将軍の宝玉

なか

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11.望み

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   食事も済むと、どこからかガイが戻ってきていた。
   なかなか伝える機会がないが、今ならと思い口を開く。

「シェリルノーラ様」

   彼は気持ちよさそうに風に吹かれている。その蜂蜜色の髪が風になびいて、彼の美しさを際立たせたいた。伏し目がちに水面を見る横顔に、初めて見る幸せそうな微笑みを浮かべている。
   呼びかけると、だいぶ緊張がほぐれているのか、あどけない表情で俺を見る。


「今まで、配慮が足りず申し訳ありません。シェリルノーラ様、私はあなたを大切にしたいと思っています。
   あなたは籠の鳥ではない。言いたいことは言って、したいことや欲しいものがあれば口に出してください。何か望むものはありませんか?」

   急な申し出に戸惑っているかのように、そのきれいな目が見開かれ、視線が下に落ちる。俺は残念ながら、察してやるという器用なことはできない。ならば、直接聞いてみようと考えたのだ。
    今なら本当の気持ちを聞かせてくれるような気がした。

「難しいことも時間がかかることもあるかもしれませんが、まずは、教えてください。何かありませんか?」

   特にないならそう答えるだろうが、シェリルノーラが逡巡しているようにも思え、やはり何か望みあるのだろう。

「なんでもよいのです。あなたの望みを叶えるために最大限の努力をします。どうか、教えてください」


   もう一押しか。
   もし、東の領地に帰りたいと言われれば、病気療養だなんだと理由をつけて、その望みを叶えてあげたい。下賜の経緯と立場上、こちらから帰りませんかとは言えないが、それを望むなら、彼が笑顔で過ごせるなら、それが一番だ。

   意を決したような真剣な表情で、シェリルノーラが顔を上げる。

「あの、……本当に?」

「はい。名にかけて」

「あの、では、お仕事が忙しくない時で良いのです。短い時間でよいのです。……その、旦那様とお話しする時間を頂けると」

「私と?」

「はい」

   なんだか必死な顔をするから、帰りたいと言われるかと思えば……。
   そんな些細な事を望まれるとは思わなかった。

「そのようなことでよければ。私は気の利いた会話はできませんが」

「はい」

   望みの理由は分からないが、またゆっくり彼の意思を聞けばよいかと結論づける。



「両親は私のことには過度に心配性で。このようなことをしたのは初めてです。連れてきてくださって、ありがとうございます」

   帰り支度を整えて終わる頃、シェリルノーラに礼を言われた。結婚式の時の王弟夫妻の様子を思い出すと、小さい頃大病をしたというし、それは大事に大事に育てられたのだろう。

   せっかくこちらに来たのだ。だったら、いろいろな事を経験させてあげたい。
   遠乗ひとつで、こんなに嬉しそうなら、景色のきれいなところや祭りなど、あちこちに連れていけばもっと楽しんでくれるかもしれない。
   自分にとっても、屋敷で面と向かって話だけするよりもありがたい。

「また、一緒に出かけましょう」

   そう言うと、シェリルノーラは大きく頷き、嬉しそうな笑顔を見せた。今日1日で彼の自然な笑顔や姿をたくさん見たなと思いながら、ガイに跨ろうとした。


   その時、ガイが不機嫌に嘶いた。少し先の茂みから数人の嫌な気配がする。4.5人か。
   シェリルノーラの安全を優先して逃げるか、そうすると正体を突き止められず、他に犠牲者が出るかもしれない。この辺りで犯罪の報告は受けていない。だからこそここを選んだのもある。
   シェリルノーラだけを逃して、1人にしたところで危ない目に合わせる訳にもいない。
 

「シェリルノーラ様、馬に乗ってください。あなたのことはお守りします。ただ万が一、危ないようでしたら、1人で逃げてください。リラ、いいな」

   
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