将軍の宝玉

なか

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3.結婚式

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   将軍が結婚するとの話は瞬く間に広まり、あちこちから戦の労いと共に、祝いの言葉が届けられた。
   そんな中、当人は珍しくこれでいいのだろうかと悩んでいた。

   もちろん相手は王家の血筋であり、政略結婚も当然といえるだろう。いくら爵位を与えられたとしても、元々の身分はかなり大きな差がある。さらに、この風貌と性格だ。
   
   怖がらせてしまうのは避けられないだろう。それが申し訳なく、可哀想でもある。
   そう言っても、もう撤回はできない。



   すでに結婚式当日。新しい奥方を迎えるための準備は、有能で信頼できる執事に任せ、できる限り整えた。
  
   式典用の金の縁取りのある黒い軍服に身を包み、教会に向かう。ここに来て誰かと生活を共にすることになろうとは。緊張はないが憂鬱な気分だ。相手はもっとだろうが。

   段取りの最終説明を受け、司祭の待つ祭壇前に立つ。
   できるだけ質素にとだけ希望を伝えていたが、招待客はいない。事前の打ち合わせはあったが、王族の結婚式にこれは異例だ。

   歴史ある荘厳な雰囲気の祭壇の前、新婦側の席に両親の王弟夫妻だけが座っている。確か弟が1人いたはずだが。あちらはあちらで事情があるということだろう。
   こちらは姉が身重で領地から出られないため、義理の兄のみだ。その義兄も姉が産月でもあり、式が終わると領地へトンボ帰りの予定だ。



   司祭の合図により扉が開く。

   そこにいたのは、すらりとした細身の体に白い清楚な衣装をまとった、硬い表情の青年と呼ぶにはやや幼い人だった。


   司祭の誘導に従い神への契りの言葉を互いに述べて、滞りなく、あっさりと式を終えた。
   義理の父となる王弟殿下から頭を下げられ、息子をどうかよろしくとひとしきり泣かれた後、2人で馬車に乗って邸宅に移動中である。

   義理の父といっても、現国王の実弟である。東の領地を治め、その手腕には定評がある。王族として前線には出ないが、後方支援の分野でもかなり信頼できる男性だ。

   穏やかな方だとは聞いていたが、その人が最初から最後までずっと泣いているのである。大変気まずい。今からでも遅くないので、お返ししたいほどだ。


   彼とは一言も言葉を交わしていない。
   19才らしいが、15.6才くらいにしかみえない。その端正な横顔をこっそり見つめた。

   柔らかそうなふわふわの蜂蜜色の金の髪は背中の中程までの長さがあり、組紐でひとつにまとめれている。それが光を受けて、きらきらと輝く。やや俯き加減のブルーグリーンの大きな瞳。

   あまり陽にあたらないのか、きめの細かい滑らかな肌。利発そうな、しかし儚げな少年だ。女性とは異なるが、とてもきれいな方だ。


   国王陛下は何を考えているのだろうか。
   陛下にとっても甥に当たるこの少年、いや青年か、いくら褒美だと言ってもどうして一度結婚に失敗している、適齢期も大幅に過ぎた俺なんかのところに。

   彼だって王位継承権を破棄し、下賜に応じている。慣れ親しんだ生活を捨て、こんな厳ついおじさんの元に嫁ぐなど、ショックだろう。
   彼らも王の命令とあらば、この不釣り合いな縁談を断れなかったのだろう。


   とにかく、大切にして差し上げないと。もしくは、どうにかして1日も早くご両親の元にお返ししないと申し訳ない。
   しかし、くれぐれもよろしく頼まれてしまっては、それも難しそうだ。

   怖がらせないように、とにかく心穏やかに新しい場所で過ごせるように、その義務感だけがどんどん募っていた。


   アデラートが眉間に皺を寄せて、らしくもなくぐるぐる考えている間、シェリルノーラは黙って流れていく景色を見つめていた。


   シェリルノーラがちらりと隣に座るアデラートの顔を盗み見ると、腕組みをして怖い顔をしている。内情は謎の義務感にかられていたのだが、はたから見たら結婚式を終えたばかりの男とは思えない程の厳しい表情だった。

   それからシェリルノーラは馬車が止まるまで、窓の外を見続けた。



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