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三章
87話
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-カルセイン王国調査報告書ー
現王シュルク陛下による時戻しにより、十年の時を巻き戻された後。
元グラナート王妃であり、現帝国皇后の尽力によって運命の変更が完了。
戦争は回避され、ナーディス家の生き残りであったヒルダ・ナーディスは処刑。
カルセイン王国では本件について限られた者だけで秘匿する事となった。
---
しかし、時戻りから十年が経ち。
同じ時間軸となった際、異常事案が発生。
カルセイン国内や、他諸外国内でも前回の記憶が戻る者が確認された。
現王シュルク陛下は本事案に緊急調査を開始。
記憶が戻った者達から前回の再調査を始めた所。前述で解決したと思われた事案に追加の情報有。
ヒルダ・ナーディス単独の犯行と思われた前回の計画。
実際には、彼女へ協力あるいは加担した者が複数存在していた事が判明。
現在、該当人物達を調査中。
香油によって操られていた可能性も調査中。
そして、現在もヒルダ同様に危険思想を持つ者が他に生存する可能性有。
本件はシュルク陛下の命により再調査開始。
調査により、帝国内では二人の協力者がいた事が判明。
一人目。
前公卿のヴォーレン・バジルア。
前回=帝国内の情報や、帝国軍の進軍情報をヒルダへ伝達。
今世=帝国への反逆罪によって死罪。
二人目。
-----
前回=ヒルダの指示により、各国で多数の死者を出した大規模魔法災害を行使。
児童を多数殺害した証言有。
今世=前回同様に危険思想を持つ可能性有として調査中。
他、各国にも協力者が生存している事を確認。
アイゼン帝国への情報共有は、現在審議中。
◇◇◇ ◇◇◇
アイゼン帝国に幾多ある学園の中で、魔法学を専門とするのは一校のみ。
帝国魔法学園。
三十年前より帝国領内に建った学園だが、とある条件により帝国ですら介入不可となっていた。
それは現皇帝シルウィオの父。前皇帝が学園を建設する際に交わした内容。
『学園内にアイゼン帝国の介入を禁ずる』との条件が原因だ。
カルセインへ憧れ持つ前皇帝が、帝国で魔法学を発展させるために許してしまった条件。
表向きは魔術師を多く輩出する学園だが、監査する機関の無いこの場所では歪な上下関係が築かれていた。
……
帝国魔法学園内。
通路の中心を歩く男子生徒が、前を歩く女生徒を後ろから蹴りつけた。
「おい、平民女が……俺の前歩くなよ」
「っ! ごめんなさい!」
女生徒のミラは蹴られたうえに髪を引っ張られて、悲鳴を上げる。
その声を面白がるのは、彼女の同級生であるデズラだ。
「落ちこぼれが……迷惑なんだよ、学園の面汚しが」
「うぐっ……ごめ、ごめんなさい」
デズラの横暴を止める者は居らず、周囲はただ見て見ぬふりを貫くのみ。
この学園で築かれる歪な上下関係がこの現状を許していた。
「やめて……ください」
暴力に平伏したミラを見て、デズラは愉悦を感じつつ彼女の髪飾りを取り上げる。
「だ、だめ……それは、お母さんの」
「黙れ、俺の行動に文句があるか?」
「亡くなったお母さんの、形見なの……」
「口答えした、気に食わないな。お前」
「っちが! やめ!」
デズラが髪飾りを空ヘ放り投げ、そのまま指先に魔法を集めて破壊しようとした瞬間。
「待ちなさい」
「っ!! 学園長……」
デズラや他の生徒が姿勢を正して見つめたのは、通路から歩いてくる学園長––マルナスだ。
六十という歳ながらもカルセイン国の王家に並ぶと噂される魔力を持つ男性。
温和な表情と優しい声色に、周囲の生徒達も彼を慕っていた。
「デズラ君。魔法を不用意に使ってはいけないよ。自分の魔力は大事にしなさい」
「は、はい……」
「いい子だ。さぁ、直ぐに教室に向かいなさい」
デズラを含め、その場にいた生徒達がマルナス学園長に大人しく従う。
信頼厚く、生徒から慕われる彼。
そんなマルナスは、ミラの髪飾りを手に持った。
「大丈夫かい?」
「あ……ありがとうございます」
「生徒同士のいざこざは、いつになっても絶えないのう。儂ももっと頑張らないと」
微笑みつつ、ミラへと髪飾りを渡そうとしていたマルナスは思い出したように尋ねた。
「ところで、君……名前はなんだっただろうか」
「え? ミ、ミラです」
「あぁ……魔力量が低いクズではないか」
「ぇ?」
突然、微笑みを消したマルナスは髪飾りを握りつぶした。
ひしゃげて壊れた物を地面へ無造作に投げ、ミラを睨む。
「止める必要は無かったな。魔力量の少ないクズなど我が学園では虐げる存在でしか意義はないのだから」
「あ……お母さん……」
「散らしたゴミは、拾い集めておけ」
マルナス学園長がこの学園で作ったルールは、魔力量によるカースト。
魔力量の多い生徒を優遇し、逆は人間扱いも許さない。
逃げたくとも、寮生として入った学園からは卒業まで抜け出す事は出来なかった。
「う……お母さん。ごめんなさい。ごめんなさい……」
拾い集めた髪飾りだった物を握りしめ、ミラは泣き崩れる。
デズラに目を付けられて虐げられても逃げる事はできない。
心はすでに壊れかけであり、それを支えてくれていた母の髪飾りもこの有り様。
「助けて…………誰か」
学園の通路、誰も居ない場所で求めた助け。
答えなど期待していない、返って来るはずが無かったのに。
「どうしたの?」
「っ!?」
聞こえた声にミラが顔を上げれば、見知らぬ少女が立っていた。
悪も知らぬような屈託のない笑顔を浮かべ、紅の瞳が見つめてくる。
「だ、誰?」
「私、リルレット。この学園に内緒で潜入中なの」
「せ、潜入?」
「それ、壊れてる! リルが直してあげるよ」
「え……」
ミラの手に持っていた髪飾りが、淡い光放ったと同時に元の形へと戻る。
一瞬の出来事に動揺しているとミラヘ、リルレトットは笑いかけた。
「ね、一つ聞きたいの。リル、この学園に入学しようと思ってるんだけど。楽しい?」
「……」
夢かと見紛うような出来事に困惑はあったが。
自然と、ミラは涙を流しながら少女へ答えていた。
「楽しくない……辛いよ」
「え……なんで」
「おい! なにやってんだよ。落ちこぼれ!」
リルレットの問いかけをかき消し、地面を踏み荒らすように足音を立ててやって来たのはデズラだった。
ミラを睨みつけながら、再び魔法を指に宿した。
「さっき、学園長が許可してくれたんだよ。お前なら……思う存分痛めつけてもいいってな」
「や、やめ……」
「まずは、髪の毛を全部燃やしてやるよ」
デズラが放った炎に、ミラが叫び声を上げる。
しかし……前に立つリルレットが、ニコニコと笑いながらデズラの魔法を消し去った。
「やっぱ、リル。この学園はやーめた」
「お、お前! だ、誰だ!! この学園で最優秀生徒の俺の魔法を……」
「あはは、どうでもいい~。こんなの役に立たないよ」
「はぁ!?」
「魔法はね、人の幸せのために使うべきなんだ。リルはあんまりこんな事に魔法を使いたくないけど、ちょっと許せないよ、貴方」
笑っていた少女の笑みが消え、睨んでくる紅い瞳にデズラが恐怖を感じた瞬間。
彼女が瞬時に放った火球が、見た事もないほど大規模に広がって校舎を覆って燃やした。
「あ! あがぁぁ!! あ、熱い!! た、たすけ! あぁぁ!」
燃え上がる熱さに身をよじったデズラだが、気付けば目の前にあった炎は消えていた。
いや、それどころか校舎は燃えておらず。デズラの身体も無事。
ただ、永久に思える時間を業火に燃やされた痛みや苦しみは記憶に確かに残っている。
「あ……あぁ」
「記憶干渉魔法、こんな事に使いたくないから。これ以上……この子をいじめないでね」
(こんな魔法、知らない……学園長でさえ、こんなの使えないはず……)
自身よりも年下であろう少女が持つ、未知数の魔力。
デズラは恐怖を感じて……一歩後ずさる。
そんな彼の背中を、後ろから支える者がいた。
「どうした、デズラ」
「が、学園長!?」
再びやってきた学園長のマルナスが、リルレットを見つめて呟きを漏らした。
「素晴らしい魔力量だ、なんという逸材」
「学園長! あいつをどうにかしてください! 生意気な事を言って」
「黙れ」
「え?」
突然、デズラの首をマルナスが掴む。
その瞬間に彼の魔力がマルナスに吸われていき。痺れる痛みが身体を襲った。
リルレットとミラは、その行動に目を見開く。
「あ……あぐぅぅ! が、学園長?」
「お前ら学徒など、儂の魔力補給のための贄に過ぎん。そして上質な餌がきた今、無価値同然」
「そ……んな」
魔力を吸われ、気を失ったデズラを放り投げ。
マルナス学園長はリルレットへと一歩、近づいた。
「素晴らしい魔力だ。君……噂に聞く、皇女だね」
「リル、むかし悪い人を見てたから。おじいさん……すごく悪い人だって分かるよ」
「あぁ……この学園を建てた目的は魔力優秀者を優遇して飼いならして、儂が魔力を吸うための贄にするため。それがお前から見れば、悪かもしれんな」
「何人、犠牲にしてきたの?」
「十人。皆……儂の良い魔力になってくれたよ」
「……最低。でも……来て良かった」
リルレットは、呆然とするミラの手を掴んだ。
「立てる? 逃げて」
「え……でも。貴方は」
「大丈夫。もう……お父様が気付いたから」
「ど、どういう意味?」
「逃げて」
リルレットに背を押されて、ミラは逃げ出す。
マルナスは、舐るようにリルレットを見つめ続けた。
「お前の魔力を吸えば……儂の魔力は世界一となるはずだ」
「……ねぇ、大人しく諦めた方がいいよ」
「馬鹿にするな。儂は歴戦の魔術師……貴様ごときに遅れはとら––」
「あ、お父様が来る」
「は?」
マルナスが意気揚々と話し始めた瞬間。
魔法による光が眩き、その場に複数人の男性が現れた。
中でも、銀髪で紅眼の男は……マルナスでさえ知っている男。
「シ、シルウィオ皇帝……」
「誰だ、貴様」
転移魔法でやってきたシルウィオは、マルナスには目もくれずにリルレットを抱きしめた。
「無断で行くな、心配する」
「ごめんなさい。お父様……」
「だが、リル。お前のおかげで幾人も救われた」
「でもリルレット様、無茶はいけませんよ。陛下は凄く心配しておられましたよ」
「そ、その通りですぜ!」
「グレイン、ギルクも……ありがとう」
皇帝に加え、グレインにギルク
いずれも帝国内で名のある騎士が呼び出された現状に、マルナスは唾を呑む。
立場は一瞬にして劣勢。
されど、マルナスには奥の手があった。
「……ここまで知られて、逃がす訳にはいかぬ。相手が皇帝であろうと関係ない!」
学園の壁へと手を当てれば、周囲から黒い人形が次々と現れ出す。
無数の人形が、シルウィオ達を囲った。
「長年貯めて、蓄積した魔力人形だ。そこらの帝国騎士でも適わぬ相手に殺されるがい––」
「ギルク、そっちは任せた」
「は、はい! グレインさん!」
口上を述べていた途中であったのに、長年をかけて貯めてきた魔力人形は。
グレインにより、瞬きの間に切り裂かれた。
次々と、呆気ないほどの速さで。
「た、助けてください! グレインさん! こいつら、結構強いですよぉ!」
「ギルク……頑張ればボーナスだぞ」
「な!? ……グレインさん、ここは俺に任せてください!」
ギルクという騎士は魔力人形に手間取っているが、本来ならば一体でも帝国騎士と同等。
多くの数を足止めしているだけで、マルナスにとって異常事態だ。
そして、こんな現状であってもシルウィオはリルレットを抱き上げながら。
まるで散歩中かの如く、日常会話をおこなっていた。
「リルレット、先に帰れるか? 今日はカティがケーキを手作りしてくれる」
「え!? お母様が!」
「あぁ、お手伝いしてあげられるか? 俺も直ぐに帰る」
「うん、リルお手伝いしてくる!」
いとも自然に転移魔法で帰還したリルレット。
その光景にマルナスはただ呆然と、幻を見ているかのように信じられなかった。
「さて……お前、名は?」
今さら聞かれた名前。
まるで、面倒な時間だというような態度が……マルナスのプライドに怒りを灯した。
「わ、儂を、このマルナスを……知らんのか若造が!」
「下劣な貴様を今まで見逃していたのは……父の失態と共に、俺の責だ」
「儂の考えを愚弄するなぁ! 世界を変えるのは魔法のみ、儂は魔力量を高め、正当で平等に判断される世界を作るのだ! 二度と儂を馬鹿にする者が居ない世界を実現させるた」
「長い」
「おぶっ!?!」
「貴様の話よりも、俺はカティの手作りケーキの方が気になる」
マルナスは壁に叩きつけられた後。
彼の手から肩にかけて、まるで渦を巻くかの如く捻じれていった。
抵抗のための魔法を放つも、シルウィオの前では全て無力だった。
「や! やめ! い、いがぁぁ いだ。たすけ……」
「人を殺した貴様を、簡単には殺さん」
片腕が終われば、もう一つ残った腕。
そして足……地獄のごとき痛みを受けても、気絶も死ぬことも許されない。
「だ、だずけ……やめ」
「苦しみ続けろ」
マルナスの身体は、生きながらにして痛みだけを味わうだけの崩壊した身体へと変わった。
「あ……ぁ……ぁ」
「……後始末は任せられるか? グレイン、ギルク」
「「はっ!!」」
「俺は、直ぐにカティの元に戻る」
ケーキを食べられることにウキウキとした様子のシルウィオは、転移魔法によって移動する。
その姿に、グレイン達は小さく笑いながらも自分達の仕事を行った。
その後、学園長の悪事が暴かれ、生徒達は別の学園へと移る事になった。
奇跡的に命があったデズラは、恐怖により精神病となる。
そしてミラは、新たにカルセイン王国での魔法学園へ入学が決まり。新たな学友と共に勉学に励んだ。
◇◇◇
一ヶ月後。
帝国へと来訪したカルセイン王国の現王シュルクは、謁見したシルウィオの前で驚きの声を漏らした。
「まさか……もうマルナスと会っていたなんて……」
「誰だ、そいつ」
「い、一応! あのヒルダと並ぶ危険人物なんですけど……」
シュルクは来訪したのは、調査していた事を共有するためだ。
近年、前世の記憶を思い出す者が急増している事。
それに心当たりのあるシルウィオは驚きもしなかったが、彼が続けた言葉には目を見開いた。
前回、あのヒルダへ協力していた者がいる事実。
その者達は今も生きており、危険思想を抱いている可能性が高いという事。
「マルナスがそうであったように、彼らはヒルダ同様に危険だと思われます」
「……面倒だな」
「協力者と思われる者達が今現在いる国は、こちらでリストにしました」
「……」
そのリストには、帝国近隣の国にも幾つか名があった。
「僕はリルレット姫や帝国に命を救ってもらい、無事に王となれた。恩を返すためにもカルセイン国が彼らを調査します。帝国にこれ以上迷惑をかけません」
リルレットより寿命が永らえたシュルク。
今や王となり、頼りになる彼に……シルウィオは微笑んだ。
「では……任せ––」
全て任せ、家族の時間をとろうと思った刹那。
シルウィオの思考に閃きが灯る。
(他国への旅行は、カティと約束していたな……子供達も喜ぶはずだ。なにより長く一緒にいれる)
「……あの、シルウィオ皇帝?」
(このリストの者共は、ついでに調べて必要なら消すだけ)
「あの……」
(きっと喜んでくれるだろうし、きっとカティに好きと言ってもらえる……)
一つの答えに辿りついたシルウィオは、頬を少し緩めて呟いた。
「俺がやる」
「…………断れなさそうですね」
無表情のままどこか嬉しそうなシルウィオを見て、シュルクはため息を吐く。
家族の事となれば口答えは出来ないと、彼はよく知っていた。
こうして、シルウィオは家族旅行へ行く事を決めた。
ついでに危険思想者を潰しながら。
◇◇◇お知らせ◇◇◇
いつも読んでくださっている皆様、ありがとうございます。
一つお知らせをさせてください。
新たに私の作品【では、離婚しましょうか】を投稿いたします。
帝国の頼れるジェラルド様の、過去のお話となります!
カーティアが皇后となる十年以上前の帝国でのお話なので、お暇な時に読んでくださると嬉しいです!
また、そちらを読まなくても本作を楽しめるようにもしておりますので!
本作も引き続き楽しんでくださると嬉しいです!
現王シュルク陛下による時戻しにより、十年の時を巻き戻された後。
元グラナート王妃であり、現帝国皇后の尽力によって運命の変更が完了。
戦争は回避され、ナーディス家の生き残りであったヒルダ・ナーディスは処刑。
カルセイン王国では本件について限られた者だけで秘匿する事となった。
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しかし、時戻りから十年が経ち。
同じ時間軸となった際、異常事案が発生。
カルセイン国内や、他諸外国内でも前回の記憶が戻る者が確認された。
現王シュルク陛下は本事案に緊急調査を開始。
記憶が戻った者達から前回の再調査を始めた所。前述で解決したと思われた事案に追加の情報有。
ヒルダ・ナーディス単独の犯行と思われた前回の計画。
実際には、彼女へ協力あるいは加担した者が複数存在していた事が判明。
現在、該当人物達を調査中。
香油によって操られていた可能性も調査中。
そして、現在もヒルダ同様に危険思想を持つ者が他に生存する可能性有。
本件はシュルク陛下の命により再調査開始。
調査により、帝国内では二人の協力者がいた事が判明。
一人目。
前公卿のヴォーレン・バジルア。
前回=帝国内の情報や、帝国軍の進軍情報をヒルダへ伝達。
今世=帝国への反逆罪によって死罪。
二人目。
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前回=ヒルダの指示により、各国で多数の死者を出した大規模魔法災害を行使。
児童を多数殺害した証言有。
今世=前回同様に危険思想を持つ可能性有として調査中。
他、各国にも協力者が生存している事を確認。
アイゼン帝国への情報共有は、現在審議中。
◇◇◇ ◇◇◇
アイゼン帝国に幾多ある学園の中で、魔法学を専門とするのは一校のみ。
帝国魔法学園。
三十年前より帝国領内に建った学園だが、とある条件により帝国ですら介入不可となっていた。
それは現皇帝シルウィオの父。前皇帝が学園を建設する際に交わした内容。
『学園内にアイゼン帝国の介入を禁ずる』との条件が原因だ。
カルセインへ憧れ持つ前皇帝が、帝国で魔法学を発展させるために許してしまった条件。
表向きは魔術師を多く輩出する学園だが、監査する機関の無いこの場所では歪な上下関係が築かれていた。
……
帝国魔法学園内。
通路の中心を歩く男子生徒が、前を歩く女生徒を後ろから蹴りつけた。
「おい、平民女が……俺の前歩くなよ」
「っ! ごめんなさい!」
女生徒のミラは蹴られたうえに髪を引っ張られて、悲鳴を上げる。
その声を面白がるのは、彼女の同級生であるデズラだ。
「落ちこぼれが……迷惑なんだよ、学園の面汚しが」
「うぐっ……ごめ、ごめんなさい」
デズラの横暴を止める者は居らず、周囲はただ見て見ぬふりを貫くのみ。
この学園で築かれる歪な上下関係がこの現状を許していた。
「やめて……ください」
暴力に平伏したミラを見て、デズラは愉悦を感じつつ彼女の髪飾りを取り上げる。
「だ、だめ……それは、お母さんの」
「黙れ、俺の行動に文句があるか?」
「亡くなったお母さんの、形見なの……」
「口答えした、気に食わないな。お前」
「っちが! やめ!」
デズラが髪飾りを空ヘ放り投げ、そのまま指先に魔法を集めて破壊しようとした瞬間。
「待ちなさい」
「っ!! 学園長……」
デズラや他の生徒が姿勢を正して見つめたのは、通路から歩いてくる学園長––マルナスだ。
六十という歳ながらもカルセイン国の王家に並ぶと噂される魔力を持つ男性。
温和な表情と優しい声色に、周囲の生徒達も彼を慕っていた。
「デズラ君。魔法を不用意に使ってはいけないよ。自分の魔力は大事にしなさい」
「は、はい……」
「いい子だ。さぁ、直ぐに教室に向かいなさい」
デズラを含め、その場にいた生徒達がマルナス学園長に大人しく従う。
信頼厚く、生徒から慕われる彼。
そんなマルナスは、ミラの髪飾りを手に持った。
「大丈夫かい?」
「あ……ありがとうございます」
「生徒同士のいざこざは、いつになっても絶えないのう。儂ももっと頑張らないと」
微笑みつつ、ミラへと髪飾りを渡そうとしていたマルナスは思い出したように尋ねた。
「ところで、君……名前はなんだっただろうか」
「え? ミ、ミラです」
「あぁ……魔力量が低いクズではないか」
「ぇ?」
突然、微笑みを消したマルナスは髪飾りを握りつぶした。
ひしゃげて壊れた物を地面へ無造作に投げ、ミラを睨む。
「止める必要は無かったな。魔力量の少ないクズなど我が学園では虐げる存在でしか意義はないのだから」
「あ……お母さん……」
「散らしたゴミは、拾い集めておけ」
マルナス学園長がこの学園で作ったルールは、魔力量によるカースト。
魔力量の多い生徒を優遇し、逆は人間扱いも許さない。
逃げたくとも、寮生として入った学園からは卒業まで抜け出す事は出来なかった。
「う……お母さん。ごめんなさい。ごめんなさい……」
拾い集めた髪飾りだった物を握りしめ、ミラは泣き崩れる。
デズラに目を付けられて虐げられても逃げる事はできない。
心はすでに壊れかけであり、それを支えてくれていた母の髪飾りもこの有り様。
「助けて…………誰か」
学園の通路、誰も居ない場所で求めた助け。
答えなど期待していない、返って来るはずが無かったのに。
「どうしたの?」
「っ!?」
聞こえた声にミラが顔を上げれば、見知らぬ少女が立っていた。
悪も知らぬような屈託のない笑顔を浮かべ、紅の瞳が見つめてくる。
「だ、誰?」
「私、リルレット。この学園に内緒で潜入中なの」
「せ、潜入?」
「それ、壊れてる! リルが直してあげるよ」
「え……」
ミラの手に持っていた髪飾りが、淡い光放ったと同時に元の形へと戻る。
一瞬の出来事に動揺しているとミラヘ、リルレトットは笑いかけた。
「ね、一つ聞きたいの。リル、この学園に入学しようと思ってるんだけど。楽しい?」
「……」
夢かと見紛うような出来事に困惑はあったが。
自然と、ミラは涙を流しながら少女へ答えていた。
「楽しくない……辛いよ」
「え……なんで」
「おい! なにやってんだよ。落ちこぼれ!」
リルレットの問いかけをかき消し、地面を踏み荒らすように足音を立ててやって来たのはデズラだった。
ミラを睨みつけながら、再び魔法を指に宿した。
「さっき、学園長が許可してくれたんだよ。お前なら……思う存分痛めつけてもいいってな」
「や、やめ……」
「まずは、髪の毛を全部燃やしてやるよ」
デズラが放った炎に、ミラが叫び声を上げる。
しかし……前に立つリルレットが、ニコニコと笑いながらデズラの魔法を消し去った。
「やっぱ、リル。この学園はやーめた」
「お、お前! だ、誰だ!! この学園で最優秀生徒の俺の魔法を……」
「あはは、どうでもいい~。こんなの役に立たないよ」
「はぁ!?」
「魔法はね、人の幸せのために使うべきなんだ。リルはあんまりこんな事に魔法を使いたくないけど、ちょっと許せないよ、貴方」
笑っていた少女の笑みが消え、睨んでくる紅い瞳にデズラが恐怖を感じた瞬間。
彼女が瞬時に放った火球が、見た事もないほど大規模に広がって校舎を覆って燃やした。
「あ! あがぁぁ!! あ、熱い!! た、たすけ! あぁぁ!」
燃え上がる熱さに身をよじったデズラだが、気付けば目の前にあった炎は消えていた。
いや、それどころか校舎は燃えておらず。デズラの身体も無事。
ただ、永久に思える時間を業火に燃やされた痛みや苦しみは記憶に確かに残っている。
「あ……あぁ」
「記憶干渉魔法、こんな事に使いたくないから。これ以上……この子をいじめないでね」
(こんな魔法、知らない……学園長でさえ、こんなの使えないはず……)
自身よりも年下であろう少女が持つ、未知数の魔力。
デズラは恐怖を感じて……一歩後ずさる。
そんな彼の背中を、後ろから支える者がいた。
「どうした、デズラ」
「が、学園長!?」
再びやってきた学園長のマルナスが、リルレットを見つめて呟きを漏らした。
「素晴らしい魔力量だ、なんという逸材」
「学園長! あいつをどうにかしてください! 生意気な事を言って」
「黙れ」
「え?」
突然、デズラの首をマルナスが掴む。
その瞬間に彼の魔力がマルナスに吸われていき。痺れる痛みが身体を襲った。
リルレットとミラは、その行動に目を見開く。
「あ……あぐぅぅ! が、学園長?」
「お前ら学徒など、儂の魔力補給のための贄に過ぎん。そして上質な餌がきた今、無価値同然」
「そ……んな」
魔力を吸われ、気を失ったデズラを放り投げ。
マルナス学園長はリルレットへと一歩、近づいた。
「素晴らしい魔力だ。君……噂に聞く、皇女だね」
「リル、むかし悪い人を見てたから。おじいさん……すごく悪い人だって分かるよ」
「あぁ……この学園を建てた目的は魔力優秀者を優遇して飼いならして、儂が魔力を吸うための贄にするため。それがお前から見れば、悪かもしれんな」
「何人、犠牲にしてきたの?」
「十人。皆……儂の良い魔力になってくれたよ」
「……最低。でも……来て良かった」
リルレットは、呆然とするミラの手を掴んだ。
「立てる? 逃げて」
「え……でも。貴方は」
「大丈夫。もう……お父様が気付いたから」
「ど、どういう意味?」
「逃げて」
リルレットに背を押されて、ミラは逃げ出す。
マルナスは、舐るようにリルレットを見つめ続けた。
「お前の魔力を吸えば……儂の魔力は世界一となるはずだ」
「……ねぇ、大人しく諦めた方がいいよ」
「馬鹿にするな。儂は歴戦の魔術師……貴様ごときに遅れはとら––」
「あ、お父様が来る」
「は?」
マルナスが意気揚々と話し始めた瞬間。
魔法による光が眩き、その場に複数人の男性が現れた。
中でも、銀髪で紅眼の男は……マルナスでさえ知っている男。
「シ、シルウィオ皇帝……」
「誰だ、貴様」
転移魔法でやってきたシルウィオは、マルナスには目もくれずにリルレットを抱きしめた。
「無断で行くな、心配する」
「ごめんなさい。お父様……」
「だが、リル。お前のおかげで幾人も救われた」
「でもリルレット様、無茶はいけませんよ。陛下は凄く心配しておられましたよ」
「そ、その通りですぜ!」
「グレイン、ギルクも……ありがとう」
皇帝に加え、グレインにギルク
いずれも帝国内で名のある騎士が呼び出された現状に、マルナスは唾を呑む。
立場は一瞬にして劣勢。
されど、マルナスには奥の手があった。
「……ここまで知られて、逃がす訳にはいかぬ。相手が皇帝であろうと関係ない!」
学園の壁へと手を当てれば、周囲から黒い人形が次々と現れ出す。
無数の人形が、シルウィオ達を囲った。
「長年貯めて、蓄積した魔力人形だ。そこらの帝国騎士でも適わぬ相手に殺されるがい––」
「ギルク、そっちは任せた」
「は、はい! グレインさん!」
口上を述べていた途中であったのに、長年をかけて貯めてきた魔力人形は。
グレインにより、瞬きの間に切り裂かれた。
次々と、呆気ないほどの速さで。
「た、助けてください! グレインさん! こいつら、結構強いですよぉ!」
「ギルク……頑張ればボーナスだぞ」
「な!? ……グレインさん、ここは俺に任せてください!」
ギルクという騎士は魔力人形に手間取っているが、本来ならば一体でも帝国騎士と同等。
多くの数を足止めしているだけで、マルナスにとって異常事態だ。
そして、こんな現状であってもシルウィオはリルレットを抱き上げながら。
まるで散歩中かの如く、日常会話をおこなっていた。
「リルレット、先に帰れるか? 今日はカティがケーキを手作りしてくれる」
「え!? お母様が!」
「あぁ、お手伝いしてあげられるか? 俺も直ぐに帰る」
「うん、リルお手伝いしてくる!」
いとも自然に転移魔法で帰還したリルレット。
その光景にマルナスはただ呆然と、幻を見ているかのように信じられなかった。
「さて……お前、名は?」
今さら聞かれた名前。
まるで、面倒な時間だというような態度が……マルナスのプライドに怒りを灯した。
「わ、儂を、このマルナスを……知らんのか若造が!」
「下劣な貴様を今まで見逃していたのは……父の失態と共に、俺の責だ」
「儂の考えを愚弄するなぁ! 世界を変えるのは魔法のみ、儂は魔力量を高め、正当で平等に判断される世界を作るのだ! 二度と儂を馬鹿にする者が居ない世界を実現させるた」
「長い」
「おぶっ!?!」
「貴様の話よりも、俺はカティの手作りケーキの方が気になる」
マルナスは壁に叩きつけられた後。
彼の手から肩にかけて、まるで渦を巻くかの如く捻じれていった。
抵抗のための魔法を放つも、シルウィオの前では全て無力だった。
「や! やめ! い、いがぁぁ いだ。たすけ……」
「人を殺した貴様を、簡単には殺さん」
片腕が終われば、もう一つ残った腕。
そして足……地獄のごとき痛みを受けても、気絶も死ぬことも許されない。
「だ、だずけ……やめ」
「苦しみ続けろ」
マルナスの身体は、生きながらにして痛みだけを味わうだけの崩壊した身体へと変わった。
「あ……ぁ……ぁ」
「……後始末は任せられるか? グレイン、ギルク」
「「はっ!!」」
「俺は、直ぐにカティの元に戻る」
ケーキを食べられることにウキウキとした様子のシルウィオは、転移魔法によって移動する。
その姿に、グレイン達は小さく笑いながらも自分達の仕事を行った。
その後、学園長の悪事が暴かれ、生徒達は別の学園へと移る事になった。
奇跡的に命があったデズラは、恐怖により精神病となる。
そしてミラは、新たにカルセイン王国での魔法学園へ入学が決まり。新たな学友と共に勉学に励んだ。
◇◇◇
一ヶ月後。
帝国へと来訪したカルセイン王国の現王シュルクは、謁見したシルウィオの前で驚きの声を漏らした。
「まさか……もうマルナスと会っていたなんて……」
「誰だ、そいつ」
「い、一応! あのヒルダと並ぶ危険人物なんですけど……」
シュルクは来訪したのは、調査していた事を共有するためだ。
近年、前世の記憶を思い出す者が急増している事。
それに心当たりのあるシルウィオは驚きもしなかったが、彼が続けた言葉には目を見開いた。
前回、あのヒルダへ協力していた者がいる事実。
その者達は今も生きており、危険思想を抱いている可能性が高いという事。
「マルナスがそうであったように、彼らはヒルダ同様に危険だと思われます」
「……面倒だな」
「協力者と思われる者達が今現在いる国は、こちらでリストにしました」
「……」
そのリストには、帝国近隣の国にも幾つか名があった。
「僕はリルレット姫や帝国に命を救ってもらい、無事に王となれた。恩を返すためにもカルセイン国が彼らを調査します。帝国にこれ以上迷惑をかけません」
リルレットより寿命が永らえたシュルク。
今や王となり、頼りになる彼に……シルウィオは微笑んだ。
「では……任せ––」
全て任せ、家族の時間をとろうと思った刹那。
シルウィオの思考に閃きが灯る。
(他国への旅行は、カティと約束していたな……子供達も喜ぶはずだ。なにより長く一緒にいれる)
「……あの、シルウィオ皇帝?」
(このリストの者共は、ついでに調べて必要なら消すだけ)
「あの……」
(きっと喜んでくれるだろうし、きっとカティに好きと言ってもらえる……)
一つの答えに辿りついたシルウィオは、頬を少し緩めて呟いた。
「俺がやる」
「…………断れなさそうですね」
無表情のままどこか嬉しそうなシルウィオを見て、シュルクはため息を吐く。
家族の事となれば口答えは出来ないと、彼はよく知っていた。
こうして、シルウィオは家族旅行へ行く事を決めた。
ついでに危険思想者を潰しながら。
◇◇◇お知らせ◇◇◇
いつも読んでくださっている皆様、ありがとうございます。
一つお知らせをさせてください。
新たに私の作品【では、離婚しましょうか】を投稿いたします。
帝国の頼れるジェラルド様の、過去のお話となります!
カーティアが皇后となる十年以上前の帝国でのお話なので、お暇な時に読んでくださると嬉しいです!
また、そちらを読まなくても本作を楽しめるようにもしておりますので!
本作も引き続き楽しんでくださると嬉しいです!
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