【完結】潔く私を忘れてください旦那様

なか

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「要件はそれだけでしょうか?ベンジャミン様」

私は冷たく、他人行儀で彼に返事をする

「もう、ベンとは呼んでくれないのか?アリー」

かつて、彼を呼んでいた愛称を望まれたが、もちろん呼ぶつもりなんてない
土下座されようと、頭を下げて頼まれてもごめんだ

「今の私は子爵家令嬢で、貴方は公爵家当主…それ以上でもそれ以下でもありません、過去の関係を引きずる気持ちもありませんので」

「意地を張らないでくれ、復縁を嬉しいと思うだろ?離縁した時はあれだけ嫌がっていたじゃないか、君が喜ぶと思って来たのに」

あぁ………この人はきっと人の感情を読み取る事が出来ないのかもしれない
そして、そんな男性をかつて愛していた事に自分自身の不甲斐なさを感じる。

「残念ですが、貴方に張る意地など持っておりません、私が喜ぶ?思い違いも甚だしいです」

「なぜ、そうきつく当たるんだ?こうして会いに来て、復縁を俺から頼んでいるんだ…受け入れるのが筋だろう?」

「私こそ不思議です、あまりに筋の通っていないお話に啞然としておりますので」

彼はそこまで言い合うと、少し不機嫌そうに、口を尖らせ舌打ちし、客室のソファーにガサツに座り込んでしまった。

まだ帰ってくれないのですね。


「俺はアリー、君が復縁してくれるまで帰らない」

「失礼ですが迷惑です、それと何度も言いますが私をアリーと呼ばないでください、アメリアが私の名前ですから」

「あぁ!もう!!」

まるで、子供のように頭を掻きむしり
駄々をこねるように地団駄を踏むベンジャミンに呆気にとられる。

ここまで幼い精神の方だったか?恋とは盲目だ
今の彼に男性としての魅力がどこにあるのだろうか?


「先ずは話を聞いてくれ」

「聞いているつもりですベンジャミン様、貴方が本題にいきなり入っただけですよ」

「くそ!!そうやって言い返すのを止めろ!!」

「失礼、性分なもので直せません」

まぁ、貴方だけに対してだけだけど…
嫌がってくれているならこのままにしよう。
そうすれば諦めてくれるだろう。

「聞いてくれ、君と離縁してから一年間でやっと気付いたんだ…君の魅力や美しさに」

「そうですか」

私は貴方の嫌な部分を久々に会って、数分で幾つも見つけてしまったけどね。
彼は言葉を続ける。

「離縁した後の行いなど、確かに公爵家の面子を保つために酷いことをしたと思う……だけどお互い水に流そう?な?また2人で幸せに暮らそうじゃないか」

さて、もう怒りの沸点は限界に近い

だけど、ここでヒステリックに叫ぶ事は私の子爵家令嬢としての矜持に反する。
侍女が持ってきてくれていた、机の上に置いてある紅茶を少し口に含み、嚥下し心を落ち着かせる。

「ふぅ」と一息吐くと、白い息が出る。
彼が見惚れるように見ていたために、若干の嫌悪感を感じたが、ようやく心が落ち着いたので口を開く

「まず、離縁した後の行いについてですが公爵家の小さな面子を保つために私とお父様がどれだけ苦労したのか?貴方は真の意味で理解してくれているのですか?」

「理解しているさ!」

「いえ、全くしておりません……真に理解していれば復縁を迫るなんて愚行をするはずないですし、水に流すなんて言えません」

「な!?失礼ではないか?復縁を申し込む事が愚行だと?」

「ええ、愚行ですよ…貴方にも分かるように一から説明しましょうか?私達子爵家が受けた屈辱を…不貞を働いたと根も葉もない噂を広められ、男性達からは尻軽だと思われ、強引に身体の関係を求められた事もありました」

当たり前だけど、断ったが

「俺のアリーに手を出した者がいるだと!?」

なぜ、目の前の彼が怒っているのか…
原因を辿れば、行きつく先の憤怒すべき対象は自分自身だと分かるだろうに…

「私は貴方の女性ではありませんし、手を出されてもおりません…原因は貴方にあると思いますが?」

「ち、違う…そんな事が起こるとは思っていなかった…本当だ!」

「考えなしで思慮の浅い方なのですね、連鎖する被害でどれだけ私が傷つくか考えも出来なかったと」

「………」

都合が悪いと沈黙を貫くのですね。
結婚していた時からの癖でしたね、その逃げ癖…
愛していた頃は私が折れていたけど、今の貴方に折れる気は微塵もない、話を続けましょうか。

「男性達はまだ良かったです、でも令嬢達はもっと酷かった……社交場に出れば後ろ指を刺され、その場にいる資格はないと罵倒され、ドレスを意図的に汚された事もありました」

「………………」

「貴方は気付かなかったでしょうか?私が最後に社交場に出た際には、尻軽女やアバズレだと好き放題に言われて、笑われておりました」

「………気付かなかった…」

「都合のいい噓で逃げる癖は治した方がいいですよ?あの時、後方で私を指さして笑っていたのを、見ていないと思いましたか?忘れたとでも思いました?」


私が見ていた事を告げた瞬間、ベンジャミンの額には焦りからか脂汗が浮かび、動揺して、取り乱したように目を泳がしている様に少しだけ気分が晴れる。


「わ、わかった…」

「なにが分かったのですか?ベンジャミン様」

「俺と復縁した際にはお前を笑っていた者に同じ思い、いやそれ以上の事を味合わせよう!俺は公爵だ…影響力を使えばどうとでもなる、これで怒りも晴れるだろう!」


プツンと、何かが切れる音がして
考える暇もなく、私の平手は彼の頬を打ち付けていた
軽快な音が部屋に響いて、呆然としている馬鹿な彼を睨みつける。

「これ以上、私を…ローズベル子爵家を愚弄しないで!!」

「アリー…なぜ怒って…」

「なぜ?分かりませんか?…誰が好き好んで大嫌いな者達と同じような下衆で非道な行為をすると思いますか?私が誰かを馬鹿にする事が好きだとでも思っているのですか?」

「違う!そんなつもりじゃ!」

「無自覚であれば、なお、たちが悪く思います…」

思わず怒りで彼の頬を叩いてしまった…
怒りが静まっていくと共に、手を出してしまった自分の浅はかな行為を反省する。

でも私だけでなく、ローズベル家まで馬鹿にされたように感じてしまったのだ
これで怒りを感じないはずがない

そろそろ、彼と話す事は怒りでおかしくなりそうなために切り上げよう

「ベンジャミン様、そういった理由で貴方とは復縁したくありません、納得して頂きお帰りください」


キッパリと告げた言葉に彼は赤くなった頬を抑えつつ
また、子供のように首を横に振った

「俺はここにいる、君の怒りが収まるまで…愛しているんだアリー…お願いだからまた結婚してくれ」

分かってほしい、この怒りは貴方がいる限り収まらないのだと

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