嫌いなあいつの婚約者

みー

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9話

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 朝、教室に鞄を置いてすぐに鈴華さんのクラスに来る。

 だけど、他のクラスというだけで自分が異国の人という感じがしてなかなか入ることができずに、中に彼女がいるかどうかさえ確認できていない。

 ほんと、どうして他人のクラスってこうも場違い感が強いのかしら。

 せめて居るかどうかでも見ようと教室の中を覗いた時だった。

「あら、桜さんじゃないの」

「あ、鈴華さん…………」

 どうやら今登校してきたようで、まだ手には鞄を持っていた。

「何か用?」

「あ、あの……苺のネックレス持ってる?」

「ええ。あるわよ」

 悪気もなく、堂々と言われるとなんだかこっちが悪いことをした気になる。

「その、返して欲しいんだけど…………」

「……ランチ、今日一緒に食べられるかしら?」

 きっと、この時じゃないと返してもらえないという意味だと思う。

 だから、「うん、分かった」と言う選択しかなかった。

「それじゃあ、12時にカフェテリアの入り口で」

「分かった」




 

 ランチに何を話すのかが気になって、授業は上の空。午前中の授業で記憶に残っているのは、音楽の授業で聞いたピアノの曲だけだった。

 杏里に事情を伝えて1人でカフェテリアに向かう。

 杏里は心配して着いていくと言ってくれたけど、これは私の問題で杏里を巻き込みたくはない。

 来るとすでに彼女の姿があって、姿勢よく扉付近に立っていた。

 その姿は、美しくて何人の人なんかは見惚れていた。

「じゃあ、ランチでも食べながら話しましょう」

「ええ」

 適当に料理を取って席へと座る。やっぱり杏里と食べるランチとはいかず、空気がぴりっとしていて多分味覚も鈍るだろう。

「これでしょう?」

「そ、そう」

「これって、涼から貰ったものでしょう?」

「そうだけど……」

「桜さん、……あの方と恋人になるそうじゃない。じゃあこれはもう必要ないわよね」

「だから、自分で涼に返そうと思って」

「1つ確認してもいいかしら」

「なに?」

「私が彼に告白してもいいのよね?」

「……もちろんよ。私には関係ないことだもの」

「そう。それなら、これも私が返しておくわ」

「それは……」

「あなただって、涼に会わないほうがいいでしょ? 恋人だって、あなたが他の男の人と会っていたらいい気はしないわ」

 その言葉に否定することもできないし、そもそも否定する意味もない。

「うん…………お願い」

 苺のネックレスが私の元から無くなったら、本当に涼とは関係がなくなってしまう。

 会おうと思えば会える距離にはいるけれどそういう意味ではなくて、心の距離っていうか、精神的なものが。

 でもきっと、どこかで決断しなければならないのだから、今がきっとその時なんだと思う。

「桜さん自身が下した選択なんだから、そんな顔しないで」

「そんな顔って……?」

 鈴華さんはポケットから手鏡を出すと、それに私の顔を映した。
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