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こんにちは魔王様4
しおりを挟む息をする事すら躊躇われる静寂の中、リナリーは玉座に座る魔王に頭を垂れ、恭しく挨拶を述べようとした。
「人間国公爵令嬢、リナリー・ガボットでございます。この度は」
「堅苦しい挨拶はいい。顔を上げてくれ。」
「は、、、?」
リナリーは途中で挨拶を止められ、思わず言われた通りに顔を上げてしまった。そして、魔王の姿に息を呑んだ。
闇を映したような黒髪を一つに括り、真っ赤な真紅の瞳にリナリーの姿を映す。
なんと妖艶で、艶めかしい美丈夫であろうか。
「俺の名前はシバ・ロイ。シバと呼んでくれ。美しい我が妃よ。」
「は、、、?」
「美しい我が妃は声も可愛らしいな。」
「は?」
「銀色の艷やかな髪も、夜空の星を散りばめたように煌めく瞳も、真赤な熟れた林檎のような唇も、全てが愛おしい。」
「は?」
リナリーは、とりあえず辺りをきょろきょろと見回し、誰に言っているのか探した。
すると横にいた長身の男性が肩を小さく揺らした。
どうやら笑われているのは自分らしい。
リナリーはシバを下から伺うように、コテンと首を傾げて呟いた。
「あの、どなたにおっしゃっているのでしょうか?」
その瞬間に横の男性が吹き出した。それをシバは睨みつける。
「あの、魔王様?もしや、今のはそちらの男性に、、、!?」
「貴方に言ったのだ!気色の悪いことを言わないでくれ!」
シバは慌てて、少し怒ったように言った。
横で肩を揺らし続けていた男性は口元を抑え、笑みを抑えると穏やかな口調でリナリーに答えた。
「リナリー様。私はこの国の宰相を努めます、ロデリック・エレビアでございます。それと、貴方に愛を囁やこうと頑張っておられている魔王様をあまりイジメないでくださいませ。」
「は?」
リナリーは首をもう一度かしげ、そして、次の瞬間顔を真っ赤に染めた。
(も、、、もしかして私に、愛を囁いておられたということ?)
するとシバは椅子から立ち上がり、軽やかにリナリーの前までやってくると、跪き、リナリーの顔をその美しい顔で覗き込んだ。
「愛を囁かれるのは、不快だろうか?」
ボンっ!と、頭から湯気がでたような気がした。リナリーは顔を真赤に染め、硬直して動けなくなった。
「いいいい、、、いえ、、不快では、、ないのですが、、。」
「そうか!やはり、夫婦になるのだから、愛を築いていこう。」
次の瞬間、リナリーのキャパはオーバーした。疲れもあったのだろう。
リナリーの意識は闇の中へと落ちていってしまった。
ふらりと倒れるリナリーを慌てて抱きとめたシバは顔を青ざめさせた。
「リナリー!、、どうした?!リナリー?」
慌てる魔王を横目に、冷静にロデリックは告げた。
「気を失っていますね。疲れがまたっていた所で魔王様のアタックに耐えられなかったのでしょうか?」
「俺のせいか?!」
「どうでしょう。とりあえず、お部屋に運び休ませてあげるのが良いでしょう。」
「大丈夫か?大丈夫なのか?」
魔王のあまりの慌てように、ロデリックは笑いを噛み殺した。
見せかけだけかと思ったが、誠実に着実に愛を育もうとしているらしい。
リナリーが城に到着するまでの一週間、ドレスや部屋などを甲斐甲斐しく準備したり、魔法探知能力を使いリナリーの様子を探ったりしていたのを見た時には、少しストーカー気質を感じたものの、魔王なりに頑張っているのだなぁとロデリックは思うのであった。
だが果たして、その愛の行方はどうなるのか。
リナリーのドレスからアクセサリーに至るまで自分の物であると主張の激しい装いに小さく苦笑を漏らしてしまうのであった。
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