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ぺらりと、手に持っている本のページをめくる
窓から私の頬を撫でる優しい風を感じ、若干の眠気に耐えつつも我慢をして
本を読み、時折の欠伸を繰り返す。
外を眺めると澄み渡る真っ青な空
屋敷を出て散歩でもすれば心地よいのだろうが、出不精な私はなかなか行動には移せない。
いつものように本を見て、語学の勉強に励む日々
そう、いつも通りの日になる予定だった
コンコンと部屋の扉を叩く音が鳴り
私は本を静かに閉じた
「アメリア様、入ってもよろしいでしょうか?」
私の名前を呼ぶ侍女に「はい」と返事を返す。
扉を開き、一礼した侍女はやや憂いの表情を浮かべていたのが気になったが、その答えは続く言葉で意味が分かった
「お客様が来ておられます…ベンジャミン公爵様です」
ベンジャミン……名前を聞いただけも、今日の素晴らしい天気が台無しの気分になる。
かつては愛した彼も今となってはいきり立つ感情しか沸いてこない
とはいえ、目の前の侍女にその怒りをぶつけるような子供じみた真似はしない
深呼吸の後に、平然として表情を崩さずに返事を返す
「公が来られてはお断りもできません、客室へ案内してください、私がお話をします」
「…大丈夫ですか?お嬢様……ローマン様が帰ってくるまでお待ちしても」
侍女の心配の返事に首を横に振る。
確かに、私のお父様であり、このローズベル子爵家の当主でもあるローマン父様に相手をしてもらうのが最も精神的にも健全だろう、でももうお父様に心配をかけたくない。
それに、きっとベンジャミン…彼は父様が不在だからこそ来たのだと思うから
「心配ありがとう、でも大丈夫だから客室に案内してください」
「分かりました、アメリア様」
閉じられた扉を確認して、私は窓から外を見る。
ここからは屋敷の玄関が見えるため彼の姿を確認できた
ベンジャミン、彼は一輪の薔薇を手にしながら、そわそわと落ち着かない様子で佇んでいる。
私と会って、何を言うつもりなのか…見当もつかないが、私は彼に対してもう特別な感情を持っていない…
かつて、夫であったベンジャミンに対して
一切の愛がないのだから。
客室へと向かう廊下を歩きながら、かつて彼から受けた屈辱、そして自分自身の不幸を嘆じる。
ー奥様は子供を産めませんー
お医者様から言われた言葉、公爵家に嫁ぎ3年間
子供のできない私達がお医者様に診断を受けて、その事実を宣告された
腸がちぎれそうなほど悲しみで溢れた
結婚をして、幸せで、当たり前のように子供を産める
そんな考えを打ち砕かれたような気がして、自分の身体を憎んだ。
なによりも、当時愛していたベンジャミンの子を産めない事を嘆き悲しむ。
悲しみに打ちひしがれて、精神的にも病んでしまった私の元へ訪れたベンジャミンの言葉を、今でもはっきり鮮明に思い出せる。
ー離縁してくれないか?子を産めないなんて思っていなかった、君を選んだ事が間違いだー
正直、覚悟はしていたんだ
公爵家には跡取りとなる子が必要だ、産めない女は役立たずのレッテルを貼られる
貴族社会では当たり前、分かってる、分かっていたけど。
せめて…せめて一言だけでも慰めの言葉を欲しかった
今まで私を「愛している」と言った口で
彼は別れを告げ
かつて、私を抱きしめた両手で
私を突き放した
嫁いだ公爵家から追い出され、私は実家の子爵家に泣きながら帰った、我を忘れて子供のように
そんな私を見て、ただ黙って、なにも理由を聞かずに抱きしめてくれたローマン父様を忘れない。
屈辱を受けた、最も悲しい時に寄り添うのではなく
突き放した事を忘れるはずもない。
でも、それだけなら…まだ許せたかもしれない
彼がその後に行った事は非道を超えていたから
ガチャリと客室の扉を開き、入室する
座っていたベンジャミンが立ち上がり、ニコリと微笑んだ
「アリー、久しぶりだね」
かつての愛称で呼ばれる事に嫌悪感を感じつつ頭を下げると
彼は言葉を続け、本題を話した。
「君ともう一度、復縁したいと思ってる…引き受けてくれるよね?」
困惑……を通り越して恐怖すら感じた
かつて、私に対しての行いなど目の前の彼は綺麗に忘れているのだろうか?
それだけじゃない、彼は…いや彼の公爵家がしでかした事を忘れるなんて、許されない
許すはずもない。
一方的に離縁を告げた彼の公爵家は面子を保つため
とある噂を広めた、嫁いでいた私がベンジャミンの他に男を作り不貞を働いた
そんな根も葉もない噂、もちろん私もお父様も否定をした、でも子爵家と公爵家、超えられない壁があるような爵位の影響力の違いは大きかった。
噂は伝播していき、やがて私は社交場にも出れない程に避けられて、貴族社会から爪弾きされた
ローマン父様もその煽りを受けて今もなお苦労している。
そんな非道を行って…
「復縁を引き受けてくれるよね?」と、今でも私がベンジャミンを愛しているかのような言葉に、ため息と共に私は言葉を返す。
「お断りします」
短く、簡潔に答えた言葉に納得できない表情を浮かべたベンジャミンに理解させるのは難渋しそうだと、頭を抱えそうになってしまった。
窓から私の頬を撫でる優しい風を感じ、若干の眠気に耐えつつも我慢をして
本を読み、時折の欠伸を繰り返す。
外を眺めると澄み渡る真っ青な空
屋敷を出て散歩でもすれば心地よいのだろうが、出不精な私はなかなか行動には移せない。
いつものように本を見て、語学の勉強に励む日々
そう、いつも通りの日になる予定だった
コンコンと部屋の扉を叩く音が鳴り
私は本を静かに閉じた
「アメリア様、入ってもよろしいでしょうか?」
私の名前を呼ぶ侍女に「はい」と返事を返す。
扉を開き、一礼した侍女はやや憂いの表情を浮かべていたのが気になったが、その答えは続く言葉で意味が分かった
「お客様が来ておられます…ベンジャミン公爵様です」
ベンジャミン……名前を聞いただけも、今日の素晴らしい天気が台無しの気分になる。
かつては愛した彼も今となってはいきり立つ感情しか沸いてこない
とはいえ、目の前の侍女にその怒りをぶつけるような子供じみた真似はしない
深呼吸の後に、平然として表情を崩さずに返事を返す
「公が来られてはお断りもできません、客室へ案内してください、私がお話をします」
「…大丈夫ですか?お嬢様……ローマン様が帰ってくるまでお待ちしても」
侍女の心配の返事に首を横に振る。
確かに、私のお父様であり、このローズベル子爵家の当主でもあるローマン父様に相手をしてもらうのが最も精神的にも健全だろう、でももうお父様に心配をかけたくない。
それに、きっとベンジャミン…彼は父様が不在だからこそ来たのだと思うから
「心配ありがとう、でも大丈夫だから客室に案内してください」
「分かりました、アメリア様」
閉じられた扉を確認して、私は窓から外を見る。
ここからは屋敷の玄関が見えるため彼の姿を確認できた
ベンジャミン、彼は一輪の薔薇を手にしながら、そわそわと落ち着かない様子で佇んでいる。
私と会って、何を言うつもりなのか…見当もつかないが、私は彼に対してもう特別な感情を持っていない…
かつて、夫であったベンジャミンに対して
一切の愛がないのだから。
客室へと向かう廊下を歩きながら、かつて彼から受けた屈辱、そして自分自身の不幸を嘆じる。
ー奥様は子供を産めませんー
お医者様から言われた言葉、公爵家に嫁ぎ3年間
子供のできない私達がお医者様に診断を受けて、その事実を宣告された
腸がちぎれそうなほど悲しみで溢れた
結婚をして、幸せで、当たり前のように子供を産める
そんな考えを打ち砕かれたような気がして、自分の身体を憎んだ。
なによりも、当時愛していたベンジャミンの子を産めない事を嘆き悲しむ。
悲しみに打ちひしがれて、精神的にも病んでしまった私の元へ訪れたベンジャミンの言葉を、今でもはっきり鮮明に思い出せる。
ー離縁してくれないか?子を産めないなんて思っていなかった、君を選んだ事が間違いだー
正直、覚悟はしていたんだ
公爵家には跡取りとなる子が必要だ、産めない女は役立たずのレッテルを貼られる
貴族社会では当たり前、分かってる、分かっていたけど。
せめて…せめて一言だけでも慰めの言葉を欲しかった
今まで私を「愛している」と言った口で
彼は別れを告げ
かつて、私を抱きしめた両手で
私を突き放した
嫁いだ公爵家から追い出され、私は実家の子爵家に泣きながら帰った、我を忘れて子供のように
そんな私を見て、ただ黙って、なにも理由を聞かずに抱きしめてくれたローマン父様を忘れない。
屈辱を受けた、最も悲しい時に寄り添うのではなく
突き放した事を忘れるはずもない。
でも、それだけなら…まだ許せたかもしれない
彼がその後に行った事は非道を超えていたから
ガチャリと客室の扉を開き、入室する
座っていたベンジャミンが立ち上がり、ニコリと微笑んだ
「アリー、久しぶりだね」
かつての愛称で呼ばれる事に嫌悪感を感じつつ頭を下げると
彼は言葉を続け、本題を話した。
「君ともう一度、復縁したいと思ってる…引き受けてくれるよね?」
困惑……を通り越して恐怖すら感じた
かつて、私に対しての行いなど目の前の彼は綺麗に忘れているのだろうか?
それだけじゃない、彼は…いや彼の公爵家がしでかした事を忘れるなんて、許されない
許すはずもない。
一方的に離縁を告げた彼の公爵家は面子を保つため
とある噂を広めた、嫁いでいた私がベンジャミンの他に男を作り不貞を働いた
そんな根も葉もない噂、もちろん私もお父様も否定をした、でも子爵家と公爵家、超えられない壁があるような爵位の影響力の違いは大きかった。
噂は伝播していき、やがて私は社交場にも出れない程に避けられて、貴族社会から爪弾きされた
ローマン父様もその煽りを受けて今もなお苦労している。
そんな非道を行って…
「復縁を引き受けてくれるよね?」と、今でも私がベンジャミンを愛しているかのような言葉に、ため息と共に私は言葉を返す。
「お断りします」
短く、簡潔に答えた言葉に納得できない表情を浮かべたベンジャミンに理解させるのは難渋しそうだと、頭を抱えそうになってしまった。
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