嫌いなあいつの婚約者

みー

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3話

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 1日の授業も終わり、奏多さんとの約束の場所に来た。

「桜さん、今日もお疲れさま」

「お疲れさまです」

 空はいい感じに赤く染まっていて、このリゾート地をロマンのある雰囲気にしている。

 海も空の色を反映してオレンジになっており、小さく波打つ音がさあああっと耳に心地よく入ってくる。

「あ、あの。奏多さん、甘いものってお好きですか?」

「うん、好きだよ」

「今日、タルトを作ったんです。よければ……これ」

「僕に? ありがとう」

 受け取って、くれた。

 それだけでももう私の中の幸福度合いは急激に上がって、口をぎゅっと紡いでもにやけが止まらなくて、ああ、これこそが恋だよねなんて1人納得をしてしまう。

「何個あるの?」

「2つ、です」

「そっか、せっかくなら2人で食べたいし、ディナーの後にどう?」

「は、はいっ。もちろん」

 タルトを渡し終えて、ようやく私たちは歩き始めた。

 海沿いの小道。波の音の他にも鳥の鳴き声が聞こえてくる。

 自分たちの為にあるかのような空間に、うっとりとする。

 話しをしながら歩いていると、目の前からレストランにいた美少女が来て、すれ違った。その際に、目が合ったのは気のせい?

 というか、睨まれていたような。

「桜さん、明日はなんの授業受ける予定?」

「そうですね、明日も料理をやってみたいな、なんて思ってます。今日、楽しかったから」

「いいね、じゃあ、僕も料理の授業取ろうかな。午後? 午前?」

「午後、です」

「うん、分かった」

 だんだんと薄暗くなり、風が涼しさを運んでくる。

 空は、オレンジと水色の2色で構成されていてまるでそれは絵画のようだった。
 
 空奇麗だね、と言う奏多さんに、そうですね、と返す。

 こんな美しい風景だから写真に撮りたいと思ったけれどカメラはなく脳内にしっかりとこの絵を残す。

「もし僕たちが普通の家に生まれて育って出会ったら、もっと深い関係になれたのかな?」  

「それは……きっと、そうだったと思います」

「…………仕方ないよね。この学校に通う皆同じさ。結婚は自分たちの問題だけじゃない」

「でも、それでも私は、好きな人と結婚したいです。やっぱり、難しいんですかね?」

「分からない。もしかしたら、それも可能かもしれないけど、まずは両親が許してくれないとね」

「そうですね」

 奏多さんは当たり前だけど、私には一切触れてこようとしなかった。

 私は、出来るなら手くらい繋いで、奏多さんの体温を感じたかった。

 それでも、奏多さんの目つきから優しさが伝わってきて、それだけで十分だと思う。

「涼くんが羨ましいな。婚約者が桜さんだなんて」

「でも私は、涼よりも」

 奏多さんのが初めて私に触れた。でもそれは、この後の私の言葉を言わせないためで、唇に彼の指が触れる。

「ありがとう、でも、ダメだよ。その言葉は心の中にしまおう」

「…………はい」

 星がそろそろ出始めようとしている。

「ご飯、食べに行こうか」

「そうですね」

 2人きりで嬉しいのに、苦しい。恋は楽しいはずなのに、辛い。そう感じてしまったんだ。

 

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