6 / 25
6話
しおりを挟む
案内されたリビング
暖炉の火の熱の伝わる位置のソファーに腰かけ
ウィリアム様がいれてくれたスープの入ったマグに口をつける
先ほど、オルターさんに怪我の治療もして頂いた
恐ろしく早い手際で驚いたものだ
「お、落ち着いたかい?痛くはないか?」
「はい、大丈夫ですよウィリアム様、ありがとうございます」
ソファーに座る私の向かいに椅子を置き、腰かけるウィリアム様は
大きなお腹を少し気にしてか、さすりながら声をかけてくれた
「良かった、もし痛みなど感じればすぐに声をかけてくれ」
「はい」
少しの沈黙が流れる
お互いに何を話せばいいのか探り合うように
「あの、ウィリアム様」
私は気恥ずかしい気持ちを抑えて声をかける
「どうした?」
「その…婚約の件ですが」
私はマグを両手で包み込み、顔が赤くなるのを感じながら
「喜んでお受けいたします」とあの手紙の返事をしようと顔を上げた瞬間
「あ、あの婚約の件は…気にしないでくれ」
「え?」
チクリと、胸が痛んだ気がした
「シャーロットの事情はおおよそ察している…大変だったろう、婚約の件は君の援助のためにと思ったんだ」
「援助…ですか?」
「君が僕の家に嫁ぐ事になれば身の保証もできる、それにレオナード様も下手に手出しもできないだろう」
「それでは…婚約の件は…」
「あれは、偽装婚約ということで…シャーロットが勘当されて頼る先もないなか婚約を申し込むなんて、そんな事では無理強いと一緒だから…気にしないでくれ、こんな見た目の僕が君の隣ではふさわしくない…豚公爵と呼ばれる男だ」
「そんなこと!」
自嘲気味に笑うウィリアム様の言葉を否定する
私は、あなたの見た目などではなく
その心に
優しさに惹かれているのだと言おうとしたが
次の彼の言葉で途切れる
「僕は、女性が苦手なんだ…いまも君を目の前にして手が震えている…愛する事などできないし…愛してもらえるとも思っていない」
私の気持ちは喉まで出かかった所で止まる
今、私の一方的な気持ちを伝えても彼には負担になるのかもしれない
現に彼の言葉の通り、手が震えていた
私と話していた時の汗も、冷や汗だったのだろうか
「ご、ごめんなさい…そんな状態で私を招いて頂いて」
「いや、いいんだ…こちらこそすまない、君には僕と結婚したという汚点を付けてしまった」
「ウィリアム様!自分の事を卑下しないでください…あなたは素敵な人です…」
「君は…変わらず優しいね…偽装結婚なんだ、恋愛など自由にしてほしい、いい人がいれば事情を説明して結婚してもらって構わない」
ウィリアム様の言葉に、返事ができない
恋愛は自由?いい人?
そんなの…あなたしか…
私は、、今は何も考えられない
淡い期待が消えてしまい、気分が落ち込んでしまう
だめだ、表情に出してはいけない
涙を抑えろ、彼の優しさに甘えて勝手に好きになってしまったんだ
みんなに優しい彼が私だけを特別に思ってくれるわけじゃない
こんな気持ち…
彼はそんなの望んでいないのに
「今日は疲れただろう?オルターに部屋を用意してもらっている、ゆっくり休むといい」
私は立ち上がり、頭を下げる
この気持ちに蓋をしよう、抱いていけない気持ちが彼を苦しめる事になるのなら
「ありがとうございます、ウィリアム様…これから…お願いします」
「あぁ…シャーロット、これからよろしく頼む」
部屋を後にして、オルターさんに案内して頂いた部屋へ入る
綺麗に掃除された部屋、寝台に横になり
瞳を抑える
彼の優しさに、勘違いしていた
あれは私だけに向けられた気持ちではないんだ
女性が苦手な彼が私を迎えてくれた
手が震えて、冷や汗をかきながら私を心配して招いてくれた
たまらなく嬉しい、この気持ちはきっと恋なのだろう
レオナード様にも
誰にも抱いた事のない気持ち
初めての想い
けどそれが彼を苦しめるのなら
忘れよう、この気持ちを
横になりながら、私は静かに涙を流した
明日は平常心になれると信じて
暖炉の火の熱の伝わる位置のソファーに腰かけ
ウィリアム様がいれてくれたスープの入ったマグに口をつける
先ほど、オルターさんに怪我の治療もして頂いた
恐ろしく早い手際で驚いたものだ
「お、落ち着いたかい?痛くはないか?」
「はい、大丈夫ですよウィリアム様、ありがとうございます」
ソファーに座る私の向かいに椅子を置き、腰かけるウィリアム様は
大きなお腹を少し気にしてか、さすりながら声をかけてくれた
「良かった、もし痛みなど感じればすぐに声をかけてくれ」
「はい」
少しの沈黙が流れる
お互いに何を話せばいいのか探り合うように
「あの、ウィリアム様」
私は気恥ずかしい気持ちを抑えて声をかける
「どうした?」
「その…婚約の件ですが」
私はマグを両手で包み込み、顔が赤くなるのを感じながら
「喜んでお受けいたします」とあの手紙の返事をしようと顔を上げた瞬間
「あ、あの婚約の件は…気にしないでくれ」
「え?」
チクリと、胸が痛んだ気がした
「シャーロットの事情はおおよそ察している…大変だったろう、婚約の件は君の援助のためにと思ったんだ」
「援助…ですか?」
「君が僕の家に嫁ぐ事になれば身の保証もできる、それにレオナード様も下手に手出しもできないだろう」
「それでは…婚約の件は…」
「あれは、偽装婚約ということで…シャーロットが勘当されて頼る先もないなか婚約を申し込むなんて、そんな事では無理強いと一緒だから…気にしないでくれ、こんな見た目の僕が君の隣ではふさわしくない…豚公爵と呼ばれる男だ」
「そんなこと!」
自嘲気味に笑うウィリアム様の言葉を否定する
私は、あなたの見た目などではなく
その心に
優しさに惹かれているのだと言おうとしたが
次の彼の言葉で途切れる
「僕は、女性が苦手なんだ…いまも君を目の前にして手が震えている…愛する事などできないし…愛してもらえるとも思っていない」
私の気持ちは喉まで出かかった所で止まる
今、私の一方的な気持ちを伝えても彼には負担になるのかもしれない
現に彼の言葉の通り、手が震えていた
私と話していた時の汗も、冷や汗だったのだろうか
「ご、ごめんなさい…そんな状態で私を招いて頂いて」
「いや、いいんだ…こちらこそすまない、君には僕と結婚したという汚点を付けてしまった」
「ウィリアム様!自分の事を卑下しないでください…あなたは素敵な人です…」
「君は…変わらず優しいね…偽装結婚なんだ、恋愛など自由にしてほしい、いい人がいれば事情を説明して結婚してもらって構わない」
ウィリアム様の言葉に、返事ができない
恋愛は自由?いい人?
そんなの…あなたしか…
私は、、今は何も考えられない
淡い期待が消えてしまい、気分が落ち込んでしまう
だめだ、表情に出してはいけない
涙を抑えろ、彼の優しさに甘えて勝手に好きになってしまったんだ
みんなに優しい彼が私だけを特別に思ってくれるわけじゃない
こんな気持ち…
彼はそんなの望んでいないのに
「今日は疲れただろう?オルターに部屋を用意してもらっている、ゆっくり休むといい」
私は立ち上がり、頭を下げる
この気持ちに蓋をしよう、抱いていけない気持ちが彼を苦しめる事になるのなら
「ありがとうございます、ウィリアム様…これから…お願いします」
「あぁ…シャーロット、これからよろしく頼む」
部屋を後にして、オルターさんに案内して頂いた部屋へ入る
綺麗に掃除された部屋、寝台に横になり
瞳を抑える
彼の優しさに、勘違いしていた
あれは私だけに向けられた気持ちではないんだ
女性が苦手な彼が私を迎えてくれた
手が震えて、冷や汗をかきながら私を心配して招いてくれた
たまらなく嬉しい、この気持ちはきっと恋なのだろう
レオナード様にも
誰にも抱いた事のない気持ち
初めての想い
けどそれが彼を苦しめるのなら
忘れよう、この気持ちを
横になりながら、私は静かに涙を流した
明日は平常心になれると信じて
202
あなたにおすすめの小説
婚約者に突き飛ばされて前世を思い出しました
天宮有
恋愛
伯爵令嬢のミレナは、双子の妹キサラより劣っていると思われていた。
婚約者のルドノスも同じ考えのようで、ミレナよりキサラと婚約したくなったらしい。
排除しようとルドノスが突き飛ばした時に、ミレナは前世の記憶を思い出し危機を回避した。
今までミレナが支えていたから、妹の方が優秀と思われている。
前世の記憶を思い出したミレナは、キサラのために何かすることはなかった。
【完結】伯爵令嬢は婚約を終わりにしたい〜次期公爵の幸せのために婚約破棄されることを目指して悪女になったら、なぜか溺愛されてしまったようです〜
よどら文鳥
恋愛
伯爵令嬢のミリアナは、次期公爵レインハルトと婚約関係である。
二人は特に問題もなく、順調に親睦を深めていった。
だがある日。
王女のシャーリャはミリアナに対して、「二人の婚約を解消してほしい、レインハルトは本当は私を愛しているの」と促した。
ミリアナは最初こそ信じなかったが王女が帰った後、レインハルトとの会話で王女のことを愛していることが判明した。
レインハルトの幸せをなによりも優先して考えているミリアナは、自分自身が嫌われて婚約破棄を宣告してもらえばいいという決断をする。
ミリアナはレインハルトの前では悪女になりきることを決意。
もともとミリアナは破天荒で活発な性格である。
そのため、悪女になりきるとはいっても、むしろあまり変わっていないことにもミリアナは気がついていない。
だが、悪女になって様々な作戦でレインハルトから嫌われるような行動をするが、なぜか全て感謝されてしまう。
それどころか、レインハルトからの愛情がどんどんと深くなっていき……?
※前回の作品同様、投稿前日に思いついて書いてみた作品なので、先のプロットや展開は未定です。今作も、完結までは書くつもりです。
※第一話のキャラがざまぁされそうな感じはありますが、今回はざまぁがメインの作品ではありません。もしかしたら、このキャラも更生していい子になっちゃったりする可能性もあります。(このあたり、現時点ではどうするか展開考えていないです)
愛されヒロインの姉と、眼中外の妹のわたし
香月文香
恋愛
わが国の騎士団の精鋭二人が、治癒士の少女マリアンテを中心とする三角関係を作っているというのは、王宮では当然の常識だった。
治癒士、マリアンテ・リリベルは十八歳。容貌可憐な心優しい少女で、いつもにこやかな笑顔で周囲を癒す人気者。
そんな彼女を巡る男はヨシュア・カレンデュラとハル・シオニア。
二人とも騎士団の「双璧」と呼ばれる優秀な騎士で、ヨシュアは堅物、ハルは軽薄と気質は真逆だったが、女の好みは同じだった。
これは見目麗しい男女の三角関係の物語――ではなく。
そのかたわらで、誰の眼中にも入らない妹のわたしの物語だ。
※他サイトにも投稿しています
婚約を破棄したいと言うのなら、私は愛することをやめます
天宮有
恋愛
婚約者のザオードは「婚約を破棄したい」と言うと、私マリーがどんなことでもすると考えている。
家族も命令に従えとしか言わないから、私は愛することをやめて自由に生きることにした。
妹のために犠牲になることを姉だから仕方ないで片付けないでください。
木山楽斗
恋愛
妹のリオーラは、幼い頃は病弱であった。両親はそんな妹を心配して、いつも甘やかしていた。
それはリオーラが健康体になってからも、続いていた。お医者様の言葉も聞かず、リオーラは病弱であると思い込んでいるのだ。
リオーラは、姉である私のことを侮っていた。
彼女は両親にわがままを言い、犠牲になるのはいつも私だった。妹はいつしか、私を苦しめることに重きを置くようになっていたのだ。
ある時私は、妹のわがままによって舞踏会に無理な日程で参加することになった。
そこで私は、クロード殿下と出会う。彼との出会いは、私の現状を変えていくことになるのだった。
【完結】愛され令嬢は、死に戻りに気付かない
かまり
恋愛
公爵令嬢エレナは、婚約者の王子と聖女に嵌められて処刑され、死に戻るが、
それを夢だと思い込んだエレナは考えなしに2度目を始めてしまう。
しかし、なぜかループ前とは違うことが起きるため、エレナはやはり夢だったと確信していたが、
結局2度目も王子と聖女に嵌められる最後を迎えてしまった。
3度目の死に戻りでエレナは聖女に勝てるのか?
聖女と婚約しようとした王子の目に、涙が見えた気がしたのはなぜなのか?
そもそも、なぜ死に戻ることになったのか?
そして、エレナを助けたいと思っているのは誰なのか…
色んな謎に包まれながらも、王子と幸せになるために諦めない、
そんなエレナの逆転勝利物語。
悪いのは全て妹なのに、婚約者は私を捨てるようです
天宮有
恋愛
伯爵令嬢シンディの妹デーリカは、様々な人に迷惑をかけていた。
デーリカはシンディが迷惑をかけていると言い出して、婚約者のオリドスはデーリカの発言を信じてしまう。
オリドスはシンディとの婚約を破棄して、デーリカと婚約したいようだ。
婚約破棄を言い渡されたシンディは、家を捨てようとしていた。
他の人を好きになったあなたを、私は愛することができません
天宮有
恋愛
公爵令嬢の私シーラの婚約者レヴォク第二王子が、伯爵令嬢ソフィーを好きになった。
第三王子ゼロアから聞いていたけど、私はレヴォクを信じてしまった。
その結果レヴォクに協力した国王に冤罪をかけられて、私は婚約破棄と国外追放を言い渡されてしまう。
追放された私は他国に行き、数日後ゼロアと再会する。
ゼロアは私を追放した国王を嫌い、国を捨てたようだ。
私はゼロアと新しい生活を送って――元婚約者レヴォクは、後悔することとなる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる