将軍の宝玉

なか

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12.野盗

   シェリルノーラが黙って馬に乗る。その前に立ち、剣を持ち藪を睨む。そこから出て来たのは武装した野盗風情が5人。

「いたいた~。こんなとこで逢引かぁ?悪いこと言わないから、金目もの置いていけや」

「そのきれーな子も置いってもらおうか」

   シェリルノーラが剣を使えないとみて、1対5で強気になっているのだろう。ゲラゲラ下品に笑う。イラつくな。
   1人ならなんでもない数だが、後ろにいるシェリルノーラを守ることを考えたら、勝手が違う。ギリと男たちを睨みつけると、その顔に怯えが浮かんだ。

「黙ってないで、何とか言えっ」

   恐怖からか、言うや否や襲いかかってきた男を右に払う。倒れた男は呻いたまま、動かなくなった。

「貴様っ」

  残りの男たちが殺気立つ。3人が俺を囲む。3人ががりなら勝てると思ってか、動きが大振りで剣も遅い。
   最初の男の剣を避け、体制を崩した隙に、右からくる男の鳩尾に一撃。次の男が、がむしゃらに振り回した剣を避け、すれ違いざまに首の後ろに一撃。
   男らが動いていないのを横目で確認して、最初の男が次の攻撃をしかけてくる勢いを利用して腹を打つ。

   威勢がいいのは最初だけで、ただの物盗りだろう。あっという間に仲間が倒されたのを見て、離れて見ていた男が慌てて逃げ出した。

   その時、男に向かって小さな刃物が飛んだ。頬をかすめた刃物に驚いたのか、男はもんどり打って倒れた。
   走って行き、倒れた男の腕を捻りあげる。

「ひぃっ。悪かった。悪かったから命だけは。許してくれっ」

   暴れようとするが、そんな程度の抵抗ではなんの意味もない。しかし、うるさいので手刀で意識を落としておく。
  

   立ち上がり、剣を腰に戻すと背後に駆け寄ってくる足音がする。振り返る前に、背中に軽い衝撃を感じた。
   腰のあたりに回された細い腕。

「旦那様っ」

   シェリルノーラが背中から抱きついていた。その手にそっと手を這わす。

「大丈夫ですか?」

   こくこくと頷いているのを背中で感じる。怖い思いをさせてしまったのだろう。
   しかし、あの小剣。位置的にシェリルノーラから放たれたものではなかったか。

  我に返ったのか、背中から温もりが消えた。こんな状況ではあるが、なんとなく残念な感じもする。
   
   口笛でガイを呼ぶ。その鞍に括り付けていたら荒縄で5人を纏めて近くの木に縛り付ける。少し呻いていたが、構うものか。
   せっかく穏やかな時間を過ごし、初めての外出を邪魔されて気分が悪い。


   作業を終えると、シェリルノーラの元へ戻る。その間に小剣は回収したようだが、一見どこに持っているか分からない。

「あの小剣は?」

「護身用の物です。耳元を掠めれば、驚いて足を止められないかと。勝手な真似をしてすみません」

   驚いた。あれはあそこを狙ったものだったのか。
   
「いえ、助かりました。さあ、帰りましょう。帰りにこの近くの軍の駐屯所に寄らなけければなりませんが、よろしいですか」

   頷くシェリルノーラを促して、帰路につく。
   この辺りの治安はいいはずだが、見回りや警備を強化させなければならないことなどを考えながら、行きよりは少し早いスピードで移動する。


   駐屯所で簡単に状況を説明し、男たちの回収を指示する。その間、シェリルノーラは建物の入り口でリラとガイと一緒に待っていてくれた。
   何時もは俺が来ると静まりかえっているが、彼を見て浮き足立っているのが分かる。ギロリと睨みつけると、青ざめて静かになった。鍛え直すか。


   

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