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第二章 否応なく巻き込まれる政争
父の昔話
しおりを挟む夕食後、侍従を通して面会を取り付けていた親父と話をするため、家令に先導されて父の執務室へ向かう。
執務室に足を踏み入れると親父はソファに腰を下ろしてグラスを傾けながら俺を待っていた。
「どうした、アルバート。わざわざ正式な面会依頼を出してくるとは珍しいな」
向かい合って座ると、本当に自分は父親には似ていないと実感する。
グラスを傾けながら虎のように笑う、太い貫禄は自分には無いものだ。
だからといって、それが羨ましいとか卑屈になるということもない。自分の外見は色彩以外は母に似ているだけのことだ。
「エルンスト殿下の護衛を正式に受けることにしました」
「ん? あれだけ面倒くさがってたのにか?」
ニヤリと笑う顔は揶揄う表情で、その上で俺がエルンスト殿下の専属護衛になることを予測していたのだとわかる。
「何があった?」
そう訊かれて、何から説明しようかと一瞬悩んだけれど、最終的には短く答えた。
「命の危険があるのに護衛が機能していないからです」
「ほぅ、……何があった?」
「ビショップ公爵令嬢に学園のラウンジで堕胎薬を盛られました」
その情報はすでに親父にも伝わっているはずだが、それも含めて説明する。
「そして、側妃が側妃のまま正妃に繰り上がらないのも、エルンスト殿下が幼いうちから公爵家に婿入りが決まっていたのも理由が分からずしっくりこないのです」
「なるほどな……。ふん、あの側妃のやりそうなことだな。アレは元々娼館にいた女で、銀髪だったと言うだけの理由でリースター伯爵家の遠縁だと偽って養女になり王宮に上がった女よ。成り上がるためなら何でもする」
「娼婦、……ですか? 純潔は……」
予想外の側妃の経歴に声を失ってしまう。
「まだ客をとる前にリースター伯爵が見つけて養女にしたという触れ込みだ……が、下衆な話にはなるがお前ももう十五だ。知らないことばかりで疑問を持ったままでは護衛もままなるまい。知っておいた方が良いだろう。
娼館に王家の銀によく似た銀髪の女がいるというのは噂になっていた。で、まあ、王族の姫を抱くことは叶わないが顔を隠せば王族を犯しているような征服感が得られる、と……、そういう男たちには人気の女だった。
まあ、その時点で銀髪の女は純潔では無かったわけだ。
だが、その女は娼館で孕んで子を産んだ。
生まれてみれば、銀髪に紫眼の男子だ。
銀髪というだけならばまだしも、銀髪紫眼は王家の色。
客の中に王族がいたのではないかと騒ぎになった。
その隙に、リースター伯爵がその娼婦を子供ごと落籍して娼婦を自分の養女にしてしまった。
関係がややこしくなるから当時の肩書きで話すが、
当時、子を成せるような王族の男は当時の国王陛下、当時の王太子殿下で現在の国王陛下、当時は第二王子で現在の王弟殿下、当時の国王陛下の弟君であったシャロン公爵、そして譲位して療養中の当時の国王陛下のお父上だった。
だが、譲位された先王は病で子を成すのは難しく、シャロン公爵は外遊中、第二王子は成人前で十二歳。となると、国王陛下か王太子殿下のお子だということになる。
当時の王太子妃アマーリエ様、……今は亡くなられている王妃だが、何度も子が流れていて側妃が必要だという声が大きくなっていた。
そして王太子妃殿下も何度も子が流れ体調が整わないところに誹謗中傷を受け、王太子殿下のお相手を務められるような体調では無かった。
そこで、なぜそんな理屈になるのか全く不明だが、お子は王太子殿下のお子だ。ということになり、娼婦は王太子殿下の側妃として王宮に上がり、生まれた子供は第一王子として記された。
それが今の王太子カスパルだ。
もちろん良識ある貴族たちはそんなことは許さなかったが、国王陛下が、自分の子ではないのだから王太子の子だろう、と勝手に決めてしまった。
国王陛下はその決定からしばらくして亡くなったのだが、国王陛下の部屋にいつも侍っていたメイドがいて、側妃イザベラとカスパル殿下を王族籍に入れた頃は、国王陛下はメイドの言いなりだった。
そのメイドはかつて男爵家だった家の娘でリースター伯爵の縁者だったらしい。
王太子殿下は、自分には全く身に覚えがない! と訴えられていたが、既に国王陛下によって王太子の子として王籍に記されてしまってはどうにもならない。
離宮に側妃イザベラを迎え、その子供を第一王子カスパルとして王宮に入れた。
その際、王太子妃殿下に付いていた侍女とメイドを丸まま全員、側妃の宮に移動させて、王太子妃の宮にはご実家の公爵家から全ての使用人を連れてきて入れ替えたところ、王太子妃は健康を取り戻しエルンスト殿下が生まれたわけだ」
情報が多すぎる上に突拍子も無く、信じられないような内容に頭が飽和状態で何も考えられない。
「誰の子か分からない第一王子ではなく、明らかに正統な血統のエルンスト殿下を立太子する方が良さそうに思われるのですが……」
「当たり前だ。だが、銀髪紫眼は王族にしか現れない色であることも確かなのだ。そして……、これは後に判明した事実なのだが、リースター伯爵は十二歳の王弟殿下の元に娼婦を送り込んでいたらしい」
それを聞いて悍ましさに背筋が震えた。
精通したかどうか、という子供まで利用して外戚の座を手に入れようとしたのだろうか?
「リースター伯爵は、まず正妃の宮に手の者を潜ませて、正妃に堕胎薬を盛って子を流し、銀髪の娼婦をまだ子供の王弟殿下に当てがい、生まれた子と娼婦を国王陛下に押し付けたということですか?
先代国王の子として受け入れれば、歳の離れた王弟として扱われるし、王弟殿下の子なら継承順もいくらか下がったでしょうに。父親の分からない娼婦の子を第一継承者として陛下に押し付けるのは落ち目の伯爵ひとりでは到底無理なのでは?
先代陛下はメイドに薬を盛られて操られていたようですし、正妃の宮でも堕胎薬を盛っていた者がいるのですよね?
王宮に勤めるにはそれなりの後ろ盾が必要だと思っていたのですが……」
チラリと見かけたことがあるだけだが、奢侈に耽って自制心のかけらもなく肥え太ったリースター伯爵の姿を見ればそんな大それたことができる人物だとは思えない。
「そうだ。リースターにはそんな器量はないから、アイツを操っているやつが必ずいるはずだ。だが、それが未だに分からん。
カスパル殿下が王位について、得をする者は大勢いるだろう。
反対に我らのような旧来の貴族は徹底的に排除される可能性が高い。
陛下とて同じだ。
陛下は側妃を妃として認めておらん。離宮に入れはしたが一度も通ってはいないし、公式行事に伴ったことも無い。
それだけ冷遇していても側妃派という派閥が出来て大きくなっている」
「我が国の国力を削ぎたい外国勢力なのでは……?」
その程度のことは何度も議論されているだろうが。
「確かに、その可能性も否定は出来んのだが……どうもピンと来ない。側妃イザベラが娼婦あがりだという過去は一応隠されているが、当時平民も含めてかなりの数の客をとっていたらしいから平民の間でも知っているものはいるはずだ。
没落寸前のリースター伯爵家に融資した商人という線も調査はしたが、灰色の者が多すぎて全員捕まえて調べるわけにもいかん。
大きな勢力というよりも、小物が寄り集まってリースターを踊らせた、という方がしっくりくる気がするのだ」
「それで次期国王を作ったのだとすれば、ちょっと出来過ぎな感じもしますね」
「そうだ。意図して計画したにしては場当たり的で偶然に頼り過ぎている気がしてならん。もしかしたらこれは、なんらかの計画の予備だったのか、とも考えて調査したがそんな計画も見当たらん」
大きな勢力による王位の乗っ取りなのか、小物の野心がたまたま上手く行っただけなのか……
「王太子殿下は……ご自身が陛下の子ではないことをご存知なのですか?」
「さあな、……知っていてあれだけ尊大になれるならとんでもない恥知らずだと思うが、あれだけエルンスト殿下に攻撃的なのは側妃の教育、というだけではなく、エルンスト殿下に脅威を感じているのだろう。自分とは違う正統な王位継承者だとか、な」
なるほど。
それならいくら道化を演じて見せても何の意味も無かっただろう。
「では、エルンスト殿下は……」
「知らんはずだ。……とはいえ、聡い方なので何かしら気づいていらっしゃる可能性はある。王宮の使用人といえど口の軽いのはいるからな」
「陛下たちは……エルンスト殿下をどうしようとお考えなのでしょうか? このままカスパルを王太子に戴いたまま国王にしてしまえば国が危ないのではないかと思うのですが」
「……そうだな。ビショップ公爵令嬢との婚約はアマーリエ王妃とエルンスト殿下を守るために結ばれたものだ。
エルンスト殿下が将来的には公爵家に婿入りして王族ではなくなると思えば、側妃イザベラやリースターが油断してアマーリエ王妃とエルンスト殿下はしばし安全になるのではないか、という思惑と、アマーリエ王妃のご実家のモンヴェール公爵と婚約者のビショップ公爵の二公爵家の庇護があれば日和見の貴族どもはエルンスト殿下に敵対しないだろう、という政治的判断だ。将来的には側妃イザベラとリースターを排し、カスパル殿下には教会に入って頂きたかったが……」
「とても教会でおとなしくしているとは思えません」
「しかし、カスパル殿下も王弟殿下のお子、王家の血を引いているからには無闇に命を奪うことも出来ん。が、カスパル殿下を国王と戴いてしまえば、イザベラは王太后を名乗り王宮を牛耳るだろうし、リースターは外戚の権利を最大限使って我々を追い落とそうとするだろうな。
それに何より、陛下の正当なお子がいるにも関わらず、王弟殿下のお子を王位に就けるのは簒奪だ。そんなことは絶対に許されてはならん!」
力強く断言した親父の姿に背筋が伸びる。
親世代の意見はエルンスト殿下に戴冠させることなのだ。
陛下も含めて。
「王弟殿下は……どのようにお考えなのですか?」
幼少時に利用され、その後、教会に入ってしまった王弟殿下には同情を覚える。
学園内の教会におられるのなら一度会ってみようか……
そんなことを考えている俺に気づいた親父が強く否定する。
「王弟殿下は何を考えているのか分からん。お前は同情しているようだが、お前ごときが太刀打ちできるような相手ではない。当時十二歳の王弟殿下が今回のことを仕組んだのだと言われれば納得できるほどに頭の切れるお方だ。若干十二歳といえど、何も分からず利用されたとは思えん。学園内の教会に移動したのもカスパル殿下の入学に併せてだ。
絶対にお前は……、いや、お前も含めたエルンスト殿下の側近、婚約者は教会には近づくな。気づいたら操られている可能性がある」
『そしてコーエン・トッド様!』と入学式の朝に聞いた声が不意に頭に蘇った。
あのピンクは王弟殿下も狙っていたのではなかったか……
王族の醜聞と王宮の政争、暗闘だけでも食傷気味だったところに、とんでもなく面倒臭そうなものを思い出してしまい俺は思わず眉を顰めた。
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