【完結】潔く私を忘れてください旦那様

なか

文字の大きさ
17 / 21

15

しおりを挟む
「カミラ様………」

私が彼女の名前を呼ぶと、カミラ様は頭を下げた。
その姿勢や所作には確かに謝罪の気持ちが込められているのが分かった

「私を含めて、家族が迷惑をかけてごめんなさい…アメリアさん………」

「お、おいカミラ!!何を言って!?」

「黙ってください!!」

慌てて頭を下げるカミラ様を止めようと近寄るグロウズ様だったが、それをカミラ様自身が一喝して制す。
そして、再び顔を上げて私を見るその姿は確かに公爵夫人としての気品が垣間見えた

「貴方とこの間、話をして私も考えたの………沢山の時間、貴方の言葉を私なりに考えてみた…」

「答えは、でましたか?カミラ様」

私の言葉に、彼女は「ふふ」と笑って首を横に振った

「いえ、やはり理解できなかったわ、女性の幸せは結婚……なのに、なぜ貴方は自分の夢を優先するんだろうって、そうやって認めたくない気持ち…が本音…」

「そうですか……」

「でもね、気づいた事もあったの、私が馬鹿だったって…理解しなくてもいいのね、幸せの道なんて人それぞれで、貴方の進みたいように進めばいい、私達が面倒を見るなんてお節介で…貴方の夢の邪魔でしかなかったのよね」

彼女の言葉に、私はただ頷いた……
理解してもらおうなんて思っていなかった、貴族の令嬢達の間に広がるのは結婚至上主義……結婚こそが女性の幸せであり、それこそが一番なのだと幼少より身に付く思想だから

実際に、私もベンジャミンに突き放されるまではその思想に染まっていた。

でも、カミラ様は自分なりに考えて…本当の意味で私のためになる選択を考えてくれた事に今までの憎しみや恨みはありながらも、嬉しいと思う気持ちも確かに存在した。


「さて、ではグロウズ、ベンジャミン……私達がすべき事はただ一つです」

「カ、カミラ」「母さん?」

私との会話を終えて、振り返ったカミラ様は手を振りかざしてグロウズ様とベンジャミンの頬を平手打ちした。
軽快な音が鳴り、空気に響いた破裂音………私に迫った男性2人は赤くなった頬を抑え、うろたえていた

カミラ様も、普段彼らに手を出す事などないのだろう…慣れない行為に手が震えていた、でも勇気を出して私のために行ってくれた行為にただ純粋に嬉しさを感じる。

「先程も言いました!!呆けていないで私達、公爵家がしでかした事を反省すべきです!!早く離縁状に判を押してグロウズ!!」

「し…しかし、ベンジャミンの想いは…」

「アメリアさんの想いを無視している状況で、ベンジャミンの意思は尊重すべきではありません………これ以上、公爵家の醜態を晒す事はやめましょう……」

カミラ様の一喝によって…あれ程、強情そうであったグロウズ様もしおらしくなってしまっている。

「私はただ、息子の望みを叶えようとしたのだ………復縁をしたいと、ベンジャミンがあれだけ頼み込んできたのは初めてだったから…アメリア嬢も、きっとそれを受け入れると思っていた」

有り得ない……と私は言おうとしたが、カミラ様がため息を吐きつつも私の代わりに応えてくれた

「それは私達、公爵家の身勝手で自分勝手で最低で下劣な考え方です。私達は貴族として影響力を持ち、力を持っています………代償として、思い上がりの思想で相手の考えを認められない愚か者になってしまいました…」

「カミラ………」

「グロウズ、思い出してください……私達は公爵の爵位を与えられる前の時を…その時の貴方と私は若い淑女を貶めるような出鱈目な噂を流すことなんて……考えた事もなかった、ただまっすぐに若き力で民の為に働きこの爵位を頂きました…でも公爵として力を持ち、変わってしまった…何でも思い通りになる影響力や周りの忖度につけあがって………彼女を苦しめていたのよ」

「若い…頃…………」

グロウズ様は昔の記憶を思い出すように空を見上げて、静かに頷いた

「そうだ…そうだなカミラ、私達は立派な家庭を築こうと…いつしか、思い上がり、自分達こそ至上だと思い込んでいた、自分達だけが助かろうと………すまない」

「私も、貴方も………謝る相手が違いますよ」

2人はお互いが納得したように、私を見る。
グロウズ様は先程までの言動を思い出し、気が引けていたがカミラ様の小突く肘に押されて頭を下げた

「アメリア嬢………此度のこちらの強行を心から謝罪したい…申し訳ない」

「グロウズ様…いえ、私はもういいのです………離縁状に判を押してください、それで貴方達との関係は終わりにしましょう…今度こそ、本当の意味で」

「あぁ、もちろんだ…そして君に伝えておきたい事がある…私達公爵家は……」

離縁状を見つめながらグロウズ様が喋っていた最中

ベンジャミンがその離縁状を手に取り、自身の胸に抱きしめた

「ダメだ!!俺とアリーは………離縁をしない!!」

「ベンジャミン!」

カミラ様やグロウズ様の制止の言葉を無視し、抱きしめるように離縁状を持ったベンジャミン様は駄々をこねる子供のように首を横に振った

「アリー………俺はどうすればいい?どうすれば君に愛してもらえる?………離れたくない、もう手放したくないんだ………なんでもする、だから、だから俺を受け入れてくれ!!」

ベンジャミンは涙を浮かべ、私に叫んだ………
「はぁ…」と口癖のようになったため息と共に私は睨みながら言葉を吐いた

「どうしたらいい?こちらの言葉ですよ、今までの貴方を見て………どうすれば再び愛せますか?私が教えて欲しいです。」

「アリー………愛しているんだ、本当なんだ!!もう一度俺を愛してくれ!!お願いだ、お願いだ…お願いだから!!愛しているから!」

泣き崩れるように、膝を着いたベンジャミンに近づき言葉をかけたのは………
私でも、カミラ様でも、グロウズ様でもなかった

「え?」

私はその人を見て、思わず声を出してしまった…

「ベンジャミン、お前の愛は虚言だよ…僕は知っているんだ」

そこにいて、ベンジャミンに声をかけたのはクロード兄様だったから


しおりを挟む
感想 152

あなたにおすすめの小説

【完結】冷酷伯爵ディートリヒは、去った妻を取り戻せない

くろねこ
恋愛
名門伯爵家に政略結婚で嫁いだ、正妻エレノア・リーヴェルト。夫である伯爵ディートリヒ・フォン・アイゼンヴァルトは、 軍務と義務を最優先し、彼女に関心を向けることはなかった。 言葉も、視線も、愛情も与えられない日々。それでも伯爵夫人として尽くし続けたエレノアは、ある一言をきっかけに、静かに伯爵家を去る決意をする。 ――そして初めて、夫は気づく。 自分がどれほど多くのものを、彼女から与えられていたのかを。 一方、エレノアは新たな地でその才覚と人柄を評価され、 「必要とされる存在」として歩き始めていた。 去った妻を想い、今さら後悔する冷酷伯爵。前を向いて生きる正妻令嬢。 これは、失ってから愛に気づいた男と、 二度と戻らないかもしれない夫婦の物語。 ――今さら、遅いのです。

白い結婚を捨てた王妃は、もう二度と振り向かない ――愛さぬと言った王子が全てを失うまで』

鍛高譚
恋愛
「私は王妃を愛さない。彼女とは白い結婚を誓う」 華やかな王宮の大聖堂で交わされたのは、愛の誓いではなく、冷たい拒絶の言葉だった。 王子アルフォンスの婚姻相手として選ばれたレイチェル・ウィンザー。しかし彼女は、王妃としての立場を与えられながらも、夫からも宮廷からも冷遇され、孤独な日々を強いられる。王の寵愛はすべて聖女ミレイユに注がれ、王宮の権力は彼女の手に落ちていった。侮蔑と屈辱に耐える中、レイチェルは誇りを失わず、密かに反撃の機会をうかがう。 そんな折、隣国の公爵アレクサンダーが彼女の前に現れる。「君の目はまだ死んでいないな」――その言葉に、彼女の中で何かが目覚める。彼はレイチェルに自由と新たな未来を提示し、密かに王宮からの脱出を計画する。 レイチェルが去ったことで、王宮は急速に崩壊していく。聖女ミレイユの策略が暴かれ、アルフォンスは自らの過ちに気づくも、時すでに遅し。彼が頼るべき王妃は、もはや遠く、隣国で新たな人生を歩んでいた。 「お願いだ……戻ってきてくれ……」 王国を失い、誇りを失い、全てを失った王子の懇願に、レイチェルはただ冷たく微笑む。 「もう遅いわ」 愛のない結婚を捨て、誇り高き未来へと進む王妃のざまぁ劇。 裏切りと策略が渦巻く宮廷で、彼女は己の運命を切り開く。 これは、偽りの婚姻から真の誓いへと至る、誇り高き王妃の物語。

白い結婚の末、離婚を選んだ公爵夫人は二度と戻らない』

鍛高譚
恋愛
白い結婚の末、「白い結婚」の末、私は冷遇され、夫は愛人を溺愛していた――ならば、もう要らないわ」 公爵令嬢 ジェニファー・ランカスター は、王弟 エドワード・クラレンス公爵 のもとへ政略結婚として嫁ぐ。 だが、その結婚生活は冷たく空虚なものだった。夫は愛人 ローザ・フィッツジェラルド に夢中になり、公爵夫人であるジェニファーは侮辱され、無視され続ける日々。 ――それでも、貴族の娘は耐えなければならないの? 何の愛もなく、ただ飾り物として扱われる結婚に見切りをつけたジェニファーは 「離婚」 を決意する。 しかし、王弟であるエドワードとの離婚は容易ではない。実家のランカスター家は猛反対し、王宮の重臣たちも彼女の決断を 「公爵家の恥」 と揶揄する。 それでも、ジェニファーは負けない。弁護士と協力し、着々と準備を進めていく。 そんな折、彼女は北方の大国 ヴォルフ公国の大公、アレクサンダー・ヴォルフ と出会う。 温かく誠実な彼との交流を通じて、ジェニファーは 「本当に大切にされること」 を知る。 そして、彼女の決断は、王都の社交界に大きな波紋を呼ぶこととなる――。 「公爵夫人を手放したことを、いつか後悔しても遅いわ」 「私はもう、あなたたちの飾り人形じゃない」 離婚を巡る策略、愛人の凋落、元夫の後悔――。 そして、新たな地で手にした 「愛される結婚」。

旦那様、そんなに彼女が大切なら私は邸を出ていきます

おてんば松尾
恋愛
彼女は二十歳という若さで、領主の妻として領地と領民を守ってきた。二年後戦地から夫が戻ると、そこには見知らぬ女性の姿があった。連れ帰った親友の恋人とその子供の面倒を見続ける旦那様に、妻のソフィアはとうとう離婚届を突き付ける。 if 主人公の性格が変わります(元サヤ編になります) ※こちらの作品カクヨムにも掲載します

婚約者は、今月もお茶会に来ないらしい。

白雪なこ
恋愛
婚約時に両家で決めた、毎月1回の婚約者同士の交流を深める為のお茶会。だけど、私の婚約者は「彼が認めるお茶会日和」にしかやってこない。そして、数ヶ月に一度、参加したかと思えば、無言。短時間で帰り、手紙を置いていく。そんな彼を……許せる?  *6/21続編公開。「幼馴染の王女殿下は私の元婚約者に激おこだったらしい。次期女王を舐めんなよ!ですって。」 *外部サイトにも掲載しています。(1日だけですが総合日間1位)

彼を追いかける事に疲れたので、諦める事にしました

Karamimi
恋愛
貴族学院2年、伯爵令嬢のアンリには、大好きな人がいる。それは1学年上の侯爵令息、エディソン様だ。そんな彼に振り向いて欲しくて、必死に努力してきたけれど、一向に振り向いてくれない。 どれどころか、最近では迷惑そうにあしらわれる始末。さらに同じ侯爵令嬢、ネリア様との婚約も、近々結ぶとの噂も… これはもうダメね、ここらが潮時なのかもしれない… そんな思いから彼を諦める事を決意したのだが… 5万文字ちょっとの短めのお話で、テンポも早めです。 よろしくお願いしますm(__)m

その結婚は、白紙にしましょう

香月まと
恋愛
リュミエール王国が姫、ミレナシア。 彼女はずっとずっと、王国騎士団の若き団長、カインのことを想っていた。 念願叶って結婚の話が決定した、その夕方のこと。 浮かれる姫を前にして、カインの口から出た言葉は「白い結婚にとさせて頂きたい」 身分とか立場とか何とか話しているが、姫は急速にその声が遠くなっていくのを感じる。 けれど、他でもない憧れの人からの嘆願だ。姫はにっこりと笑った。 「分かりました。その提案を、受け入れ──」 全然受け入れられませんけど!? 形だけの結婚を了承しつつも、心で号泣してる姫。 武骨で不器用な王国騎士団長。 二人を中心に巻き起こった、割と短い期間のお話。

嫌いなところが多すぎるなら婚約を破棄しましょう

天宮有
恋愛
伯爵令嬢の私ミリスは、婚約者ジノザに蔑まれていた。 侯爵令息のジノザは学園で「嫌いなところが多すぎる」と私を見下してくる。 そして「婚約を破棄したい」と言ったから、私は賛同することにした。 どうやらジノザは公爵令嬢と婚約して、貶めた私を愛人にするつもりでいたらしい。 そのために学園での評判を下げてきたようだけど、私はマルク王子と婚約が決まる。 楽しい日々を過ごしていると、ジノザは「婚約破棄を後悔している」と言い出した。

処理中です...