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42.思惑
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大規模な調査結果、最終的な決着がついたのはつい先日のことだった。
ガリアス公爵と結託していた旧体制からの実力者が2名検挙された。ガリアス侯爵家は大幅な領地の没収、不当に得ていた金の徴収と罰金に加え、当主は生涯幽閉されることになった。
家は断絶されることなく子爵に格下げされた。父親とは異なり、害のなさそうな新しい当主は父親の悪事に慄き、温情ある措置に心から陛下に仕えることを誓っていた。
しかし、幽閉先の邸宅へ送られる前、判決を聞いたガリアス前侯爵は納得がいかないと錯乱し、騒ぎ続けた挙句、意識を失いそのまま憤死してしまった。プライドの高い奴には耐えられなかったのだろう。
爵位を与えられた英雄である将軍への嫉妬から、失脚を狙ったが返り討ちにあったと、様々な尾ひれをつけ、実しやかに広まっていた。さらに前侯爵が死亡したことで、その死は仕組まれていたのではないか、裏で指示したのはもしや、などと余計な噂となって流れた。死んでからも傍迷惑な。
後ろめたいものがあるのだろう、一部の貴族連中が、最近王宮などで俺の顔を見ると蒼ざめて逃げていくようになった。あからさまな態度の者は部下にその裏をとるように指示をしている。幾人かはさらに炙り出されてくるだろう。
判決の最終的な結果を侯爵の憤死などは省き、差し障りのない内容だけを話すと、シェリルノーラは固い顔でそうでしたかと呟いた。
その後、「旦那様がご無事でよかったです」とにっこり笑って見上げてきた。
なんだろう、この人が愛おしくてならない。確かにあの件で体調を崩し大変な目に合わせてしまったが、シェリルノーラが傷つけられずに済んで本当に良かった。
抱きしめると素直に身を委ねてくれる。その命のぬくもりを感じると安心し、二度とあんな目には合わせないと固く誓う。
旧体制から残っていたタチの悪い癌のような一派がこの件でほぼ一掃された。結果、一番得したのは、目の前のこの人だろう。
宰相以外いない、人払いした部屋で陛下と向かい合っていた。
「私はネズミの駆除ができたし、これから無駄な時間も短くなるね。将軍はかわいくて美しい伴侶を手に入れ、新たな手柄も立てて立場も盤石。もういくら英雄とは言え、成り上がりと揶揄する輩もいないだろう。
さらにあの子は初恋が成就して、これって三方良しじゃない。結果良ければ、ね」
一見いい笑顔を見せる陛下の言葉に1つ引っかかるものがあった。
「……初恋?」
「知らなかった?じゃあ聞かなかったことにしておいて。
あの子のことはとても可愛がっていたのに、お前に一目惚れとは私は悲しいよ。甥じゃなかったら、私のそばにおいときたいくらいなのに」
「は?」
宰相もいる前で思わず間抜けな声が出た。色々追求したいところもあるが黙っておく。シェリルノーラとは結婚式が初対面だったはずだ。
「まあ、今回のことで隣国の前王の残党も捕獲できたし、色々前進かな。後はもう文官側の仕事だ。もうちょっと軍部の改革は必要だが、しばらくはゆっくりしてもらうから」
どうりで通常の帰国ルートではなかったはずだ。直接指示された訳ではないが、薄々分かっていた。要は囮にされたのだろう。もちろん迎え撃つ準備はできていたが。
残党の件は国際問題になり大事件だ。それをただの金品狙いの盗賊と公表し、表沙汰にしていない。何故か俺もそれなりの傷を負ったことになっているのだろう。
こちらも公表されてないが、5日間休んだことは間諜からも隣国の王に報告されているはずだ。
貸しを作った上に恩を売り、これ以上ない交渉材料を手に入れた。頭や切れる狡猾な宰相を上回る喰えない人だ。
シェリルノーラが駆けつけるよう仕向けたのは、信憑性を増すためか、だだ顔を見たかったのか。あの時の事を思うと、どうも後者のような気がする。
必要な話を詰め、懸案事項と進捗状況の報告を終えると、2人に礼をして大股で自分の執務室に戻る。
ゆっくりというが、実質的に軍部のトップに立ってしまったので多忙は変わらない。
任せていた仕事はきちんとなされていたが、最終的な判断が必要なものや俺でなければならないものに関しては、約1か月分に加え、とさらに5日間の休暇分の仕事が待っていた。
明後日は約束していた星祭だ。何としてでも間に合うように帰ると気合を入れ直した
ガリアス公爵と結託していた旧体制からの実力者が2名検挙された。ガリアス侯爵家は大幅な領地の没収、不当に得ていた金の徴収と罰金に加え、当主は生涯幽閉されることになった。
家は断絶されることなく子爵に格下げされた。父親とは異なり、害のなさそうな新しい当主は父親の悪事に慄き、温情ある措置に心から陛下に仕えることを誓っていた。
しかし、幽閉先の邸宅へ送られる前、判決を聞いたガリアス前侯爵は納得がいかないと錯乱し、騒ぎ続けた挙句、意識を失いそのまま憤死してしまった。プライドの高い奴には耐えられなかったのだろう。
爵位を与えられた英雄である将軍への嫉妬から、失脚を狙ったが返り討ちにあったと、様々な尾ひれをつけ、実しやかに広まっていた。さらに前侯爵が死亡したことで、その死は仕組まれていたのではないか、裏で指示したのはもしや、などと余計な噂となって流れた。死んでからも傍迷惑な。
後ろめたいものがあるのだろう、一部の貴族連中が、最近王宮などで俺の顔を見ると蒼ざめて逃げていくようになった。あからさまな態度の者は部下にその裏をとるように指示をしている。幾人かはさらに炙り出されてくるだろう。
判決の最終的な結果を侯爵の憤死などは省き、差し障りのない内容だけを話すと、シェリルノーラは固い顔でそうでしたかと呟いた。
その後、「旦那様がご無事でよかったです」とにっこり笑って見上げてきた。
なんだろう、この人が愛おしくてならない。確かにあの件で体調を崩し大変な目に合わせてしまったが、シェリルノーラが傷つけられずに済んで本当に良かった。
抱きしめると素直に身を委ねてくれる。その命のぬくもりを感じると安心し、二度とあんな目には合わせないと固く誓う。
旧体制から残っていたタチの悪い癌のような一派がこの件でほぼ一掃された。結果、一番得したのは、目の前のこの人だろう。
宰相以外いない、人払いした部屋で陛下と向かい合っていた。
「私はネズミの駆除ができたし、これから無駄な時間も短くなるね。将軍はかわいくて美しい伴侶を手に入れ、新たな手柄も立てて立場も盤石。もういくら英雄とは言え、成り上がりと揶揄する輩もいないだろう。
さらにあの子は初恋が成就して、これって三方良しじゃない。結果良ければ、ね」
一見いい笑顔を見せる陛下の言葉に1つ引っかかるものがあった。
「……初恋?」
「知らなかった?じゃあ聞かなかったことにしておいて。
あの子のことはとても可愛がっていたのに、お前に一目惚れとは私は悲しいよ。甥じゃなかったら、私のそばにおいときたいくらいなのに」
「は?」
宰相もいる前で思わず間抜けな声が出た。色々追求したいところもあるが黙っておく。シェリルノーラとは結婚式が初対面だったはずだ。
「まあ、今回のことで隣国の前王の残党も捕獲できたし、色々前進かな。後はもう文官側の仕事だ。もうちょっと軍部の改革は必要だが、しばらくはゆっくりしてもらうから」
どうりで通常の帰国ルートではなかったはずだ。直接指示された訳ではないが、薄々分かっていた。要は囮にされたのだろう。もちろん迎え撃つ準備はできていたが。
残党の件は国際問題になり大事件だ。それをただの金品狙いの盗賊と公表し、表沙汰にしていない。何故か俺もそれなりの傷を負ったことになっているのだろう。
こちらも公表されてないが、5日間休んだことは間諜からも隣国の王に報告されているはずだ。
貸しを作った上に恩を売り、これ以上ない交渉材料を手に入れた。頭や切れる狡猾な宰相を上回る喰えない人だ。
シェリルノーラが駆けつけるよう仕向けたのは、信憑性を増すためか、だだ顔を見たかったのか。あの時の事を思うと、どうも後者のような気がする。
必要な話を詰め、懸案事項と進捗状況の報告を終えると、2人に礼をして大股で自分の執務室に戻る。
ゆっくりというが、実質的に軍部のトップに立ってしまったので多忙は変わらない。
任せていた仕事はきちんとなされていたが、最終的な判断が必要なものや俺でなければならないものに関しては、約1か月分に加え、とさらに5日間の休暇分の仕事が待っていた。
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