将軍の宝玉

なか

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17.知らせ

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 レイノルドと部下を引き連れ、間に合ってくれと祈るような思いで馬を走らせる。


 身支度を整え、夜勤の責任者に声をかけ、レイノルドと一緒に建物を出ようとしたところだった。
   執務室の窓に、見覚えのある梟が見えた。雨を気にせず窓を大きく開けると、室内に飛び込んでくる。
 夜目が効くこの梟は、屋敷からの緊急事態の知らせだ。今までほとんどその目的で飛ばしたことはない。

 何があった?
 ぞわりと背中を何かが走った。

「レイノルド、着いてきてくれ」

 次の瞬間走り出す。
   事態を察知したレイノルドが残っていた若い部下に、急いで将軍宅へと命じている声を背後に、構わず雨の中へ飛び出す。


   玄関で馬を乗り捨てると、屋敷に駆け込んだ。後からレイノルドが後ろに続く。

 「旦那様!シェリルノーラ様が!書斎です!」

 玄関に控えていた冷静沈着な姿しか見せないダラスが、焦った声を出す。

   警備の者の姿が見えない。灯りをダラスから受け取り、階段を駆け上がる。廊下には砕け散ったガラスの破片。

 無事なのか?

 戦場でも感じたことのないような緊張感と恐怖が走る。


 書斎の扉が開き、風が吹き込んでいる。部屋は荒らされ、バルコニーに出る扉が開いている。
   急いでそこから出ると、庭にぼんやりと白い人影が見えた。シェリルノーラだ。他には人影は見えない。

 無事を確かめるため、声をかけようとした瞬間

「シェリル様っ!」

 庭に回った部下の姿が見え、そいつが大きな声でシェリルノーラを呼んだ。
 何か会話をし、森の奥を指さしている姿が見える。
   逃げて行った方向か?

   止まっていた足が無意識に動き、シェリルノーラに駆け寄る。
   雨にぐっしょりと濡れた薄い夜着が体に張り付いている。着ていた外套を脱ぎ、その体を包み込む。

   剣を手にしているところを見ると、1人で応戦していたのか?

 灯りを持って追いかけてきたレイノルドがその部下に灯りを渡し、逃走した方向に潜んでいないかだけ確認するように指示をする。
 剣をレイノルドに預け、彼を抱き上げて屋敷に戻ることにした。


「シェリルノーラ様、お怪我はありませんか?」

「旦那様……」

 シェリルノーラはぼんやりと俺の顔を見上げた。

「……申し訳ありません。取り逃がしてしまいました」

「あなたは大丈夫ですか?怪我などはありませんか?とにかく屋敷に。
 危険な目に合わせて申し訳ありませんでした」

 抱き上げた体は冷え切っていた。
   書斎の様子や侵入者の行方も気にかかるが、部下に追わせているし、とにかく今は彼が優先だ。


「旦那様、お留守を守れず、大変申し訳ありません」

 屋敷に戻るとタオルを持ち、腰を折ったダラスに悲痛な表情で出迎えられる。
   大きなそのタオルでシェリルノーラを包みなおし、とにかく2階の彼の私室へと連れていく。部屋では侍女が入浴の準備をしていた。

   そのまま部屋を横切り、侍女がタオルを敷いたソファに彼をゆっくりと降ろす。
 濡れたタオルを取り、明るい場所で確認するが、見たところ怪我はないようだ。
   強張っていた体から力が少し抜ける。自分では気付いてなかったが、戦場でも滅多にない程、気を張り詰めていたらしい。渡された新しいタオルで彼を頭から包み、軽く髪を拭く。

「話は明日聞かせてください。とにかく今は体を温めて。よいですか?」

「はい。申し訳ありません」

 落ち込んだ様子のシェリルノーラを見ると、胸が痛い。タオルの上から頭を両手で包む。俺の手にすっぽりと収まる。

「あなたが謝ることなど、何ひとつ、ありません。謝るのは私のほうです」

   真っ直ぐに見上げるその瞳に、感情の揺れが見える。露わになったなめらかな額に、そっと口づけを落とす。そのまま、腕の中に閉じ込める。

「本当に無事でよかった」

 最後の言葉はらしくなく、弱々しい響きとなった。


 風呂の準備ができたと告げた侍女に、後は頼むと言い置き、俺は部屋を出た。



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