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学園編
19話グレアルフside
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何が俺の未来を狂わせた?
ずっと順風満帆で、調子よく進んでいたはずだった。
友も多く、ナタリーと婚約を約束して……未来は花開いていたはずなのに。
今の俺は逃げ場もない程に追い詰められている。
講師達もあっさりと説き伏せられて、ナタリー達は自分達に下る処罰に怯えて寮室にこもってしまった。
こんな未来は誰も予想していなかったのに、俺達の向かう先は真っ暗だ。
「なんだよこれ。どうすれば……」
悩んでも答えなんて出ない、助けを求めようとしてもそれが出来る相手はいない。
自分のしてしまった行動の数々に、追い込まれている事に気付いてしまう。
「お、お前達……なにを言っている!」
ふと、講師達のいる職員室の近くを通ると学園長の叫びが聞こえた。
扉に耳をつけて、中の声を聞く。
「学園長、リディアさんに対して……私達はもう罰を待つだけにしましょう」
「母親に止めてもらうように頼むなど、僕達は反対です」
扉を少しだけ開いて覗くと、多数の講師達が学園長を見つめていた。
視線に射貫かれている学園長は必死に言葉を発す。
「わ、分かっているのか! このままでは……この学園は終わるのだぞ!」
「それが、私達が今まで彼女を見て見ぬふりをした責任です」
講師の言葉に学園長は勢いよく首を横に振る。
「教育者として、最後まで生徒を送り出すのが君たちの勤めだろう。それを諦めてどうする!」
「一人の生徒でさえ……責任を恐れて救えなかった私達は、教育者の勤めを果たせていませんよ。それを、私達は彼女の言葉で気付かされました」
その言葉に、学園長は口を開いて反論もなく黙ってしまう。
悔しそうに拳を握ってはいるが、講師達の考えを変える事は出来そうにないだろう。
静まり返った職員室を覗きながら、俺は希望を見出してしまった。
「そうだ。その手があった……」
先程の職員室での会話に、リディアを止められる手段があったじゃないか。
母親だ、リディアの母親さえどうにか説得すれば……俺の人生は終わらない。
そうと決まれば、考えはまとまってくる。
リディアを止めろと説得し、それが無理であれば脅してでも……。
時間はもう残り少ない、俺の人生を守るためにもすぐに行動しないと。
「っ!!」
思い付いたと同時に走り出した時、俺の肩を掴む誰かが居た。
振り返るとそこにはリディアと寮室へ向かったはずのディオネス公が居て、俺を酷く冷たい視線で見下ろしていた。
「言い忘れた事があって、戻ってきたんだ。少しいいかな」
断れない程の威圧にのまれて、コクリと頷いてしまう。
リディアの隣に居る時も俺を睨む視線は足が震える程の恐怖だったが、今はさらに視線が尖っており、恐怖で言葉が出ず、心臓が破裂しそうな程に鼓動する。
「リディアの家族、または彼女の知人に危害を加えれば……僕は君を徹底的に追い詰める。すでに村に警護の人間はつけているけど、念のために言っておくよ」
「は、はひ」
「罰を受ける時まで大人しくしておくといい。制裁の準備は整えておいてあげるから」
紅の瞳に似合わぬ程に冷たい視線を俺に送ったディオネス公は、それだけを告げて再び背を向けた。
しかし、思い出したように立ち止まった。
「あぁ……それと言い忘れていたよ」
振り返ったディオネス公は、恐ろしい程の無表情で俺を見つめた。
「君、リディアが研究を盗んだと言ったそうだね。その証明のために君が研究を提出するとも。残った期限は十日後か……ちょうどいいから、それまでに皆に知っていてもらうよ。君がした事をね。皆の前に立つのを楽しみにしておきなよ? 学園に集まるように言っておくからさ」
楽しみだなんて、ちっとも思えない事をディオネス公は告げる。
そして、彼の言葉に足がすくんだ。
俺は……ディオネス公に集められた真実を知る面々の前に立つ事になったのだ。
それは、言い逃れもできずに俺の輝かしい未来が完全に閉ざされることを意味しており、それを察した瞬間に身体から力が抜けていく。
「あぁぁ、うわぁぁ! た、助けて! 助けてください! お願いします、謝罪なら……幾らでもするから」
叫んでも、ディオネス公は振り返ってはくれない。
俺の順風満帆だった未来は、多くの後悔を抱えて暗い未来へと導かれていく。
希望など、どこにも見えずに。
ずっと順風満帆で、調子よく進んでいたはずだった。
友も多く、ナタリーと婚約を約束して……未来は花開いていたはずなのに。
今の俺は逃げ場もない程に追い詰められている。
講師達もあっさりと説き伏せられて、ナタリー達は自分達に下る処罰に怯えて寮室にこもってしまった。
こんな未来は誰も予想していなかったのに、俺達の向かう先は真っ暗だ。
「なんだよこれ。どうすれば……」
悩んでも答えなんて出ない、助けを求めようとしてもそれが出来る相手はいない。
自分のしてしまった行動の数々に、追い込まれている事に気付いてしまう。
「お、お前達……なにを言っている!」
ふと、講師達のいる職員室の近くを通ると学園長の叫びが聞こえた。
扉に耳をつけて、中の声を聞く。
「学園長、リディアさんに対して……私達はもう罰を待つだけにしましょう」
「母親に止めてもらうように頼むなど、僕達は反対です」
扉を少しだけ開いて覗くと、多数の講師達が学園長を見つめていた。
視線に射貫かれている学園長は必死に言葉を発す。
「わ、分かっているのか! このままでは……この学園は終わるのだぞ!」
「それが、私達が今まで彼女を見て見ぬふりをした責任です」
講師の言葉に学園長は勢いよく首を横に振る。
「教育者として、最後まで生徒を送り出すのが君たちの勤めだろう。それを諦めてどうする!」
「一人の生徒でさえ……責任を恐れて救えなかった私達は、教育者の勤めを果たせていませんよ。それを、私達は彼女の言葉で気付かされました」
その言葉に、学園長は口を開いて反論もなく黙ってしまう。
悔しそうに拳を握ってはいるが、講師達の考えを変える事は出来そうにないだろう。
静まり返った職員室を覗きながら、俺は希望を見出してしまった。
「そうだ。その手があった……」
先程の職員室での会話に、リディアを止められる手段があったじゃないか。
母親だ、リディアの母親さえどうにか説得すれば……俺の人生は終わらない。
そうと決まれば、考えはまとまってくる。
リディアを止めろと説得し、それが無理であれば脅してでも……。
時間はもう残り少ない、俺の人生を守るためにもすぐに行動しないと。
「っ!!」
思い付いたと同時に走り出した時、俺の肩を掴む誰かが居た。
振り返るとそこにはリディアと寮室へ向かったはずのディオネス公が居て、俺を酷く冷たい視線で見下ろしていた。
「言い忘れた事があって、戻ってきたんだ。少しいいかな」
断れない程の威圧にのまれて、コクリと頷いてしまう。
リディアの隣に居る時も俺を睨む視線は足が震える程の恐怖だったが、今はさらに視線が尖っており、恐怖で言葉が出ず、心臓が破裂しそうな程に鼓動する。
「リディアの家族、または彼女の知人に危害を加えれば……僕は君を徹底的に追い詰める。すでに村に警護の人間はつけているけど、念のために言っておくよ」
「は、はひ」
「罰を受ける時まで大人しくしておくといい。制裁の準備は整えておいてあげるから」
紅の瞳に似合わぬ程に冷たい視線を俺に送ったディオネス公は、それだけを告げて再び背を向けた。
しかし、思い出したように立ち止まった。
「あぁ……それと言い忘れていたよ」
振り返ったディオネス公は、恐ろしい程の無表情で俺を見つめた。
「君、リディアが研究を盗んだと言ったそうだね。その証明のために君が研究を提出するとも。残った期限は十日後か……ちょうどいいから、それまでに皆に知っていてもらうよ。君がした事をね。皆の前に立つのを楽しみにしておきなよ? 学園に集まるように言っておくからさ」
楽しみだなんて、ちっとも思えない事をディオネス公は告げる。
そして、彼の言葉に足がすくんだ。
俺は……ディオネス公に集められた真実を知る面々の前に立つ事になったのだ。
それは、言い逃れもできずに俺の輝かしい未来が完全に閉ざされることを意味しており、それを察した瞬間に身体から力が抜けていく。
「あぁぁ、うわぁぁ! た、助けて! 助けてください! お願いします、謝罪なら……幾らでもするから」
叫んでも、ディオネス公は振り返ってはくれない。
俺の順風満帆だった未来は、多くの後悔を抱えて暗い未来へと導かれていく。
希望など、どこにも見えずに。
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