒョロイ兄ちゃんと男の力持ちを最低一人出来れば二人連れて来てくれ」
「男?フィーネなら力有るけど」
「嫁さん上半身裸に剥けるのか?」
おー成程。
「ごめん無理だわ。食糧と人員は何とかする」
「工房内も灼熱地獄だ。換気も最低限。炉の状況を見ながらになる」
「室内温度だけなら調節も出来るけど」
「大将。金属加工を嘗めちゃいけねえ。炉と材料と己との対話なんだ。温い考えしてると出るのは粗悪品だぜ。
他の材料なら兎も角。マウデリンに魂込めたいなら猾はしちゃいけねえよ」
魂か、職人さんだ。
「これはこれは失礼を」
「大将が何時かタングステン持って来るんじゃねえかと工房の設備一新しといて良かったぜ。マウデリンはその少し上だった筈だ。熱くなるぜぇ」
楽しそう。
「楽しみにしてるよ」
「期間は四日から一週位は見といてくれ」
「了解。鎧は明後日までに適度にブツ切りにしとく」
「サラッととんでもねえ事言ってるが大将なら納得だ」
高らかに笑い合って荷物を片付けて冒険者ギルドに居たギークを誘って帰宅した。
自宅リビングにソプランとカーネギを招集して3人にアルバイトの仕事内容を鉱石を見せながら説明。
「多分ギークなら知ってると思うけど。これに関しては秘密厳守で。予定は3日後から1週間前後。水や食糧はこちらで支給。お風呂は本棟の大浴場を借ります。
報酬は1日1人金百枚。どう?ギークやってみない?式の準備で忙しいなら断ってもいいよ」
「国が動く程の希少金属だ。喜んでやらせて貰う。
式なんて大袈裟な物はやらんよ。五組揃って総本堂で手続きして…多分ガードナーデ家で宴会するだけだ。
ついさっきフィーネ嬢がごり押ししてきたと教えてくれた」
フィーネの位置を見ると3区方面を移動していた。
コマネさんとこか。まさかヒエリンドをクラリアに紹介する気じゃ…まあ有り得んな。
「俺たちは」「強制?」
「警備長とロロシュさんには俺から話すよ。個人報酬が不満なら倍にしてもいいけど。それとも他の予定有る?デートとかなら隣のメンバー誘うよ?」
「どうすっかなぁ…じゃねえわ。貰い過ぎだ。半分の五十でいい」
「お、俺も。まだ戸建てを買う、予定も無いし」
「2人共欲が無いなぁ。ロロシュさんに言えば数倍に膨らむのに。ギークはそのままでいい?」
「俺も半…と言いたい所だが実は貯蓄が散財してきてほぼ零だ。そのまま頂戴する」
「じゃあ契約せ…ギークは何に散財して来たの?」
「…自棄で、カジノで溶かした」
「それギャンブルの才能無いよ。もう金輪際やらないと誓うなら契約しよう」
「やらん。エナンシャを泣かせはせん」
「言うねぇ。では契約成立っと」
サラサラと証文を3枚書いて両者のサインで締結した。
「それで造った武装でクワンジアの闘技大会行くのか?」
「んな勿体ない事しないよ。将来西大陸か東の最宮で使う積もり。それに大会じゃ防具とアクセサリー以外の武具は国が用意した模造品を使うから」
話の流れで大会ルールシートを3人に見せた。
防具は自由。但し鋭利な大盾は除く。
防御系の道具は自由。但し転移系の使用は失格。
道具に依る攻撃系、即死系魔法は使用禁止。
禁止事項を破った者は当国の法で罰する。
武具は小中大剣。短中長槍。小斧。
細身の棍棒から自由選択。全て当国支給の模造とする。
他自給品武具の使用も処罰の対象。
本戦上位者十名に限り、当国の優待を別途受けられる。
優待は賞金とは無関係で取捨選択自由な物と定める。
優勝賞金:共通金貨五万枚
準優勝者賞金:共通金貨二万枚
三位入賞賞金:共通金貨一万枚
四位入賞賞金:共通金貨五千枚
五位以降十位迄の賞金:共通金貨三千枚
優勝者から三位入賞者には個別宝具有。
準決勝戦開催に伴い発表される。
十一位以降の者には当国審査員に依る敢闘賞、特別賞枠が有。賞金は共通金貨二千枚と粗品とする。
本戦の初戦は国賓招待、大会参戦表明者が揃い次第の開催とする。
本戦前に招待者以外参加者の予選会を行い。上位者五名が本戦枠に出場。重傷、負傷に依る進出辞退の場合は下位から順に繰り上げ昇格。
大会は男女別の二部門とする。賞金は同一金額。
女性本戦参加者が十名未満の場合、最上位からの同賞金額とする。
招待者の宿の手配、宿泊費、滞在費、交通費諸費用は当国負担。交通費等は申告制後払いとする。
予選会上位者には別途後追い支給。
※性別不明者は参加不可
※執拗な露出部、急所への打撃攻撃は反則と見なす
「俺がこんな端金に釣られると思う?」
「ロロシュ氏やお前だから言える台詞だぞそれ」
「間違い無く、大金」
シートを一通り眺めたギークが。
「クワンジアでこんな大会をやるのか。大昔よりはクリーンだな。盛んだった昔は模造ではなく真剣で。奴隷同士や奴隷と魔物を戦わせていた。主に賭博としてやる国も在れば兵士たちの鍛錬で使っていた国も在ったと聞く。
俺はメレディス南部の生まれだが。あの国が最も盛んだったらしい」
へぇ、ギークはメレディス出身なんだ。
「メレディスってどんな国なの?参考までに」
少し遠い目をしたが。
「一言で言えば陰気な国だ。エナンシャには黙っていて欲しいが俺は殺し屋の父と娼婦との間に生まれた。
綺麗な所は綺麗。汚い所は汚い。格差が激しく地域で両極端だった。俺が生まれた南部は最悪な方だ。
餓鬼の頃。俺も何人も大人を不意打ちで殺した。そんなある日突然。何が切っ掛けだったのかは思い出せないが殺し屋生活に嫌気が差した父に連れられ国を出た。母親は誰かも解らん。父に聞いても殴られるばかりでな。
三十年以上も前の話だ。今はマシになってるんじゃないかと思う。特に興味も無いから知らんがな」
随分前の話か。参考は参考だな。
「そっか。ありがと。今日は夕食どうする?食べてくなら用意するけど」
「あー悩むな。エナンシャは今城内で給仕見習いの仕事をしていてな。今頃はまだ仕事中だ。今日は遠慮して依頼の仕事期間中の楽しみに取って置くよ」
「了解。じゃあ3日後の朝にここに来て」
ギークが帰宅した後でお茶を淹れ直して。
「カーネギには詳しく話してないから解らないと思うけど大会の優勝の景品が凍土の石英だったって招待状に書いてあった」
「大丈夫なのか。そんな物敵の前にぶら下げて」
「問題無いよ。予定通り初戦敗退で行く。俺はそんな物は知らない体で遣り過ごす」
「危険な、道具?」
「そう。完成品なら超危険。でも景品は未完成品か全くの偽物。招待状が送られる直前でクワンジア内の残党が少し不自然な動きをした。間違い無く石英は敵側が流した物だよ」
「お前を釣る為か」
「そうとしか考えられない。俺かフィーネのどっちかに優勝させて取らせる気だ。武具の使用を禁じたのはクリーンアピールだけど。大盾まで禁じたのはカーネギ封じ。
俺たちを会場に釘付けにして置いて。どっか別の場所でゴッズを必ず呼び出す。俺に宛がうなら一番強力な魔物を使うだろうね」
「めんどくっせえ屑共だな」
「俺は、今回も留守番?」
「残念ながら。大会中は外に出るなとか妨害して来るから外でソプランたちに動いて欲しい。足の速さでソプランとアローマが適任だから。
カーネギがもし東大陸に興味が有るなら今度ミランダと合わせて連れて行くよ?」
「いい。俺はここを守る。その方が性に合ってる」
「カーネギがここに居てくれるから俺たちは安心して外に出られるんだ。新婚旅行行けないのは申し訳ないけど」
「前の休みに、マッサラとハイネに行って来たから。今はそれで、充分」
ニッコリ笑った。珍しい。
「俺らの訓練何だったんだ。大会参加すんのかと思ってたのによ」
「東で頑張れ。頼りにしてる。場合によってはクワンを公開してもいいしさ」
「まあ痕跡見付けるまでだしな。どうせ指輪の位置は追えるしよ」
「トイレからアローマに連絡してみたり」
「笑えねー」
空笑いで空回り。実際は予想が当たらない方がいい。
ベースが強力なゴッズだなんてどれだけの被害に成るのか想像するだけで気が滅入る。
切り替えて夕食の準備でも始めるかと立ち上がると。
「言い忘れてた。隣の傷薬良いの出来たらしいぜ。とは別になんかお前に相談が有るってカメノス氏が言ってた」
「何だろ。今日は半端だから明日の午前に行こうかな」
その日の夕食はフィーネがラフドックで買って来た魚介と豚肉とたっぷり野菜で寄せ鍋と白飯。〆はおじやでデザートは蓬団子でフィニッシュ。
夕食後にロロシュ氏と温泉郷事業の進捗確認と打ち合わせをして就寝。
もう既にラッハマからの街道の構築段階に入ったとか早過ぎでしょ。
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翌日午前にお隣へ行き。ペーラシルちゃんをおっかなびっくりで抱かせて貰い、カメノス氏と打ち合わせ。
「何か俺に話が有るとか」
「それなんだが。少し待ってくれ」
呼び鈴を鳴らして持って来させた瓶には見事な黄金色の液体と深紅の液体が入っていた。
「まあ飲んでみてくれ」
2種類グラスに注がれ。黄金は発泡性。紅は普通。
爽やかな林檎の香りと甘み。紅の方が甘みの強いシロップのようだった。
「シードル出来たんですね」
「甘ーい♡」
「二種類の青林檎の方は美味い具合に発砲したんだが。赤林檎の方は樽が駄目になってしまい。捨てるのも勿体ないと醸造樽から蒸留させてみた。
初期は酸味が強かったが一冬越して見てみると赤ワインのような深紅色で甘く変化した。どうだ、この方向性で合っているか。
ペルシェが酒が飲めない時期で私以外誰も味見が出来なくてな」
「これはカルバトスか…。大丈夫です。青も紅もこのままの方向性で」
「カル?何だって」
「いえ。昔本で読んだ地名です。この赤林檎は何処で取れた物ですか」
「マッサラの南。サボテン畑の更に南の果樹園だ。青林檎はハイネの西の果樹園になるな」
「商品名って決めました?」
「味見とそれを聞こうと思って呼んだのだよ」
一応隣のフィーネを見る。
「付けたい?」
「うーん。これはスタンの発案だしなぁ。今回はお譲りします。聞いて酷かったら私も考える」
責任重大。
暫し考察。ストレートに地名じゃ芸が無い。
マッサン…。どっかから怒られるな。
アップルって英語ばかり多用しても通じないしな。
「青はハイネーブル。紅はマーテリヌ。でどうっすか?」
カメノス氏とフィーネを交互に。
「…いいな。記憶に有る地名にも被っていない」
「やれば出来る子ですねぇ」
褒められた。
「ではハイネーブルは醸造樽から瓶詰め。マーテリヌは蒸留酒の方向性で」
「こちらの瓶は頂いても良いですか?」
「うむ。方向性はそれで。瓶は持ち帰りロロシュ卿にも試飲をして貰ってくれ。一応果樹園の共同経営者だからな」
「品名伝えて感想聞いておきます」
話は終わったかと思えばカメノス氏が姿勢を正して。
「ここからは薬の方の話だ。傷薬の外用薬、内服薬の改良は順調。来月は新装品を持って行ける段階だ。多くは用意出来ないが忘れず取りに来てくれ。
昨年提案してくれた点滴も臨床段階に入った。実用は早くて来年。
でだ…。強化剤の件だが」
チラチラフィーネを見て言い辛そう。
「若い夫婦には必要の無い効果がどうしても取れない」
「…あっちが元気になっちゃう奴ですか?」
「あらまぁ。恥ずかしいですわ…」
口調が変で御座いますよ。
「副作用を抑えようとすればすればする程にそちらの効果が顕著に上がってしまう有様だ。本来求めている効能は強壮剤の強化版程度。…念の為。研究棟の年配と若手の夫婦に試して貰った所。男女共に三日三晩…止まらなかったらしい」
「あれまぁ。もういっそ強化剤取ってそっちの薬として売り出せばどうですか?ボロ儲けですよ」
「振り切っちゃった…」
「開発者としては何とも悩ましい結果だが。強化剤を止めてしまっても良いのだろうか」
「良いですよ。最近必要無いかなぁと思い始めてた所でしたし。そっちの薬も欲しがる人は大勢居ます。闇で流れるような薬に手を出すより余程安全です。
ただ三日三晩は行き過ぎで年配者には心臓に悪いです。
持病を抱えた人だと最悪死亡します。
薄めるなりして少し元気になるなぁ程度に抑えて。悩める人に処方するのはどうでしょうか」
「正統な医薬品として」
「封印する位なら薬として転用するか…。薄めて行けば原価も抑えられる。成程良い案かも知れない。
良い話が出来た。昨日フィーネ嬢には忙しそうだったし直接聞き辛くてな」
「スタンが居なかったら即刻廃棄でとか答えていたかも知れません。正しい判断です、として置きましょう」
数年後に完成したこの薬がカメノス財団を飛躍させ。世界一の座を勝ち取る起爆剤になったのは言う迄も無い。
共同発案者の俺にもガッポリ…。
林檎のお酒に合う料理って何だろうと2人で話ながら買い物を済ませて自宅に戻った。
お昼に焼き鮭ご飯を食べながらも。
「駄目だ何も浮かばん。ステーキ以外」
「私も。食事と言うよりもアップルパイしか浮かんで来ないよ」
「「両方だ!」」
厚手に切ったステーキ牛肉と竜肉をハイネーブルに。
厚切りにスライスした赤林檎をマーテリヌに漬け込んだ。
冷蔵庫に突っ込んで侍女3人とソプランを呼んで山葵を植えた沢まで飛んだ。
山葵が根腐れした箇所は木々の切れ間。やはり日照が原因だった。
「地質と言うよりも根本的に植えた場所が悪かったな。駄目になった場所は強い日差しが差し込む木々の切れ間だ。
隙間から風も当たって余計な温度変化も生まれた感じがする」
「そうでしたか。勉強になります!山葵はデリケートなんですね。綺麗な水辺でしか育たないなんて」
プリタが懸命にメモを取っていた。向上心旺盛ですな。
「3割は回収して残った半分を木々に囲われた場所に移そうか。余り木の根に近いと虫に食われるから適度な場所を探して…」
早くもプリタが手を振る。
「ここなんてどうですか?適度な石も在るので階段沢も造り易いかと!」
フィーネが残念そうに。
「これに関しては出る幕ないわ」
そこは植えていた対岸より少しだけ下った場所。
「いいねぇ。木も良い具合に傘になってる。あー最初植える時あんま上見てなかったなぁ」
「配置図起こしてロロシュ様に伝えて置きますね」
「宜しく!」
「楽しそう…」
「フィーネ様。震える程嫉妬されなくても」
「仕事の話してるだけだろ?」
「気晴らしに移設作業に没頭しましょう。ね?」
知らぬ間に嫁の怒りを買い、夜寝る前にネチネチ言われてしまった。気を付けます。
移設が終わって今度はフィーネと造った露店風呂を見に行った。
「「あぁ」」放置すりゃそうなるよね。
岩は崩れ、水溜りと積もった木の葉と砂や泥が一杯。
「どうする?掃除しちゃう?」
「直しても頻繁には来れないしねぇ。本格的に建造が始まったら邪魔だし」
諦めますか。あの日限定の露天風呂。
思い出は夫婦とクワンの胸の内に。
簡易的に通した水路を遮断して本流に戻し、虫が湧かない程度に岩を退けて地面を均して帰った。
夕食は塩茹で温野菜と林檎酒漬けのステーキとアップルパイ。
ステーキのディップは大蒜風味のトマトピューレ、山葵醤油とタルタルソース。
アップルパイは無塩バターを使い砂糖控え目。
ロロシュ氏とシュルツを呼んで。
「どうっすか。ハイネーブルに漬けると牛肉は柔らかく濃厚な竜肉もさっぱり寄りになってお酒に合うでしょ」
「マーテリヌ漬けのアップルパイも塩と砂糖を控えてデザート感を抑えました」
「うむぅ。この酒の酸味と甘みで旨味を引き出すとは。相性が悪い筈が無いな。美味い」
クワンとシュルツにはアルコールを飛ばした2つの酒を摺下ろし林檎ジュースを飲んで貰った。
「美味しいです!酸味が加わると酸っぱくなるだけではないのですね。お料理は奥が深いです」
作業疲れも何のその。シュルツの目は輝いていた。
グーニャは深皿で酒を交互にペロペロ。強い…。
普通の猫なら死んじゃうぞ。
「果樹園の区分けや選別も徹底して酒用と食品販売用で拡張すれば売り方も様々。ハイネーブルの熟成は頭打ちしてもマーテリヌの蒸留酒は熟成し放題。商品として売り出せるのは来年以降ですが引退後のお楽しみが増えたのでは?」
「余計な世話だ。だがそうだな。そう言う趣向も悪くないと思える。温泉郷の目玉にも使えそうだ」
「いいかもしんないですね。露天風呂に浸かりながら冷えた林檎酒を。…これぞ大人の楽しみ」
「止めてスタン。今直ぐ飛んで掘りたくなるから」
少し離れた席のソプランとカーネギは。
「甘い酒に甘い物。おかずや摘まみになるのか不安だったがこの組み合わせはいいな」
「もう、もぐ」口に入れ過ぎ。
「無理して喋らないで下さい。怒られますよ」
「明後日から鍛冶工房に缶詰になるんで明日はゆっくりさせて貰います」
「君は本当に色々な物に手を出すな」
「多くを知り、そこから何かを生み出す。日々勉強。
自分で体験して学ぶのが一番。商人に限らず、農民、漁師その他。文化が発展して行くってそう言う物じゃないかなって思って」
「わしも後三十若ければな…」
感慨深げな顔をして。
「まだまだこれからっすよ。長生きして下さい」
「格好付けちゃって。男くっさい工房に差し入れに行く私たちの身になってよ」
「ごめんちゃい。ちゃんと毎日お風呂には入るから」
「お願いします」
「ソプランもですよ」
「わーってるよ。汗塗れで寝られるかよ」
「カーネギも」
「身体、絞れるかも」一人別方向。
「私も見学に行っても良いでしょうか」
「私も覗きたいです!」プリタは何か路線が微妙。
「工房の造り次第かな。覗き窓とかあれば大丈夫だと思うけど。あんまり俺の関係者が頻繁に出入りしてると怪しまれるから程々にね」
「「はい!」」
夜な夜な無人島に赴いてフル装備でメイルをブツ切りにした後。
「完成品の複合金属をぶった切るしんどさは理解した」
「中々骨が折れますねぇ。勉強になったわ」
「敵から奪った通信器どうしよ。溶かす?」
「あぁどうしましょ。勿体ない気もするし。他の部品や自分用のコインも欲しい…」
義眼の粉砕品だけでは僅か。
帝国で奪った相互通信器はたったの3個。魔力を入れ直せば専用器にも出来てしまう
「義眼の破片と通信器1つだけ溶かしてみるか」
「まー2つ有れば使えるしね」
前回の通り霊廟盾の裏を利用して2種を溶かして不純物を取り払った。
取れたのはコインにして10円玉サイズ。前回の500円玉より一回り大きい物とは雲泥の差。
「しかも薄い」
「これじゃ求める精度は出せそうにないね」
試しに小袋のコインを入れ替えて念じてみたが無人島の半分位までしか見えなかった。
「この島にはなに…も…」
「ん?あったの?」
コインを大きな方に入れ直して違いを試し、隣の島まで探知範囲を広げると。今居る島の中央部に小さな点が見えた。
思い返せばここ一帯はクインザに捕えられた人質たちが監禁されていた場所でもある。道具が転がっていても不思議じゃない。
洞穴の中かと言うとそうでもなく。探って行くと山なりの地表側。更に探すと大木の枝に大判のコインが引っ掛かっていた。
共通金貨を超えて王国金貨並。直径7cm程。厚みは5mmはある。純ペラニウムだとするとかなりの量。
「見た事も無い図柄だ」
「私も知らない」
文字盤は無いが剣と盾が交差して浮き出しレリーフ調の紋様が両面に描かれていた。
名前:風雪の円盤
性能:同種金属の探知に優れる
特徴:とある場所の扉を開くオブジェクトキー
「とある場所てなんやねん!」
「勿体付けて。明日シュルツの眼鏡借りましょ」
そうしましょ。
---------------
絶賛左手袋を解析中のシュルツ工房にお邪魔して。
眼鏡を借りて拾ったコインを鑑定。
とある場所は何と!
特徴:魔王城、隠し迷宮入口の扉を開く鍵
「「はい?」」
なななななんですって!?
「魔王様が居るなら城が復活してるのも解るけども!」
「どうしてその鍵がここの南にあるのよ!」
「お兄様もお姉様も五月蠅いです。集中しているのに。
前の勇者隊の生き残りの冒険者の何方かが南側の大陸に渡ったのではないですか?」
賢い!
「「御免なさい…」」
そして有り難う。
「ではごゆっくり。マウデリンの精錬は時間掛かるから」
「お邪魔しましたー」
「お待ち下さい。実は手袋の解析は終わっています。変更方法も概ね掴めました。ですがこの紋様。このグルグルした山菜のゼンマイのような形の意味が解らないのです」
唐草模様のこと?
「えーっとね。多分なんだけどね」
「とても良い難いけど。その模様の形に意味は無いの」
「え…。え!?時間を無駄にしました…」
「ごめん!最初に伝えるべきだったな」
「ごめんね。ポイと渡した私も悪かったわ」
「いえ、大丈夫です。失敗を積み重ねてこその成功。
深掘りしても何も無い事もある。良い教訓になりました。
転移手袋の構造は単純です。この左右対称の模様に微量のマウデリンが含まれていて転移スキルを持った方が長い年月を掛けて全体に魔力を練り込んだだけで。
形に意味が無いのなら上書きを施すだけで済みます。身近な方だとペリーニャ様。ですが短時間で上書きするには魔力が足りません。保有量が桁違いのお姉様も協力して補えば一回で済むかと思います」
賢いのぉと2人で撫でた。
「スタンが籠ってる間にペリーニャの所へ行くわ」
「これが上手く行くなら。マウデリンさえ持っていれば転移道具が量産出来る事になってしまう」
「口外すればまたシュルツとペリーニャが狙われる。欲張らずに此れっ切りにしないと」
「所持するだけで使えるようにする為に手袋部の皮がその機能を助けています。同じ物は作れません。此れっ切りにするならマウデリンの含有率を上げてからにしてはどうでしょうか」
「明日から出る端材を合成してからか」
「一理有るわね。慌てずスタンの作業が終わってからにしよう」
次に完全擬態道具の改造に取り掛かると言うので邪魔に成らない様に退散した。
「アローマさんも。秘密ばかり増えちゃって御免ね」
「何の事でしょう。私は今外を眺めて耳を塞いでおりました故、存じ上げません」
遂に現実逃避をし出した。
自宅に戻りリビングで緑茶を頂きながら。
「お昼から暇やね」
「のんびりするか。カジノでも覗きに行くか。何かシュルツへの差し入れとおやつ作るか」
「のんびりおやつでも作りますか。フィーネは何か食べたい物ある?」
「お餅搗いてる程の時間は無いし。簡単に苺ジャム…を作るとレイルが発狂するし。これって言う物が無いなぁ」
クワンが挙手(翼)アピール。
「蛤の甘露煮か檸檬タルトが食べたいです」
「今年に入ってから作ってないな」
「甘露煮は贈答用と一緒に来週作るとして。檸檬タルト作っちゃおう」
ご当地檸檬は常に購入して在庫が豊富。
綺麗に洗い蔕と尻をカットして外側の皮をざっと削る。
スライスして種を外し、ハイネーブルとメープルシロップに漬け込めば準備は終了。
漬けている間に豚肉味噌炒めを作って昼食。
一休みして生地作りを始めようかとした頃に本棟からミランダが手紙を持ってやって来た。
「モメット様からギルド経由でお手紙が」
「モメットから?」
「急ぎかしら」
急いで手紙を開き。
「~本文~
急ぎなので挨拶は省きます。
大至急ロメーランの商業ギルド迄。
居なければ近くの宿で待機しています。
内容は書けません。
~愛しのスターレン様♡の心の恋人より~」
「何時から恋人になったんじゃ!フィーネ頼める?
明日から肉体労働なのに疲れたくない…」
「しょーがないなぁ。ミランダさん時間あったらタルト作り手伝ってあげて。ベタベタしちゃダメよ」
「畏まりました。お気を付けて」
偽装用の外嚢を羽織りフィーネが転移で飛んだ。
---------------
ロメーランの外から入場して商業ギルドに向かった。
タイラントと殆ど時差が無い為、同じ昼下がり。
帰りにトマトと苺でも買って帰ろうかと考えながら少しだけ町内を散策。
町の人々の様子は特に以前と変わりない。
商人や町人は笑い合い、巡回の衛兵が増えたと言うことも無さそう。
緊急案件とはなんぞ。
ギルドを訪ねてみるとモメットさんは不在。
紹介された宿屋に行き、泊まっている部屋の扉をノックした。
「は~い♡」
明るい返事で開けてくれた彼は私を見て朱ら様にガッカリ肩を落とした。
「私じゃ不満なの?」
「急ぎって書けばスターレン様が来てくれると思ったのにぃー。お会いしてお喋りすら許して下さらないんですか」
「ちょっと今日は都合が悪かったの。明日から重要な仕事が入っちゃって体力温存中。今度は連れて来るから」
外嚢を外して小テーブル横の椅子に座ると。
「あらまぁ凄いコート。暑くないんですか?」
お茶を運びながら私のコートに驚いていた。
「いいでしょ。これ見た目より暑くないの。年中世界で使えるのよ」
「へぇ~。それよりもお話お話と」
話だそうとした彼に向かって私は指を口に当てて黙らせ風雪の円盤を握り絞めた。
こう言う道具の使い方はスタンよりも得意ではないが問題無く反応を示してくれた。
ペラニウムの反応が無いのを確認し終え、安心して話を振った。
「最近盗聴器を何処にでも仕込む奴らとばっか戦ってるから調べてた。この宿には無いみたいだからどうぞ」
「こわーい。私も気を付けなくちゃ」
多分きっと大丈夫。
「お話と言うのは他でも無く。今ニーナ様が居る島のお話です。ニーナ様も島の方々も平穏無事。
定期的な日用品などの運搬も滞り無く。ただ…又しても余計な事と言いますか。
以前スターレン様から依頼を受けた時に山を掘れば何か出るかもと言われたのが頭から離れず。前回の運搬時にニーナ様とサドハド様とで集落から一番離れた小山を少しだけ掘ってみたんです。スコップで上っ面を」
「ほうほう」
何か出たな。
「私の引きが強すぎたのか、出ちゃったんです。大きなペラニウムの鉱石が」
「なんと!モメットさん知ってたの?」
「一応知識だけは。白銀で硬く、驚く程軽いって言えばそれしか無いですもの」
「なるほろ。それでその石は?売っちゃった?
この部屋には無いみたいだけど」
「売りませんよぉ。怖くて怖くて。島から持ち出してもいません。希少な金属と呼ばれるペラニウムがかなりの量埋まってますね。国に知れたら一大事です」
「ニーナさんたちにはペラニウムの説明は」
「してません。これはスターレン様の物だからと近付かせないでとお願いしてあります」
今まで敵に見付からなかったのが奇跡だ。
長く放置は出来ない。
「今から出られる?島に飛ぶから案内して欲しいの」
「わっかりました」
モメットさんと市場で適度に食料品を購入。
町を出て人目が切れた場所で赤マントに着け替えて一緒に飛んだ。
到着地点は海岸の砂地。
そこから集落に入り、ニーナさんに食糧品を配達。
「住民の人たちは健常?病気とかなら薬置いて行くよ」
「今の所問題無いですね。真冬に風邪が少し流行りましたが救援物資の薬とどくだみ茶で乗り切れました」
「良かった。モメットさんと見付けた石を拾いに来たの。
誰か近付いた?」
「いいえ誰も。お急ぎですか?」
「かなり。島の平穏が脅かされる危険な石よ。サドハドさんも一緒に来て。詳しくは道中で話す」
「は、はい」
スコップを持って小山を越えた。
敵が欲しがっている金属で遠方からでも同種金属の探知道具を使えば位置が丸解りだと危険度を話した。
「放置したままだと確実に敵が大挙して押し寄せるわ。
出来る限り回収してく。
外に情報が漏れれば国まで敵に回る。最悪島民全員皆殺しよ」
「そ、そこまで危険な物だったとは」
決して脅しじゃない。それ位の代物だ。
「ここです」
モメットさんが指した先には掘り返した跡。
「少し下がってて」
3人を後ろに下げて円盤を握った。
…島の北東全部じゃない。私が今持ってるインゴットだけではとても隠し切れない。
スタンに通話。
「とっても拙い状況よ。サドハドさんの島に北東の小山あるでしょ」
「…あったね」
「この山全部ペラニウムが埋まってる。持ち帰れない。
隠し切るには今持ってるインゴットの3倍は必要。
どうする?ここで作る?それとも一部持ち帰って無人島で作る?」
少し間が空いて。
「そこで作ろう。必要な大きさが曖昧だ。無効化範囲にも上限が有るかも知れない」
確かに言う通りだ。
「ごめんね。お休み中なのに」
「非常事態なら仕方ないよ」
スマホを切って振り返り。
「今からスタン連れて来てこの場で作業します。
見てもいいけど長生きしたいなら見ないのをお勧めする。
モメットさんは今直ぐ帰る?後でいい?」
「今直ぐ帰りますぅ…スターレン様に会えないのは残念ですが」
「また今度ね」
モメットさんを連れて町の手前に届け自宅へ飛んだ。
リビングに着くとタルトが焼ける甘い匂いが。
クラッとして心が折れそう。出来れば焼き立て食べたかったな。
「大丈夫。今丁度焼けたとこだ。切り分けて向こうで食べてから作業始めよう」
「良かった♡」本心が漏れた。
自分たちの分をお弁当箱に詰めて。
「ミランダさん。残りは皆で分けて。帰りは解らないけど本棟で夕食お願い」
「はい。お気を付けて。お風呂の準備もしておきますね」
「ありがと。行って来ます」
島に戻った後シート敷いて甘酸っぱい檸檬タルトを食べてスタンが出したバスタブに小川で水を汲み。
「クワンティ。周辺海域空から見てて。グーニャは島内の人の動きに注意。近くに誰か来たら教えて」
「クワッ」
『ハイニャ!』
2人で可能な限り山の原型を残しながら掘り進め。ある程度鉱石が溜まった所からスタンが溶かし、私がバスタブの中で冷やしながら成形。
段々と台形インゴットを大きくして行った。
スタンが睨んだ通り無効化出来る範囲には限界が有った。
元々作っていたインゴットの2倍強まで。
それ以上大きくしても厚みを変えても範囲は変わらず。
出来上がった最大インゴットは合計23本。
終わった頃にはどっぷり日が暮れていた。
隙間だらけになった小山を最後に達磨落としで崩し、大きな木々だけ植え直して整えた。
スタンと背中合わせでへたり込み。
「終わったー」
「何とか遣り切れたな」
強壮剤を飲み合って。
「「山神様、御免なさい!」」
お祈りを捧げて立ち去った。
ニーナさんたちに腫瘍は全摘出来ましたと伝えて帰宅。
リビングに戻るとミランダさんとアローマさんの姿が。
「お帰り為さいませ。お二人共泥だらけではありませんか」
「人手が必要だったなら連れて行って下されば」
「今日はお休みって言っちゃったからね」
「明日からの良い予行演習になったよ。山掘りからやる鍛冶屋は居ないだろうなぁ」
「結局邸内で待機していますので変わらないのですが。
お食事は本棟からホワイトシチューを運んでおります。さあお風呂へどうぞ」
「ごゆっくり」
「「ありがとー」」
人の優しさが暖かいです。
現在5月中旬。出発までざっくり4週間。
帝国で購入出来たお土産の1つ。蓬(ヨモギ)
早速蓬団子を作りながら、4匹貰えた子持ち鮎を塩焼きにして奪われる前に腹に収めた。
陛下に報告に行っている間にフィーネがホテルの予約と指針のブローチ複製品の相談にシュルツの所へ。
後宮に居た陛下にメイザーとキャルベを呼んで頂き、4人でお団子を食べながら紅茶を啜った。
「いやぁ美味い。報告忘れそう」
「忘れるな。美味いがな。この鼻に抜ける爽やかな香り」
「ミントではない柔らかい香りです」
「かなり前に帝国で食した、ような気が」
「余りはこっそりミラン様たちと食べて下さい。後でフィーネがメルシャン様に確認するんで食べ尽くしちゃ駄目ですよ。では」
次に手を伸ばそうとした3人が止まったのを見て。
マッハリア北での出来事から順を追って説明した。
残党の一派を倒し、ハルジエと出会い、現皇帝と共闘して前皇帝の娘、教団幹部アンフィスが率いていた帝国方面は粗方潰し切れたと。
そう言えば昨日ハルジエとスタルフがお茶会してる所に割り込んでしまったな。大丈夫だっただろうか。
「北の大陸ではフェンリル様の他にも教団が狙っている石を守る守護者が居ますので帝国方面は無視出来ます。
アストラ様を始め帝国の総力を以て残党狩りをすると誓って頂きましたし」
メイザーが首を呆れ気味に振り。
「相変わらず尋常ではないスピード感だ。ロルーゼの分割化の話は任せてくれ」
「お願いします。一応スタルフと父上には内容を伝えてあるんで話は早いかと」
「ふむ」
「そしてここからが本題ですが」
自分も邪神召喚の生贄候補に入っていて道具の1つ緋色の結晶石を発見して昨日塵も残さず消し飛ばしたと。
「お前まで候補…」
「危険度としてはペリーニャと同等レベルかと。将来必ず行く西大陸で罠張っていれば私がノコノコやって来るんですから。他の候補者の奪取に本腰を入れてないのも納得です。
私かペリーニャを捧げれば極限に取るのが難しい北大陸の石英は不要に成りますので」
「どうして不要に成るのかは聞かぬが。それでは少々厄介だな」
「何故にでしょう」
「これを見よ」
陛下が差し出した1枚の招待状。
「~本文~
クワンジアのピエールだ。
本年七月中旬に当国王都で闘技大会を開く。
先だって交流を所望している貴国の外交官シュトルフ夫妻を大会の目玉として招待する。
優勝の褒美として、凍土の石英と呼ばれる貴重な宝石を用意している。
是非とも参加させて欲しい」
これか…あの直前の変な動きは。
「これは罠ですね。この石英は私を確実に誘き出し、存在を把握しているかの確認です。
相変わらずピエールは頭が悪い。教団の手先に成っているとも知ってか知らずか。正式文書でヘルメン陛下への挨拶文を抜くとか(笑)教養も無いのでしょうねぇ」
「属民は可哀想に思う(笑󠄁)で、どうするのだ。参加可否の返信は」
「予定通りに参加します。ピエールが完全に教団の手先だった場合はクワンジアを壊滅して来ます」
「涼しい顔で恐ろしい言を吐くな。まあお前なら一般人まで巻き込まないとは思うが」
「大丈夫ですよ。王都が崩壊して国が割れても良識有るモーランゼアとアッテンハイムで吸収出来ます。国の規模がアッテンハイムと逆転しても、根幹には正しい女神教が居ますので寧ろ国民は喜ぶのではないかなと」
「ふむ。そこまで考えているなら任せよう。返事は近日に送る」
キャルベが渋い顔。
「国割りまで行ってしまうとメレディスがどう動くのか」
「その点は確かに微妙ですね」
「私が前皇帝に呼び出されていた時も。メレディスが大陸北西を占める大国であるにも関わらず。殆ど情報が取れなかった謎多き国だ」
思わず腕を組んで唸ってしまった。
「そうですか…。まあ秘策は幾つか用意してますんでクワンジア滞在中に何とか情報を集めてみます。ゴッズを呼び出せる指輪の最後の1つが難点ですが」
微妙な空気になってしまったが頑張りますと締めて報告を終えた。
---------------
こっそりホテルの予約をラフドックに直接取りに行き、6月上旬の1週間が取れた。良かったぁ♡
自宅に戻り蓬団子をシュルツに渡した序でにアローマさんも連れて工房に向かった。
身長が少し伸びたシュルツを膝の上に抱えながら指針のブローチの相談をした。
2つを並べて手に取り、四つ葉眼鏡で鑑定。
「むー。形状は酷似していますが。
配合率の問題でしょうか。お姉様が作られた方はペラニウムの純度が高すぎるのだと思います」
シュルツの肩越しに一緒に眺め。
「複合型は純度を落とさなきゃいけないのかぁ」
「形状はそれ程拘らなくても良いと思います。他に何か伝導性の高い素材や魔力を込められる金属を配合して。
念話が得意なお兄様やペリーニャ様が魔力を封入すれば完成するのかと」
お!マウデリン鉱石が有るじゃない。
肩に乗っているクワンティに収集物を幾つか出して貰い作業台に並べた。
シュルツが丁寧に鑑定。
「マウデリン…。良いですね。理想的な金属です。
これもスマホに使われていると見て間違いないかと。
制作者のベルエイガ様が魔力を封入したのだとすると合点が行きます」
「成程。賢い!」
思わず頬をスリスリしてしまった。
「擽ったいですよ。ですがこのまま砕いて合成してしまうと余計な不純物が混入してしまうので精錬が必要です」
「それなら問題無いわ。専門家の知人の所にスタンが行くから後で聞いてみる」
次に唐草手袋のご相談。
「1000人運べる義眼の転移道具を無くしちゃったから何とかこれと同じ物作れないかな。1つで良いのだけど」
手袋の鑑定には少々時間が掛かった。
「これは難しいですね。恐らくこの構造も大全集の最終巻に記載が有りそうです」
「そっちが先かぁ…」
「こちらは分解出来ませんので。使われていない左手用を解析させて下さい。相反する機能でも基本構造は同じですから何か掴める筈です」
「左手は今スタンが持ってるな。それも後で渡すね」
「はい!」
話が終わったのを見たアローマさんが。
「フィーネ様。スターレン様がお帰りになってからでも良いのですが。温泉郷の候補地に一度行って頂けませんか」
「何かあったの?」
「はい。一度ロロシュ様と護衛隊とで候補地の下見に向かったのですが。スターレン様が源流下手に植えられた山葵が一部根腐れを起こしておりまして。そちらはプリタが除去しましたので問題無いと思われますが。プリタ曰く地質が合っていないのではないかと」
植えただけでは駄目だったのか。
「ありがと。伝えて置くわ。源泉近くで水を汚しちゃ拙いし早めに対処する」
「お願いします」
帝国でゲットした500km双眼鏡をシュルツに渡し。
「これも私の双眼鏡の上位版だから。防水加工のお願いをしたいのと…。エッチなスタンに渡すのは悩ましいけど透視機能は潰さないで。これからはその機能も重要になりそうだから」
「…悩ましいですね。とても、非常に潰したいです」
アローマさんも不安げ。
「何とか成りませんか?最悪、一万歩譲ってスターレン様になら見られても諦められますが。落として他の殿方に奪われた時の事を考えると…」
「おぉロストした時の事までは考えてなかった。対象が女性限定で見えなくするとか…は意味が無いな。どうしよ困った」
「破壊覚悟で改造します。何とか両立出来るように。
手袋の次に頑張ります!」
「お願いします!」
結局丸投げしてしまった。
次に擬態の金チェーンネックレスを取り出した。
「これは性別までは変えられないけど声も見た目も服まで完璧に模写出来る擬態道具なの。運良く敵の秘密兵器奪い取れたから。複製不可能な形に改造お願い。壊しちゃっても良いからね」
「はい!三番目に挑戦してみます。暗黙のクリップの予備が有れば下さい」
前回の水没で取れた物を、はいどぞー。
「アローマさん。他には何かあった?」
「他はライラ様のご予定日が近いのと。クラリア様が私も何方か紹介して欲しいよぉと仰っていたのと」
あんたもかい。もう未婚の知り合い居ないよ…。
「再来週にデニス様のお店で合同婚礼パーティーをと計画されていた所。噂を聞き付けたカメノス様が会場を貸すと言い出し。ロロシュ様が奪わせるものかと抗議し。ノイツェ様がいやいやメドベド様が居るのだし、初回のお見合いは当家でやったんだから会場は家でしょと苦言を」
「ややこし!」
「非常に難航しております」
「解ったそれは私がガツンと言って来る。ノイツェさんのペアとメドベドさんのペアが被ってるんだから。もうそれはガードナーデ家でやるしかないでしょ。1区でやれば集まり易いし。クラリアさんは…考えとく」
スルー出来るかなぁ。
帰宅したスタンに鑑定結果を伝え。本棟で昼食を頂いて帰還報告と水竜様にお参りをした。
私は午後から3軒の邸宅とデニスさんの店を往復して走り回る羽目になった。
---------------
山葵が根腐れを起こしていたのは無念だ。
プリタに詳しく状況を聞いて何となく予想は付いた。
多分水温と水量。風当たりや日照などの立地条件と思われる。
手袋はフィーネが持ってるから明日にでも行く。
序でに人が居なければ温泉にも入っちゃおう。
…プリタも行くから無理だった。いっそ水着で混浴に、は俺のマイサムが堪えられそうにない。
男女別の風呂と更衣室を設ければ行ける!
「明日現地に行ってからお考えを」
ロイドちゃんもご一緒に。
「無理ですね。フィーネさんと手を取り合いながらのお風呂など現実的では有りません。それとも私の身体の基本造形をスターレンが造ったとバラされたいのですか」
前言を撤回させて頂きます。
「真面目にやって下さい。そう言う所から浮気は始まるのですよ」
べ、勉強になります。
気持ちを改めている間にデニーロさんの武器屋へ到着。
「ちわっす。久し振り」
「おー来た来た。お仲間が買い物に来るだけで大将は二度と来ねえと思ってたぜ」
「ちょっと忙しくてさぁ」
店内に他の客が居ないのを見て。
「ちょっと奥で込み入った話がしたい。貴重な材料沢山持って来た」
デニーロの目がキラリと光った。
「いいねぇ。そう来なくちゃ」
直ぐに店を閉め、カウンター奥の商談室に入った。
見せろと言われる前に床にフルプレートメイルを寝かせテーブルの上に鉱石を並べた。
小粒の鉱石を掴み、片眼鏡で鑑定。
「マ…マウデリンじゃねえか!!??」
腰を抜かしたのをロープで支えた。
「ビックリした?」
「び、ビックリなんてもんじゃねえ!」
「床に置いた鎧にも混じってる」
「ホントか!鉱石もこんなに…。何処でこ、いや駄目だそれは聞かねえ。まだ死にたくねえからな」
「大袈裟だなぁ」
「大袈裟じゃねえよ。欲しがる奴なんて世界に五万と居るのに何処を掘っても見つからないで有名な物だぞ。
下手すりゃタイラントが丸ごと買えちまう」
「そんな高いんだ」
「大将。これは武装屋に取って生涯で一度触れるかも解らねえ夢金属だぜ。
こ、これを俺なんかにやらせてくれるのか」
「他に頼める人がデニーロ以外居ないんだ」
「う、嬉しい事言ってくれるじゃねえか!やってやる、じゃねえ。是が非でもやらせてくれ」
「取り敢えず5kgインゴットと長剣、短剣1本ずつ。それと男性用胸当て1つ位は行けるかな。足りなかったらもう少しなら鉱石を追加も出来る」
「溶かしてみねえとハッキリ言えねえが。多分余る位だ」
「余ったらそれもインゴットに。鎧はタングステンと鉄も大量に入ってる。それも分離して超硬弾丸を作れるだけ欲しい」
「ああ解ったぜ」
「高温が出せる火と炎の最上位魔石の用意は有る。何時頃から取り掛かれそう?」
「明日…は無理だった。明後日に国の倉庫に納品があるんだった。
三日後から。仮病使って幾らでも時間作るぜ」
「オッケ。裏の工房訪ねればいい?」
「おう直で来てくれ。ただ…」
「ただ?」
「人手が足りねえ。こんな代物は他の奴には絶対見せられねえ。大将は手伝うんだろうな」
「勿論。勉強したいから」
「じゃあ大量の飲料水と冷却水。塩分高めの食事も頼みてえ。後お供のヒョロイ兄ちゃんと男の力持ちを最低一人出来れば二人連れて来てくれ」
「男?フィーネなら力有るけど」
「嫁さん上半身裸に剥けるのか?」
おー成程。
「ごめん無理だわ。食糧と人員は何とかする」
「工房内も灼熱地獄だ。換気も最低限。炉の状況を見ながらになる」
「室内温度だけなら調節も出来るけど」
「大将。金属加工を嘗めちゃいけねえ。炉と材料と己との対話なんだ。温い考えしてると出るのは粗悪品だぜ。
他の材料なら兎も角。マウデリンに魂込めたいなら猾はしちゃいけねえよ」
魂か、職人さんだ。
「これはこれは失礼を」
「大将が何時かタングステン持って来るんじゃねえかと工房の設備一新しといて良かったぜ。マウデリンはその少し上だった筈だ。熱くなるぜぇ」
楽しそう。
「楽しみにしてるよ」
「期間は四日から一週位は見といてくれ」
「了解。鎧は明後日までに適度にブツ切りにしとく」
「サラッととんでもねえ事言ってるが大将なら納得だ」
高らかに笑い合って荷物を片付けて冒険者ギルドに居たギークを誘って帰宅した。
自宅リビングにソプランとカーネギを招集して3人にアルバイトの仕事内容を鉱石を見せながら説明。
「多分ギークなら知ってると思うけど。これに関しては秘密厳守で。予定は3日後から1週間前後。水や食糧はこちらで支給。お風呂は本棟の大浴場を借ります。
報酬は1日1人金百枚。どう?ギークやってみない?式の準備で忙しいなら断ってもいいよ」
「国が動く程の希少金属だ。喜んでやらせて貰う。
式なんて大袈裟な物はやらんよ。五組揃って総本堂で手続きして…多分ガードナーデ家で宴会するだけだ。
ついさっきフィーネ嬢がごり押ししてきたと教えてくれた」
フィーネの位置を見ると3区方面を移動していた。
コマネさんとこか。まさかヒエリンドをクラリアに紹介する気じゃ…まあ有り得んな。
「俺たちは」「強制?」
「警備長とロロシュさんには俺から話すよ。個人報酬が不満なら倍にしてもいいけど。それとも他の予定有る?デートとかなら隣のメンバー誘うよ?」
「どうすっかなぁ…じゃねえわ。貰い過ぎだ。半分の五十でいい」
「お、俺も。まだ戸建てを買う、予定も無いし」
「2人共欲が無いなぁ。ロロシュさんに言えば数倍に膨らむのに。ギークはそのままでいい?」
「俺も半…と言いたい所だが実は貯蓄が散財してきてほぼ零だ。そのまま頂戴する」
「じゃあ契約せ…ギークは何に散財して来たの?」
「…自棄で、カジノで溶かした」
「それギャンブルの才能無いよ。もう金輪際やらないと誓うなら契約しよう」
「やらん。エナンシャを泣かせはせん」
「言うねぇ。では契約成立っと」
サラサラと証文を3枚書いて両者のサインで締結した。
「それで造った武装でクワンジアの闘技大会行くのか?」
「んな勿体ない事しないよ。将来西大陸か東の最宮で使う積もり。それに大会じゃ防具とアクセサリー以外の武具は国が用意した模造品を使うから」
話の流れで大会ルールシートを3人に見せた。
防具は自由。但し鋭利な大盾は除く。
防御系の道具は自由。但し転移系の使用は失格。
道具に依る攻撃系、即死系魔法は使用禁止。
禁止事項を破った者は当国の法で罰する。
武具は小中大剣。短中長槍。小斧。
細身の棍棒から自由選択。全て当国支給の模造とする。
他自給品武具の使用も処罰の対象。
本戦上位者十名に限り、当国の優待を別途受けられる。
優待は賞金とは無関係で取捨選択自由な物と定める。
優勝賞金:共通金貨五万枚
準優勝者賞金:共通金貨二万枚
三位入賞賞金:共通金貨一万枚
四位入賞賞金:共通金貨五千枚
五位以降十位迄の賞金:共通金貨三千枚
優勝者から三位入賞者には個別宝具有。
準決勝戦開催に伴い発表される。
十一位以降の者には当国審査員に依る敢闘賞、特別賞枠が有。賞金は共通金貨二千枚と粗品とする。
本戦の初戦は国賓招待、大会参戦表明者が揃い次第の開催とする。
本戦前に招待者以外参加者の予選会を行い。上位者五名が本戦枠に出場。重傷、負傷に依る進出辞退の場合は下位から順に繰り上げ昇格。
大会は男女別の二部門とする。賞金は同一金額。
女性本戦参加者が十名未満の場合、最上位からの同賞金額とする。
招待者の宿の手配、宿泊費、滞在費、交通費諸費用は当国負担。交通費等は申告制後払いとする。
予選会上位者には別途後追い支給。
※性別不明者は参加不可
※執拗な露出部、急所への打撃攻撃は反則と見なす
「俺がこんな端金に釣られると思う?」
「ロロシュ氏やお前だから言える台詞だぞそれ」
「間違い無く、大金」
シートを一通り眺めたギークが。
「クワンジアでこんな大会をやるのか。大昔よりはクリーンだな。盛んだった昔は模造ではなく真剣で。奴隷同士や奴隷と魔物を戦わせていた。主に賭博としてやる国も在れば兵士たちの鍛錬で使っていた国も在ったと聞く。
俺はメレディス南部の生まれだが。あの国が最も盛んだったらしい」
へぇ、ギークはメレディス出身なんだ。
「メレディスってどんな国なの?参考までに」
少し遠い目をしたが。
「一言で言えば陰気な国だ。エナンシャには黙っていて欲しいが俺は殺し屋の父と娼婦との間に生まれた。
綺麗な所は綺麗。汚い所は汚い。格差が激しく地域で両極端だった。俺が生まれた南部は最悪な方だ。
餓鬼の頃。俺も何人も大人を不意打ちで殺した。そんなある日突然。何が切っ掛けだったのかは思い出せないが殺し屋生活に嫌気が差した父に連れられ国を出た。母親は誰かも解らん。父に聞いても殴られるばかりでな。
三十年以上も前の話だ。今はマシになってるんじゃないかと思う。特に興味も無いから知らんがな」
随分前の話か。参考は参考だな。
「そっか。ありがと。今日は夕食どうする?食べてくなら用意するけど」
「あー悩むな。エナンシャは今城内で給仕見習いの仕事をしていてな。今頃はまだ仕事中だ。今日は遠慮して依頼の仕事期間中の楽しみに取って置くよ」
「了解。じゃあ3日後の朝にここに来て」
ギークが帰宅した後でお茶を淹れ直して。
「カーネギには詳しく話してないから解らないと思うけど大会の優勝の景品が凍土の石英だったって招待状に書いてあった」
「大丈夫なのか。そんな物敵の前にぶら下げて」
「問題無いよ。予定通り初戦敗退で行く。俺はそんな物は知らない体で遣り過ごす」
「危険な、道具?」
「そう。完成品なら超危険。でも景品は未完成品か全くの偽物。招待状が送られる直前でクワンジア内の残党が少し不自然な動きをした。間違い無く石英は敵側が流した物だよ」
「お前を釣る為か」
「そうとしか考えられない。俺かフィーネのどっちかに優勝させて取らせる気だ。武具の使用を禁じたのはクリーンアピールだけど。大盾まで禁じたのはカーネギ封じ。
俺たちを会場に釘付けにして置いて。どっか別の場所でゴッズを必ず呼び出す。俺に宛がうなら一番強力な魔物を使うだろうね」
「めんどくっせえ屑共だな」
「俺は、今回も留守番?」
「残念ながら。大会中は外に出るなとか妨害して来るから外でソプランたちに動いて欲しい。足の速さでソプランとアローマが適任だから。
カーネギがもし東大陸に興味が有るなら今度ミランダと合わせて連れて行くよ?」
「いい。俺はここを守る。その方が性に合ってる」
「カーネギがここに居てくれるから俺たちは安心して外に出られるんだ。新婚旅行行けないのは申し訳ないけど」
「前の休みに、マッサラとハイネに行って来たから。今はそれで、充分」
ニッコリ笑った。珍しい。
「俺らの訓練何だったんだ。大会参加すんのかと思ってたのによ」
「東で頑張れ。頼りにしてる。場合によってはクワンを公開してもいいしさ」
「まあ痕跡見付けるまでだしな。どうせ指輪の位置は追えるしよ」
「トイレからアローマに連絡してみたり」
「笑えねー」
空笑いで空回り。実際は予想が当たらない方がいい。
ベースが強力なゴッズだなんてどれだけの被害に成るのか想像するだけで気が滅入る。
切り替えて夕食の準備でも始めるかと立ち上がると。
「言い忘れてた。隣の傷薬良いの出来たらしいぜ。とは別になんかお前に相談が有るってカメノス氏が言ってた」
「何だろ。今日は半端だから明日の午前に行こうかな」
その日の夕食はフィーネがラフドックで買って来た魚介と豚肉とたっぷり野菜で寄せ鍋と白飯。〆はおじやでデザートは蓬団子でフィニッシュ。
夕食後にロロシュ氏と温泉郷事業の進捗確認と打ち合わせをして就寝。
もう既にラッハマからの街道の構築段階に入ったとか早過ぎでしょ。
---------------
翌日午前にお隣へ行き。ペーラシルちゃんをおっかなびっくりで抱かせて貰い、カメノス氏と打ち合わせ。
「何か俺に話が有るとか」
「それなんだが。少し待ってくれ」
呼び鈴を鳴らして持って来させた瓶には見事な黄金色の液体と深紅の液体が入っていた。
「まあ飲んでみてくれ」
2種類グラスに注がれ。黄金は発泡性。紅は普通。
爽やかな林檎の香りと甘み。紅の方が甘みの強いシロップのようだった。
「シードル出来たんですね」
「甘ーい♡」
「二種類の青林檎の方は美味い具合に発砲したんだが。赤林檎の方は樽が駄目になってしまい。捨てるのも勿体ないと醸造樽から蒸留させてみた。
初期は酸味が強かったが一冬越して見てみると赤ワインのような深紅色で甘く変化した。どうだ、この方向性で合っているか。
ペルシェが酒が飲めない時期で私以外誰も味見が出来なくてな」
「これはカルバトスか…。大丈夫です。青も紅もこのままの方向性で」
「カル?何だって」
「いえ。昔本で読んだ地名です。この赤林檎は何処で取れた物ですか」
「マッサラの南。サボテン畑の更に南の果樹園だ。青林檎はハイネの西の果樹園になるな」
「商品名って決めました?」
「味見とそれを聞こうと思って呼んだのだよ」
一応隣のフィーネを見る。
「付けたい?」
「うーん。これはスタンの発案だしなぁ。今回はお譲りします。聞いて酷かったら私も考える」
責任重大。
暫し考察。ストレートに地名じゃ芸が無い。
マッサン…。どっかから怒られるな。
アップルって英語ばかり多用しても通じないしな。
「青はハイネーブル。紅はマーテリヌ。でどうっすか?」
カメノス氏とフィーネを交互に。
「…いいな。記憶に有る地名にも被っていない」
「やれば出来る子ですねぇ」
褒められた。
「ではハイネーブルは醸造樽から瓶詰め。マーテリヌは蒸留酒の方向性で」
「こちらの瓶は頂いても良いですか?」
「うむ。方向性はそれで。瓶は持ち帰りロロシュ卿にも試飲をして貰ってくれ。一応果樹園の共同経営者だからな」
「品名伝えて感想聞いておきます」
話は終わったかと思えばカメノス氏が姿勢を正して。
「ここからは薬の方の話だ。傷薬の外用薬、内服薬の改良は順調。来月は新装品を持って行ける段階だ。多くは用意出来ないが忘れず取りに来てくれ。
昨年提案してくれた点滴も臨床段階に入った。実用は早くて来年。
でだ…。強化剤の件だが」
チラチラフィーネを見て言い辛そう。
「若い夫婦には必要の無い効果がどうしても取れない」
「…あっちが元気になっちゃう奴ですか?」
「あらまぁ。恥ずかしいですわ…」
口調が変で御座いますよ。
「副作用を抑えようとすればすればする程にそちらの効果が顕著に上がってしまう有様だ。本来求めている効能は強壮剤の強化版程度。…念の為。研究棟の年配と若手の夫婦に試して貰った所。男女共に三日三晩…止まらなかったらしい」
「あれまぁ。もういっそ強化剤取ってそっちの薬として売り出せばどうですか?ボロ儲けですよ」
「振り切っちゃった…」
「開発者としては何とも悩ましい結果だが。強化剤を止めてしまっても良いのだろうか」
「良いですよ。最近必要無いかなぁと思い始めてた所でしたし。そっちの薬も欲しがる人は大勢居ます。闇で流れるような薬に手を出すより余程安全です。
ただ三日三晩は行き過ぎで年配者には心臓に悪いです。
持病を抱えた人だと最悪死亡します。
薄めるなりして少し元気になるなぁ程度に抑えて。悩める人に処方するのはどうでしょうか」
「正統な医薬品として」
「封印する位なら薬として転用するか…。薄めて行けば原価も抑えられる。成程良い案かも知れない。
良い話が出来た。昨日フィーネ嬢には忙しそうだったし直接聞き辛くてな」
「スタンが居なかったら即刻廃棄でとか答えていたかも知れません。正しい判断です、として置きましょう」
数年後に完成したこの薬がカメノス財団を飛躍させ。世界一の座を勝ち取る起爆剤になったのは言う迄も無い。
共同発案者の俺にもガッポリ…。
林檎のお酒に合う料理って何だろうと2人で話ながら買い物を済ませて自宅に戻った。
お昼に焼き鮭ご飯を食べながらも。
「駄目だ何も浮かばん。ステーキ以外」
「私も。食事と言うよりもアップルパイしか浮かんで来ないよ」
「「両方だ!」」
厚手に切ったステーキ牛肉と竜肉をハイネーブルに。
厚切りにスライスした赤林檎をマーテリヌに漬け込んだ。
冷蔵庫に突っ込んで侍女3人とソプランを呼んで山葵を植えた沢まで飛んだ。
山葵が根腐れした箇所は木々の切れ間。やはり日照が原因だった。
「地質と言うよりも根本的に植えた場所が悪かったな。駄目になった場所は強い日差しが差し込む木々の切れ間だ。
隙間から風も当たって余計な温度変化も生まれた感じがする」
「そうでしたか。勉強になります!山葵はデリケートなんですね。綺麗な水辺でしか育たないなんて」
プリタが懸命にメモを取っていた。向上心旺盛ですな。
「3割は回収して残った半分を木々に囲われた場所に移そうか。余り木の根に近いと虫に食われるから適度な場所を探して…」
早くもプリタが手を振る。
「ここなんてどうですか?適度な石も在るので階段沢も造り易いかと!」
フィーネが残念そうに。
「これに関しては出る幕ないわ」
そこは植えていた対岸より少しだけ下った場所。
「いいねぇ。木も良い具合に傘になってる。あー最初植える時あんま上見てなかったなぁ」
「配置図起こしてロロシュ様に伝えて置きますね」
「宜しく!」
「楽しそう…」
「フィーネ様。震える程嫉妬されなくても」
「仕事の話してるだけだろ?」
「気晴らしに移設作業に没頭しましょう。ね?」
知らぬ間に嫁の怒りを買い、夜寝る前にネチネチ言われてしまった。気を付けます。
移設が終わって今度はフィーネと造った露店風呂を見に行った。
「「あぁ」」放置すりゃそうなるよね。
岩は崩れ、水溜りと積もった木の葉と砂や泥が一杯。
「どうする?掃除しちゃう?」
「直しても頻繁には来れないしねぇ。本格的に建造が始まったら邪魔だし」
諦めますか。あの日限定の露天風呂。
思い出は夫婦とクワンの胸の内に。
簡易的に通した水路を遮断して本流に戻し、虫が湧かない程度に岩を退けて地面を均して帰った。
夕食は塩茹で温野菜と林檎酒漬けのステーキとアップルパイ。
ステーキのディップは大蒜風味のトマトピューレ、山葵醤油とタルタルソース。
アップルパイは無塩バターを使い砂糖控え目。
ロロシュ氏とシュルツを呼んで。
「どうっすか。ハイネーブルに漬けると牛肉は柔らかく濃厚な竜肉もさっぱり寄りになってお酒に合うでしょ」
「マーテリヌ漬けのアップルパイも塩と砂糖を控えてデザート感を抑えました」
「うむぅ。この酒の酸味と甘みで旨味を引き出すとは。相性が悪い筈が無いな。美味い」
クワンとシュルツにはアルコールを飛ばした2つの酒を摺下ろし林檎ジュースを飲んで貰った。
「美味しいです!酸味が加わると酸っぱくなるだけではないのですね。お料理は奥が深いです」
作業疲れも何のその。シュルツの目は輝いていた。
グーニャは深皿で酒を交互にペロペロ。強い…。
普通の猫なら死んじゃうぞ。
「果樹園の区分けや選別も徹底して酒用と食品販売用で拡張すれば売り方も様々。ハイネーブルの熟成は頭打ちしてもマーテリヌの蒸留酒は熟成し放題。商品として売り出せるのは来年以降ですが引退後のお楽しみが増えたのでは?」
「余計な世話だ。だがそうだな。そう言う趣向も悪くないと思える。温泉郷の目玉にも使えそうだ」
「いいかもしんないですね。露天風呂に浸かりながら冷えた林檎酒を。…これぞ大人の楽しみ」
「止めてスタン。今直ぐ飛んで掘りたくなるから」
少し離れた席のソプランとカーネギは。
「甘い酒に甘い物。おかずや摘まみになるのか不安だったがこの組み合わせはいいな」
「もう、もぐ」口に入れ過ぎ。
「無理して喋らないで下さい。怒られますよ」
「明後日から鍛冶工房に缶詰になるんで明日はゆっくりさせて貰います」
「君は本当に色々な物に手を出すな」
「多くを知り、そこから何かを生み出す。日々勉強。
自分で体験して学ぶのが一番。商人に限らず、農民、漁師その他。文化が発展して行くってそう言う物じゃないかなって思って」
「わしも後三十若ければな…」
感慨深げな顔をして。
「まだまだこれからっすよ。長生きして下さい」
「格好付けちゃって。男くっさい工房に差し入れに行く私たちの身になってよ」
「ごめんちゃい。ちゃんと毎日お風呂には入るから」
「お願いします」
「ソプランもですよ」
「わーってるよ。汗塗れで寝られるかよ」
「カーネギも」
「身体、絞れるかも」一人別方向。
「私も見学に行っても良いでしょうか」
「私も覗きたいです!」プリタは何か路線が微妙。
「工房の造り次第かな。覗き窓とかあれば大丈夫だと思うけど。あんまり俺の関係者が頻繁に出入りしてると怪しまれるから程々にね」
「「はい!」」
夜な夜な無人島に赴いてフル装備でメイルをブツ切りにした後。
「完成品の複合金属をぶった切るしんどさは理解した」
「中々骨が折れますねぇ。勉強になったわ」
「敵から奪った通信器どうしよ。溶かす?」
「あぁどうしましょ。勿体ない気もするし。他の部品や自分用のコインも欲しい…」
義眼の粉砕品だけでは僅か。
帝国で奪った相互通信器はたったの3個。魔力を入れ直せば専用器にも出来てしまう
「義眼の破片と通信器1つだけ溶かしてみるか」
「まー2つ有れば使えるしね」
前回の通り霊廟盾の裏を利用して2種を溶かして不純物を取り払った。
取れたのはコインにして10円玉サイズ。前回の500円玉より一回り大きい物とは雲泥の差。
「しかも薄い」
「これじゃ求める精度は出せそうにないね」
試しに小袋のコインを入れ替えて念じてみたが無人島の半分位までしか見えなかった。
「この島にはなに…も…」
「ん?あったの?」
コインを大きな方に入れ直して違いを試し、隣の島まで探知範囲を広げると。今居る島の中央部に小さな点が見えた。
思い返せばここ一帯はクインザに捕えられた人質たちが監禁されていた場所でもある。道具が転がっていても不思議じゃない。
洞穴の中かと言うとそうでもなく。探って行くと山なりの地表側。更に探すと大木の枝に大判のコインが引っ掛かっていた。
共通金貨を超えて王国金貨並。直径7cm程。厚みは5mmはある。純ペラニウムだとするとかなりの量。
「見た事も無い図柄だ」
「私も知らない」
文字盤は無いが剣と盾が交差して浮き出しレリーフ調の紋様が両面に描かれていた。
名前:風雪の円盤
性能:同種金属の探知に優れる
特徴:とある場所の扉を開くオブジェクトキー
「とある場所てなんやねん!」
「勿体付けて。明日シュルツの眼鏡借りましょ」
そうしましょ。
---------------
絶賛左手袋を解析中のシュルツ工房にお邪魔して。
眼鏡を借りて拾ったコインを鑑定。
とある場所は何と!
特徴:魔王城、隠し迷宮入口の扉を開く鍵
「「はい?」」
なななななんですって!?
「魔王様が居るなら城が復活してるのも解るけども!」
「どうしてその鍵がここの南にあるのよ!」
「お兄様もお姉様も五月蠅いです。集中しているのに。
前の勇者隊の生き残りの冒険者の何方かが南側の大陸に渡ったのではないですか?」
賢い!
「「御免なさい…」」
そして有り難う。
「ではごゆっくり。マウデリンの精錬は時間掛かるから」
「お邪魔しましたー」
「お待ち下さい。実は手袋の解析は終わっています。変更方法も概ね掴めました。ですがこの紋様。このグルグルした山菜のゼンマイのような形の意味が解らないのです」
唐草模様のこと?
「えーっとね。多分なんだけどね」
「とても良い難いけど。その模様の形に意味は無いの」
「え…。え!?時間を無駄にしました…」
「ごめん!最初に伝えるべきだったな」
「ごめんね。ポイと渡した私も悪かったわ」
「いえ、大丈夫です。失敗を積み重ねてこその成功。
深掘りしても何も無い事もある。良い教訓になりました。
転移手袋の構造は単純です。この左右対称の模様に微量のマウデリンが含まれていて転移スキルを持った方が長い年月を掛けて全体に魔力を練り込んだだけで。
形に意味が無いのなら上書きを施すだけで済みます。身近な方だとペリーニャ様。ですが短時間で上書きするには魔力が足りません。保有量が桁違いのお姉様も協力して補えば一回で済むかと思います」
賢いのぉと2人で撫でた。
「スタンが籠ってる間にペリーニャの所へ行くわ」
「これが上手く行くなら。マウデリンさえ持っていれば転移道具が量産出来る事になってしまう」
「口外すればまたシュルツとペリーニャが狙われる。欲張らずに此れっ切りにしないと」
「所持するだけで使えるようにする為に手袋部の皮がその機能を助けています。同じ物は作れません。此れっ切りにするならマウデリンの含有率を上げてからにしてはどうでしょうか」
「明日から出る端材を合成してからか」
「一理有るわね。慌てずスタンの作業が終わってからにしよう」
次に完全擬態道具の改造に取り掛かると言うので邪魔に成らない様に退散した。
「アローマさんも。秘密ばかり増えちゃって御免ね」
「何の事でしょう。私は今外を眺めて耳を塞いでおりました故、存じ上げません」
遂に現実逃避をし出した。
自宅に戻りリビングで緑茶を頂きながら。
「お昼から暇やね」
「のんびりするか。カジノでも覗きに行くか。何かシュルツへの差し入れとおやつ作るか」
「のんびりおやつでも作りますか。フィーネは何か食べたい物ある?」
「お餅搗いてる程の時間は無いし。簡単に苺ジャム…を作るとレイルが発狂するし。これって言う物が無いなぁ」
クワンが挙手(翼)アピール。
「蛤の甘露煮か檸檬タルトが食べたいです」
「今年に入ってから作ってないな」
「甘露煮は贈答用と一緒に来週作るとして。檸檬タルト作っちゃおう」
ご当地檸檬は常に購入して在庫が豊富。
綺麗に洗い蔕と尻をカットして外側の皮をざっと削る。
スライスして種を外し、ハイネーブルとメープルシロップに漬け込めば準備は終了。
漬けている間に豚肉味噌炒めを作って昼食。
一休みして生地作りを始めようかとした頃に本棟からミランダが手紙を持ってやって来た。
「モメット様からギルド経由でお手紙が」
「モメットから?」
「急ぎかしら」
急いで手紙を開き。
「~本文~
急ぎなので挨拶は省きます。
大至急ロメーランの商業ギルド迄。
居なければ近くの宿で待機しています。
内容は書けません。
~愛しのスターレン様♡の心の恋人より~」
「何時から恋人になったんじゃ!フィーネ頼める?
明日から肉体労働なのに疲れたくない…」
「しょーがないなぁ。ミランダさん時間あったらタルト作り手伝ってあげて。ベタベタしちゃダメよ」
「畏まりました。お気を付けて」
偽装用の外嚢を羽織りフィーネが転移で飛んだ。
---------------
ロメーランの外から入場して商業ギルドに向かった。
タイラントと殆ど時差が無い為、同じ昼下がり。
帰りにトマトと苺でも買って帰ろうかと考えながら少しだけ町内を散策。
町の人々の様子は特に以前と変わりない。
商人や町人は笑い合い、巡回の衛兵が増えたと言うことも無さそう。
緊急案件とはなんぞ。
ギルドを訪ねてみるとモメットさんは不在。
紹介された宿屋に行き、泊まっている部屋の扉をノックした。
「は~い♡」
明るい返事で開けてくれた彼は私を見て朱ら様にガッカリ肩を落とした。
「私じゃ不満なの?」
「急ぎって書けばスターレン様が来てくれると思ったのにぃー。お会いしてお喋りすら許して下さらないんですか」
「ちょっと今日は都合が悪かったの。明日から重要な仕事が入っちゃって体力温存中。今度は連れて来るから」
外嚢を外して小テーブル横の椅子に座ると。
「あらまぁ凄いコート。暑くないんですか?」
お茶を運びながら私のコートに驚いていた。
「いいでしょ。これ見た目より暑くないの。年中世界で使えるのよ」
「へぇ~。それよりもお話お話と」
話だそうとした彼に向かって私は指を口に当てて黙らせ風雪の円盤を握り絞めた。
こう言う道具の使い方はスタンよりも得意ではないが問題無く反応を示してくれた。
ペラニウムの反応が無いのを確認し終え、安心して話を振った。
「最近盗聴器を何処にでも仕込む奴らとばっか戦ってるから調べてた。この宿には無いみたいだからどうぞ」
「こわーい。私も気を付けなくちゃ」
多分きっと大丈夫。
「お話と言うのは他でも無く。今ニーナ様が居る島のお話です。ニーナ様も島の方々も平穏無事。
定期的な日用品などの運搬も滞り無く。ただ…又しても余計な事と言いますか。
以前スターレン様から依頼を受けた時に山を掘れば何か出るかもと言われたのが頭から離れず。前回の運搬時にニーナ様とサドハド様とで集落から一番離れた小山を少しだけ掘ってみたんです。スコップで上っ面を」
「ほうほう」
何か出たな。
「私の引きが強すぎたのか、出ちゃったんです。大きなペラニウムの鉱石が」
「なんと!モメットさん知ってたの?」
「一応知識だけは。白銀で硬く、驚く程軽いって言えばそれしか無いですもの」
「なるほろ。それでその石は?売っちゃった?
この部屋には無いみたいだけど」
「売りませんよぉ。怖くて怖くて。島から持ち出してもいません。希少な金属と呼ばれるペラニウムがかなりの量埋まってますね。国に知れたら一大事です」
「ニーナさんたちにはペラニウムの説明は」
「してません。これはスターレン様の物だからと近付かせないでとお願いしてあります」
今まで敵に見付からなかったのが奇跡だ。
長く放置は出来ない。
「今から出られる?島に飛ぶから案内して欲しいの」
「わっかりました」
モメットさんと市場で適度に食料品を購入。
町を出て人目が切れた場所で赤マントに着け替えて一緒に飛んだ。
到着地点は海岸の砂地。
そこから集落に入り、ニーナさんに食糧品を配達。
「住民の人たちは健常?病気とかなら薬置いて行くよ」
「今の所問題無いですね。真冬に風邪が少し流行りましたが救援物資の薬とどくだみ茶で乗り切れました」
「良かった。モメットさんと見付けた石を拾いに来たの。
誰か近付いた?」
「いいえ誰も。お急ぎですか?」
「かなり。島の平穏が脅かされる危険な石よ。サドハドさんも一緒に来て。詳しくは道中で話す」
「は、はい」
スコップを持って小山を越えた。
敵が欲しがっている金属で遠方からでも同種金属の探知道具を使えば位置が丸解りだと危険度を話した。
「放置したままだと確実に敵が大挙して押し寄せるわ。
出来る限り回収してく。
外に情報が漏れれば国まで敵に回る。最悪島民全員皆殺しよ」
「そ、そこまで危険な物だったとは」
決して脅しじゃない。それ位の代物だ。
「ここです」
モメットさんが指した先には掘り返した跡。
「少し下がってて」
3人を後ろに下げて円盤を握った。
…島の北東全部じゃない。私が今持ってるインゴットだけではとても隠し切れない。
スタンに通話。
「とっても拙い状況よ。サドハドさんの島に北東の小山あるでしょ」
「…あったね」
「この山全部ペラニウムが埋まってる。持ち帰れない。
隠し切るには今持ってるインゴットの3倍は必要。
どうする?ここで作る?それとも一部持ち帰って無人島で作る?」
少し間が空いて。
「そこで作ろう。必要な大きさが曖昧だ。無効化範囲にも上限が有るかも知れない」
確かに言う通りだ。
「ごめんね。お休み中なのに」
「非常事態なら仕方ないよ」
スマホを切って振り返り。
「今からスタン連れて来てこの場で作業します。
見てもいいけど長生きしたいなら見ないのをお勧めする。
モメットさんは今直ぐ帰る?後でいい?」
「今直ぐ帰りますぅ…スターレン様に会えないのは残念ですが」
「また今度ね」
モメットさんを連れて町の手前に届け自宅へ飛んだ。
リビングに着くとタルトが焼ける甘い匂いが。
クラッとして心が折れそう。出来れば焼き立て食べたかったな。
「大丈夫。今丁度焼けたとこだ。切り分けて向こうで食べてから作業始めよう」
「良かった♡」本心が漏れた。
自分たちの分をお弁当箱に詰めて。
「ミランダさん。残りは皆で分けて。帰りは解らないけど本棟で夕食お願い」
「はい。お気を付けて。お風呂の準備もしておきますね」
「ありがと。行って来ます」
島に戻った後シート敷いて甘酸っぱい檸檬タルトを食べてスタンが出したバスタブに小川で水を汲み。
「クワンティ。周辺海域空から見てて。グーニャは島内の人の動きに注意。近くに誰か来たら教えて」
「クワッ」
『ハイニャ!』
2人で可能な限り山の原型を残しながら掘り進め。ある程度鉱石が溜まった所からスタンが溶かし、私がバスタブの中で冷やしながら成形。
段々と台形インゴットを大きくして行った。
スタンが睨んだ通り無効化出来る範囲には限界が有った。
元々作っていたインゴットの2倍強まで。
それ以上大きくしても厚みを変えても範囲は変わらず。
出来上がった最大インゴットは合計23本。
終わった頃にはどっぷり日が暮れていた。
隙間だらけになった小山を最後に達磨落としで崩し、大きな木々だけ植え直して整えた。
スタンと背中合わせでへたり込み。
「終わったー」
「何とか遣り切れたな」
強壮剤を飲み合って。
「「山神様、御免なさい!」」
お祈りを捧げて立ち去った。
ニーナさんたちに腫瘍は全摘出来ましたと伝えて帰宅。
リビングに戻るとミランダさんとアローマさんの姿が。
「お帰り為さいませ。お二人共泥だらけではありませんか」
「人手が必要だったなら連れて行って下されば」
「今日はお休みって言っちゃったからね」
「明日からの良い予行演習になったよ。山掘りからやる鍛冶屋は居ないだろうなぁ」
「結局邸内で待機していますので変わらないのですが。
お食事は本棟からホワイトシチューを運んでおります。さあお風呂へどうぞ」
「ごゆっくり」
「「ありがとー」」
人の優しさが暖かいです。
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異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。
最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。
だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。
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