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3話
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部屋に戻って、すぐにベッドの中に入った。
いろんな感情が渋滞して、頭の中が混乱する。目を閉じると思い出すのはさっきの涼の姿で、それを無理矢理消そうと、奏多さんとの今日のことを思い返した。
私と涼の幼い頃の姿が見える。
「桜、手出して」
「なあに? 涼くん」
まだまだ幼くて、疑うことを知らない私はなにも考えずに涼の前に掌を見せた。
「ほい、プレゼント」
「あ、ありが、わっ、なにこれ、涼くんのバカっ」
それは大きな芋虫で、私が虫が大の苦手だということを知っているにもかかわらず、涼は嫌がらせでそれを渡してきたんだ。
涼は指をさして笑いながら私が困る顔をただ見ていた。
ぐるんと場面が変わった。私と涼はさっきよりも大きくなっていて、多分中学生くらいだと思う。
「桜、これ持って」
「なんで? 自分で持てばいいじゃない」
「俺は徒歩。お前は自転車。お前の方が楽なんだから荷物くらい持ってくれていいだろ」
「じゃあ涼も自転車で通学すればいいじゃん」
「自転車なんて、いろいろ面倒だろ」
涼に彼女ができるその日まで、なぜか涼の荷物の半分を私が運ぶ羽目に。
涼は荷物が少ないから、軽々しく歩いて学校に。私は自分のにプラスして涼の分の荷物を乗せた重たい自転車で。
本当に嫌なやつ、なんでこんなやつと幼馴染みなの、なんて何度思ったことだろう。
「夢……か」
そうだ、涼といえば今の夢のように昔から嫌がらせばかりするようなやつで、小さい頃から本当に苦労したんだから。
思い出すと、だんだんと腹が立ってくる。
この世界の涼が少し優しいからって、あっちの世界の涼に嫌がらせをされていた事実はなにも変わらない。
嫌な思い出ほど、脳内にこびりついて離れないんだから。
『世界が変われば、人が変わるのは当たり前じゃない? 彼は彼であって、彼じゃないのよ』
だけど、どこからかそんな声が聞こえてくるような気がして、私は一旦ベッドから出ると冷たい水で顔を濡らした。
「もう、考えないようにしよう……」
カーテンを開けて窓の外を見ると、ちょうど朝日が昇るところで海と空が明るくなってくる。
ぐうっと、お腹が鳴った。
悩んでいても空腹になる自分の体に、ふふっと笑いが漏れる。
「そういえば、冷蔵庫の中にキッシュがあったような」
昨日カフェでテイクアウトして、食べずに取っておいたほうれん草と海老のキッシュ。
ついでにお湯も沸かして、紅茶を淹れる。
ふわっと、アールグレイの独特な香りが部屋の中に広まって、だんだんと頭も冴えてくる。
「今日は、何の授業にしようかな。午後は料理だから…………あ、これいいかも」
マナー講座と書かれた文字に目を惹かれる。
この世界に来て1週間の間に、何度マナーの注意をされたことか。記憶喪失にでもなったんですか、なんて言われたときにはなんて答えたらいいか分からずに黙ってしまって余計に不審な目でメイドに見られ。
今までそんなのほとんど気にして生きてきたことが無かったから、本当に大変。
ちょうどいい時間だし、こうなったらここでマナーを一通り学ぼうかしら。
いろんな感情が渋滞して、頭の中が混乱する。目を閉じると思い出すのはさっきの涼の姿で、それを無理矢理消そうと、奏多さんとの今日のことを思い返した。
私と涼の幼い頃の姿が見える。
「桜、手出して」
「なあに? 涼くん」
まだまだ幼くて、疑うことを知らない私はなにも考えずに涼の前に掌を見せた。
「ほい、プレゼント」
「あ、ありが、わっ、なにこれ、涼くんのバカっ」
それは大きな芋虫で、私が虫が大の苦手だということを知っているにもかかわらず、涼は嫌がらせでそれを渡してきたんだ。
涼は指をさして笑いながら私が困る顔をただ見ていた。
ぐるんと場面が変わった。私と涼はさっきよりも大きくなっていて、多分中学生くらいだと思う。
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「なんで? 自分で持てばいいじゃない」
「俺は徒歩。お前は自転車。お前の方が楽なんだから荷物くらい持ってくれていいだろ」
「じゃあ涼も自転車で通学すればいいじゃん」
「自転車なんて、いろいろ面倒だろ」
涼に彼女ができるその日まで、なぜか涼の荷物の半分を私が運ぶ羽目に。
涼は荷物が少ないから、軽々しく歩いて学校に。私は自分のにプラスして涼の分の荷物を乗せた重たい自転車で。
本当に嫌なやつ、なんでこんなやつと幼馴染みなの、なんて何度思ったことだろう。
「夢……か」
そうだ、涼といえば今の夢のように昔から嫌がらせばかりするようなやつで、小さい頃から本当に苦労したんだから。
思い出すと、だんだんと腹が立ってくる。
この世界の涼が少し優しいからって、あっちの世界の涼に嫌がらせをされていた事実はなにも変わらない。
嫌な思い出ほど、脳内にこびりついて離れないんだから。
『世界が変われば、人が変わるのは当たり前じゃない? 彼は彼であって、彼じゃないのよ』
だけど、どこからかそんな声が聞こえてくるような気がして、私は一旦ベッドから出ると冷たい水で顔を濡らした。
「もう、考えないようにしよう……」
カーテンを開けて窓の外を見ると、ちょうど朝日が昇るところで海と空が明るくなってくる。
ぐうっと、お腹が鳴った。
悩んでいても空腹になる自分の体に、ふふっと笑いが漏れる。
「そういえば、冷蔵庫の中にキッシュがあったような」
昨日カフェでテイクアウトして、食べずに取っておいたほうれん草と海老のキッシュ。
ついでにお湯も沸かして、紅茶を淹れる。
ふわっと、アールグレイの独特な香りが部屋の中に広まって、だんだんと頭も冴えてくる。
「今日は、何の授業にしようかな。午後は料理だから…………あ、これいいかも」
マナー講座と書かれた文字に目を惹かれる。
この世界に来て1週間の間に、何度マナーの注意をされたことか。記憶喪失にでもなったんですか、なんて言われたときにはなんて答えたらいいか分からずに黙ってしまって余計に不審な目でメイドに見られ。
今までそんなのほとんど気にして生きてきたことが無かったから、本当に大変。
ちょうどいい時間だし、こうなったらここでマナーを一通り学ぼうかしら。
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